- 2008-04-09 (水) 12:07
- その他
日本独自の資源管理があるから、欧米のまねごとはけしからんと言う人が多い。
では、日本独自の資源管理とは何なのだろうか。
また、それは本当に期待できるのだろうか。
日本に独自の漁業文化があるというのは、その通りだろう。ただ、独自の漁業文化があるからといって、他国から学ばなくても良いという訳ではない。漁業がなすすべもなく衰退していて、国内にまともな処方箋がない現状では、なおさらである。日本の漁業経済学者は、「日本漁業は極めて独自であるから、海外の資源管理の成功事例は取り入れられない」と言いつつ、日本独自の管理とやらを東南アジアなどに必死に宣伝している。どうして、他国の方法論は日本では使えないのに、日本の方法論は他国で使えるのだろうか。成果を出している管理制度の輸入を拒みながら、成果が出てない自国の管理制度を輸出しようとするのは、おかしくないか?
日本独自の管理を信奉する人間は、日本独自の制度を観念的に賛美しているだけだ。
日本独自の資源管理を擁護したいならば、次の2点を明らかにした上で、「日本には独自の管理システムがあるから、今のままでも日本の漁業は大丈夫」ということを示さなくてはならない。
1)日本独自の管理とは、具体的にどういうものを指すのか?
2)その日本独自の管理によって、漁業はどのような方向に進むのか?
俺は1)、2)を自分なりに示した上で、日本独自の管理システムの問題点と改善策を論じようと思う。その際の、前提知識として下のエントリーを読んでおいてください。
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2006/10/6_1.html
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2006/10/7_1.html
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2006/11/post_59.html
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2006/11/post_60.html
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/10/post_204.html
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/10/post_205.html
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/10/post_207.html
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/10/post_208.html
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- 業界紙速報 08-04-10 (木) 16:23
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きょうのみなとです。
勝川俊雄氏への反論 無責任発言時代か 上 漁業経済学会員 岩崎寿男
ABCは無誤謬の神話 独善が過ぎる勝川氏論断この記事については下(明日掲載?)も含めて原文をご覧ください。氏のブログとはいえ、無責任に感情を煽るようなことはしたくありませんので。
ただし、これだけはお知らせしておきたいのですが、この記事のなかで「実際、多くの魚種でABCを上回るTACが設定されているし、もちろん、ABCを上回る漁獲をしている。それで、何か資源が減るとか不都合なことが起きているか。起きていない。ズワイガニ、マサバ、ゴマサバ、マアジはABCより多く獲ったが資源は増えた。」との記述があります。それに加えて、7魚種の「ABCと実際の漁獲」と「資源の動向」という定性的な説明の表があります。
まあ、氏の3月19日、21日付の「無責任な発言」に対する反論ですから、我田引水でいいのでしょうが、なんと言いましょうか、誇張やすり替えはないとおっしゃるつもりなのでしょうか。
本当に不都合なことは起きていないんでしょうかねえ。無知なる読者のために、せめて上記7魚種のABCとTACの年次推移をみせてほしいところです。(一目瞭然といった資料がないので、同じ土俵に立つことができないですから。)
ところで、小子は北海道新聞の記事に対する氏の素早い反応に驚き、このことに注目しておったのですが、いまだ業界紙にはどこにもでてきません。
- 勝川 08-04-23 (水) 17:23
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岩崎氏は、俺の連載をやめろと怒鳴り込んできたらしいです。で、それが無理だとなると、紙面をよこせをいって、出てきたのがこれですね。岩崎氏の文章だけ、みなと新聞が2ちゃんねるにでもなったかのようなかんじでしたね。
大勢の漁業関係者に会ってきましたが、TAC制度を評価する人は皆無でした。こんな状態で、「TAC制度は機能している!」と自画自賛しても、信用を失うだけだと気づかないのかな。岩崎氏が出てくると、私の批判対象のお粗末さが読者に伝わるので、個人的には大歓迎です。
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- 日本独自の管理に関する考察の予告&宿題 from 勝川俊雄公式サイト