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漁業の歴史 part4

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公海自由の原則が崩壊し、沿岸国の排他的利用権が保証されるようになった。 それと同時に、沿岸国は管理の義務も負うこととなった。 「責任ある漁業」の時代の幕開けである。

1988年 米国MMPAにより、鮭鱒が禁漁とともに米国200海里内底魚操業不可
1991年 北洋サケマス沖獲り禁止
1992年 公海流し網漁禁止
1992年 IWC科学小委員会は改訂管理方式(RMP)を完成
1993年 ベーリング公海操業一時休止
1995年 FAOが「責任ある漁業のための行動規範 (Code of Conduct for Responsible Fisheries)を採択
1995年 日本政府が「食料安全保障のための漁業の持続的貢献に関する国際会議(京都会議)」を開催
1996年 国連海洋法条約を批准
1997年 TAC法(海洋生物資源の保存管理法)施行、TAC制度導入
1997年 水産庁に資源管理部が新設される
1999年 水産基本政策大綱が策定される
2001年 資源評価票およびABCを公開
2002年 水産基本計画が策定される
2006年 国連公海漁業協定の批准

時間の経過と共に、公海漁業が次々と規制をされていった。 規制の対象となった漁業の中には、ぬれぎぬのようなものも少なくないが、 ひとたび漁業が禁止されてしまえば、漁業の復活は容易ではない。 それを象徴するのが、IWCだろう。 1992年にIWCの科学者委員会は、 鯨類を持続的に利用するための漁獲ルール(RMP)を完成させた。 科学者たちは、RMPに従って漁業を行えば、鯨は科学的に利用可能だと判断したのだ。 しかし、RMPが完成してから10年以上経過をした現在においても、 捕鯨は再開されていないし、再開のめども立っていない。 反捕鯨国からの管理取り締まりに対する要求を日本が拒絶したせいで、 膠着状態に陥っているのだ。

国際漁場からの締め出しがちゃくちゃくと進む中で、 1982年に採択された国連海洋法条約が1994年から発効することになった。 国連海洋法条約の基本理念は、海洋資源の利用にあたり、 従来の自由競争(フリーアクセス)に代えて、 海洋環境保全の責任を義務として課すことである。 排他的利用権の代償として、管理責任を負うことになったのだ。 人類共通の財産である海洋資源を守っていく上で、必然的な流れだろう。 海洋生物資源を利用する際に、具体的にどのような責任を負うべきだろうか? 90年代に入ると、その責任の中身を具体的に決める作業が進められ、 1995年にFAOが「責任ある漁業のための行動規範」を採択した。

責任ある漁業の中身は、
● 漁業の権利と資源保存の義務の両立
● 持続的開発の実現
● 過剰漁獲と過剰漁獲能力の抑制
● 予防的アプローチの適用
● モニタリング・監視・取締の実施
など、多岐にわたる。

日本も1996年に遅ればせながら国連海洋法条約に批准をした。 これによって、EEZ内の資源を適切に管理する義務を負うことになった。 ついに、「資源管理」という黒船がやってきたのだ。 昭和38年に制定された沿岸漁業等振興法では資源管理に対応できないので、 1999年に水産基本政策大綱が策定された。 http://www.jfa.maff.go.jp/kihontaiko/index.html さらに、その具体的な内容として、2002年に水産基本計画が公表された。 http://www.jfa.maff.go.jp/sinseisaku/kihonkeikaku.html 世界の流れを見ると、90年代以降のキーワードは「責任」である。 水産基本政策大綱において、責任という単語が出てくる場所は遠洋漁業のみ。

(1)責任ある遠洋漁業の実践 国際的な資源管理体制の下で責任ある遠洋漁業の実践に努めることを基本に、 強力な漁業外交の展開により漁場の確保を図るとともに、 コストの削減等により国際競争力の強化を図る。

国際漁場では「責任ある漁業」でなければ通用しないと言う認識はあるようだが、 国内漁場では今後も「責任ある漁業」を進めていくつもりは無いようだ。 また、水産基本政策大綱のアクションプランである水産基本計画にしても、 生産量と自給率に関する数値目標はあるが、 資源水準などの生物の持続性に関連する目標がない。 また、漁業生産を上げるための方法にしても、 「種苗放流」と「コスト削減」のような従来の焼き直しが目立ち、 「責任ある漁業」に対応できていないように見える。

2006 9/26 漁業法→沿岸漁業等振興法 に訂正

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