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勝川俊雄公式サイト

とくダネが無事放映されました

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マサバの小型魚輸出の問題や、土木工事に偏重する予算など、様々な問題がわかりやすく整理されていたと思います。

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俺の発言は4つ 。俺の発言の意図をくみ取った上で、適切な利用をしてもらったと思う。
次のような質問に答えた部分から抜き出したものだ。

Q:漁業者が減っているという話だが?
A:漁業者が減っているから、漁獲量が減っているのではない。魚がいないから、漁獲量が減る。そうすると生活が成り立たないから、新規参入者が閉め出され、結果として高齢化と漁業者の減少が続いているのです。このまま漁業が衰退していけば、漁業者が減って漁業が成り立たなくなるか、魚が減って漁業が成りたたなくなるか、のどちらかでしょう。まあ、最終的にどちらになるかはわかりませんが、一つ言えることは明るい未来は無いと言うことです

Q:日本とノルウェーの違いはなんですか?
A:2つの大きな違いがあります。一つは、漁獲枠をあらかじめ船に配分する。自分の枠は一年でどう使おうとその人の自由。他の漁業者よりも早く獲る必要が無くなれば、無駄な競争を抑制しコストを削減できます。、もう一つは漁獲を自然の生産力以下に抑えることです。そうしなければ持続的な漁業生産は期待できません。

Q:日本のサバ漁業の問題点をまとめてください
A:日本のサバは適正サイズになる前に二束三文でたたき売られている。非常に残念なことだと思います。

Q:日本漁業の戦略にどのような問題点があるのか
A:戦略に問題があるというより、日本の漁業には戦略がないのです。とにかく魚を多く捕ることしか考えてこなかった。限りある自然の生産力を有効利用するという視点が欠落しています。ノルウェー漁業と日本漁業の違いは、戦略がある国と戦略の無い国の違いです

俺が例によって、小サバ輸出を痛烈にDISしたあとに、例によって水産庁の言い訳が入る。
「日本の場合は漁業の種類がものすごくたくさんあって、
それぞれ個別の割り当てをモニターしていかないといけない。労力もコストもかかる」
日本漁業は他国とは違うから、資源管理はできません、というおきまりのパターンだ。
日本の漁業は多様なら、その多様な漁業を管理する努力をすべきなのに、何もやっていないじゃないか。

たとえばノルウェー漁業のサバの漁獲枠を見てみよう。
http://www.sildelaget.no/kvoteoversikt.aspx
16種類の漁業に個別に漁獲枠が配分されている。
水産庁が主張するように、日本には漁業の種類がたくさんあるなら、
少なくともノルウェーよりは漁獲枠を配分する漁業の種類を増やす必要があるだろう。
では、現状はどうなのか。日本では大臣許可と知事許可の2つにしか分かれていない。
最低限、ノルウェーと同じレベルの漁獲枠配分の細分化をしてから、こういう主張をして欲しいものだ。

それぞれの漁業をモニターするにはコストがかかるのは当然だ。
ノルウェーはコストをかけて、日本とは別次元のモニタリング体制を確立している。
その上で、しっかりと利益を出しているのである。
端から資源管理などやる気がなくて、
日本漁業の独自性とやらを、資源管理をしない言い訳につかっているに過ぎないのである。
どの国でも、その国独自の漁業はあるわけで、他国と違うのは当たり前だ。
日本の独自性云々を持ち出す人間は、日本以外の国の漁業はすべて同じだと思っているのだろうか。

あと、俺の肩書きが準教授になっていたが、正しくは助教だ。
ちゃんと「助教」と書いてある名刺を渡したはずなんだけど。
助教を助教授と勘違いしたのかな???
これはスタッフのうっかりミスでしょう。

俺がノルウェーで獲ってきた画像が使われていました。
メモ代わりにハンディカムで撮ったものなので、
テレビ放映に耐えるような画質ではないんだけど、無いよりはマシでしょう。
今度行くときは、三脚をもっていって、まじめに撮ってこようかな。

