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魚種別 Archive

欧州の食文化を破壊する日本の魚食 part 2


ヨーロッパウナギの方が、大西洋クロマグロより、資源状態は良かった

ヨーロッパウナギをワシントン条約に載せることが決定した2007年のハーグの締約国会議の前に、FAOの専門家パネルは、ヨーロッパウナギが付属書IIに該当するという勧告を出した。レポートはここ

ヨーロッパウナギの漁獲状況はこんな感じ。当時は、欧州の研究者のなかにも、不確実性が大きいし、規制の必要性を疑問視する声があった。

一方、タイセイヨウクロマグロの場合も、専門家パネルは付属書IIで完全に合意した。また、日本人以外のほとんどの研究者は、付属書Iを支持したのである。それもそのはず、近年の減り方が尋常じゃないのだ。次の図は、ICCATの科学委員会が推定した成熟魚の資源量である。

SSB(産卵親魚のバイオマス)のスケールに注目して欲しい。成熟年齢が長く寿命が長い種の親が10万トンを大きく割り込んだ状態で、毎年2万トンも輸出しているのだから、今の漁業が非持続的なことは一目瞭然だろう。漁獲にブレーキかけなければ、このままご臨終コースなのだけど、ワシントン条約では、付属書IIすら否決されてしまった。つまり、今後2年半はノー・ブレーキで逝く、という結論が出てしまったわけだ。さようなら、大西洋クロマグロ。君のことは忘れないよ。

上の2つの図をみれば、ヨーロッパウナギと、大西洋クロマグロのどちらが危機的状況にあるかは一目瞭然だろう。前回の締約国会議までは、まだ、科学者のアセスメントを尊重するという前提があった。今回はそれが完全に崩れてしまったのは残念なことである。

ワシントン条約を阻止したことで、日本人は、太平洋クロマグロを、最後まで食べ尽くす権利を得たわけである。あと数年で食べ尽くすだろう。その後には、何が残るのか。マグロが減りすぎるとどうなるかはわからない。産卵群が維持できずに消滅するのか、瀬付き(沿岸の小規模群集)として残るかのか。どちらにしても、漁業も輸入も維持できないことは明白である

地球の反対の乱獲された資源を食べ尽くすことが、日本の食文化なのか?

ワシントン条約の規制まで、日本人は、ヨーロッパウナギを大切に食べていたかというと、そうではない。ニホンウナギの下位代替品として、スーパーで山のようにたたき売りされていた。シェアを争う商社が、持続性も相場も無視して、ウナギをかき集めた結果、消費者は一時的に安く買えた。その結果として、資源は枯渇し、消費はほぼ消滅し、食文化自体を壊してしまったのだ。持続性を無視した乱消費によって、欧州およびアジアの未来の食卓のウナギを奪ったのである。ウナギは、年に何度か、晴れの日に食べる食材であって、本来はああいう食べ方をするものではない。土用の丑の日に、ちょっと良い店で、「今年のウナギはおいしいね」と言いながら、味わって食べていた昔の方が、よほど食文化と呼ぶにふさわしいだろう。

タイセイヨウクロマグロもウナギと同じような状況にある。輸入業者が、シェア争いで、相場も市場も無視して、マグロを買いあさった結果が、2万6千トンの冷凍在庫である。親魚量が8万トンを切っている希少種の冷凍在庫がこんなにあること自体が、恥ずかしことである。にもかかわらず、日本のメディアは、「当面は我々の食卓への影響はないようで一安心です」などという恥知らずなコメントを垂れ流し、視聴者はそれを当たり前のように受け入れる。こんな食べ方を「食文化」とかいって、へそが茶を沸かすよ。

大西洋クロマグロをヨーロッパウナギと置き換えて考えて欲しい。地球の反対の資源を最後まで食べつくすのが、日本の食文化なのか。どうせ、大西洋クロマグロは、たいして獲れやしないんだから、最後ぐらいは、地元・地中海の食卓に看取らせてあげたいと、俺は思う。紀元前から、マグロを食べてきた地中海沿岸の人間だって、今まで通りマグロを食べられるわけではないが、少なくとも、我々が食べつくすよりは正当な権利ではないだろうか。

