卓越年級群を未成熟のうちに取り尽くしたことがわかって、
「まあ大変」という状況で、俺が北海道に呼ばれたのだった。
その時点では、資源的にはまだ間に合ったが、漁業的には手遅れだったと思う。
この資源は90年代から減り始めたが、
漁獲量の削減が真剣に議論されるのは、ほんの数年前。
誰の目から見ても資源の枯渇が明らかになってからである。
この状態になると、漁業経営は苦しくなっており、
漁獲を控えめに減らすのはすでにできない相談である。
年収800万が400万になるのと、
年収400万が200万になるのでは、話がぜんぜん違う。
すでに厳しい状況でさらに減らすというのは無理だろう。
資源が減れば減るほど、漁業者から漁獲枠を上げるようにプレッシャーが強まり、
TACはABCから乖離していく。
研究者もまた、ABCを増やすことで、漁業者に迎合してきた。
スケトウダラ日本海北部系群の管理目標は、毎年、下方修正されている。
平16年度:2014年度の親魚量が184千トンを上回る
平17年度:2021年度の親魚量が184千トンを上回る
平18年度:2026年度の親魚量が 85千トンを上回る
平19年度:2027年度の親魚量が 55千トンを上回る
管理目標を下方修正すれば、当面のABCを水増しできる。
その年の合意形成はやりやすくなるかもしれないが、
資源状態が悪化するほど、高い漁獲率を許すのは資源管理ではない。
平成17年から平成18年にかけて大幅な目標修正があった。
管理目標が資源回復ではなく現状維持に変わったのだ。
資源が良い状態に回復したなら、現状維持に目標を変えても良いかもしれないが、
資源が減っている中で目標を現状維持に変えるのは好ましくない。
また、資源管理に一貫性をもたせるためには、平成19年度の管理目標は、
平成18年度の目標(2026年度当初のSSBが85千トンを上回る)をそのまま利用すべきである。
資源が減ればそれだけ目標水準を減らしていたら、いつまでたっても漁獲にブレーキはかからない。
このように資源が減るたびに目標を下方修正していけば、
一見、管理をしているように見えて、資源はどこまでもずるずる減っていく。
前に進んでいるように見えて、後ろに進むムーンウォークのようなものである。
(やっぱり、マイケルの動きはキレがちがうね!)
この資源を持続的に利用するうえでの本当の勝負所は、90年代中頃だっただろう。
卓越がでなくて、資源が減ってきたことは実感としてあったと思う。
この時代には、まだがんばれば獲れたが、ここで漁獲量を減らすべきだった。
がんばっても獲れなくなってからでは遅いのだ。
そして、1998年級群を未成熟で獲らずに産卵をさせていたら、
今頃、全く違う展開になっていただろう。
スケトウダラ北部日本海系群は獲らなくても減るような資源ではない。
適切な時期に適切な漁獲量まで減らしていたら、今後も持続的に利用できたはずだ。
産・官・学が強固なスクラムを組んで、問題を先送りすることで、
雪だるま式に問題を深刻化させて、
ついには解決不可能にしてしまったのである。
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