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漁業の歴史 part5

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今まで見てきたように戦後の漁業の歴史は、
公海自由の原則→排他的利用権→責任ある漁業
といった具合に、一つの方向へ、ゆっくりと着実に動いてきた。
国際的な取り決めは、具体的な行動に移る前に長い準備期間が必要となる。
公海自由の原則が突然なくなったわけではないし、
漁業の責任がある日突然に問われだしたわけではない。
過去から現在までの流れをしっかりと見れば、未来を読むことは容易である。
「責任ある漁業」の次に来るのは、「責任を問われる漁業」だろう。
現在、IUU(違法、無報告、無規制)漁業や
FOC(地域漁業機関の非締約国等に船籍を移して無秩序な操業を行う便宜置籍船)などの
明らかな違法操業に対する規制が進んでいる。
今後は違法操業のみならず、乱獲などの無責任な漁業に対しても、
責任が問われることだろう。

乱獲漁業を規制する取り組みはすでに始まっている。
持続的な漁業であることを証明するエコ・シールがすでにある。
こういうものをつかって、消費者が乱獲を取り締まろうという動きもある。
いずれ、乱獲漁業に対する実行力のある規制が俎上に載るのは時間の問題だろう。
こうなると、日本のTAC魚種はサンマを除いて全滅するかもしれない。

漁業に関して言えば、時代の流れを読むのは容易であるにもかかわらず、
日本の漁業は時代の変化に適応してこなかった。
日本は「遠洋漁業は国際法を守って責任ある漁業を目指します。
でも、沿岸、沖合は今まで通り、好きなだけ獲りますよ。」
という内外ダブルスタンダードな政策をとっている。
責任ある漁業という外圧から、国内の漁業を守るために頑張っているのだ。

「日本のEEZの資源は乱獲をしても、日本の勝手でしょ?」というのは素人。
200海里の生物資源は、沿岸国の私有物ではない。
例えば、日本のEEZ内の資源を日本の漁獲能力では利用しきれない場合は、
外国に対して漁獲を許可する義務がある。
このことからも、EEZ内の資源が日本の私有物で無いことは明らかだ。
オープンアクセスにすると管理ができないので、
沿岸国が排他的に利用する権利を持っているだけなのだ。
その権利と引き替えに、資源を持続的に有効利用する義務も負っている。
EEZの資源であろうと、乱獲をする権利は無いのだ。
日本の現在の漁業は国連海洋法条約の理念に反している。
責任を果たしていないのに、権利のみを主張できるはずがない。
将来的に、日本に管理能力がないとみなされた場合、
管理能力がある国が日本に変わって排他的に利用することもあり得る。

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from 18 Mar. 2009

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