日本近海のクロマグロ漁業の現状 その2


大西洋クロマグロを、壊滅的に減らした一番の要因は、産卵場での巻網操業である。産卵場で産卵群を巻き網で一網打尽にする破滅的な漁法が日本でも2004年から開始され、日本海のクロマグロ産卵群が激減している。実は、日本のクロマグロは、タイセイヨウクロマグロと同様に、危機的状況にあるのだ。

最近、日本海での大型巻き網船の漁獲量が急激に増えている。日本海産卵場で漁獲されたクロマグロは、ほぼすべて境港に集まる。富山も市場が水揚げ報奨金を出したりして、水揚げの誘致しているんだけど、マグロの解体処理に必要な人手が確保できない。結果として、マグロの質が落ちてしまって、値段がつかないので、水揚げされないようだ。境港は、魚がいなくて暇をもてあましている沿岸漁業者が山ほどいるので、「明日マグロがあがるよー」と言えば、200人ぐらいの熟練労働者がすぐに集められる。現状では、まとまった漁獲はほぼすべて境港に水揚げされるので、ここを抑えれば日本海産卵場での巻網の漁獲は把握できる。境港のクロマグロの水揚げはこんな感じになっております。

それまで比較的コンスタントだったのが、2004年から急増した。この前後で、巻網の漁獲方法が変わったのである。2003年までは、クロマグロは混獲の対象であり、「イワシやサバの群れを巻いたら、マグロが入ってた。ラッキー」という感じだった。2004年から、何が変わったかというと、産卵場で、マグロの産卵群を狙った操業をはじめたのである。具体的にどういうことをやっているかは企業秘密なのだが、地を這うような聞き込み取材をしたところ、だいたいのイメージがつかめてきた。日本海のクロマグロの産卵群は、北の方から群れを作って産卵のために下ってくる。そのときに海の底を超高速で泳ぐ。餌も食べないし、網にもかからないので、つい最近まで、漁業者はクロマグロの産卵群が大量に回遊しているのを知らなかった。また、知っていたとしても、獲るための技術が無かった。その状況を変えたのがソナーである。従来の魚群探知機は、自分の船の真下しか見えなかったので、高速で海底を泳ぐマグロ産卵群を追跡することはできなった。ソナーをつかうと、船の周りを360度、1km先の魚群まで丸見えになる。ソナーが普及して初めて、マグロ産卵群を追跡できるようになったのである。

クロマグロ産卵群は、特定の水温帯を通って南下し、産卵条件が整ったら、海面に浮上して産卵行動を開始する。海底を泳いでいるうちは、巻き網では手出しができないので、ソナーを使って根気よく追跡し、産卵行動で浮遊してきたところを一網打尽にしているのである。巻き網漁業者曰く「産卵行動が終わってから、獲っているよ」とのことだが、本当のところはわかりません。

こうして、産卵期に、産卵場で獲られたマグロは、本当にまずい。栄養をすべて卵にとられたうえに、産卵回遊中は餌を食べないから、身がぱさぱさしている。食えたもんじゃない。ヨコワの方が100倍うまいという代物なのだ。これが築地にいくと1kg1200円ぐらい。日本海本マグロといえばありがたがって食べる消費者のおかげで、一応値段はつくのだが、一本釣りのクロマグロは1kg5000円ぐらい普通にします。巻き網のせいで、近海物の大型のマグロの水揚げが減っていて、まっとうなマグロを売りたい店は困っています。大西洋では、産卵場のマグロは、缶詰にしかならないので、畜養ブームになるまでは獲っていなかったわけであり、日本海だって産卵場で獲れば旨いはずがない。でもって、畜養もせずに、やせ細ったままで出荷しているんだから、資源の効率利用という観点からは、大西洋の畜養よりなお悪い。

http://members.jcom.home.ne.jp/hana-tuna/kuromaguro.htm
産卵後のクロマグロは、体力消耗のため、全体的に肉が落ち、特に腰から尻尾の部分がげっそりと痩せてしまう。別名、らっきょうのように細くなるので、 らっきょうまぐろと呼ばれている。肉色はどす黒く、脂もないなど品質が悪く、食べられたものではないため、漁獲し、売っても二束三文にしかならない。

