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MELジャパンがパブリックコメントを募集してたので書いてみた

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MELジャパンの第一号候補漁業の審査のドラフトレポートが公開されている。

http://www.melj.jp/press11.pdf

パブリックコメントも募集中だが、なんと今日までではないか!!
というのであわてて書いたのが次の文章

今回のべにずわいの認定は、再考の必要があると考えます。

1)資源情報が不十分

べにずわいがには、深海の生物であり、個体の年齢査定もできません。生物情報が不十分であり、資源量の推定すらできていないのが現状です。知事許可漁業の努力量、漁獲量の情報が部分的にしか得られていません。また、同じ資源を利用している韓国船の情報はほとんどない。これでは、資源状態が把握できるはずがないでしょう。

唯一の情報は漁獲量とCPUEですが、ここ3年程度の漁獲量が横ばいだからといって、資源が安定している保障はありません。(伐採量と森林の量は比例するとはかぎらない)

2)資源状態が良くない
水産総合研究センターの資源評価では、本資源は低水準で横ばい傾向となっております。国の資源回復計画が適用されているのも、資源が低水準で回復の必要があるからです。資源が回復したのを確認してから、エコラベル認証をすべきではないでしょうか。

3)漁獲制御の実効性は疑わしい
2006年のABCTarget(生物学的許容漁獲量)が6200tに対して、漁獲量が14226tと倍以上です。低水準で資源回復が必要な資源に対する漁獲量として妥当ではありません。また、同じ資源を利用している韓国と共同管理の枠組みが無い以上、管理の実効性には限界があります。


この認証は、全く賛成できない。
まず、資源の情報がない。資源量推定すらできていない。
評価表(http://abchan.job.affrc.go.jp/digests19/html/1979.html)を見て欲しい。
漁獲量もCPUEも低迷。評価票では、資源水準は「低位横ばい」となっている。

知事許可水域では過去最低だった2005年よりは漁獲量が増加したものの依然として低い水準にあり、
CPUEは横ばいまたはやや増加傾向が見られる。
いずれの海域でも漁獲物に小型個体および未熟個体を20%程度(重量比)含んでいる。
系群全体の資源状態としては依然として過去最低の水準にあるものの、動向は横ばいと判断される。

小型個体、未成個体の混獲の問題もあるし、漁獲量はABCの倍なのだ。

俺としても、境港の資源管理の取り組みは応援したい。
しかし、べにずわいは不確実性が大きく、資源の持続性を保証できない。
なんでこんなにハードルが高い漁業を選んできたのか理解に苦しむ。
もっと無難な漁業は、沢山あるだろうに。
憎きMSCへの当てつけだとしたら、見事な自爆です。

Barratt氏のインタビュー

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NZには大手水産企業が3つある。
その大手の一角、Sanford社の代表取締役のEric Barratt氏のインタビュー。

Sanfordは上場企業なので、財務状況が公開されている。
先日公開された半期報告書(Interim Report)を見てみよう。
http://www.sanford.co.nz/documents/SAN017%20Sanford%20Interim08-FINAL2.pdf

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NZD=80JPYでざっくり計算すると、経常利益が168億円で、 当期純利益が28億円。
経常利益率は17%だから、立派なものです。

やり手の経営者のインタビューをじっくりとお楽しみください。

シーフードショーのポスター

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勝川ポスター.png

シーフードショーでは15分の口頭発表の他にも、ポスターの展示があります。
発表の前後に、ポスターの前で説明をして欲しいと言うことだったのですが、
みんな試食に忙しくて、ポスターの所にはあまり人がいませんでした。

ポスターの解説の代わりに、海洋大の学生さんから、
海藻のしおりの作り方をレクチャーしてもらいました。
海藻には糊の成分があるので、水切りネットを使うのがこつみたいです。勉強になりました。

日本に帰ってきました

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ネルソンのホテルはネットにつなげなくて、結局、尻切れトンボになってしまった。

帰ってきたら、すぐ授業だったり、シーフードショーで講演だったりで、
えらく忙しいです。

ウェリントン その2

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今日の新聞では、食品価格の値上がりが特集されていました。
政府は価格調整などは一切しない方針みたいです。
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Fish Serve