今回の番組は良くできていた。俺も出演して良かったと思う。
ストーリーとしてわかりやすかったし、その場その場で出てくる画像も適切だった。
サバに関しては、小サバの輸出を止めて、国内鮮魚向けに大きくしてから獲れば、
漁業者にも消費者にも利益があるというような説明が欲しかった。
まあ、時間も15分と短い中で、そこまで論じるのは難しいかもね。
詰め込みすぎて消化不良になるより、シンプルなストーリーの方が良いかもしれない。
オンエアーまではいろいろと不安もあったが、俺的には大満足の良い番組でした。
引き続き、漁業の情報を報道してもらえるとうれしいです。

ノルウェー漁業の情報公開

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ノルウェーでは、ありとあらゆる情報が公開されていることに、大変な衝撃を受けた。
組合のページを見れば、どの船が、いつ、どこで、どの大きさのどの魚をどれだけ獲ったかが一目瞭然だ。
また、バイヤーとして登録すれば、落札額なども見ることができる。
その情報は、伝票システムで幾重にもチェックされているので非常に正確なのだ。

ノルウェーでは、魚が取引されるたびに伝票(sales note)が発生する。
伝票には、ありとあらゆる情報が記述されている。
売り手、買い手、漁業者、漁船、漁船所有者、魚種、重量、漁具、航海番号、漁場番号、漁獲枠の種類、etc

図1.png

魚が漁業者→加工業者→輸出業者と流れていくたびに伝票が組合と管理当局に提出される。
伝票の整合性は細かくチェックされ、不正のにおいがする倉庫には抜き打ち検査が入る。

俺が見学に行った加工場でも、全ての箱に下の写真のような伝票が張ってあった。
この伝票から07年10月20日に漁獲された400-600gのサバが70kgあることがわかる。
伝票番号も記載されているので、漁獲されたときからこの場所までの経緯を、即座にたどることができる。
不正の疑いがある場合は、箱の中身と伝票が一致するかどうかをチェックする。
伝票と倉庫の中身をつきあわせることで、不正があれば確実にばれるだろう。

img08060302.jpg

ノルウェーでは組合のオークションを通さない魚の売買は禁止されている。
オークションの情報がそのまま水揚げ統計になるのだ。
さらに、水揚げをするときに、再び正確な重量を量る。
そして、魚が移動するたびに、必ず伝票が組合に提出される。
また、倉庫に保管してある魚にもすべて伝票の写しが張ってある。
トレーサビリティーもばっちりだ。

もちろん、公開性を高めることは短期的にはデメリットもある。
毎日の落札金額が世界中に公開されているし、気が利いた人間なら輸出業者の在庫量まで逆算できるだろう。
こうなると、買い手はノルウェーの輸出業者の足下を見ることもできる。
また、アイスランドなど他の漁業国が、ノルウェーよりも安い値段を提供して商談をまとめる場合もあるようだ。
短期的に見ると、ライバルに出し抜かれ、ビジネスチャンスを失うこともあるだろう。

「こんなに公開しちゃって、漁業者は反対しないの?」という質問を組合の人にぶつけてみたところ、
「もちろん、公開には消極的な意見もあるが、全体的には透明性を高める方向の意見が多い。
現在の情報公開は、民主的な結果である。
社会的な合意を得ながら徐々に公開を進めて、現在の水準に時間をかけて到達した。
今後の情報公開の方向性に関しても、議論を通して決めていくことになる」という答えが返ってきた。

出し抜くことで勝てるのは一瞬だ。長い目で見れば信用がある方が勝つ。
信用を高めることが長期的に見れば利益につながるという確固たる信念がノルウェー漁業にはある。
そして、ノルウェー漁業の成功は、彼らの考えの正しさを裏付けている。

信用こそが、日本ブランドの最大の武器であったはずだ。
現在、日本社会では信用が急速に失われつつある。
信用の価値が世界で失われてしまったわけではない。
ノルウェー漁業は信用の価値を高めて、しっかりと利益をあげているのだ。

信用の価値が失われている日本と、信用の価値を高めているノルウェー漁業はどこが違うのだろう?
日本とノルウェーでは、「信用」の意味が本質的に違うのだと思う。
日本社会は「調べずに安心」を前提としているのに対して、ノルウェー漁業は「調べて安心」を徹底している。
特に輸出をしようというなら、今の日本の信用システムでは、ノルウェーとは勝負にならないだろう。
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2008/01/post_288.html

テレビのお知らせ

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フジテレビ系列
とくダネ!
6/4 朝8時から
(当日、大きな事件があれば、そちらが優先です)