こういうマグロを大量に漁獲し、薄利多売で日銭を稼いでいる境港が、「マグロの水揚げ日本一」とかいって、町おこしをしている。http://furusato.sanin.jp/p/osusume/01/11/

北海道沿岸漁業者とのミーティング その4


スケトウダラ太平洋系群は資源管理ができる唯一の大規模資源

日本のTAC制度で、強制力があるのは、スケトウダラとサンマのみ。サンマは公海資源の出荷規制なので、実質的にまともな漁獲枠があるのはスケトウダラのみと考えて良いだろう。スケトウダラは4系群あるのだが、そのうち2つ(オホーツク、根室)は主群がロシアにある資源なので、日本単独での漁獲枠の設定自体に意味があるか疑問である。日本のEEZに主群がある2つの資源のうち、日本海北部系群は過剰な漁獲枠によって激減してしまった。資源が悪くなる前に、適切な漁獲枠が設定できたのは、スケトウダラ太平洋系群のみ。この漁業は、国内で唯一の、出口規制で管理されている大規模資源なのである。この資源を利用しているのは、北海道の沖底と、沿岸漁業者のみ。沖底と沿岸はあまり仲がよろしくないのだが、それぞれの漁獲枠は予め分けられている。沖底と沿岸の内部では、ある程度の調整は可能である。俺が繰り返し主張してきた、漁業を生産的にするための次の2つの条件が満たされているのである。

  1. 漁獲枠を資源の生産力に対して適切な水準に下げる
  2. 漁獲枠を内部調整が出来る単位まで配分する

なんと、スケトウダラ太平洋系群は、個別漁獲枠制度の条件がそろっているのだ。

漁業はどう変わるのか

漁獲枠がしっかりとしていれば、資源量は安定する。また、漁獲枠が限られていれば、漁師は、市場の需要がある、価値のある魚を狙って捕るようになる。安定 して質の良い魚が水揚げあされれば、需要は必ず増える。結果として、値段はあがり、ブランドも確立できる。管理の実績を積み上げた先には、MSCのエコラ ベルも見えてくる。欧州の白身市場は韓国とは比較にならないぐらい単価が高い。将来的には、ここを狙いたい。数十年スケールで、安定して利益が出る産業に なれば、後継者問題も自ずと解決するだろう。

そのために必要なことは産官学がそれぞれの役割を果たすことだ。

  • 研究者の役割:資源の生産性に応じた漁獲枠を勧告する
  • 行政の役割 :研究者が設定した漁獲枠を沖合と沿岸に配分 し、きちんと守らせる
  • 業界の役割:与えられた漁獲枠から得られる利益を増やし、ここの漁業者の生活が成り立つように配分する

スケトウダラ太平洋系群では、それ ぞれが自らの役割を果たし始めている。歯車がかみ合えば、必ず漁業は利益を生むようになる。

漁獲枠のせいで、魚がいるのに捕れないというのは、漁業者にとってはつらいことだろう。サバ類のように、資源状態が最悪なのに、業界の要求通りいくらでも漁獲枠が水増しされている魚種もあるのに、自分たちだけ漁獲枠で漁業を制限されて不公平だと感じるだろう。しかし、本当に恵まれているのは、北海道のほうである。太平洋のサバ漁業など、自分で食い扶持を破壊しているようなものである。資源管理をしなければ、資源が維持できないのだから、漁獲枠はあった方が良い。国際的にみても実際に、利益を出している漁業国は、資源管理に熱心な国ばかり。アラスカのスケトウダラ漁業は、個別枠が導入されてから、収益が急増した。スケトウダラ・バブルと言っても良いような状況にある。太平洋系群でも、同じように利益を伸ばしていけるはずである。沖合底引きは、すでに資源管理への適応を進めている。漁獲枠を内部で調整し、経済的に有効利用する仕組みを作っている。漁獲枠を守った上で、利益をのばし、新船を建造しているのだから、たいしたものである。こういう風に利益が出るようになったのは、漁獲枠が設定されてからである。加工業者との縦の連携も強化されているようである。このあたりの話は、今度じっくり聞きに行くつもりだ。

