- 2010-08-20 (金) 13:15
- 日記
日本近海の水産資源の減少に歯止めがかからない。資源減少の主要因は、大型巻き網船による過剰漁獲である。最新の魚群探知機・ソナーを導入し、網を大型化した、現在の巻き網船は、自然の生産力を遙かに上回る漁獲能力を備えている。過剰な漁獲能力をもてあまし、少なくなった魚群を、巻き網船同士で奪い合う状況が続いている。
日本の小型浮魚類の漁獲量(トン)↓
巻き網漁業の主な漁獲対象であるアジ、サバ、イワシは、総じて資源状態が悪い。97年から2007年の10年間に大型巻き網船によるこれらの漁獲量は、100万トンから、45万トンに減少している。絶 え間ない技術革新によって、漁獲効率が格段に高まっているにもかかわらず、漁獲量が半減しているのである。
90年代以降、漁獲に占める小型魚の割合が増えている。巻き網船団は、魚群探知機メーカーと共同で、稚魚の群れがよく見える高性能のソナーを開発し、今まで獲っていなかったサイズの小型魚に狙いを定めのである。その結果、卵の生き残りが良い当たり年の年級群も、成熟前に獲り尽くされてしまう事例が後を絶たない。去年の年末に、150g未満のサバ0歳魚が、銚子で大量に水揚げされた。今年7月には、境港で20gの超小型アジが連日200トン以上水揚げされている。単価は30~40円であった。下の図を見れば解るように、以前は親と一緒に未成魚も漁獲していたのだが、90年代以降は未成魚への漁獲圧が高まり、ほとんど親がいない状態が続いている。
アジ、サバ、イワシを獲り尽くしたまき網船は、それまで、主な漁獲対象ではなかったブリやクロマグロを狙って操業するようになった。下の図は、大中まきによるこれらの魚種の漁獲量だが、直線的に増えていることがわかる。。ブリやクロマグロはアジ・サバ・イワシと比べれば、資源量も少なく、生産力も低い。無規制なまま、巻き網漁業に晒されれば、減少するだろう。伝統的にこれらの魚種で生計を立ててきた定置網漁業者や一本釣り漁業者の生活を破壊しかねない。
今、必要な事は、漁獲圧を削減し、アジ・サバ・イワシ資源の回復を待つことである。しかし、現在の巻き網の経営状況では、漁獲を控えるのはむずかしい。このまま放置しておけば、資源を枯渇させて、他の漁業を巻き添えに自滅をするのは時間の問題である。公的資金で、適正な規模まで、減船をしなくてはならない。
残念ながら、日本の漁業政策は、逆の方向に向かっている。2007年から、「もうかる漁業創設支援事業」という名のもとに、公的資金による、まき網漁船の大型化が進められている。(http://www.suisankai.or.jp/gyogyou/shincyoku-100310.pdf)。日本近海の浮魚資源は総じて低水準であり、なおかつ、国による漁獲規制は無いも同然。この状態で、公的資金によるまき網船の大型化をしても、長い目で見て誰も得をしないだろう。
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