登場するの、一瞬でしょうから、目を皿のようにして見てください。
いったい、どんな取り上げられかたをするのやら不安だなぁ。

一般人に問題提起をして世論を変えていかないと、漁業はこのまま衰退する。
やっかいごとを恐れて、勝負所でのチャンスを逃す手はないだろう。
ということで、ここは攻めの一手だ。

ノルウェー漁業の大まかな流れ

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ノルウェーの漁業の全体図について説明をしよう。

img08053001.png

魚を獲った漁師は、その場で、漁獲重量と体重組成を計測する。オークションシステムでは、正確な情報が流れることが重要なポイントである。 平均体重や組成の測定方法は、1トンにつき何尾計測するとか、細かいことまで決められている。測定がいい加減な船は、信用を失うために、オークションでの落札額が低くなる。漁業者の申告と水揚げ内容が違うというクレームがあれば、組合の職員が必ずチェックを行う。不正確な報告をした漁業者にはしっかりと技術指導をする。

 

漁業者は携帯電話で、漁業組合に漁獲の内容を伝える。この部分を電子化するための取り組みも行っているようだ。

 

 

漁業者から漁獲の情報を受け取った漁業組合は、インターネットのオークションサイトに情報を掲載する。このオークションの様子は世界中に公開されている。ただし、入札をするには、組合から入札資格を得る必要がある。入札資格を得るには、ちゃんとした水揚げ場所をもっていることと、保証金が必要。

落札者が決定すると、落札者が指定した港に水揚げに行く。水揚げとその後の冷凍処理については、動画を参照して欲しい。

動画 その1

動画 その2

動画 その3

こうして冷凍されたものが、商社を経由して世界中に輸出されていく。

ノルウェーの漁業協同組合

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ノルウェーの漁業協同組合について紹介しよう。ノルウェーの浮魚販売組合のサイトを見て欲しい。

http://www.sildelaget.no/default.aspx

この組合は、ニシン、サバ、シシャモなどの浮魚の販売を行っている。組合は、漁業収益の0.65%で運営されている。日本と違って、公的資金など1円も入っていない。漁業の利益があることが、ノルウェーの組合の死活問題であり、そのために必死の努力をしている。結果として、漁業者の経済活動をがっちりと組合が支えている。これが本来の組合のあり方なんだよね。補助金にあぐらをかいて、漁業部門で赤字を垂れ流す、某国の漁連とはえらい違いである。

ノルウェーでも、漁獲した魚は競りにかけられるのだが、日本とはシステムが違う。魚を捕ったら、漁師は船上で魚の量と体重組成を組合に報告する。組合はウェブ上でオークションを行う。オークションではもっとも高値をつけた業者が落札者となる。落札者は水揚げする港を指定するので、船はそこに向かう。と、まあ、そういうシステムだ。この販売組合は、オークションの全てを取り仕切っている。

トップページには、現在、漁業が行われている魚種、漁獲枠の消化割合や、過去1週間の平均落札額などを見ることができる。今はオフシーズンだから、情報があまり無いけど、これから徐々に賑やかになっていくことでしょう。

img08052901.png

右下のCATCH AREAをクリックするとノルウェー近海の地図が表示される。

img08052903.png

色がついたマス目が過去24時間に漁獲があった場所だ。色がついたマスをクリックすると詳しい情報をみることができる。
左から、水揚げの時間、船の名前、漁獲量(トン)、CTとMNはなんだか忘れた、%1から%4は魚体の大きさ。%1は一番大型で、この場合は、全て大型が100%ということになる。Averageは平均体重。Bid. areaとETAはオークションのなんかだ。でもって、Buyerが落札者で、Plantが落札者が指定した水揚げ場所だ。とまあこんな感じで、リアルタイムで漁業の状態を見ることができる。

img08052905.png

このオークションに参加するには組合に登録する必要がある。登録しているのはノルウェーの業者ばかりではない。たとえば、スコットランドの業者が落札し、そのままスコットランドに水揚げをするというような例もあるらしい。事後処理が良い船の魚は、オークションで良い値がつくらしい。