教育が成功の鍵

太平洋系群を利用する沿岸漁業は、広範囲に及んでおり、内部の調整は沖底と比べると遙かに難しい。時間がかかるのは当然である。日本では、漁獲枠の管理の歴史がないので、資源管理は「収入が減少するいやなこと」というマイナスなイメージが強い。しかし、実際には、漁業者がこれからも生活をしていくためには必要不可欠なのである。現在の北海道漁業は、変化の時期を迎えている。運を天に任せて、獲れるだけ獲る漁業から、需要が高い魚を計画的に獲る漁業へと変化が徐々に進みつつある。もちろん、変化には常に痛みが伴うのだが、この痛みを和らげるために必要なものが教育である。北海道の漁業はどのような段階にあるのか、今後、どのような方向に進まなくてはならないのか、そして、その結果として、漁業はどのような姿になるのか。これらに対して明確なビジョンをしめすことで、漁業者の感じる痛みを軽減し、変化を促進することができる。海外には、ノルウェーやアラスカのように、この痛みを乗り越えて漁業を改革した国が多数存在する。こういった事例を学ぶことで、自分たちがどこに向かっているかを理解することができるだろう。

沿岸漁業者に、資源管理の話を直接して欲しいという依頼があったが、二つ返事でOKをした。資源管理の意味を教えるのは、我々専門家の仕事であり、日本国内でそれをできる人材はほとんどいない以上、俺がやるしかない。「資源管理で持続的に儲かる漁業」というイメージが浸透すれば、北海道は必ず生まれ変わる。噴火湾周辺のプランクトンの生産量は極めて高いので、親をしっかりと残した上で、効率的な獲り方をすれば、収益は必ず上がる。スケトウダラ太平洋系群は、日本漁業のありかたを変えるきっかけになるだろう。現場の情報と、資源管理の理論がかみ合って、具体的なビジョンを出していくことで、漁業を生産的な方向に導くことができる。漁業者のリーダーと資源管理の専門家が、漁業を持続的・生産的にするという共通の目的をもって、建設的・前向きな話ができたということは、とても意味がある。次に繋がる有意義な会合だったと思います。

北海道沿岸漁業者とのミーティング その2


過剰な漁獲枠は沿岸漁業のためにならない

スケトウダラ日本海北部系群は、90年代から卓越が発生せずに、資源がじりじりと減少していた。そのような状況で1998年に待望の卓越年級群が発生した。1998年級の資源量を大幅に過大推定した結果、過剰な漁獲枠が設定されていた。沖底は広範囲を自由に操業できるので、卓越年級群であった1998年級を2歳、3歳といった未成熟な段階でほぼ獲り切ってしまった。ふたを開けてみれば、心待ちにしていた卓越年級群が沿岸漁業の漁場である産卵場に戻ってくることは無かったのである。減少期に生まれた唯一の卓越年級群を未成熟のうちに獲り切ったことで、この資源は壊滅的に減少してしまった。

詳しい経緯は過去ログをみてください

http://katukawa.com/category/study/species/suke/page/3
http://katukawa.com/category/study/species/suke/page/4


この失敗から学ぶべき点は2つある。

1)不確実な段階で漁獲枠を増やすのは危険

現在の漁船は、沿岸も沖合もすこぶる性能がよい。多少、魚が多くても、獲ろうと思えば、獲り切れてしまうのだ。資源評価が不確実な段階で、スケトウダラの漁獲枠を増やすと、資源の持続性の観点から賛成できない。研究者は、魚が獲れるからといって、すぐに漁獲枠を増やさなかった。日本海北部系群を減らしてしまった苦い経験から、慎重にならざるを得ないのである。

2)過剰な漁獲枠設定によって、沿岸の既得権が失われる

漁獲枠が過剰だと、沿岸はTACを消化できない。その一方で、沖底は未成魚を獲ってつじつまを合わせることができる。沖底は過剰な漁獲枠を未成魚で埋めたが、沿岸は過剰な漁獲枠を消化できなかった。結果として、沿岸の未消化枠が取り上げられて、沖底に配分されてしまった。沖底と沿岸の漁獲枠の比率は、昔は5:5だったのが、現在は6:4ぐらいになっている。漁獲枠を増やせば、沿岸漁業の既得権を沖底に譲り渡す結果になるのである。

