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失敗を認めることが最大の防御

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我々はスケトウダラ日本海北部系群を守ることに失敗した。
しかし、その失敗の原因を追及し、対策を講じることで、次のステップへと進みつつある。
1998年級群の過大推定という苦い経験から、漁業とは独立な若齢魚の調査を充実させた。
これによって、漁獲開始までに、年級群の大まかな量が把握できるようになった。
また、資源が減少しきってから漁獲にブレーキをかけるだけの力は我々研究者にはないことも判明した。
そこで、資源が減りきる前に警鐘を鳴らせるように、合意形成のあり方を見直している。
日本海北部系群と同じ失敗は繰り返さないように全力を尽くしている。

我々の資源評価の歴史は、まだ始まったばかりであり、資源評価のノウハウはほとんどない。
今後も、様々な失敗をすることは避けられないだろう。
その失敗と真摯に向き合うことで、資源評価を磨いていくしかないのだ。
1)失敗を認める
2)失敗の原因を特定する
3)同じ失敗を繰り返さないように対策を講じる

この1から3のステップを、外部にオープンに行うことが組織防衛の最良の手段である。

一連の不祥事で様々な企業が袋だたきにあっているが、
国民は不祥事よりも、それを隠してごまかそうとしたことに憤っている。
たとえば、どんな企業であれ、製造業ならリコールはあり得る話である。
ある会社が製品をリコールしたからと言って、バッシングをされたりはしない。
リコールすべきことを知りながら、それを隠して、ごまかそうとした場合に、袋だたきにされるのだ。

資源評価も同じことである。
科学には限界があり、我々が常に正しい資源評価をできるわけではない。
それは、少し考えれば誰にでもわかることであり、
専門家が失敗を認めて、それに向き合っていく姿勢を示せば、有権者の理解は得られるだろう
未だに、失敗を認めたら権威が失われると勘違いしている専門家がいるのは、失笑ものである。
確かに専門家の権威を前面に出して、素人の目をごまかすことは可能ではあるが、
見る人が見れば、この手の嘘は一目瞭然なのだ。
高度な専門知識を持った人間がつっこみを入れだしたら、たちまち窮地に立たされ、逃げ場はない。
このことを、一部の人間は痛いほど実感しているはずである。

去年、ブロック会議が揉めたのも、このあたりの思想の違いが根底にある。
管理課は失敗については一切書かないことで、外部からの批判の芽を摘もうとした。
失敗を隠蔽すれば、数年は安泰かもしれないが、ばれたときにただではすまされない。
腹を切るのは水研の担当者だろうから、管理課的には知ったこっちゃ無いのかもしれない。
また、失敗をうやむやにし続ければ、太平洋系群でも日本海北部系群と同じ過ちを繰り返すだろう。
一方、俺は、失敗についてきちんと認めて、対策を明記することで、批判の芽を摘もうとした。
失敗と向き合うプロセスをしっかりと公開していくことで、
資源評価が改善されるばかりでなく、社会の批判からも守られるのである。

俺は北海道ブロックの資源評価が、自らの失敗を率直に認めた上で、
原因と対策についてオープンに話し合えるような場であって欲しいと願っている。
まだまだ不十分な点は多いが、全体としては良い方向に向かっていると思うし、
その中で自分が重要な役割を果たせたことを誇りに思う。

ただ、一つお小言を言わせてもらうと、
俺は水試が出してくる「ここだけの丸秘情報」というのが、実に気に食わない。
資料に残せないような情報でABCを決めたら、部外者に説明しようがないじゃないか。
後で、資源評価の結果が問題になったときに、説明責任が果たせなければ、
ボコボコにたたかれても仕方がないだろう。
安全のために、資源評価票に書けないような情報は使わない方が良い。
資源評価に必要な情報であれば、公開できるように手を尽くしてほしい。
それが、資源評価の信頼を高めて、自らを守る最良の方法なのである。

何でも隠しておけば安心という時代は終わった。
これからは、オープンにしておくことが最大の防御なのである。
このことを水産業界の人間は全然わかっていない。
今のまま何でも隠しておけば安心と思っていると、
社会保険庁のように袋だたきにされる日がやがて来るだろう。
Xデーはそう遠くないよ。

Comments:5

ある水産関係者 07-11-03 (土) 10:10

大本営が一度痛い目に遭わないと風向きは変わらないですね。
 正に「××は経験に学ぶ」だと思います。大本営のガードが堅いのと、社会保険庁の年金や厚労省の薬害のように国民の生活・生命に直接結びつかない問題だけに、大規模なパッシングに発展する可能性は少ないかも知れませんが、競争入札とは名ばかりの某「外郭団体」への巨額の委託費や受益者負担に逆行する補助金、それに自らのOBを天下りとして養うための関係団体への委託費・補助金など、「役者」も揃いつつあります。
 まあ、こんなところからしか資源管理の是正に風穴が開かないのは、建て前と本音で民主主義を使い分ける日本の社会システムの悲しい現実かも知れません。

