7月の水産学会誌の巻末に、特集「マイワシ資源の変動と利用」が掲載されました。
この特集は大変な難産で、企画の段階から苦労しました。
苦労した甲斐があって、良いものができました。
執筆者の皆様に、暑く御礼を申し上げます。
まだ、読んでいない方は、是非、目を通してください。
「長期的な環境変動の影響で、マイワシ獲らなくても減る」というのが通説であり、
俺も最初はその通説を鵜呑みにしていた。
データは公開されていなかったので、しょうがないんだけど。
最近になって、資源評価票が公開されるようになって、データをみてビックリ。
獲らなくてもへるどころか、生産力はかなり高いじゃないか。
マイワシは主に海洋環境との関係から、研究が進められてきた。
日本で最も研究が進んでいる資源かもしれない。
しかし、マイワシの研究において、漁業の影響は無視されてきた。
「マイワシの資源量が減っているのは、環境要因が原因である」という前提にたって、
減少を海洋環境で説明しようとしているのだ。
日本近海のマイワシは、海洋環境と漁業という2つの要因の影響を強く受けている。
2つの要因を組み合わせないと変動の全体像は見えてこないはずだ。
年間の漁獲率が50%近いのに、漁業の影響を無視して、動態を説明できるはずがない。
環境と漁業の両面からマイワシの変動を理解する必要があるだろう。
そのための最初の一歩として、この特集を企画したのです。
「第Ⅰ部.マイワシの資源動態」では、研究者にレビューを書いてもらった。
Ⅰ-1.マイワシ資源の増加過程
黒田一紀(元東海区水研)
Ⅰ-2.マイワシ資源減少過程の2つの局面
渡邊良朗(東大海洋研)
Ⅰ-3.気候変動からマイワシ資源変動に至る
生物過程 髙須賀明典(水研セ中央水研)
Ⅰ-4.マイワシ資源への漁獲の影響
勝川俊雄(東大海洋研)
漁海況研究のパイオニアの黒田一紀さんに、70年代のマイワシ増加期の状況をまとめていただいた。
次に、詳細なフィールドワークで、89-91のマイワシの減少要因をつきとめた渡邊先生に当時の状況をまとめていただいた。
それから、新進気鋭の若手研究者の高須賀君に、海洋環境とマイワシの変動に関する研究を新しいところまでフォローしてもらう。
そして、俺がマイワシの資源への漁獲の影響をまとめる。
第1部を読めば、マイワシの歴史と研究の現状が俯瞰できてしまう。
実に隙のない構成だ。
「第Ⅱ部.マイワシ漁業の展望」では、
今後のマイワシ漁業および資源管理はどうあるべきかを関係者に書いてもらった。
行政、研究者、漁業団体、加工業者など、幅広い人選を心がけた。
みんなが好き勝手なことを言っていて、全くまとまっていないのが良くわかる。
かみ合わない部分も含めて、意見の多様性を楽しんでください。
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