ただ、こうなるのは、水産庁の漁獲枠配分方法に問題がある。この点については以前から指摘をしてきた。スケトウダラ日本海北部系群の漁獲枠を沿岸が消化できなかった理由は、漁獲枠が過剰だったからである。資源評価を下方修正した後も、水産庁がABCを無視して、過剰な漁獲枠を設定し続けている。結果として、沿岸は漁獲枠を消化できずに、既得権を失い続けている。資源量に対して適切な漁獲枠を設定し、それでも消化できなかったのなら、未消化枠の有効利用について議論をしても良いだろう。明らかに過剰に設定された枠を消化できなかったからといって、未来永劫その権利を取り上げるのは、おかしな話である。乱獲をした漁業者の枠が増えて、乱獲しなかった(できなかった)漁業者の枠が減るなどという話は聞いたことがない。こういうおかしな実績主義によって、「与えられた漁獲枠はなんとしても消化しないといけない」という強迫観念を漁業者に植え付けている。

TAC制度の問題点
水産庁は、持続性を無視した漁獲枠を設定しておきながら、未消化枠は取り上げる。漁業者は既得権を守るために過剰な枠を埋めねばならず、結果として乱獲を推進している状態である。

改善案
未消化枠を取り上げるのはやめるべき。豊富な資源に限り、未消化漁獲枠の一部を翌年に持ち越せるような仕組みを導入する。たとえば、ニュージーランドでは、年間漁獲枠の10%を上限として、未消化の漁獲枠を翌年に持ち越すことができる。そういう仕組みがあれば、無理に獲らなくなるだろうし、漁獲が遅れれば、それだけ資源にも漁業にも良い影響がある。

沿岸が無理して獲らなくても良いような、制度設計を考える必要がありますね。

北海道沿岸漁業者とのミーティング


音響ミーティングの翌日に、道漁連幹部と北海道の組合長3人と会合をした。内容は、スケトウダラ太平洋系群の資源管理に関する事柄。先方からは、沿岸漁業の資源管理の取り組みに関する情報提供があり、こちらからは、資源評価の内容や、今後の管理の方向についての提案を行った。結果から言うと、非常に建設的で、有意義な会合でした。実際に会って、意見交換をするのは重要ですね。

バックグラウンド

一般読者にもわかるようにバックグラウンドを少し説明します(わかっている人は読み飛ばしてください)。スケトウダラは冬に産卵場にやってくる。その産卵群を待ち伏せして刺網で漁獲をするのが沿岸漁業。一方、広範囲で未成魚から漁獲するのが沖合底引きである。今年は、魚が産卵場に来るのが早かったので、沿岸は漁期前半に漁獲枠の大部分を消化してしまった。もともと、初回成熟の親が多いから、来遊が早いというのはわかっていたので、沿岸漁業者は自主規制で網の長さを短くしていた。それでも予想を上回るペースで獲れてしまったのである。

沿岸漁業者は、資源が豊富なので漁獲枠を増やすように11月にデモを行った。また、北海道水産試験所の音響調査で、魚群密度が高いという結果が得られたことから、そのデータを元に漁獲枠を増やすかどうかを検討する会議が、年を越して1月8日に緊急開催された。この会議には、俺は北海道外部委員として出席した。水産庁はその前の月にも、低水準なサバ類の漁獲枠をホイホイ増やしたばかり。今度も増やすのだろうと警戒しつつ、情報を収集したところ、広範囲でそれなりに獲れているし、値段も悪くないことがわかった。「資源量もそれなりに安定しているので、マサバ太平洋のような危機的状況ではない。TACがABCを超えている状態なので、期中改訂による増枠はしないにこしたことはないが、するにしても沿岸・沖底それぞれ3000トンが限度」、というような方針で会議に臨んだのです。ところが、予想に反して、国が毅然とした対応をして、「増枠はできません」ということになりました。増枠しないという結論に異論はないので、会議では特に発言をしませんでした。