県職員 07-11-03 (土) 21:01

「外郭団体」への巨額の委託費
⇒水研への資源評価も含むのでしょうか?本来,国の機関であった水研を行革の名の下に,政治家が勝手に切り離し,本来,国が責任を持って行うべき資源評価にかかる委託調査を,水研がほぼ随意契約でうけたところで,そんなに非難されるべき事なのでしょうか。
ABCをはるかに上回るTACを決めているのは水産庁で,水研ではない。近年はろくに現場で漁業調整を行った事のない水産庁の担当者の皆様が,TACをABC以内に収めさせることが出来るのかは,見ものですね。
それと中韓の影響が大きな魚種に魚種にTACを設定するのは本当に実効性があるんでしょうかね。

匿名甘えヒト 07-11-03 (土) 23:07

ようやく、起きてきました・・・

「ここだけの丸秘情報」に関してだけど、これについては、少し大目に見てほしいかな。

「お前らは仲間だから話すけど、行政にな内緒だぜ」みたいに浜に打ち解けられたら、現場では本物です。
たしかに、氏の言うとおりだとは思いますが、少しだけ、時間を与えてやってください。
内緒話をしてくれたヒトに理解してもらう猶予です。
彼らの持っている情報は、懐に入らないと得られない貴重な情報です。
それを得るための信頼、コレを得るためにどれほどの時間と努力をしてきたか、考えてください。
それなしに、現場は務まらないのです。

でも、現場研究者に言いたいのは、氏の言うとおり、やっぱ、「ここだけの話」で終わらせないように、情報提供者にちゃんと説明しなくっちゃ・・・それまで信頼されるようになったんだから、できるでしょ・・・もう一分張り!

氏みたいに、現場を知らないモデラーに好き勝手言わせないためにも、お互い、がんばりませう!!!

ある水産関係者 07-11-04 (日) 12:47

県職員さん、例え金額が大きくても真っ当な随意契約であれば問題なしと思います。

 むしろ、水研センターに関する問題は、強制的な独法化に伴う弊害、即ち、管理部門の職員ばかり人数が増えて研究者の数が減少し、「頭デッカチ」の組織に変質したこと。さらに、特に、「頭デッカチ」の部分に大本営の職員、天下りが軒を並べていること。
 これでは、独法化によって水研センターの本来業務たる研究事業への戦力が大きく削がれただけではなく、大本営のポストと水産研究に対する影響力を単に増大させたようなもの、公正な水産研究のためには、正に「百害あって一利なし」だったのではないでしょうか? さらに、深刻な研究者不足を補うため、真偽は(?)ながら、少し前には研究員を派遣させていたとの話も・(本当だったら大変)。
 中韓は、TACについて相手と調整しないとダメと思いますが、領土問題もあり、仮に話し合っても国益のぶつかり合いで調整は難しそうですね(地中海マグロのように・・・)。

勝川 07-11-05 (月) 16:59

ある水産関係者さん
日本人の食い意地に期待ですね。
日本人は、何かが食べられなくなることには、
異様な危機感がありますので、そこに期待ですね。

最近は水研の新規採用は殆ど無いようです。
研究者の人不足は本当に深刻そうであります。
例えば、ミナミマグロも科学者委員会の内容をフォローしているのは、
国内ではただ一人。任期付きの職員のみです。
その人の任期が切れたら、どうなるのでしょうね。
マズい状態に向かいつつあるように見えます。
まあ、大学もあまり余所様のことは言えませんが・・・

県職員さん
研究機関を行政から切り離すのは良いことだと思います。
行政の指定した結果を出すための研究機関は不要ですから。
切り離すこと自体は間違えていないのですが、
今回の独法化で、逆により支配が強まった観があります。
水産庁とは別枠で予算をもうけなければ、
組織としての独立性は保たれないでしょう。
予算というキンタマを完全に握られた状態です。

>それと中韓の影響が大きな魚種に魚種にTACを設定するのは
>本当に実効性があるんでしょうかね。
中韓の影響が無い資源でもまともに管理できていないのだから、
国内問題をなんとかするのが先でしょう。
その上で、中韓とも粘り強く交渉していくべきだと思います。
国際問題が解決できないから、国内問題にも手が出せないわけではないでしょう。

匿名甘えヒトさん
特に情報が少ない資源では、
丸秘情報が非常に重要な役割を果たしています。
これを、今すぐ辞めろとは言ってません。
現実問題として、無理でしょうから。
会議の場でも特に何も言ってないですよ。

ただ、重要な情報だけに明記しておきたいのですよ。
それが説明責任というものでしょう。
まあ、このあたりは将来の課題ですね。

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