- 2011-12-24 (土) 8:20
- 放射能
この前のエントリで、1960年代、1970年代の粉ミルクのセシウムが高かったことを紹介したところ、
(49歳 Aさんの場合) AA略
と衝撃を受けた人多数。また、この時代に生まれた人から、「同級生が白血病で死んだのは粉ミルクのせいかも」というつぶやきが、いくつか寄せられた。粉ミルクのセシウム濃度と白血病の罹患率に相関関係があるかが気になるところだ。
こういう場合に個人的な経験は当てにならない。例えば、高齢になってもぴんぴんしているヘビースモーカーは、数多く存在する。だからと言って、たばこが長生きに良いことにはならない。たばこの影響をみるには、喫煙者と非喫煙者を大勢集めて、平均寿命や発がん率の違いを比較しないといけない。そう言う比較をすると、喫煙者の方が発がん率が高くて寿命が短いので、「たばこは健康に悪い」と自信を持って言えるわけだ。
粉ミルクの放射能と発がん率の関係を知るには、年齢毎の発がん率のデータを調べる必要がある。ネットで検索して、たどり着いたのがガン情報センターの統計ページだ。いろんな統計があるのだけど、治療技術は進歩しているから、死亡率が減ったからといっでて、白血病が減ったことにはならない。そこで、罹病率のデータを分析することにする。
データのファイルはこれ↓
http://ganjoho.jp/data/professional/statistics/odjrh3000000hwsa-att/cancer_incidence(1975-2006).xls
ダウンロードしたエクセルファイルは編集不可(ケチ)なので、新しいファイルにコピペをして、白血病のデータ(男女共通)を抜き出したのがこれ。
https://docs.google.com/spreadsheet/ccc?key=0ArN_7X0ibziWdC1zTXptVDlDdDZlV1lPbHVkYTVoQ1E
第一軸:全国年齢階級別推定罹患率(対人口10万人),男女計
第二軸:粉乳セシウム濃度(Bq/kg)
4本の実線は、それぞれの年に産まれた人達がそれぞれの年齢で経験した罹患率。粉ミルクセシウムと、罹患率のグラフが一致すると、セシウムと罹患率の関係が示唆されることになる。影響が有るとも、無いとも、言えないような、微妙な図になった。25-29歳は、なんとなく当てはまっているように見えるけど、20-24歳は全然違う。セシウム蛾下がった1970年代後半産まれにピークが来るのも意外な感じ。年によるばらつきも大きい。
粉ミルクのセシウムデータが、単調減少しているというのも、要注意ポイント。高度経済成長期からバブル期は社会が右肩上がりに成長していた時期で、食生活を含めて、生活環境が大きく変わった。これらの生活習慣の変化は、健康にも大きな影響をもたらすはずだ。仮に、罹病率と粉ミルクセシウムに相関が出たとしても、実は生活スタイルの変化が原因かもしれない。世代間の比較はなかなか難しいのだ。
生活スタイルの違いの影響を緩和するには、同じ年代の粉ミルク集団と母乳集団を分離して比較したいのだけど、そう言うデータは見つからなかった。ただ、両者に差があった場合にも、放射能の影響なのか、母乳と粉乳の栄養の違いによるものなのか、判断できない。母乳のセシウムの情報もないし…。
ということで、こういう荒っぽい分析では「良くわからない」ということが良くわかりました。
放射能のような確率的な事象はきめ細かいデータが無いと、存在自体がわからない。日頃から、詳細なデータをとっておけば、被害を早期に検知することも、素早く対策を取ることも可能になる。逆にデータがなければ、「影響は良くわからない」で、うやむやになってしまうだろう。低線量被曝のリスクはわかっていない部分が多い。予防的に被曝を避ける努力をするのは当然だが、それと並行して、微妙な違いも検出できるように詳細なデータを収集しておくことが、事故を起こしてしまった大人の責任だと思う。特に、子供の値が罹病率がこれからどうなるかは注意深く見守らないといけない。
今回の作業は、ネットで落としてきたデータをつなげて図を作っただけ。専門的な知識は一つも必要ない。こういう作業は誰にでもできる時代になったので、疑問があったら、ドンドン自分で調べてみると良いでしょう。白血病以外のガンの影響は、各自で調べてみてください。自宅でできる簡単な作業です。
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- 白血病の罹病率と粉ミルクのセシウムの関係 from 勝川俊雄公式サイト