結局、期中改訂は見送られ、沿岸は漁獲枠を消化したため、1月中頃に終漁となりました。漁期中にTAC満了で漁獲をやめるのは2007年以来です。

会議が終わった後、ブログに北海道漁業者の資源管理意識について厳しいことを書いたのです。それが北海道の沿岸漁業者の目にとまり「誤解を解きたい」ということで、今回のミーティングになったのです。いろいろと話を伺って、沿岸もTACを軽視していないというのは、良くわかりました。また、ブログでは書きすぎた部分もあったので、その点については、真摯に謝罪をしました。その上で、今後、北海道の沿岸漁業をどのように発展させいていくかという観点から、いくつか提案をしました。

勝川の主張

1) 漁獲枠は増やさない方が沿岸漁業の長期的利益が増える
2) 研究者は増枠に消極的な理由
3) スケトウダラ太平洋系群の資源管理の今後の方向性

私からの提案については、次回以降で、詳しく説明します。

銚子の乱獲船団は、今年も絶好調です!


銚子・波崎地区の1月の水揚げ

トン 単価(円/kg)
12 2996 48
13 2111 34
16 4396 26
19 1644.4 31

うわっ、安っ。サバ漁業の未来を、絶賛投げ売り中ですね!

あーあー、相場を壊しちゃったね。サブプライム以降も、60円から80円をうろうろしていたのだけど、こりゃ厳しいですね。現在、漁獲をしているのは、150g以下の09年生まれのサバです。小さすぎて、マサバかゴマサバかの区別もつきづらいようです。まあ、こんなサイズではマサバだろうと、ゴマサバだろうと、どちらも等しく価値がないのですね。

回復計画の補助金をもらう代わりに、「沖あがり2,000トン超えた場合は翌日休業」という決まりになっていたはずだが、なぜ12日、13日と連続で2000トン超えるんだろう。回復計画の補助金はもらうけど、休漁はやらないということですか?


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄」
―――――――――――――‐┬┘
                        |
       ____.____    |
     |        |   北巻 |   |   日本漁業の未来を
     |        | ∧_∧ |   |   窓から
     |        |( ´∀`)つ ミ |   投げ捨てろ
     |        |/ ⊃  ノ |   |
        ̄ ̄ ̄ ̄’ ̄ ̄ ̄ ̄    |    ミ○○○

マサバ0歳魚の乱獲を要求する人々


07年生まれを0歳からガンガン獲っていたときに、どんな話をしていたのか、振り返ってみよう。これは、07年の全国評価会議(公開)で巻網関係者が「0歳が多いからABCを増やせ」とごねているところ。水研センターと水産庁(漁場資源課)は、0歳魚の漁獲はできるだけ控えて欲しいというトーンです。

zenkoku07

0:00 高橋 正三さん(北部太平洋まき網漁業協同組合連合会専務理事)
04年級群の資源量を過小推定していたし、お前らの資源評価は当てにならないから、漁獲枠を増やせ。

0:10 水研 評価担当者
07年級は現時点ではどれぐらいいるかわからないから、漁獲枠を増やすのは危ない

4:38 高橋 正三さん(北部太平洋まき網漁業協同組合連合会専務理事)
資源評価に不確実性があるのは怪しからん
(俺コメント:資源量がわからないうちに、0歳を漁獲する方がおかしいだろjk)

5:24 茨城水試
0歳の資源量は来年の3月にならないと解らない→その時点で判断すればよいのでは?

6:47 水研 評価担当者

7:53 司会(漁場資源課)
低位で、回復させなきゃいけない状況で安全を見るのはやむを得ない

9:26 巻き網業界(高橋さん?)
研究者が、安全性を考慮して、漁獲枠を設定するのは怪しからん。

10:51 水研評価担当者

11:44 巻き網業界

12:15 司会(漁場資源課)

12:40 岡本勝さん (社団法人 いわし食用化協会専務理事 水産庁天下り)
水産庁は経済官庁だから、環境など無視して、業界の都合を優先すべき。
担当班長ごときが反抗するな

14:01 司会(漁場資源課)

15:20 岡本勝さん (社団法人 いわし食用化協会専務理事 水産庁天下り)
第三者的に見て異様な感じる

16:10 俺
親がいないのに0歳を獲るのはアホ

北巻関係者って、なんでこんなに偉そうなんだろうな。いつみてもふんぞり返っていて、つっかえ棒でもなければ、後ろに倒れそうだ。サバもイワシも、こんなに減らした張本人が、明らかに非経済な0歳魚を漁獲しておきながら、なぜ居丈高なのか、俺には、まるでわかりません。

