- 2007-07-13 (金) 12:08
- 日記
2006年11月22日に海洋研で実施されたシンポジウム、
漁業管理におけるリスク評価と合意形成のための社会経済学的アプローチ
をテープ起こししたものが、ネットで読めちゃいます。小山田くん、グッジョブ。http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2007/JSPS18631003.pdf
これは、濃いですねぇ。濃厚ですよ。
参加した人も参加してない人も、是非、読んでください。
特に、冨山さんと、杉山さんの部分は必読です。
3回は読みましょう。
俺の講演に関しては、ここに動画があります(ファイルが重いので要注意!)。
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2006/11/post_63.html
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Comments:9
- 業界の一拗ね者 07-07-19 (木) 17:21
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先生に教わった太平洋広域漁業調整委員会の議事録、第2回以降のものは水産庁と現場漁業者の緊迫したやりとりが記録されており、大変ためになるもので、お飾りと雖も愛読文書となっております。今回紹介を受けたこの文書は、漁業者がいらっしゃらない会議で緊迫感はいまひとつですが、とても勉強になります。ところで…
出ました。19日付水経に、「今期たも抄い漁総括」という記事があり、今期伊豆諸島海域におけるサバたも抄い漁は、マサバが当初予想や前年実績を上回る1845トンと、好水揚げとなった。マサバが1000トンを超えたのは4年以来、15年ぶり。これは、資源管理の成果であると大きな声で喧伝するべき結果ではないでしょうか?来年はどうなんでしょう、楽しみです。 - 勝川 07-07-24 (火) 13:18
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>資源管理の成果であると大きな声で喧伝するべき結果ではないでしょうか?
残念ながら、ちがいます。
統計から明らかなように、漁獲努力量は抑えられなかったのです。1)2004年級が予想以上に多かった
2)0歳、1歳の時点で北巻きの主漁場から分布が外れていた結果として、生鮮に利用できるサイズまで資源が残ったのですが、
今回の豊漁は偶然による一時的なものです。
ここで、2004年級群を獲り尽くすと、元の木阿弥になります。
まとまった新規加入があるまで04年級群の利用は控えて欲しいです。
400Gよりも600Gの方が単価も高いわけですし・・・07年産まれがそれなりに見えているという、良いニュースもあります。
今の段階での情報はあてになりませんが、資源回復の芽が出た可能性があります。 - 業界の一拗ね者 07-07-25 (水) 13:26
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小生は、決して水産庁に荷担する者ではありませんし、漁業者の肩を持つつもりもありませんが、現在実施しているマサバの資源管理計画がここまではうまくいっていると宣伝するべきではないかな、と思ったのです。現時点でも、宣伝するべきと思っています。小さいサバを獲っている漁業者に対するメッセージにもなると考えるからです。
ところで、小さいサバを漁獲することについて、気になるものがあります。第2回太平洋広域漁業調整委員会(平成14年9月17日)の議事録16~18ppにかけて、資源管理推進室長と外記委員(千葉海区漁業調整委員会会長)のやりとりの中です。室長は、サバ資源について、「非常に再生産成功率が低い、親も少ないんですけれども子もうまく発生しない状態では、今のまき網も含めた資源に対する漁獲圧力は、実はそれほど高いものになってないんです。」と主張し、「卓越年級群を前提としない形でのサバの資源を回復するのは、非常に困難であるというのが私どもの研究者のデータに基づいて出した結論です。このサバについては、ほかの魚種に比べて研究が相当進んでおります。そういう面からすると一般的に見られた、獲り過ぎではないか、小さいうちに獲り過ぎではないかという意見が通常は出てきますけれども、マサバは今の状態においては、なかなか難しい問題があります。」と言っておられる。これに対して、外記委員は、サバに対する考え方がかなり違う、卓越年級群が出なければ、何も手が打てない、現状のままで1歳魚を保護しても資源回復できないという格好では、浜の皆さんの納得は得られないのではないか、と仰っています。
このやりとりは2004年の卓越年級群が確認される前のことですが、問題と思われるのは、ここで室長が述べておられるサバ資源の特徴です。室長が主張しておられることは、研究結果に基づいた水産庁の意見であり、これを基にして資源回復計画が策定されていると思います。サバ資源の回復に卓越年級群を前提とするのは仕方ないとして、資源の状態が悪いときは獲ったっていいんだよ、と言っているように聞こえます。第7回委員会で水産庁管理課長が、「輸出のために小型を特にターゲットにしてとっているとは理解していない」と発言された裏には、このような考え方があるものと思います。
小生は門外漢で知りませんが、上記のようなサバ資源の特徴を明らかにした水産研究所の研究結果があるのでしょうか?これを金科玉条にしている限り、現状の資源回復計画で0歳魚を獲り尽くしてしまうことを制御することはできないのではないでしょうか?畳み掛けるように悪い報せがあります。7月24日付みなと新聞の記事です:
「北まき船団サバ水揚げ TAC消化、既に一割 需要期の安定供給に危機感」
【八戸】1日開始の今期サバ漁がまとまっている。19日現在、北まき船団のサバ水揚量は約8300トン。わずか3週間でTACの一割近くを消化しており、TAC超過を懸念する声が強まっている。前期はTAC超過で漁期後半の3ヵ月は操業自粛を余儀なくされた。現在のサバは脂が薄く「大半が缶詰原料、輸出向け」(加工筋)に限定。脂がのり商品価値の高まる秋以降の安定水揚げを確保するため、操業期間の限定など操業方法見直しを求める声も出始めた。…
現在の主漁場は八戸と福島沖。マサバ、ゴマサバ混じりで、今月は銚子に2日1006トン、3日2204トン、中旬には八戸に日量400~800トンが水揚げされた。銚子、波崎はマイワシ主体に切り替わったが、八戸のサバ水揚げは20日現在累計で3000トン超、平均単価はキロ55円。前年同月は268トン、50円だった。…上記に加え、漁業情報サービスセンターのHPによると、7月23日の八戸の生さば類の水揚げ2075トン、魚体は小でキロ単価は上値64円、安値40円、中値45円となっています。これがすべてマサバではないにしても、凄まじい漁獲量です。これは、先生がおっしゃっている、それなりに見えている2007年級群を、0歳で獲り尽くそうとしている現場なのでしょうか?