午前中は、FISH SERVEを訪問した。
FISH SERVEは、漁業ライセンスの管理、漁獲枠の管理、
漁獲報告の収集などを行っている。
ITQを導入している国には、ノルウェーのFisheries Direktori、豪州のAFMAのように
資源管理を行う独立の機関がある。
漁船の登録、モニタリング、漁獲量の集計などの手続きが煩雑になるので、
漁業に近い実働部隊が必要になるのだろう。
FISH SERVEのユニークな点は、政府組織ではなく民間企業だと言うことだろう。
もともとは、漁業省の一部であったが、現在は完全に独立した企業になっており、
予算は業界が全て出しているとのことであった。

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政府を小さくするために、事務手続きを行う部署を外に出すことにした。
もともと漁業省の該当部門にいた人間は、
1999年にdata.comという一般企業の社員になった。
FISH SERVEがビジネスとして成り立たなかった場合に、
社員が路頭に迷わないための措置だという
2年後の2001年に新しい資源管理制度が導入されるのにあわせて、。
FISH SERVEが組織として独立し、DATA.COMから分離された。
DATA.COMに残った社員はいなかったという。

FISH SERVEになってから、経営の自由度が増した。
また、金を払う人間と常に接することで、コスト感覚が磨かれた。
収益を高めるためにコスト削減を進めているが、
サービスの質は向上している。

この経験を生かすために、コンサルタント業も開始した。
公務員と一般企業の両者視点をもっているので、
両者を結ぶような仕事を得意としているようである。

公務員からサラリーマンになった感想を聞いてみたら、
「企業だから倒産の危険性があるし、安定性は前よりもない。
でも、新しいことにどんどんチャレンジできてやりがいがある。
FISH SERVEに移って、本当に良かったよ」とのことでした。
日本でも、こういうキャリアパスがあると良いかもしれないね。


SeaFIC

さて、午後はSeafood Industry Council(SeaFIC)におじゃまをして、
ゼネラルマネージャーのAlastair Macfarlane氏から、話を伺ってきました。

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Sea FICは、業界の利益のために、政府によって作られた団体で、
沿岸漁業、沖合漁業、養殖に関わる組合だそうです。
いわゆる全漁連に相当する組織なのでしょう。

ITQに対する漁業者の意識を質問してみました。
昔は漁業者よって、ITQに対する意見の相違があった。
しかし、今は小規模漁業から、大会社まで産業全体で、強くサポートしている。
早獲り競争では、だめだということです。

あと、漁獲枠を既得権として認めることで、漁獲枠が資産および収入補償になるので、
銀行から資金の調達が容易になったことが良い効果を及ぼしたそうです。

組合として、燃油価格高騰の補填を政府に求めるかを質問したら、笑われました。
「補助金がもらえるなら、誰だってもらいたいけど、そんな補助金はあり得ない」らしいです。
それどころか、来年の1月から、燃油に二酸化炭素排出税が課されるそうです。
「このタイミングで燃油に税金なんて、正気かよ?」と思いきや、
こっちの漁業者は魚の値段が上がっているからあまり困っていなさそう。
SANFORDも業績が良くて株価を上げているらしいし・・・

ニュージーランドで、ITQが導入できた理由を、当時の時代背景から詳しく説明してくれました。
あと、どの漁業でも、漁獲枠の値段は、ACEで売る場合の約10倍になるとか、
いろいろおもしろい話がありました。今日も勉強になった。
Macfarlane氏のインタビューも録画したけれど、編集してアップするのはいつになることやら。

オーストラリア、ニュージーランドで、いろんな立場の漁業関係者に会いましたが、
皆、ITQのことを高く評価していました。
また、タクシーの運転手も含めて、漁業は儲かっているかどうかを聞き込みしましたが、
「漁業者は儲けている。漁業は良い仕事だよ」というのが共通認識でした。
今回の訪問で、自分が進んできた道が間違えていなかったことを実感したよ。

ニュージーランドのセリのビデオ

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ニュージーランドのセリの様子を伝えるべく、動画を作ってみた。
動画を見る人は↓をクリックしてください。

ウェリントン滞在記 その1

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宅間さんとのミーティングの後、オークランドからウェリントンへ移動。
荷物が飛行機に乗り遅れたみたいで、夜中にホテルに届くという事故があった。
まあ、出てきて何よりですな。

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でもって、今日はオーストラリアの漁業省でミーティング。
朝から晩まで缶詰でした。
ニュージーランド人は早口で、英語について行くのが大変。
昼ご飯を食べた後に、集中力がとぎれがちだった。
漁獲枠管理の技術的な部分や、立法的なことも含めていろいろと話を聞けた。