あと、笑えるのが、天下りの岡本さん。北巻に天下った岩崎さんと同じで、ずぶずぶの人間に限って、第三者を自称するのは、なんでだろうね。水産業を破壊した張本人が、自分を第三者とかいうのは無責任にもほどがある。「水産庁は環境じゃなくて経済官庁だ」と力説しているけど、そもそも乱獲を放置するから、漁業という産業が廃れているのである。

漁場資源課の皆さんも、立派な先輩をもつと苦労が絶えませんね。心から、同情します。

しっかし、レベルが低い議論だよね。0歳のサバを漁獲すること自体が非常識なんだから、全部禁止でいいじゃん。やり方は簡単だ。サバの水揚げで、200g以下が8割を超えたら、売り上げは没収して資源回復計画の原資に当てる。それから、水揚げ100トン以上で、200g以下が8割を超えた港は、1週間サバ類の水揚げ禁止。これぐらいは、まともな漁業国はどこだってやっている。0歳魚の漁獲をアシストする日本の水産行政の方が、第三者的に見て異様です。

当時の記事はこちらです。「全国評価会議の音声を公開します」

今年の全国評価会議は、いまいち、盛り上がらなかったな。公開性の高いABCに圧力をかけると、騒がれるから、密室の水産政策審議会で期中改訂をする作戦にしたのかな。まあ、どっちみち叩くけど。

まるで成長していない


マサバ太平洋系群の当たり年の運命

92年級群

0歳1歳で獲り尽くされる。再生産にはほとんど寄与せず

96年級群

0歳1歳で獲り尽くされる。再生産にはほとんど寄与せず

04年級群

0歳の時は銚子沖の巻き網漁場に行かなかった。本格的な漁獲は1歳から始まった結果として3歳までそこそこ獲れた。3歳で07年級を生み出してほぼ消滅。

07年級群

0歳、1歳で漁獲され、2歳でほぼ消滅?

09年級群

0歳から集中漁獲され、史上最低価格で、途上国に絶賛投げ売り中

現在も07年級群が見えなくなったところで、0歳魚に漁獲の中心が移行した。ちょっと待てば確実に増えるのに、なんでこんな綱渡りをするのか理解にくるしむ。実は、07年にも、おなじことをやっている。「ウホッ!0歳魚が多そう」とかいって、誘われるままにホイホイと漁獲枠を544千トンから、746千トンに増枠しちゃったのだ。結果として、資源回復の芽を摘んだようだが、なんで同じ事を繰り返すかなぁ。

まるで成長していない(ずれるのでAA略)

マサバの魚価を破壊する水産行政


水産庁は余計なことをして、サバ資源の回復を妨害するばかりでなく、漁業そのものも破壊しつつある。

07年級を獲り尽くしたために、今年のサバの水揚げは前年度の6割で推移してきた。1歳以上がほとんど獲れない中で、今年産まれたばかりの0歳魚が10月から獲れだしたら、すぐさま11月に漁獲枠を増やしやがったのである。こういうときの対応だけは、本当に素早い。11月に余計な増枠をしたせいで、12月の魚価は近年無かったレベルまで低下した。サバの単価(産地市場)と漁獲量の推移はこんな感じ。

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11月末というのは、漁獲枠を増やすのに、最悪のタイミングだ。鮮魚は年末需要で12月に相場が上がる場合が多い。ただ、これはあくまで国内向けの鮮魚の話。今獲れているような0歳のサバは、途上国向けの輸出か、養殖の餌なので、年末需要は無関係である。

サブプライム以降、円高によって、現在、輸出はストップしている。もともと、アフリカ・アジアの購買力が最低の国に、値段の安さだけで売り込んでいたので、円が少し高くなると輸出できないのである。選択肢としては養殖向けの餌しかないのだが、養殖魚は年末にあらかた出荷するので、12月以降は餌の需要が激減する。今、0歳のサバを捕ったところで、どこにも売れないのである。こんな時期に、期中改訂で漁獲枠を増やせば、魚がだぶついて、魚価が急激に落ちるのは自明である。実際、11月末にTACが増枠されるやいなや、魚価が下落し、史上最低記録を更新しそうな勢いである。

