- 2007-11-06 (火) 0:25
- その他
捕鯨に対しては多種多様な考え方がある。
クジラは漁業の邪魔をするから駆除すべきだと思っている人もいれば、
クジラは人間の友達だから食べるなんてとんでもないと考える人もいる。
捕鯨運動および反捕鯨運動の両者は、形而上学(宗教)の域に達しており、
話し合うだけ時間の無駄だろう。
IWC総会では、双方が自らの主張を繰り返すだけで全く議論がかみ合っていない。
IWCでいくら議論を重ねたところで、
英米豪が「ごめんなさい、捕鯨をしても良いです」なんて言うわけない。
RMPができる前は「捕鯨には科学的根拠が無い」とか言っておいて、
いざ科学者委員が捕鯨可能という結論を出したとたんに、
あれこれ難癖をつけて科学者委員会の助言を無視をするのである。
最初に結論ありきで、都合がよいときだけ「科学的な根拠」を盾にとり、
都合が悪くなすとさくっと無視する。
水産庁が国内のTAC制度でやっていることと同じである。
日本はIWCで多数派工作をして、捕鯨再開を目指しているようだが、
この線での勝利は望み薄である。
IWCは外交と国際政治力の場所であり、完全に英米が主導権を握っている。
外交力で圧倒的に劣る日本が、そこで勝つのは至難の業である。
下関では惜しいところまで行ったかもしれないが、そこが限界だろう。
向こうが本気で危機感を感じた場合、
政治力を駆使して日本のキーマンを外すことだって可能なのである。
IWCの中でいくらがんばっても、事態は動きそうにない。
追い詰められた日本代表団は、IWC脱退を示唆する発言をした。
IWCは、仮にも国際条約である。
「都合が悪いから脱退して好き勝手やりますよ」なんてことをしたら、
どれほど国際的な非難にさらされるかわからない。
日本は貿易でもっているような国であり、国際協調と信用が重要なのだ。
どうみても、IWC脱退は国益全体からはマイナスである。
IWCを脱退して商業捕鯨を再開するというのは、
日本にとってあり得ない選択であり、脅しにもならない。
むしろ、「もう打つ手がありません」と自ら白状しているようなものだ。
確かに、IWCという枠の中だけで物事を見ていると、事態の打開は難しいだろう。
しかし、実は、今まさに、商業捕鯨再開の決定的なチャンスが到来している。
にもかかわらず、千載一遇のチャンスを逃してしまいそうである。
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Comments:2
- david 07-11-26 (月) 17:10
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ほとんど賛成しますが、
> 「都合が悪いから脱退して好き勝手やりますよ」
ここから賛成できません。
捕鯨を管理する国際条約なのに、捕鯨を禁止する国際条約に代えようとしている国がいるわけです。
そもそも、その条約の内容に賛成した上で加盟すべきものです。捕鯨容認国とうまく調整しておいて、「日本の選択が理解できます」といった発表をしてくれれば国際的な独立のイメージを避けることができるのではないか。不買運動などについて心配することがないと思います。アイスランドは最近いろいろ批判されたが、今年アイスランドの経済に悪影響は見えず、観光客の数が丈夫に伸びているそうです。日本にとって捕鯨自体がそれほど重要なもんじゃないことと同じように、海外でもそうです。反捕鯨国の政策は、「クジラを守る」のではなくて、「反捕鯨スタンスと(もうほとんど意味がない)モラトリアムを守る」ことです。日本は既に捕鯨を行っているわけで、IWCから脱退して捕鯨を行っていても何も変わらないと思います。一時的な噴出だけだと思います。
それに、脱退すべきでないことについて賛成です。条約そのものが悪いわけではなくて、他の加盟国の対応が問題ですから、それについてことなんとかしないといけないわけですね。
脱退するのであれば、一つの選択肢がアイスランドと同じように一時的に脱退して、後ほど再加盟して、一時停止のはずだった「モラトリアム」に申し出を立て直せばいいのかなと思います。
- 勝川 07-12-03 (月) 12:02
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私も捕鯨国が正しいというつもりは毛頭ありません。
たしかに反捕鯨国の言っていることもやっていることも変です。
ただ、世界の多くの国で捕鯨に対する経済的インセンティブが失われた中で、
捕鯨を続けていくためには、そういう国ともつきあっていく必要があります。
「落としどころ」を設定した上で、現実的な対応をしなければならない。
わざわざ南氷洋でザトウクジラを獲って、
反捕鯨国の神経を逆なでする必要は無いでしょうに。
こんなことをしているから、まとまる話もまとまりません。「落としどころ」という思想は日本外交のアキレス腱であり、
一切の妥協を拒んで自滅するのがお家芸です。>脱退するのであれば、一つの選択肢がアイスランドと同じように一時的に脱退して、
>後ほど再加盟して、一時停止のはずだった「モラトリアム」に申し出を
>立て直せばいいのかなと思います。再加入の明確な基準を示した上で、戦術的に一時脱退するのは、
強力なカードですが、使い方を間違えると自爆になります。
現在の日本の捕鯨陣営が国際交渉力が要求される局面を乗り切れるかは疑問です。
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