商業捕鯨を再開するための最短ルート

日本が商業捕鯨を再開するには、
多くの国が捕鯨をやりたいと思うような状況を作ればよい。
それが現状では唯一の方法である。
幸いなことに、アングロサクソン以外ではクジラ原理主義は少数である。
世界のマジョリティーは「絶滅のおそれがあるならモラトリアムにすべきだが、
持続的に利用できるならほどほどに食べても良いだろう」と思っている。
このマジョリティーを味方につければ、捕鯨再開への道は開けるはずだ。

アングロサクソン以外の反捕鯨国が、なぜ捕鯨に反対かを考えてみよう。
反捕鯨には、生態系に配慮をしているというポーズができるというメリットがある。
一方で、今は、ほとんどの国が捕鯨に経済的なメリットを感じていない。
「まあ、反捕鯨をしておくか、そっちの方がかっこいいし」という程度の反対だろう。
もし、捕鯨はビジネスとして儲かるということになれば、
そこに参入したいと思う国は山ほど出てくるだろう。

捕鯨が儲かる産業であるということを示せば、
IWCの勢力図はひっくり返り商業捕鯨再開への道は開ける。
逆に、捕鯨が儲からないとなれば、わざわざ捕鯨に賛成する国は無くなるだろう。
今は、ほとんどの国が捕鯨で儲けられるとは思っていない。
そういう状況で金をばらまいて多数派工作をするより、捕鯨が銭になると示すことが重要なのだ

そのための千載一遇のチャンスが到来した。
アイスランドとノルウェーの商業捕鯨再開である。
これらの2国は商業捕鯨モラトリアムを留保しているので合法的に捕鯨ができる。
日本がアイスランドとノルウェーから鯨肉を輸入しても、誰も文句は言えないのである。
日本がノルウェー、アイスランドから鯨肉を買いまくれば、
絶対に他の国も捕鯨容認・賛成に回るだろう。
そうなればIWCでのモラトリアムの廃止は時間の問題である。
現在、世界中で崩壊の危機に瀕しているマグロも、
20年まえまでは、日本人だけがありがたがっていたのである。
他の国では、スポーツフィッシングか缶詰ぐらいしか用途がない安い魚だった。
日本人が買い続けたことで、世界の国が競って獲るようになった。
鯨でだって、同じことがおこるはずである。

アイスランド・ノルウェーの商業捕鯨は、日本をターゲットにしている。
「鯨食は日本の文化で、日本には需要がある」と常々日本が主張していたから、
アイスランドは一部の国の強硬な反対を押し切って捕鯨を再開したのである。
にもかかわらず、日本は門戸を閉じて鯨肉を輸入しなかった。
アイスランドからしてみれば、はしごを外された格好である。
結果として、アイスランドは捕鯨から撤退した。
いっこうに市場を開放しない日本に業を煮やして、
もうすぐ、ノルウェーの漁業大臣が来日するらしい。
もし、アイスランドと同じようにノルウェーまで撤退したら、
「商業捕鯨は金にならない→反捕鯨でイメージアップをした方がよい」
というメッセージを世界中に送ることになる。
ノルウェー、アイスランドは、捕鯨のノウハウもある漁業国である。
そういう国でさえ商業捕鯨から撤退してしまったら、
新規に捕鯨を始めようという国などでてくるはずがない。

せっかく、棚ぼたで商業捕鯨への扉を開くビッグチャンス到来なのだが、
日本はマーケットを閉じることでその道を自ら閉ざそうとしている。
なぜ、日本は合法的な商業捕鯨で獲られた鯨肉を輸入しないのだろうか?

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商業捕鯨を再開するための最短ルート への8件のフィードバック

  1. si のコメント:

    日本がアイスランドから鯨を買わないのは、その1で勝川さんがいわれたように「仮にも国際条約」のIWCを無視して獲られた鯨を買うと「それこそどんな国際的非難を浴びるかわからない」からでは。
    調査捕鯨ですでに十分批判は受けてるんだから、多少批判が増えようがたいしたことじゃないと思うんですけどね。
    要は、政府が本気で鯨を食料にしたいと思っていないってことなんでしょう。

  2. ある水産関係者 のコメント:

    まず、法的な問題から日本がノルウェーやアイスランドの鯨肉を買い付ける行為は、便宜置籍国のマグロを買い付ける行為と五十歩百歩になると思います。それをIWC加盟国でもある日本が率先するのは立場上難しいでしょう。

