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研究 Archive

今必要なことは、リスク管理の普及だろう

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水産の現場にいる人で、資源学をちゃんと勉強したのはほんの一握りだから、
すでに働いている人が勉強できるような機会は必要だと思う。
ABCの計算自体はそれほど難しいことをやっているわけではない。
基本的な部分は、かけ算と引き算で全てが説明できる。

でも、それだけでは全く不十分。
計算の概要と同じぐらい重要なことは、計算した値の精度。
その昔、北海道でVPAの精度がメロメロだった事例を紹介したけど、
VPAだけじゃなくて、至る所に不確実なパラメータがある。
最終的なABCの精度を理解した上で、その使い方を考える必要がある。
数理モデルの限界についても、ちゃんと伝えないといけない。
「不確実性とどうつきあうか」というビジョンがまるでない中で不確実性の説明をしても、
「資源評価が不確実?だったら、管理なんて辞めようよ」という発想しか出てこない。

不確実性の話をすると、管理がやりづらくなる。
「間違えるのは構わないけど、曖昧なのは困る」という感じ。
実際には、正確な資源状態なんて、わかるはずがないのだから、
本当は逆を目指さないといけない。
曖昧な情報をつかって、間違い(乱獲)を回避する必要がある。
このことを、水産関係者は上から下まで、全然わかってない。

不確実性な情報で、リスクを管理するという概念を浸透させる必要があるだろう。

意思決定における研究者の仕事

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今回は匿名でもいいですか?のヒトへのレス 第3段

 また,このように,マジ話をしてくれるようになるまでに,
漁師に,がっつり,はまっていかないと,とれないデータがあったりするし,
調査するときにも,融通を利かせてくれたりとか・・・
 つまり,『飼われている研究者』でなければ得られない情報もあるのです。
 特に,沿岸漁業の場合はなおさらですね。

信頼関係が重要と言うことはわかりますよ。
ハタハタ、イカナゴ、京都のズワイ等の資源管理の成功例の背後には、
必ず漁業者の信頼が厚い県の職員が居ます。
逆にそういう人がいないところで、トップダウン管理をしようとしても破綻するでしょう。
水試が果たすべき役割は、とても大きいです。

今のTAC制度を見てればわかるけど、資源管理で一番難しいのは人間の管理です。
ここで失敗しているから、管理が機能しない。
確かにABCの推定にも誤差はありますが、人間の管理の難しさと比べれば影響は小さい。
ほとんどの資源は、毎年ABCで漁獲をしていれば、そんなに酷いことになりません。
でも、人間の管理に失敗しているが故に、
ABCを遙かに上回るTACが設定されて、資源が減り続ける。

漁業者の便宜を図るだけではなく、
漁業者の耳にいたいことも言えるような信頼関係を築いて欲しい。
漁業者は非常に短期的なスパンで物事を考えます。
長期的な利益を損なわないように導くのが、研究者の重要な仕事です。
現実が厳しいときには、漁業者にリスクをしっかりと伝えてほしい。
その点では、徐々に良い方向に向かっていると思います。

TAC対象魚種を漁獲しているヒトたちは・・・私自信,あまり,お付き合いがないので,何ともいえませんが・・・,シンポ等々で彼らの発言を聞く限り,もしかして,ABC自体を信頼していないのではないか?と思ったことがあります。

まき網漁業者は「マイワシの減少の原因は海洋環境」という研究は信じるけれど、
「最近のマイワシの加入率は悪くない」とか、
「ちゃんと親を残せばマイワシ資源は回復する」とか、
「最近のマイワシの減少の責任は漁業にある」とかいう研究は一切信じない。
自分たちに都合の良い研究はちゃっかり利用するけど、
都合が悪い研究は信用しないという、ご都合主義ですね。

身近で見ちゃいました・・・とても虚しい仕事ですよね・・・TAC魚種の話ではありませんけど・・・資源が乏しくなって,漁獲制限が厳しくなって,でも,お金になる魚種って,かなり,人間のエゴがむき出しになりますよぉ・・・怖いのぢゃ・・・

組織として、ABCを決めるプロセスを外圧から守らないといけない。
担当者が科学的にABCを推定できるような環境を整える必要があるんだけど、
実際にやっていることはその逆だからなぁ。
見てて、気の毒です。

ABCを議論する際のルール

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今回は匿名でもいいですか?のヒトへのレス 第2段

さて,その『モデラー』の一人であるであろう,氏のブログで,二つの逸話がありました。それは,スケソの『数値』に対する,試験場職員の発言です。一人は,「それじゃ,漁師が生活できない」と言ったのに対して,氏は「漁業者に飼われている研究者」と酷評。もう一人は,自らとったデータを元に異見を言ったのか,意見を述べたか・・・ちょっと,ど忘れ・・・これに対しては,「このように,ポジティブな論議ができるのは良い」と,好評価。なるほどなぁ・・・ぅんぅん

自分としては、モデラーであるつもりは無いんだけど・・
まあ、それは置いておいて、最初の発言は、去年のブロック会議のころですね。
ABCの会議で、漁師の生活を持ち出すのはNGです。
あまりにもそのルールがないがしろにされていたので、かなり厳しいことを言いました。