NZで漁業改革を担当した人の話が実に興味深かった。
ITQに対する漁業者の拒否反応は強くて、
トマトを投げられたり、チーズを投げられたりで、大変だったらしい。
「最初の10年は大変だけど、漁業は確実に良くなるから、がんばれ」と激励をされた。

いろいろな国を回っていると、ITQと一口で言っても、運用が全然違うことに気がつく。
漁獲枠システムを見ると、ピュアなITQはNZとアイスランド。
既存の漁業がら徐々に移行させていったのが豪州。
漁業者の既得権を維持しながら、部分的に移行したのがノルウェー。
それぞれ国の事情と、制度を照らし合わせると、なかなか興味深いです。
やはり、現地にいって話を聞くのは重要ですね。

夕方、町をタクシーで一回り。展望台からの見晴らしです。
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夜は、小規模漁業を営んでいる漁業者とディナー。気さくでとても楽しい人でした。
彼によると、政府の方針には、いろいろと問題が有るようです。
たとえば、新しいルールが2週間前にいきなり公表されたりと、
やり方が強引すぎるということです。確かに、納得がいく話で有りますな。

「俺たち漁業者は大学教授というだけで、聞く耳を持たない。
さらに東京から来たなんて言ったら、そこで終わりだよ」とのこと。
こちらから、「じゃあ、どうすればよいと思う?」と質問をすると、
「漁業者サイドに、理解者を作ることだね」と言われました。
うーむ、確かにその通りですね。

ITQ制度について、どう思うかを聞いてみました。
「NZ政府の運用がひどいだけで、ITQ自体はとても良いシステムだよ。
ただ、NZのITQシステムをそのまま日本に持って行くは無理だろう。
目的を明確にした上で、日本漁業の特色にあったITQ制度を
模索していく必要がある」とのこと。
なんだかんだ言って、ITQに対しては好意的でした。まあ、それもわかる話です。
車も立派だし、家は高級住宅地だしで、彼も儲けているんだろう。
漁業というのは、ちゃんとした制度の下で、ちゃんとやれば確実に儲かる。
日本は、###が###で、##だから、###だけど・・・・

原油補助金はあるかどうかを聞いたら、「政府が金をくれるなんてあり得ない」とのこと。
NZの漁業者にとって、政府はひたすら金を奪っていく存在のようです。
NZでも衛星をつかって漁船をモニターするシステム(VMS)が導入されたんだけど、
「俺たちの金でシステムを開発しておいて、さらに、それを売りつけるんだぜ」と怒ってました。
ITQによって、漁業が儲かるようになったから、ITQには賛成だけど、
儲けの一部を管理費用として徴収するから、漁業省は嫌いみたい。

漁業省は、漁業者との相互理解を重視しているという話だったと思うけど、
漁業者からみると、まだまだ努力が足りないようです。

オークランド滞在記

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ニュージーランド最大の都市オークランドにやってまいりました。
ホテルに着くと、こちらの水産大手であるSANFORDの社長 エリックさんが、
ディナーに招待してくれました。

着いた先は、焼鳥屋。
社長さんとディナーと言うから、スーツを着ていったのですが、そんな必要は有りませんでした。
実に気さくな方でした。
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魚市場のサイトhttp://www.afm.co.nz/

次の日は朝の5時半集合でセリを見に行きました。
セリは全て電子化されています。この画面を見ながら、値段を入力します。
魚種毎に設定された最大金額から、徐々に値段が下がっていき、
最大金額を入れた人が競り落とします。
最低金額まで達すると、UNSOLDとなって、終了します。
この最低価格は輸出価格と等しくなっているそうです。
輸出価格以上の値段がつくなら市場に流すし、そうでなければ輸出すると言うことです。
実に合理的だと思いました。
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これがセリ人の机にある操作パネルです。これで値段を入力します。
インターネットからも、オークションに参加できるそうです。
スーパーマーケットの水産物担当者は品物の下見をした上で、
事務所からインターネットで入札したりするそうです。
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魚はプラスチックケースにシャーベットアイスとともに入れられています。
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この市場はSANFORDが経営しているそうです。手数料は落札金額の10%です。
もし魚が売れなくても、輸出をするので、確実に利益が出る仕組みになっています。
値段がつくまで価格を下げる日本の商売とは根本的に違います。