     「捕鯨が儲かる産業」になるには、まずはアングロサクソンの「捕鯨アレルギー」を消し去ることが絶対条件であり、それなくしては、例え日本がノルウェーやアイスランドから鯨肉を買いまくっても実現しません。その理由は、「その他の国々」も日本とカリブ諸国の関係と同様、アングロサクソンに金玉を握られているからです。
     では、アングロサクソンの「捕鯨アレルギー」が消えるか否かは、クジラの殺戮が「彼らの生命維持」のために必要不可欠な存在になる必要があり、現状では可能性が極めて低いでしょう。

     鯨肉消費が今後日本市場ほかで拡大するか否かについては、まずは食品安全性の問題、特に、ダイオキシン等について、透明性を持って十分な安全性を証明する必要があります。さらに、鯨肉普及には、価格を下げることが不可欠です。果たして、十分な資源管理コストを上乗せさせた価格で消費者の購買意欲をそそることが出来るかどうか、大いに疑問に思います。

     これらのことか、基本的に、商業捕鯨を復活させる必要性には大いに疑問を感じますが、調査捕鯨についても、500億円とも900億円とも言われるODAその他の税金を投入してまで継続させるのは如何なものでしょうか。特に、南氷洋の調査捕鯨は、大本営の利権確保が大きな目的となり、強引に続けるように仕向けられている気がしてなりません。これは日鯨研の面々や鯨肉販売のプロセスにおける大本営の関与等を見れば明らかでしょう。
     ここで考えてみてください。日本が沿岸資源評価に費やしている金額はいくらでしょうか? たかだか年間30億円とか50億円だったと思います。これに500億円とか900億円が上乗せ出来ておれば、一体どれだけ充実した資源評価が可能だったか。クジラと200海里資源と、どちらの優先順位が高いかは言うまでもないでしょう。500億円や900億円は大金です。それを無駄遣いする大本営は社会保険庁と同じレベルでしょう。

     あるクジラ関係者曰く、IWCに関する大本営の最大の失敗は、参謀同士の権力闘争の結果、最も優秀な参謀を失ってしまったこと、だそうです。もっとも、失った参謀にも問題がなかった訳ではないのでしょうが、残った参謀が「日本流」のやり方で、国際会議の場で、単に「国内向け」のプロパガンダ宜しく脱退をちらつかせたのは、世界中に自らの「国際センス」=ゼロと自らの無能さをアピールしたのと同じ。あれは見苦しい以外の何者でもなかった気がします。
     これだけ税金が無駄遣いされた上、さらに某国へ工作経費が使われ続けているという話も聞こえてきます。これでは真面目に税金を払っている国民が浮かばれません。

     最後に一言、日本が捕鯨を生き残らせる唯一の道は、IWCを脱退した上で厳格な資源管理を行いつつ、200海里の中で沿岸捕鯨を行うことだと思います。南氷洋調査捕鯨は巨額な無駄金(ODA)が要求されるし、大本営の役人に利権を与えるだけ。国民へのメリットは費用対効果ほど期待できません。尤も、沿岸捕鯨業者が採算性などを理由に厳格な資源管理を拒むようなら続ける必要はありません。また、税金を使うのも言語道断です。
     むしろ、透明性を確保しつつ、地道に資源を管理しながらノルウェーやアイスランドのように沿岸捕鯨に従事する方が、捕鯨地域も潤うし世界中の理解が得られやすいと思います。世の中、民主党みたいに何が起こるかわかりません。将来、IWCへの復帰、及び日本の復権も可能性が全くないとは言えないでしょう。
     もちろん、IWCを脱退せずにそれが実現すればなお結構でしょうが、それには失った参謀のように優秀なネゴシエーターを抱えることが不可欠です。だけど、感情的な権力闘争に明け暮れて優秀な人材を失うような組織では、どっかのボス猿が支配する猿山と同じで、そんな器は期待できない気がします。

  3. 勝川 のコメント:

    siさん
    >調査捕鯨ですでに十分批判は受けてるんだから、
    >多少批判が増えようがたいしたことじゃないと思うんですけどね。
    輸入をすれば、調査捕鯨は成り立たなくなります。
    だから、調査捕鯨の代わりに輸入をすると言うことにすれば、
    批判は多少減ると思います。

    >要は、政府が本気で鯨を食料にしたいと思っていないってことなんでしょう。
    これにつきると思います、
    やるなら、もっと真面目にやれと思います。

    ある水産関係者さん

    >まず、法的な問題から日本がノルウェーやアイスランドの鯨肉を買い付ける行為は、
    >便宜置籍国のマグロを買い付ける行為と五十歩百歩になると思います。
    >それをIWC加盟国でもある日本が率先するのは立場上難しいでしょう。

    ノルウェーもアイスランドもIWC加盟国で、
    留保によって捕鯨の権利を持っているはずです。
    調査捕鯨をやめて、これらの国からの輸入に切り替えた方が、
    国際的な受けは良いと思うのですが、どうでしょうか。