現在のTAC制度はこんな感じになっています。

Image1.png

資源の持続性を配慮する機会はABCだけです。
ABCを決めるときに、生物の持続性を無視したら、この管理システムは死にます。
漁業者の都合は、ABCではなく、TACを決める場に持っていくべきです。
漁業者のためにABCを上げたいという気持ちはわかりますが、
「漁業者が困るからABCを上げよう」というのは筋が通らない。
「ABCを上げても生物の持続性に問題がない」ということを科学的に示す必要がある。
真の動機は「漁業者の都合」でもぜんぜん構わないんだけど、
建前上は生物の持続性に問題がない、という理由付けが必要になる。
ここをないがしろにしては、管理の意味が無くなるのです。


次の発言は、
俺が「CPUEが一定でも、資源量は下がっている可能性がある」と脅かしたら、
現場のデータをつかってその可能性は低いから大丈夫という反論があった時ですね。

我々が指摘したリスクを、現場で検証をしてもらい、不確実性を減らしてもらう。
それを繰り返していくのが、望ましい関係です。

我々は、別に漁業者に意地悪をしたいわけではありません。
資源の持続性が保証できれば、ABCを上げることに異論はないです。
漁業者と水試が一致団結して、不確実性を減らしてくれれば、
安心してABCを上げていくことが出来る。
漁業者と水試で現場を押さえているんだから、圧倒的に有利な立場にあるわけで、
ちゃんと闘えば、そちらが負けるはずがない。
そうやって筋を通した上で、ABCを上げていきたいと思ってます。

情報公開の補足説明

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すいさんWatchさんからTBをもらいました。

例えば議事録のようなものを作成すると「誰が何を言った」というような
個人攻撃が始まる可能性があるからなのでしょうか。利害が大きいだけに、
あえて過程をブラックボックスにすることで、個を消し総意の結果だけが
見えるようにしてあるとか。

穿った見方をすれば、責任の所在をあいまいにしているような。
エスケープルートも必要なのかな…。

前記事は、わかりづらい表現で、誤解を与えてしまったようなので、補足説明をします。
まず、我々の目的は、科学的に妥当なABC(生物学的許容漁獲量)を推定することです。
この目的は同じなのですが、そのための方法論が違うのです。

方法論の違いについては、医者を例にするとわかりやすいと思います。
昔の医者は患者にろくな説明をしませんでした。
なにか質問をすると、「素人は口出しをするな」という感じで嫌な顔をされました。
患者は、症状についての情報も無いまま、ただ与えられた薬を飲むしかない。
今の医者は、情報公開に積極的になり、
症状や薬の効果など、いろいろなことを話してくれます。
同じ薬を処方させるにしても、患者の安心感がまるで違います。

昔の医者と今の医者の違いは、
情報を制限することで余計な手間を省こうとするか、
情報を共有することで相手の理解を得ようとするか、
ということです。
それぞれのスタイルには、それぞれのメリットがあります。
昔のスタイルだと、診察は短時間で済むというメリットがありました。
また、患者が無知であれば、医者にボロが出る心配はほとんどありませんでした。
医者としては非常に楽だったはずです。
一方、今のスタイルだと、時間は掛かるし、いい加減なことは出来ない。
その代わり、患者に安心感をあたえて、信用を得ることが出来ます。

現在の資源評価は、昔の医者のスタイルです。
外部への情報を制限して、内部でしっかりと議論を重ねた上で、
完成度の高い状態にしてから公開することになっています。
そのために、関係者と専門家で、非公開の内部検討会を重ねています。
提示される資源評価につっこみを入れるためには、ある程度の専門知識が必要になります。
漁業者にとっては、提示されたABCを、受け入れるか、受け入れないかしか選択肢がない。
漁業者は、提示されたABCが自分たちの希望する漁獲量に近ければ受け入れるし、
そうでなければ受け入れない。
その結果、減った資源ほど、ABCは無視されることになる
どんなに頑張ってABCを推定しても、実際の資源保護の役に立たないなら、無意味です。

形式的なABCをスムーズに決定することが目的であれば、
情報を制限して、完成品をいきなり提示する現在の方法は良いと思います。
科学的な資源評価の結果を政策に反映していくためには、
今の医者のスタイルを取り入れて、ABCに関する情報を共有していかないとダメです。
ABCの値だけでなく、その内容に関しても情報を早めに提供すべきだと思うのです。
なぜABCがこの値になったのかということを知った上で、納得してもらいたいのです。
もちろん、合意には時間がかかるだろうし、納得してくれない人もいるでしょう。
でも、今のままでは、ABCがスムーズに通っても全く意味がないのです。

現在の資源評価が、昔の医者のスタイルで運営されています。
「情報を公開してくれるな」と言われた以上、ルールには従います。
でも、俺個人としては、資源評価に関する情報を、出来る限り公開すべきだし、
良い面ばかりでなく、限界についても、ちゃんと説明をする義務があると考えています。
この考え方に理解を示してくれる人は大勢いるので、時間はかかるけれども、
徐々に変わっていく可能性はあります。

