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漁業の歴史 part2


増加期 ~ 沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へ

日本漁業が発展をした増加期(1945-1971)までの主な出来事を振り返ってみよう。

1945年 終戦
1945年 トルーマン米大統領が大陸棚及び漁業保存水域に関する宣言を発表
1948年 水産庁発足
1949年 新漁業法制定
1952年 日米加漁業条約調印・日米行政協定調印・李承晩ライン宣言
1952年 北洋漁業再開
1955年 日本国連加盟
1956年 日ソ漁業条約調印(日ソ漁業交渉第一年)
1960年 スケソウダラのすり身技術開発
1960年 南氷洋での捕鯨世界一に
1962年 堀江謙一、ヨットで単独大平洋横断

現在の漁業システムの基礎が作られたのは終戦直後である。
疲弊しきった国力で、何とか国民を食べさせなければならない。
貴重なタンパク源として、漁業にかかる期待は大きかった。
終戦3年後に水産庁が発足し、翌年に新魚業法が制定された。
また、各地の大学に水産学部が設けられ、水産大学や水産高校できた。
このように国を挙げて水産業を振興していく体制を整えたのである。
1952年に、米国・カナダと漁業条約を締結し、遠洋漁業への扉が開かれた。
戦後のインフラがない中で、まずは沿岸漁業の生産が増加した。
ディーゼルエンジンと無線の普及と共に沿岸から沖合、遠洋へと漁場が拡大する。
李承晩ラインのような逆風も在ったが、順調に漁業生産を増加させて、
1960年に南氷洋での捕鯨が世界一になった。


水産庁の役割

この時期の水産庁の役割は、とにかく素早く漁業生産を増加させることであった。
それは、漁業者の短期的経済利益とも合致する。
この当時のエンゲル係数は50%近く、食料=豊かさという時代であった。
とにかく食料が足りない時代だったので、短期的な食糧増産は国益とも合致する。
漁業者の利益・水産庁の役割・国益は、短期的な漁獲量の増大に収束していた。
官民一体となり、日本の漁業生産は急上昇して、国民の胃袋を満たした。
漁業は、食糧増産という使命に応えたのである。
この時期の日本の漁業政策は大成功といって良いだろう。

成功の要因

漁業生産のスタートダッシュに成功した背景には、
漁業者や水産庁の頑張り以外にも、いくつかの追い風があった。

1)資源状態が良好だった。
戦争中はほぼ禁漁状態にあり、戦前に減少していた資源も回復していた。
特に沖合、遠洋はほぼ未開発に近い状態。

2)漁業のノウハウがあった
もともと漁業が盛んだったので、沿岸漁業を足がかりに、
沖合、遠洋へと拡大していけた。
コッドなど一部の資源を除けば、水産物に対する需要は低く、
日本以外に、沖合、遠洋の資源を積極的に利用しようという国はなかった。

3)アメリカの協力
この時期の米国は日本の漁業にとても協力的であり、
自国の漁業の一部をつぶしてまで、日本に漁場を提供してくれたと、
カナダ人の政治学専攻の学生が教えてくれた。
このあたりの歴史的経緯を詳しく知りたいけど、何を読めばよいのかわからない。

4)公海自由の原則
この時期は、沿岸の極狭い海域を除いて全て公海であった。
公海は誰が利用しても良いという「公海自由の原則」が当たり前であった。
この公海自由の原則が日本の漁業の発展を支えたのだが、
やがてこの原則は失われることになる。

この時期には、資源の保全を考える必要性はほとんど無かった。
第一に漁獲能力は低いので、全力でとっても乱獲になりづらかった。
魚探が無い時代には、低水準資源を漁獲するのは至難の業であった。
非効率なことをするよりも、その時に獲れるものを追った方がよい。
技術的な限界から、乱獲が回避できていたのだ。
沿岸漁師は多くの魚種のなかから、その時に獲れる資源を狙う能力が高く、
減少した資源に追い打ちをかけるような行為が少ない。
沿岸の生産力は今よりも高く、前述のように資源状態も良かった。
一方、沖合・遠洋は、特定の魚種を大量に漁獲をすることが前提であり、
構造的に乱獲に陥りやすい特徴を持っている。
ただ、この時期は、資源の枯渇よりも早く漁場を拡大していくことが可能であり、
獲れなくなったら別の場所に行けば良いだけの話であった。

1970年代に入ると、順調に生産をのばした日本漁業にかげりが見え始める。
日本の漁業生産の増加を支えてきた条件のいくつかが失われてしまったのだ。
その布石となるのは、米国の「大陸棚及び漁業保存水域に関する宣言」である。
戦争が終わって、まずこの宣言をするところに、戦略国家としての米国のすごさがある。

つづく

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