久々にテレビの撮影でした

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今日は久々にテレビの撮影だった。このクソ熱いのに、部屋を閉め切って、空調を止めて、熱いライトで照らされて、1時間も話をした。最後は汗だくでした。発言には気を遣うので、かなり消耗をしたよ。でもって、番組で使われるのは10秒ぐらいだろう。たった10秒のために、撮影スタッフが3人もわざわざ海洋研までくるのだから驚きだ。

毎度のことながら、テレビ番組を作成する人たちの吸収力には圧倒される。まさに、根掘り葉掘りという感じで、どん欲に聞かれるから、こっちもいろいろと話してしまう。俺としても見習うべき点が多いですね。テレビは、いろんな意味ですごい世界です。

今回も、長時間にわたって、言いたい放題いろいろ話したのだが、どの部分がどう使われるかは番組を見るまで俺自身もわからない。番組を見るまで、結構、どきどきする。テレビの取材協力は大変だけど、一般人に漁業の現状を知ってもらうためには避けては通れない。今後も機会がある限り、発言を続けようと思う。

放映日が決まったら、当サイトで告知しますね。

無責任発言時代の終焉

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岩崎氏は今までもいろんな場面で、ちょっかいを出してきてたんだけど、面倒くさいから完全にスルーしてきた。反論する価値がないから。読めばわかると思うけど、岩崎氏の文章は不明瞭で、説得力がまるでない。2ちゃんねるのような罵倒しかできない人間が登場したところで、自らの陣営の評価を下げるだけだ。俺にしてみれば、痛くもかゆくもないどころか、放置しておいた方が得ということになる。岩崎氏には、血圧に気をつけて、末永くがんばってもらいたいです。

今回、初めて反論をした理由は2つある。一つは、岩崎氏が、水産庁→北まき理事という輝かしい経歴を隠したことだ。せっかくオウンゴールをしてくれたのだから、彼の経歴を紹介しない手はない。もう一つの理由は、「TAC制度をちゃんと見直ししないとこうなるぞ」という見せしめだ。水産庁が「IQすらやりたくない」と駄々をこねるなら、俺は手加減しない。TAC制度を現状のままで擁護する自信があるなら、好きにすればよい。

 これには後日談がある。岩崎氏は俺の反論に対する反論を水産庁の幹部のみに配布したらしい。威勢良く登場したくせに、少し反撃されただけで、仲間内に引きこもってしまったのだ。あまりの雑魚っぷりに笑ってしまったよ。文句があるなら、みなと新聞に投稿すればよいのに。

岩崎氏は、今年の3月に「勝川の連載をやめろ」とみなと新聞に怒鳴り込んだのだが、みなと新聞サイドは「連載はやめませんが、反論があるなら掲載します」といって、岩崎氏のために紙面を確保した。こうして、岩崎氏の反論が掲載されたのだ。反対意見もちゃんと掲載するというのは、メディアとして実に公平じゃないか。実は、岩崎氏よりも2ヶ月前に全く同じ行動をとった団体がある。ZGRだ。5人ぐらいで挑んでくるという話だ。どうやって料理しようかと、手ぐすね引いて待っているんだけど、全然出てこない。もう待ちくたびれたよ。また、お得意の「出す出す詐欺」ですか?

みなと新聞連載 08年4月

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名指しで批判された以上、批判には答えておこうとおもって書いたのがこれ。

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無責任発言時代か(岩崎寿男)を読み解く その4

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TAC制度に強制力を持たせるのは非常識

水産庁は形ばかりのTACを設定しておきながら、超過漁獲を取り締まらない。そして、TACの超過は日常茶飯事だ。これでは管理とは呼べないだろう。昨年度のマイワシを獲っていた沿岸漁業者のなかには、自分たちがTACを超過していることを知らない人も少なくないだろう。要するに、はなからやる気がないのである。

世界に目を向けると、漁獲枠のごまかしには厳罰が当たりまえになりつつある。ノルウェーなどの資源管理先進国では、違反をする気も失せるほど、徹底した監視体制が導入されている。そして、同じシステムがイギリスやスコットランドなどの周辺国にも広がっている。国際的に見れば、非常識なのは日本の水産庁である。

