- 2006-09-12 (火) 14:54
- 研究
さて、日本漁業の歴史を振り返った上で、現状を分析してみよう。
日本の漁業生産は、世界一を記録してから、終戦直後と同程度まで減少した。
スタート地点に戻ったようにみえるが、その内情はまるで違う。
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2006/09/part2.html
で挙げた日本漁業の成長に寄与した4つの条件は、2)以外は失われた。
1)資源状態が良好だった→日本近海の資源は長期低迷化
2)漁業のノウハウがあった
3)米国の協力→米国によって日本の公海漁業は排除される
4)公海自由の原則→排他的利用権と「責任ある漁業」へ
60年前と比べると、獲る場所も獲るべき資源もないのが現状なのだ。
高すぎる漁獲能力は乱獲による資源崩壊を引き起こすので、
メリットと言うよりはデメリットだろう。
マイワシバブルを除けば、コンスタントに漁獲量は減少を続けている。
遠洋漁業の衰退は漁場の縮小が大きいが、
沿岸や沖合に関してはEEZから外国船を閉め出したにもかかわらず、
1990年以降、一貫した減少傾向を示している。
沿岸や沖合の漁獲量はすでに資源の生産力を超えているのだ。
現在の漁獲量の減少は、資源の減少を反映したものであり、
1990年以降、漁獲率は殆ど落ちていない。
むしろ、マイワシのような低水準資源では、漁獲率が急上昇している。
このような状況で漁獲量を増やしたら、資源の枯渇を早めるだけだろう。
資源を維持しつつ、漁獲量を今すぐにV字回復するのは無理なのだ。
また、今までのように、資源の減少に合わせて漁獲量を減らしても、
資源はズルズルと減る一方で、回復はしないだろう。
今打つべき手は、現在の資源の生産量に見合った水準まで、
漁獲量を減らすことなのだ。
いったん、漁獲量を減らしたうえで、資源が回復するのと歩調を合わせて、
漁獲量を増やしていけばよい。
日本近海の生産力は半端じゃなく高いから、きちんと親を残してやれば、
漁獲量を今よりもぐっと伸びるはずだ。
- Newer: 漁獲量削減計画の重要性をモデルで検証してみた
- Older: 新しく図を作ってみました
Comments:0
Trackbacks:0
- Trackback URL for this entry
- http://katukawa.com/wp-trackback.php?p=85
- Listed below are links to weblogs that reference
- 今必要なのは、漁獲量削減目標ではないか? from 勝川俊雄公式サイト