    >まずは食品安全性の問題、特に、ダイオキシン等について、
    >透明性を持って十分な安全性を証明する必要があります。
    >さらに、鯨肉普及には、価格を下げることが不可欠です。

    安全性の問題なら、日本サイドもちゃんと言うはずです。
    日本サイドの歯切れの悪さから見て、
    安全性は、根本的な問題ではないと考えます。
    価格に関しては、1kg千円は切るでしょう。
    日本の調査捕鯨利権は間違いなく吹き飛びますね。

    >調査捕鯨についても、500億円とも900億円とも言われる
    >ODAその他の税金を投入してまで継続させるのは如何なものでしょうか。

    捕鯨再開までに必要な経費を明確にした上で、
    捕鯨が日本に必要かどうかを議論する必要があるでしょう。
    そう言うことを全てうやむやにして、
    「捕鯨に反対するのは非国民」みたいな雰囲気を作ろうとしているように見えます。

    > 最後に一言、日本が捕鯨を生き残らせる唯一の道は、
    >IWCを脱退した上で厳格な資源管理を行いつつ、
    >200海里の中で沿岸捕鯨を行うことだと思います。

    一連の記事を書いているうちに、私もそんな気がしてきました。
    国際的な場所で難しい舵取りをしていくのは大本営には無理ですね。
    行き詰まって、自暴自棄になるのは目に見えているので、止めた方がよい。
    ただ、沿岸捕鯨で厳格な管理ができるかは疑問です。
    漁業者の鯨類への恨みは根深いですから
    「魚を食べる害獣を駆除する」とか言って、歯止めが掛からなそう。
    沿岸の水産資源の低迷の原因は乱獲であって、ほとんど逆恨みだと思いますが・・・

  4. david のコメント:

    日本の捕鯨関係者が商業捕鯨をやってはいけないのに、鯨肉をアイスランドなどから輸入すれば、彼らどう思うのでしょうか。アイスランドの鯨肉を輸入することはまだ交渉が続いていると聞いていますが、国内の市場参加者も考慮しないといけないのではないでしょうか。確かに人数少ないでしょうが、日本政府の政策はまず彼らのためでなければならないと思います。

    そうしたら調査捕鯨の費用が賄えなくなるという説もありますが、アイスランドが在庫に持っている量はまだまだ少ない。200トンとか。日本の市場では現在年間9000トンくらい出回っているようです。最初は値段にはそれほどの影響ないはずだと思います。ナガスクジラを大量に捕獲し始めたら話は別ですが、貿易交渉の中でその話もできるのではないかと思います。

  5. 勝川 のコメント:

    >国内の市場参加者も考慮しないといけないのではないでしょうか。
    >確かに人数少ないでしょうが、
    >日本政府の政策はまず彼らのためでなければならないと思います。

    日本がモラトリアムに留保していない以上、
    日本が最初に商業捕鯨を再開というのは現実的ではないでしょう。
    寧ろ、アイスランドの捕鯨をサポートした方が、
    結果として日本の捕鯨再開に繋がるでしょう。

    調査捕鯨やIWCの工作には多額のODAがつぎ込まれています。
    捕鯨関係者のみならず、他のTax Payerのことも考えて欲しいものです。
    捕鯨再開への最短ルートは何かをきちんと考えた上で、
    合理的に行動してもらいたいです。
    今のまま、挑発行為を繰り返しても事態は変わらず、
    全てが無駄金になるでしょう。

  6. 迎合コメントがお好きなのですね。 のコメント:

    「調査捕鯨利権」とか言葉を安易に使うのは、世間知らずな人の理屈ではありませんかね。

    世の中の商売には一切利権が無いのですか? むしろ商業行為に利権があるのは何ら不自然ではありませんよね。
    あなたの主張の通りならば屠畜場も公共設備で、職員は公務員ですから何かの利権があるのでしょうか。
    利権があるのはいけないので、屠畜場も閉鎖すべきですね。

    そう言えば大学にすら利権がありますね。
    科研費を真っ先に振り分けられるのは何処の大学でしょうか。では、一番科研費を割り当てられて
    一番論文を発表しているのでしょうか? 一番引用されているのでしょうか?
    TAX PLAYERに対して説明できない、とはこういう事ではないでしょうか。

    研究者なら研究成果で主張すればよいのに、小賢しいレトリックに奔走するのは本業がおろそかなせいでは
    ありませんか?

    http://suisantaikoku.cocolog-nifty.com/genyounissi/2007/02/post_85d5.html
     私の主張をしても勝川俊雄氏の所属する東京大学海洋研究所の研究発表や河合智康氏の功績を見る限り、
    水産庁がイワシを減らしたのではなく、環境の変動がイワシの激減を招いたのであるといわざるを得ません