セリを見た後、事務所で話を聞きました。
エリックさんのインタビューも撮影しましたので、いずれアップします。
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手に持っているのが、情報開示優秀企業のトロフィーです。
2007,2008年と連続で、もっとも情報開示が進んだ企業として表彰されているそうです。
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市場では、有名レストランのシェフを招いて、料理教室を開いています。
魚の消費をのばすための地道な努力も怠りません。
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ここの魚市場にも、消費者向けの小売店があります。
真ん中に注目してください。なんと、サンマです。
Kg700円ぐらいでしょうか。それなりの値段がついています。
このサンマは、韓国やロシアが日本の200海里外で獲ったサンマだそうです。
日本のサンマ業界は、日本の市場以外は見ていません。
生産調整をしていますが、国内の相場は崩れたままで利益は全然出ていないのです。
そのいっぽうで、他国は200海里外でとって、輸出をしている。おかしいとは思いませんか?
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俺は、納得いかんですよ。
サンマは資源が良い。もっと獲れる。しかし、国内での需要は限定的である。
なぜ、どんどん輸出をしないのか理解に苦しむ。
その一方で、枯渇したマサバを0歳から根こそぎ巻いて、
中国にたたき売ってるんだから開いた口が塞がらない。
こんな馬鹿なことばかりしていて、利益なんて出るわけ無いだろ。

で、午後はマルハNZ法人の宅間さんから、いろいろとおもしろい話を伺いました。
海外の視点も大切ですね。実に、勉強になりました。

豪州政府は燃油価格の高騰に対して、補助金ではなく、資源管理で対応するらしい

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燃油の価格が高騰しているのは、日本だけではありません。海外ではいったいどのようになっているのでしょうか?

オーストラリアは燃油高騰対策の補助金が不要だそうです。実際に業界からも要求がほとんど出てこないというから、驚きです。そして、その理由が資源管理をしているから、というので、またまたびっくり。

インタビューをしたのは、オーストラリアの資源管理機関AFMA(Australian Fisheries Management Authority )のExecutive ManagerのNick Rayns氏です。つまり、政府の漁業管理機関の責任者。このインタビューは実に興味深いです。

豪州では規模が大きい漁業からITQを導入している最中です。ITQを導入した漁業では、産業が変化に対して柔軟になるから、不満はでないそうです。豪州では、船ごとに獲れる漁獲量が決まっているので、漁師は毎日海に出る必要はありません。利益を出せない漁業者は、その年の漁獲の権利を他の漁業者に売って利益を得ることも可能です。
水揚げの効率化が進むことで、産業全体としては利益を確保できるので、魚を獲りに行く漁業者も、魚を獲らない漁業者も補助金が無くても問題はない。

ITQがまだ導入されておらず、網目規制や漁期規制のみで管理をしている漁業もあります。そういう漁業では、漁に出なければ収入はゼロです。みんなが漁に出ても、みんな赤字という状況になるので、漁業者からは不満の声が上がっているそうです。燃油価格が上がると採算がとれなくなる漁業に関しては、燃油の補助金を配るのではなく、ITQへの移行を進めるというのが、豪州政府の方針だそうです。

いやぁ、実に明快ではないですか。目から鱗でした。
詳しくは下のビデオを見てください。

成田より

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今から海外出張です。
行く先は、オーストラリアとニュージーランドです。
異動後、いきなりで申し訳ないですが、今しかタイミングが無いのです。

IQ, ITQについては、導入するかどうかの段階は終わり、
今後はどうやって導入するかを議論する段階に入ってきました。
ところが、日本国内にはIQ, ITQのノウハウが全くない。
国内で議論をしていても、未経験者が文書で得た知識を披露しあうだけで終わってしまう。
中学校男子の修学旅行の夜の会話(?)みたいな状態ですな。

これでは埒があかないので、豪州、NZに行って、ITQ経験者の話をたっぷりと聞いてきます。
理論的にITQが良いというのは明らかなんだけど、
実践はどうなっているのかを、しっかり見てきますよ。

  • そもそもどういう経緯でITQを導入しようと思ったのか?
  • 漁獲枠の初期配分はどうしたのか?
  • 導入当初の漁業者の反応は?
  • 今になって、振り返るとITQで良かったと思う?
  • 寡占化はどうなのか?
  • 現在の問題点は?

というような質問を向こうの行政官・漁業者にぶつけて来ます。

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なんだか、とてもワクワクするなぁ。

きっと、忘れられない旅になる

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