資源管理のルール違反にお目こぼしをすると、ルールを守った正直者だけが馬鹿をみることになる。これでは、ルールを守るものなどいなくなるだろう。資源管理に対して日本の漁業者が消極的な原因の一つは、「自分が獲らなくても、他の誰かが獲ってしまうのでは?」という心配である。「自分が獲り残した魚は、後でちゃんと獲れる」という安心感を植え付けるためにも強制力をもったルールが必要なのだ。たとえば、ノルウェーは非常に厳しい監視をしているが、実際には違法者はほとんどいない。違法者を罰するためと言うよりは、むしろ、安心して漁業者がルールを守れるように、強制力が必要なのだ。

パトカーのたとえ話は意味不明なのだけど、おそらく「漁業者は自主的にルールを守っているので、強制力は不要」と言いたいのだろう。TAC制度の規制が無視されていることについては、3月21日の記事で説明済みだ。

昨年2月に大中巻きのサバ類の漁獲量がTACを超過したが、水産庁は自主的な停止を要請したのみであった。その後も、「アジなど」、「混じり」という名前のサバが水揚げされ続けた。

意図的なTAC超過の部分には、岩崎氏は何の異論もないようだ。まあ、当事者だけに、反論するだけやぶ蛇だとわかっているんだろう。「TAC?知ったこっちゃねーよ。俺たちは巻きたいだけ魚を巻くだけだ」という無法集団がいる以上、性善説ではだめなのだ。

法律論についても、何が言いたいのかわからない。そもそも水産庁自身が穴だらけのTAC法を作っておいて、「取り締まるのは法律違反」と開き直るのは論外だ。それに納得する納税者はいないだろう。そもそも法律を作る時点で確信犯的にやる気がないというのが、根本的な問題なのだ。また、法の下の平等というなら、北海道のスケトウダラ漁業者はTACによる操業停止を義務づけられたにもかかわらず、マサバやマイワシはTAC超過を野放しという方が、不平等だろう。一律できちんとやるべきである。

マイワシ、サバをTACで管理しているのは、日本と韓国のみ

これは爆笑してしまった。あまりにも世間を知らなすぎる。岩崎氏は、日本とせいぜい韓国のことしか知らないのだろう。自分が知らないことを無いと言い切れる自信は流石だな。

米国は漁獲枠のことをHarvesting Guidelineと呼んでいる。岩崎氏は、「ガイドライン=強制力がない」と勘違いしているようだが、日本のTAC制度と違って米国のHarvesting Guidelineには強制力がある。サバの場合も、EEZでの漁獲量がHarvesting Guidelineに達したら、漁業が閉鎖されることになっている。
http://www.fishtheisland.com/National_fish_news.htm#11

EU・ロシア・ノルウェーの共同管理については、ここで紹介している。
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2008/02/post_301.html
また、ネットで検索すれば、オーストラリアをはじめとする多くの国が漁獲枠を設定していることがわかるだろう。

サバは世界中に生息する広域分布種である。たとえば、マサバ(Scomber japonicus)の分布はこんなに広い。
http://fishbase.sinica.edu.tw/tools/aquamaps/receive.php

pic_Fis-29507.jpg

世界中にローカルなサバ漁業は無数にある。一部の先進国をのぞいて資源管理の文書はあまり整備されていないので、サバを漁獲枠で管理している国がないことを示すのは不可能だ。少しでも国際的な資源管理について調べた経験がある人間なら、「特定の魚種が、特定の方法で管理されていない」などと不用意なことは言わないはずだ。

無責任発言時代か(岩崎寿男)を読み解く その3

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4/11日に関しては、論点を整理してみよう。

TAC値の根拠が説明されていることが、審議会の資料を見ればわかる

本当にそうなのか、実物を見てみよう。

それから、マイワシでございます。マイワシの資源は低い水準ながら平成7年以降横ばい傾向にありましたが、本年の加入量水準は再び減少傾向にあるとされていることから、平成14年のTACは削減をしたいと考えております。その削減幅でございますが、今回の削減によりまして過去最低のTAC数量となること、またマイワシは漁獲量の年変動が非常に大きいことから、対前年比1割減にしたいと考えております。この結果、14年のTAC総枠は34万2,000トン、うち大臣管理分の大中まき網漁業につきましては18万1,000トンにしたいと考えております。また、都道府県に対する配分につきましては、島根県で 2,000トン、その他の県で1,000トンの減となります。
http://www.jfa.maff.go.jp/iinkai/suiseisin/gijiroku/kanri/003.html