このような悪循環を断ち切るためには、搦め手からも攻める必要もあろうかと。
- 業界の一拗ね者 07-07-27 (金) 17:05
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サバ漁獲データについて、7月27日付みなと新聞に北まき船団サバ水揚げの特集記事が載りました。記事の内容は、先日ご報告したものと大差ありませんが、23日八戸の生さば類水揚げ2075トンの内訳が、「ゴマサバ7割、1尾450グラム中心だが小型、大型もそろう。脂ののりはもう一歩」とのこと。
八戸の一日のマサバの水揚げが600トン余りということになりますか。たもすくいとはケタが違いすぎます。
- 勝川 07-08-01 (水) 14:24
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>現在実施しているマサバの資源管理計画がここまではうまくいっていると
>宣伝するべきではないかな、と思ったのです。
>現時点でも、宣伝するべきと思っています。私は、活動家ではなく、研究者ですから、
真実の方が、政治的判断よりも大切です。
データや情報と照らし合わせて、正しいと思うことを書きます。>小さいサバを獲っている漁業者に対するメッセージにもなると考えるからです。
うーん、それはどうでしょうね。
北巻は「だから言ったじゃないか、もっと獲っても良いんだ」
としか受け取らないと思います。>畳み掛けるように悪い報せがあります。7月24日付みなと新聞の記事です
>「北まき船団サバ水揚げ TAC消化、既に一割 需要期の安定供給に危機感」国のTACは1月~12月で管理をしていました。
去年から、マサバの操業実態に合わせて、7月~6月にしたのです。
結局は値段が上がるまで待てないみたいですね。
熾烈な早捕り競争で、みんなが損をする見本。
大中巻きは自主的に漁獲枠を設定しているらしいですが、
国のTACすら平気で超過するのに、自主規制が守れるはずがないでしょう。さて、ご指摘の第2回太平洋広域漁業調整委員会ですが、
外記委員はまっとうな意見を述べていると思います。
それに対して、資源管理推進室長の発言は問題ありですね。>親も少ないんですけれども子もうまく発生しない状態では、
>今のまき網も含めた資源に対する漁獲圧力は、
>実はそれほど高いものになってないんです。この発言が正しいかどうかは、数字を見れば一目瞭然。
0歳1歳で獲り尽くしておいて、よくもまあ、言ったもんだな。
あと、最近のサバの生産性は高いです。
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/07/ssb.html#more>上記のようなサバ資源の特徴を明らかにした水産研究所の研究結果があるのでしょうか?