スタイル 長所

短所

A)情報を制限する

漁業者が反論できない
素早くABCを決定できる
納得してもらえない
感情的に反発される
ABCが無視される
B)情報を共有する

内容について理解を得やすい
納得をしてもらえる可能性がある

資源評価の問題点が明白になる
厳しい反論がくる
ABCの決定に時間がかかる

情報公開の重要性

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今日は、青山でスケトウダラの内部検討会。
子供を保育園に預けてから、自転車で行くことにした。
代々木公園を突っ切るルートでいった。
空は曇りで空気は涼しくて、とても快適。

SANY0051.JPG

で、肝心の会議なのだけど、内容については書かないで欲しいとのこと。
俺がここに会議の内容に関連することを書くと、中の人が大変になるらしい。
関係者に余計な労力をかけたくないので、ぐっとがまんで、会議については書きません。
その代わり、情報公開の重要性について書くことにする。

現在のTAC制度が機能していない最大の要因はABCとTACの乖離だろう。
研究者が計算をした生物学的許容漁獲量(ABC)に対して、漁業者の合意が得られない。
結果としてABCを遙かに上回る漁獲枠が設定されて、資源は減り続けている。
漁業者にとってABCは、漁業を知らない研究者達が机上の空論ではじき出した数字にすぎない。
漁業者が、ABCに合意をしないのは心情として理解できる。
俺が漁業者だったら、絶対に合意をしない。

漁業者の合意形成を得るためには完成した資源評価票をポンと出すのではなく、
評価票がどのようにして作成されたかを公開していくことが重要だろう。
国内ではベストに近いメンツで、議論を重ねて、ABCを決定しているわけだ。
もちろん、会議でオフレコなネタもでるけど、それはほんの一部に過ぎない。

何でも隠し込んで、反論するための情報を与えなければ、つっこみは入らないかもしれない。
その代償として、ABCに対する理解は得られず、意味不明な数字として無視されることになる。
ABCを決めるプロセスを公開すれば、漁業者から反対意見も出るだろうが、
当を得た意見を取り入れることで、ABCの質を高めつつ、合意形成へと進んでいけるはずだ。
現在のように、ABCが決まるプロセスに箝口令をしいている限り、まともな反論は出てこない。
資源評価担当者が漁業者から罵詈雑言を浴びせられるだけで、ABCは無視され続けるだろう。
当事者に情報を提供してが議論に参加できるようにしないと、
理解も合意も得られるはずがない。

ABCに関して、もっと積極的に情報公開をするべきだろう。
どのタイミングで、どこまで情報公開をするかに関する議論が必要だと思う。

明日は、スケトウダラの事前検討会だ

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紆余迂曲はあったものの、スケトウダラを持続的に有効利用するために
出来る限りのことをしようと思う。

スケトウダラの各系群の評価票原案がかなり早く回ってきたので、それぞれ目を通した。
平松さんも松石さんも、すでにコメントをメールで送付済み。
ということで、明日は皆さん、準備万端で、密度が濃い会議になりそうだ。
俺もいろいろと思うところはあるのだが、
内容についてここで書くとまずいのかな。明日、聞いてみよう。
子供を保育園に送ってから行くと、時間的にぎりぎりなのが気がかりだ。

今年は合意形成のプロセスを改善したいところだ。
事前検討会では、ABCの数字でもめるのではなく、
資源評価の内容で濃い議論が出来るようにしたいものだ。

スケトウダラの資料がきた

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ようやく夏本番という感じですね。
内部検討会まで1週間あるので、内容を確認する時間が十分あります。
去年までは当日配布されて、説明をされて終わりみたいなところがあったのだけど、
このタイミングでもらえれば、有意義な議論が出来そうだ。

それはそうと、内部検討会の内容って秘密なのかい?
今度、だれかに聞いておこう。

元データの重要性

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治安が「あぶない」が「あぶない」

殺人事件の被害者数と、交通事故を除いた刑法犯罪被害者(傷害致死等を含む)について、犯罪白書を全巻集めて、私が集計したグラフをひとつだけ載せておく。これをみれば、80年代よりも、現在が大幅に安全であることが一見して理解できるであろう。

日本の治安に関しては、終末思想的な報道が多いけど、
数字を見れば凶悪犯罪が激減してることは明らかなんだよね。
とくに未成年の殺人・強姦は40年前と今とでえらい違いだ。
もちろん40年前の方が多い。
おじさん達が「若者の凶暴化」とかいってもへそが茶を沸かす。
あんたらの方がよっぽど凶暴だったでしょ。

印象ではなくちゃんと数字を見ることが大事なんだよね。
とくにグラフがくせ者なのだ。
自分が言いたいことを示すために、上手にトリミングをして、
恣意的なグラフを作るというのは日常茶飯事だ。
こういったグラフが至る所に氾濫しているのが現状だ。
グラフを鵜呑みにするのではなく、元のデータをあたること。

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from 18 Mar. 2009

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