これが資料のマイワシ関連の部分なのだが、これに対して質問もコメントも無かったわけだ。これで根拠が示されているとはとうてい思えない。委員に資源のことを理解している人間が皆無な時点で、まともな審議などする気がないのは見え見えだけどね。

この議事録でわかるように、水産庁は肝心な情報を隠している。

  1. 資源量がすでに26万トンまで減少していること
  2. 去年の実漁獲がすでに13万トンまで落ち込んでいること。

これらの2つの情報と照らし合わせれば、34万トンというTACが荒唐無稽であることは自明だろう。しかし、「加入が減ったからTACを10%減らします」という説明では、34万トンのTACの非常識さが全く伝わらない。TACが資源量を超えているという情報を委員は誰一人として知らなかったはずだ。また、TACは水産庁がいくらでも大盤振る舞いをできるが、だからといって魚が増えるわけではない。その前の年は、TACが38万トンに対して、実漁獲はたったの13万トンであった。すでに魚がいないことはわかっていたのだ。この期に及んで、実漁獲の3倍もの過剰なTACを10%削減しても何の意味もないことは自明だろう。

この議事録をいくら読んでも、TAC値の根拠は全く見えてこない。俺には、水産庁が都合が悪い情報は隠蔽し、お手盛り審議会でろくな議論もせずにTACを恣意的に決めているようにしか見えない。ここまであからさまな議事録を、堂々と公開できる神経は、流石としか言いようがない。この件に関しては、実物を自分の目で見て判断することをおすすめします。水産政策審議会の資源管理分科会議事録はここにあります。
http://www.jfa.maff.go.jp/iinkai/suiseisin/gijiroku/kanri/
毎年、11月にTAC値の審議が行われますので、そこを重点的に読んでください。

 

TACを前年より若干減らすというフィードバック方式をとっていたから、水産庁の説明はおかしくない

フィードバック方式かなんだか知らないが、資源量を超えるような漁獲枠を出すのは論外。
「フィードバック方式は、かなり有力な手法である」とか自画自賛しているけど、資源量を超えるような漁獲枠を出した時点で、その方法が機能していないのは自明だろう。

実は、フィードバック管理は俺の専門分野だったりするのだが、TACがフィードバック方式なんて初めて聞いた。当時のTACの設定をフィードバック方式の管理と呼ぶのは、全くの論外である。確かにフィードバック制御は使い方次第で効果があるのだが、10%という小さな変動幅では、よほど寿命が長く、変動が小さな資源しか管理できないというのは、我々の間では常識だ。

実際のマイワシの資源を対数で表現すると下のようになる。削減率10%だと、赤線のように漁獲枠が減少していくのだが、実際の減少(青線)はそれよりも急なのだ。毎年、漁獲枠を10%削減し続けても、資源はそれ以上の早さで減ってしまうので、いつまでたっても漁獲にブレーキはかからないのである。10%変動幅でのフィードバック方式で、変動が大きなマイワシを管理できるはずがない。
img08052306.png

さらに、フィードバックをかけているのは、実漁獲ではなく、過剰に設定されたTACであることに注意が必要だ。当時の状況を整理すると、TAC38万トン、漁獲量13万トン、資源量26万トン、ABC2.4万トン(笑)だったわけだ。TACは、資源量の1.5倍、実漁獲量の3倍という、明らかに過剰な状態であった。すでに大幅に過剰なTACを10%削減しても何の効果もないことは明らかだろう。このときの資源量は26万トンしかないのだが、TACが26万トンまで減るのに4年もかかる。4年間も、獲りたいだけ獲れば、さらに資源状態は悪化するだろう。当時の漁獲量の13万トンまでTACが減るのは12年もかかる。12年間も漁獲にブレーキがかからない資源管理など、聞いたことがない。

当時の漁獲のもとで資源が減少していたのだから、実漁獲量を基準に漁獲枠を削減しなければ、フィードバック管理とは呼べない。前年の漁獲量の13万トンの1割減で、TACは11.7万トンにするとかいうなら、まだ話はわかる。漁業経営の観点からも、実際に13万トンしか獲っていないのだから、実漁獲ベースで考えるのが妥当だろう。

結論:当時のTACの算出方法はフィードバック方式とはとうてい呼べない。また、どのような方式であろうと、資源量を上回るような漁獲枠をだすような方法を正当化することはできない。

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