どう計算したって、そんな結論にはならないから、研究結果はあるはずがないです。
ちなみに、平成14年の評価票はこんな感じ。
http://abchan.job.affrc.go.jp/digests14/05.html
1992年と1996年に発生した卓越年級群により30万トン程度の漁獲をあげた年もあったが、未成魚(0、1歳魚)の多獲により資源は回復していない。
加入量当たり漁獲量の観点からは、漁獲開始年齢を現在の0歳から1歳魚へ引き上げる必要がある。さらに、魚価や繁殖への貢献を考慮すると漁獲開始年齢を3歳とするのが望ましい。つまり、実際の水研の資源評価の中身は、
佐藤資源管理推進室長よりも、むしろ、外記委員の発言を支持するのです。(不適切とご指摘があった部分を削除しました)
- 業界の一拗ね者 07-08-06 (月) 13:09
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舌足らずで誤解を招いたようですが、先生に宣伝して欲しいわけではなく、水産庁が、こういうことを実施しているが現在のところうまくいっている、とアナウンスするべき、と申し上げたのです。うまくいったこともうまくいかなかったことも、ちゃんと公表するべきであろう、ということでたいした意味はないです。
しかし、第2回太平洋広域漁業調整委員会の議事録の話なんて出すんじゃなかったですね。わたしは、水産庁の公式見解が拠って立っているところに疑問を持って先生にお尋ねしたのです。まわりくどい言い方では誤解を招くだけなのではっきり言いますが、あの会議で佐藤さんが発言していることは佐藤さんの個人的な意見ではなく、水産庁の公式見解だということです。だから、第7回会議の管理課長も、同じ根拠に基づいて発言しているのではないか、と申し上げたのです。これが水産庁の公式見解だとしたら、拠って立っている研究結果に問題があるのではないか、と思ったのです。この委員会には水研の研究者も出席しており、先生が言っているような架空の話を基に発言している推進室長や管理課長に御意見なさらないからには、水研の人たちも先生ほどにはさば資源のことをご存知ではないのでしょう。まあ、お飾りの委員会だから、研究者として厳格でなくてもいい、ということなのでしょうか。
じきに定年となる身におもしろいことを教えてもらいましたが、高木委員会の提言が出ているので、これについてわたしの感想を記して筆を置きます。まず、日本経済調査協議会(日経調)というのは、経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会、日本貿易会の経済界4団体の協賛を得て任意団体として設立されたもので、言わば財界のための活動を行っているところです。8月2日付の水産経済新聞には、一面トップに高木委員長、小松博士、黒倉主査の3人の写真とともに提言に関するニュースが掲載されていますが、この委員会のメンバー構成は書いてありません。日経調のHPにも委員会のメンバーは経済界、学界、マスコミなどの分野の有識者にて構成、となっているだけです。先生もご存知ではないようだし、小松博士と東大教授が看板となっているたいそう立派な有識者会議なんだと思います。わたしが、広域漁業調整委員会のことを書いた折、先生は、わたしに有識者会議のことについて「とあるHP」を教示してくださったことがあります。実に有意義なことをたくさん教えていただき、ありがとうございました。老婆心ながら、先生も業界紙を購読なさった方がよろしいか、と。 - kato 07-08-06 (月) 16:26
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>この委員会のメンバー構成は書いてありません。
私もココが一番引っかかっているところでして、他の日経調の提言ではすべて委員名簿が掲載されているのに、水産だけが匿名扱いになっています。ここは非常に不自然で疑問の残るところですよね。レポートを素直に読めない原因にもなっている。
>業界紙を購読。
以前購読していましたが、代表的な2誌を取ると年間14万円。個人では正直厳しいですよ…。価値観はそれぞれですが。
- 勝川 07-08-06 (月) 17:59
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業界の一拗ね者さん
いろいろとご助言をありがとうございます。
不適切との指摘を受けた部分は削除致しました。それはそうと、面白い本があります。
http://www.suisan-shinkou.or.jp/gekkann.htm
月刊水産振興 442号 「本音で語る資源回復計画」を読んでみてください。
ウェブサイト(http://www.suisan-shinkou.or.jp/enquete.htm)から
申し込むと送料のみで本を受け取ることが出来ます。
管理課がどのようなビジョンで資源管理を進めてきたかが書かれています。
TAC制度は骨抜きにしておいて、
資源管理型漁業を発展させた資源回復計画で何とかしようとしたのです。katoさん
>>この委員会のメンバー構成は書いてありません。
>私もココが一番引っかかっているところでして、
>レポートを素直に読めない原因にもなっている。
私も、委員は公開すべきだと思います。
最終提言では、委員は全て公開されるという話だったのですが・・・
なんかあったのかな。>以前購読していましたが、代表的な2誌を取ると年間14万円。
>個人では正直厳しいですよ…。価値観はそれぞれですが。
うーむ、確かに高いですね。
必要経費と割り切って、1年購読してみましょうか。 - 通りすがり 07-08-06 (月) 18:50
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高木委員会委員
委員長 高木裕樹(農林漁業金融公庫総裁)
主査 黒倉壽(東大大学院農学生命科学研究科教授)
委員 石原英司(大日本水産会専務理事)
伊藤繁則(㈱魚力社長)
伊藤裕康(㈱中央魚類社長)
今井教文(ロイヤル㈱社長)
今村博展(大洋エーアンドエフ㈱社長)
潮田道夫(㈱毎日新聞論説委員長)
垣添直也(日本水産㈱社長)
小松正之(水産総合研究センター理事)
杉山美邦(㈱読売新聞東京本社経済部長)
田中康雄(田井水産㈲社長)
長谷川寿(ニチレイフレッシュ副社長)
福島哲男(㈱福島漁業社長)
本間正義(東大大学院農学生命科学研究科教授)
顧問 生源寺眞一(日本経済調査協議会調査委員)
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