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新聞取材を受ける機会が増えた

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コメントを求められるのは、他に対応する人が国内にいなさそうなやばいネタばかり。
水産資源の現状を一般人にわかりやすく説明するのは、専門家としての義務だと思うので、
どのようなネタであろうとも、出来る限り対応していくつもりではある。
専門家としての義務を果たすことで、日本の水産業に良い影響を与えると思う。

日本近海の資源は酷い状態で、このままだと水産物の自給は困難になる。
そのことを国民に知ってもらったうえで、
次の2つの選択肢のどちらを選ぶかを考えて欲しい。
1)将来の水産物自給のために、国として漁業をサポートする
2)漁業が廃れるのを放置して、輸入に依存する
俺としては前者をえらんで、将来の食糧供給のために
国として、社会として、漁業をサポートするような方向に進んで欲しい。
その問題提起をするために、メディアの力を利用したい。

記者としては、漁業バッシングや水産庁バッシングみたいなトーンの記事が書きやすいのだろうが、
俺としては、漁業の窮状をサポートするための世論を高めるという意図で取材を受けている。
漁業のイメージを悪くするだけのバッシング系の記事には協力するつもりはない。
しかし、必ずしも俺の意図したような記事になるとは限らない。
取材の内容を切り張りした結果、本来の趣旨とは正反対のコメントが記事なり、
コメントをした本人がびっくりという例もある。
こういった事態を防ぐために、最終的な原稿をチェックさせてもらうことを、取材の条件としている。
この前取材を受けた新聞社は、内規で原稿を印刷できる形で渡すことはできないということで、
電話でコメントの最終チェックをすることになった。
この内規は取材を受けた後に聞いたので、「なんだかなぁ」という感じがする。
俺のコメントは水産庁を糾弾するようなノリになっていたので、
この内容だったら名前を使わないで欲しいと伝えたところ、
それでは全体を変更しましょうということになった。
電話では、細かい部分まで確認しきれない部分もあり、
自分が意図したような記事になってくれるのか、一抹の不安はある。
まあ、大丈夫だろうと思うけど、正直、記事が出てくるまではわからない。
また、記者が書いた原稿を、デスクが変更する新聞社もあるらしいし。
自分の名前(というより東大海洋研と言う肩書き)が
自分が意図しないような形で利用されてしまうリスクは常にある。

このリスクを避けるには取材を受けるのを止めれば良いのだが、
それでは専門家としての義務を全うできない。
日本の漁業にプラスになるような記事を書いてくれるなら、
今後もどんどん情報提供をしていきたい。
逆に、漁業=環境破壊というようなレッテル張りに利用されないように気を配る必要がある。
勉強している記者と話すとこちらも得るものが多いので、
取材自体は楽しいのだけど、いろいろと気を遣うことも多い。
試行錯誤でメディアとの付き合い方を学ぶ必要があるんだろうな。

Comments:4

県職員 06-12-19 (火) 10:00

私もわずかですが取材めいた物を受ける機会があったのですが,マスコミの方の中には思いこみの強い方が時々いますね。すごく勉強しよう!という姿勢で聴いてくる人もいれば,自分の思い描いているシナリオを裏付けるためのコメントばかり求めてくる人もいます。こういう人に対して,こちらが正確な情報を伝えようとすればする程,何か隠しているんではと思ってしまうようで,なかなか納得して頂けない場合がありますね。「行政=怪しい,隠蔽体質」という印象があるのはやむを得ないですけど。ニュースを見ていても,多分この人は1時間位取材を受けたんだろうなあとなんとなく感じられる場合でも,使われるコメントはたったのワンフレーズであったりとかしますよね。
マグロの報道は,トロが高くなるといった扇情的な報道から,少しずつ資源管理の不備などの根本的問題に焦点が当たってきているような気がします。頑張って下さい。

勝川 06-12-21 (木) 17:00

今まで取材を受けた範囲では、特に悪い印象はないです。
記者の方もそれぞれの視点でよく物事を見ているようで、
こちらとしても勉強させてもらう点が多々ありました。
ただ、勧善懲悪的な記事の方が読者にウケるので、
デスクとしてはそういうストーリーに仕上げたいというのがあります。
その結果、自分が言ってもいないコメントが出たりするわけです。
デスク好みのストーリーに合わせてコメントがねつ造される例は、
少し探せばいくらでも出てきます。
http://travel-lab.info/tech/pblog/article.php?id=76
記事の本文はともかく、自分のコメントに関しては、
最終的な内容を文字で確認したいですね。
コメントした本人に対して隠す必要は無いはずです。

beachmollusc 06-12-30 (土) 9:12

沖縄在住の間、サンゴ礁生物の専門家が少なかった頃にオニヒトデ問題などでマスコミから取材を受けていた経験では、新聞はともかく、テレビの方がニュースを「創出」する傾向が強いので困りました。担当記者が思い描いている「絵」に従って脚本を書くようです。それが上層部の意図に合致すればゴーサインという構図でしたね。専門家のコメントも編集で捻じ曲げることができますので、注意が必要です。

ここで述べられたように、新聞記者でも似たような傾向はあるようです。取材を受けた専門家が原稿のチェックをして意図的な歪曲を避けることは必須のことと思いますが、何で原稿を見せないんでしょうか。

新聞記者には複数の専門家からコメントや意見を聞き、クロスチェックしている人もいるようです。それが当たり前なんですが、マスコミの記者教育でそれが徹底していないようです。

勝川 07-01-01 (月) 4:17

メディアとの付き合い方は、悩ましいですね。
こちらの意図を正確に文章にしてくれるなら効果は絶大ですが、
逆に、自分の思ってもいないことを書かれると被害も甚大です。

本人に原稿を見せてはいけないなどという内規の存在は馬鹿げています。
正確な報道を目指すなら、しっかりと本人にチェックをさせるべきです。
この内規の存在は、恣意的にコメントの編集をするためとしか考えようがないです。
こういう条件の取材だと、ブログに毛が生えた程度の話しか出来ないのですね。

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