  7. 勝川 のコメント:

    本文を理解した上で、ちゃんと議論をできる人からの批判的なコメントはウェルカムです。

    この文章を要約すると
    「調査捕鯨は捕鯨再開に役に立たないんだから、無駄金を使うのをやめろ」
    ということです。
    議論をするつもりがあるなら、
    「調査捕鯨が捕鯨再開に役に立つので、投資の価値は十分にある」
    ということを示せば良いのです。
    読んだ人が「ああなるほど、調査捕鯨は良いもんだな」と思えばあなたの勝ちです。
    これが議論というものです。

    一方、あなたのコメントは「利権」という単語に言いがかりをつけているだけです。
    その言いがかりにしても支離滅裂で、理解不可能です。

    >「調査捕鯨利権」とか言葉を安易に使うのは、世間知らずな人の理屈ではありませんかね。

    とありますが、ご自分で次のように書いておられる。

    >世の中の商売には一切利権が無いのですか? 
    >むしろ商業行為に利権があるのは何ら不自然ではありませんよね。

    ご指摘のように、利権はどこの世界にもあります。
    だったら、「調査捕鯨利権」という単語に過剰反応しなくても良いのでは?

    あなたの頭の中では、私が「利権がある団体は全てつぶせ」と
    主張したことになっているようですが、
    どうしてそういう思いこみができるのか理解に苦しみます。

    「利権自体が悪い」とはどこにも書いていない。
    「調査捕鯨は利権だから悪い」と言っているのではなく、
    「調査捕鯨は役に立たないどころか、捕鯨再開に悪影響がある」と主張しているのです。
    この違いがわかりますか?

    書いてもないことで、他人を非難するのはどうかと思います。
    勝手に問題をでっち上げて、それを非難するというのは、
    あなたの大好きな朝日新聞が教科書書き換えや珊瑚KYでやったことと同じですね。
    まあ、朝日新聞が確信犯なのに対して、あなたは単に読解力がなくて、
    思いこみが激しいだけだと思いますが、やっていることは同じですよ。

    >研究者なら研究成果で主張すればよいのに、
    >小賢しいレトリックに奔走するのは本業がおろそかなせいではありませんか?

    水産政策に関して、専門家としてつっこみを入れるのも立派な本業ですが、何か?

    >科研費を真っ先に振り分けられるのは何処の大学でしょうか。では、一番科研費を割り当てられて
    >一番論文を発表しているのでしょうか? 一番引用されているのでしょうか?
    >TAX PLAYERに対して説明できない、とはこういう事ではないでしょうか。

    宣伝をしておきますが、東大の大学としての評価は日本一ですよ。
    http://www.ut-life.net/guide/research/rank.php

    TAX PLAYERはいったい、どのようなPLAYERでしょうか?
    世間知らずな私に教えていただけると幸いです。

  8. なまず静岡 のコメント:

    クロマグロ問題を調べていたらあなたのサイトに辿り着きました。  マグロ、捕鯨、双方の問題に対するあなたのスタンスに大方賛成いたします。 私は9年間に及ぶ在米期間を含めて28年間の人生中ずっと日本の捕鯨に賛成してきました。 鯨食は我が国の誇りべき文化だと思ってきましたし、クジラの生息数が増加傾向にあると言う主張も信じてまいりました。 
    しかし、去年に帰国してからふと気づきました、日鯨研が日本国民に偽った情報を伝えていないという保障は無いんだと。 もちろん私はクジラ至上主義には反対しますし、反捕鯨に回った分けでもありません。 ただどれだけの「調査」が行われているのかも不明ですし、わざわざ南氷洋まで下して絶滅危惧種のザトウクジラまでを捕獲して「食文化」を謳うのもどうかと思うのです。それに900億もの税金が投入されている事にも納得がいきません。捕鯨推進派のC.W ニコルさんも最近は「日本の調査捕鯨を全面的に支持することはできない」と仰っておられますし。
    マグロ中毒にしたってもはや伝統の域を逸脱していますね。確かマグロは従来、油こさと腐りやすさから「漬け」以外ではそれほど珍重されず、終戦後に外食文化が日本に入ってきてから受け入れられるようになったと聞いております。ここ数十年の傾向を文化と言うのには疑問を隠せません。
    そんなに食文化を大事にしたいのであれば、もっと国民に米食を進め、減反政策を撤去するべきです。そして稲作を昔ながらの方法で進め、そこで採れるタニシやドジョウも頂く。 そして近海漁業に力を入れ、捨てられてしまうゴマサバやアオヤガラなどの魚を見直す。それこそ日本の本来の食文化ではないかと思う今日この頃です。
    僕は専門家ではないので間違っている部分があることも承知しておりますので、どうかご了承を。

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