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獲り方を変えれば、魚の値段は上がる

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1992、1996、2003と3回の当たり年があった。
にもかかわらず、未成魚の乱獲で資源増加の芽を摘んでしまい、
マサバ太平洋系群の資源量は今も地を這うような低水準だ。

普通に考えたら、大きくしてから獲った方が儲かるような気がするが、
なんで、未成魚で獲りきってしまうのだろう?
マサバの未成魚はそれほど儲かるものなのだろうか?

マサバの年齢別の体重はこんな感じ。
資源評価票に数値が記載されていなかったので、90年代のデータを引っ張り出してきた。
(図だけじゃなくて、数値も載せてください>担当者殿)
saba08.png

サバは大きさによって、名称と用途が違う。
200g以下は、ジャミと呼ばれて、飼料になる。
200~400gは、塩干し・節・缶詰になる。
400~600gは、生鮮、しめさば、フィーレになる。
600g以上の大サバは、生鮮の高級品だ。

年齢別の個体の値段はこんな感じになる。
小サバは1尾3円だが、6歳になれば1尾1000円になる。
saba09.png

 

マサバをどういう段階で利用しているかを見てみよう。
2000から2005年の漁獲量を年齢別にまとめると、次のようになる。
saba10.png


飼料・缶詰にしかならない小さいサイズで獲りすぎて、
値段が上がってくる3歳以上は殆ど居ないのだ。

さて、漁獲個体数に個体単価をかけると、年齢別の漁業収益を計算できる。
漁獲尾数と漁業収益を基準化して比較してみよう。
saba11.png

0歳は漁獲尾数はべらぼうだが、収益には殆ど結びついていない。
一方、尾数としては少ない大型個体が収益の大きな割合を占めている。

たとえ、天の恵みで、小サバが大量に発生しても、
食用として需要があるサイズになる前に獲られてしまう。
「サバが豊漁」なはずなのに、スーパーの鮮魚コーナーは
ノルウェー産のサバに席巻されている理由はここにある。
日本の漁業者は、生鮮用として価値が上がるまでの数年を待てないで、
飼料にしかならないような小型のサバを我先にと獲ってしまう。
結果として、消費者が高く買う大型個体は国内では供給できない。
魚離れ?冗談じゃない。
漁業者が乱獲で資源をつぶした結果として、消費者には輸入品に頼らざるを得ないのだ。

また、サバは2歳で一部が成熟し、完全に成熟するのは3歳からだ。
ということで、0歳、1歳で大半を獲り尽くしてしまう漁業をしている限り、
永遠に資源量は低水準のままだ。

Comments:6

名乗るほどの者ではありません 07-06-08 (金) 12:30

初めまして.水産系の大学院生です.いつも楽しくブログを拝見させていただいております.毎度大変勉強させていただいています.
本エントリのタイトルは随分と強烈ですね.いかに漁業が無駄獲りをしてきたかがものすごくわかりやすく説明されているのですが,魚価の低下が単純に漁業生産の現場だけに責任があるという印象をうけるような表現は,どうも納得がいきませんでした.もちろん本件のサバのような顕著なケースでは,無駄獲りが最も大きな要因ではあるとは思いますが,魚価形成や消費は多くの要因が複雑に絡み合って出力されるものであると思います.エントリの内容自体には全く異論はなく,本当に正しいことを述べていると思いますが,煽動的なタイトルに少し違和感を覚えて恥ずかしながらコメントさせていただきました.これからもブログ楽しみにしております.

勝川 07-06-08 (金) 15:22

こんな感じでどうでしょう?

K 07-06-11 (月) 9:29

私も上記の方と同様の感想を感じましたので、今のタイトルのほうが良いと思います。
実際問題として、例えばこの間ロシアが生きたカニの輸出を禁ずると言っただけで、国内カニの値段が高騰したように、漁業者の努力や国内のとり方だけではなんともならん部分もあると思いますから、すべての漁業種の安値理由が漁業者の責任と読めるようなタイトルは控えるべきでしょう。
一つの魚種から出てきている結論は、一つの魚種に限るべきで、一般化するならば、それに加えてより広範囲なデータ解析を示したほうが良いと思います。

さば子 09-12-19 (土) 19:38

なんてすばらしい解析なのでしょうか。さきぼそる漁業資源の根髄ともいえるような分析です。勉強になります。このようにして、日本の川から海から、国産の天然のうなぎもなくなったのでしょう。ノルウェーさばに関しては、国を挙げて在日ノルウェー大使館内にシーフードセクションを設けての日本への売込みを加速させています。なぜ、日本のさば漁師の方々の価格・マーケテイング支援の機関がないのでしょうか。漁連・水産庁・都道府県自治体の水産課にがんばってほしいと思うのですが、あまりに巨体になりすぎて、少数精鋭とはいかないようです。

勝川 09-12-21 (月) 10:44

サバ子さん、初めまして。
こういう獲り方をしていたら、漁業が産業として成り立たないのは当然ですよね。残念ながら、サバだけでなく、イワシ、ブリ、クロマグロ、キチジ、トラフグ、スケトウダラなど、ほとんどの魚種がこれと近い状態にあります。

資源管理とマーケティングは、車輪の両輪です。ノルウェーのマーケティングが効果的なのは、資源管理をして良質な魚が安定供給できるからです。日本のようにジャミサバ主体で水揚げが不安定なら、いくら補助金をばらまいてマーケティングをしても、魚価は上がりようがないです。まずは、国、自治体、漁連が共同で資源管理に取り組むのが先決であり、魚価の向上は、その先の話でしょう。海外の事例を見ていると、質が高い魚を安定供給するだけで、魚価はかなり上がると思います。

県職員 09-12-24 (木) 18:02

サバ子様
農業では作りさえすれば売る物はいくらでも作れます。消費者ニーズをつかんで,それをどう売るかのウェイトが非常に高いので,農協の機能としてマーケティング等が早くから根付いていたのではないでしょうか。

一方で,漁業者は漁協にマーケティングや営業的機能を期待していなかったという側面があるかと思います。
一昔前なら,水産関係公務員や,漁協職員が漁業者に売り方や鮮度保持に頑張りましょうと言ったところで,そんなめんどくさいことするより,網を引きまくった方が収入になると言い返されるのがおちでした。
ただ,そういうマーケティング面の重要性にいち早く気づいた漁協は成功していたりします。
しかしながら,それまでの獲りすぎがたたって,売る魚そのものが減少してしまっているという事例も多く見られます。

同じ一次産業でありながら,農業者と漁業者は農耕民族と狩猟民族位違いますね。
資源管理をうまく行うことによって,漁業者も緩い意味での農耕民族にはなれると思います。

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