こういう漁業をしていたら、安く買いたたいてきて、捨て値で売って利ざやを稼ぐようなビジネスしか成り立たない。わざわざ、そういう方向に政策誘致をして、限られた海の生産力を浪費しているのだから、日本の漁業が廃れるのは自明である。

日本がやるべきことは簡単だ。漁獲に占める200g以下の割合が8割を超えたら1週間禁漁とかして、未成魚をまもる。でもって、2歳になって、卵を産ませてから取り始めればよい。脂がのった日本のマサバは抜群に旨いので、それだけで、ノルウェーのサバから日本市場を奪回できると思うよ。加工屋も大喜びだ。なんで、こんな簡単なことが出来ないのだろうか。

マサバ資源を破壊する水産行政


12月のサバの乱獲について、情報を整理しよう。サバは、乱獲によって、激減している。90年代以降、94、96、04、07年と、親が少ないわりに卵が多く生き残る当たり年があった。にもかかわらず、乱獲で資源回復の芽をつんで、今日に至っている。

(↓サバの資源量)

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当たり年を食いつぶすだけの日本のサバ漁業は、2000年から2003年までは大底を迎えた。その後、幸運にも2004年、2007年と当たり年が発生したので、「サバ資源は回復した!!」といって、獲って、獲って、獲りまくっているわけだ。今年になって、2007年生まれをほぼ獲り尽くしたと思いきや、なんと2009年生まれの0歳魚が順調に獲れている。サバの当たり年が連続するしているのは、おそらく、カツオやブリも、小型のうちに巻き網が獲り尽くしているおかげで、捕食者がいないからだろう。首の皮一枚でつながった状況である。ほっとしたのもつかの間、水産庁が例によって、例のごとく、「サバが増えたから漁獲枠をふやそう」と言い出して、11月20日の資源管理分科会で、サバ類の漁獲枠の増加が承認された。

平成21年漁獲可能量(TAC)の改定及び22年TACの設定等諮問第167 号について

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9月以降は、全国的に0歳のジャミサバ主体の漁獲である。資源は全然回復していない。「未成魚主体の水揚げになったから、サバは禁漁にする」というなら話はわかるが、なぜ、漁獲枠を増やすのか理解できない。これを諮問した資源管理分科会の議事録は、未だに公開されていない。どうせ、ほとぼりが冷めた頃に、こっそり出す気だろう。まあ、どういう経緯かは、容易に予想がつく。水産庁が「サバが増えたからTACを期中改訂で増やすよ~」といったら、委員が「賛成、賛成、大賛成、業界も大喜びでござる」とかいって、さくっと決まったのだろう。いつものパターンだ。天下りと御用学者で固めた諮問委員会にまともな議論を期待することはできない。

俺が腹が立つのは、資源回復計画とかいって、未成魚保護を口実に北部巻き網組合に税金をばらまいていることだ。そマサバ太平洋系群回復計画には、次のように書かれている。

4.資源回復のために講じる措置と実施期間
(1)漁獲努力量の削減措置
本計画期間の5年間においては、当初、卓越年級群を中心とした未成魚の保護のため、これらを漁獲対象の一部としている太平洋北部水域(許可区分水域で千葉県野島埼以東)の大中型まき漁業を主対象として資源回復に取組むこととし、さらに
、これら未成魚が成長した段階で産卵親魚としての保護が必要となってくることから、本計画の実施状況や資源の回復状況等を踏まえつつ、対象水域の太平洋中・南部水域への拡大や、大中型まき網漁業以外の漁業についても、関係漁業者との協議を経て、逐次資源回復のための措置を講じていくこととする。なお、大中型まき網漁業による漁獲努力量の削減は、休漁と減船の組合せにより実施する。

卓越年級群を中心とした未成魚の保護のためといって税金をばらまいておきながら、漁期中に漁獲枠を増やしてまで、未成魚の乱獲をアシストしている。言っていることとやっていることがまるで違う。国民に対する背信行為である。

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from 18 Mar. 2009

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