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豪州政府は燃油価格の高騰に対して、補助金ではなく、資源管理で対応するらしい

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燃油の価格が高騰しているのは、日本だけではありません。海外ではいったいどのようになっているのでしょうか?

オーストラリアは燃油高騰対策の補助金が不要だそうです。実際に業界からも要求がほとんど出てこないというから、驚きです。そして、その理由が資源管理をしているから、というので、またまたびっくり。

インタビューをしたのは、オーストラリアの資源管理機関AFMA(Australian Fisheries Management Authority )のExecutive ManagerのNick Rayns氏です。つまり、政府の漁業管理機関の責任者。このインタビューは実に興味深いです。

豪州では規模が大きい漁業からITQを導入している最中です。ITQを導入した漁業では、産業が変化に対して柔軟になるから、不満はでないそうです。豪州では、船ごとに獲れる漁獲量が決まっているので、漁師は毎日海に出る必要はありません。利益を出せない漁業者は、その年の漁獲の権利を他の漁業者に売って利益を得ることも可能です。
水揚げの効率化が進むことで、産業全体としては利益を確保できるので、魚を獲りに行く漁業者も、魚を獲らない漁業者も補助金が無くても問題はない。

ITQがまだ導入されておらず、網目規制や漁期規制のみで管理をしている漁業もあります。そういう漁業では、漁に出なければ収入はゼロです。みんなが漁に出ても、みんな赤字という状況になるので、漁業者からは不満の声が上がっているそうです。燃油価格が上がると採算がとれなくなる漁業に関しては、燃油の補助金を配るのではなく、ITQへの移行を進めるというのが、豪州政府の方針だそうです。

いやぁ、実に明快ではないですか。目から鱗でした。
詳しくは下のビデオを見てください。

世界の漁業管理を2つの軸で整理しよう

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日本では、「日本独自の管理」と「欧米の管理」の二元論で語られることが多い。
ステレオタイプなイメージはこんな感じだろう。

欧米スタイル→トップダウン(上意下達)、漁業者無視、科学絶対視、漁村崩壊、大規模企業独占
日本スタイル→漁業者の自主性、話し合い、ボトムアップ、きめ細かな規制、漁村繁栄

この考え方のおかしな点は、日本以外をひとくくりにしていることだ。
欧米にだって、漁業者を無視している国もあれば、そうでない国もある。
欧米と一口に言ってもその管理制度は千差万別であり、
「欧米の制度」とひとくくりに出来るようなものではないのである。
「資源管理は国それぞれで、複雑である」で終わりにしては単なる思考停止なので、
もう一歩進んで、欧米の管理を2つの軸に沿って分類してみよう。

一つは、合理性・非合理性という軸。
もう一つは、ボトムアップ、トップダウンという軸である。

合理性・非合理性

合理性・非合理性については、2つの条件で判断できる。

あ)科学的アセスメントに基づいて乱獲リスクを管理しているか
い)産業の発展を阻害する不健全な競争を抑制しているか

あ)科学的アセスメントに基づいて乱獲リスクを管理しているか
日本以外の先進漁業国はおおむね条件を満たしている。
先進国では、乱獲を放置していたら、国民が許さないから、
行政もしかりとした対応をとらざるを得ない。
科学的なアセスメントをしっかりやって、その結果に従うことで、
資源の持続的利用への説明責任を果たしている。

い)産業の発展を阻害する不健全な競争を抑制しているか
譲渡可能な個別漁獲枠制度を導入したノウルェー、アイスランド、NZ、AUSに比べて、
オリンピック制度に固執し続けた米国・カナダは非合理的である。
実際に、これらの国の漁業管理は、前者ほどは上手くいっていない。
米国は自由競争を国是とするために、予め枠を配分して既得権化することに消極的であった。
結果として、米国の漁業は混乱し、甚大な悪影響を与えてしまった。
ただ、米国は自国の失敗を認めて、ITQへの方向転換を表明している。
やるとなったら、とことんやるお国柄だけに、どこまで突っ走ってくれるのか実に見物である。
このあたりの経緯については↓を読んでください。
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/09/itq_4.html

ボトムアップ、トップダウン

漁業者の意向を無視して、行政機関が方針を決めて、実行してしまうのがトップダウンである。
NZ, AUS, 米国がこのスタイルだ。
これらの国の漁業者は「行政は俺らの意見など聞きやしない」と、諦め顔である。
ただ、トップダウンだからといって、これらの国の行政官が好き勝手に裁量を振るっているわけではない。
納税者全体への説明責任を重視して、漁業者の意向よりも科学的アセスメントを重視しているのだ。
漁業者の意向は無視されていても、日本のTAC制度のようにお上の胸先三寸ではないのである。

国民の大多数が漁業に関連しているアイスランドや、漁業者の政治力が強いカナダでは、
より漁業者よりの政策を採用している。

漁業者の意向を全面的に採用しているのが、ノルウェーである。
ノルウェーの資源の多くは国際資源であり、ノルウェーの漁獲枠はEUとの国際交渉で決まる。
ノルウェー国内で沖合漁業と沿岸漁業に漁獲枠を配分するのだが、
その配分比を決めるのは、毎年行われる漁業者の代表の話し合いである。
漁具漁法の規制なども、この漁業者間の話し合いで決定する。
漁業者が合理的な選択をする手助けをするのが研究者の役割であり、
漁業者の決定を法制化し、監視・取り締まりをするのが行政の役割だそうだ。

俺はこの話をきいて、たまげてしまった。
漁業者の話し合いで、漁獲枠の配分が決まるとは、にわかには信じられなかった。
「話し合いがまとまらなかったら、どうするの?」とノルウェーの行政官に質問をしたら、
「その時は、放置しておく。そういう事例もあったが、2年後には漁業者が結論を出した」とのこと。
彼の話の端々に、漁業者の意思決定能力への揺るぎない信頼を見て取ることができた。

まとめ

世界の資源管理を図にするとこんな感じになるだろう。

image08041101.png

次回は、日本のTAC制度と資源管理型漁業が、この図の何処に来るかを議論しようと思う。
読者の皆さんも、日本の資源管理の位置付けを考えてみてください。

個別割当制度で優良漁業を守れ

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漁業全体の長期的な利益を増やすという観点からは、
小さい魚を多く獲って安く売る漁業より、
大きな魚を少なく獲って高く売る漁業の方が望ましい。
現在の日本漁業は早い者勝ちの自由競争であり、
他の漁業者よりも早く、根こそぎ獲る漁業しか生き残れない。
資源管理をしないということは、
不合理漁獲をする漁業を優遇することに他ならないのだ。

大分県の例でも、状態を放置しておけば、巻き網の乱獲が進行し、
関サバ漁業は消滅する可能性が高い。
1尾5000円で十分に卵を産んだ大型個体を獲る漁業が淘汰され、
1尾10円で未成熟魚を中国に売る漁業が生き残る。
それが、現在の日本の漁業システムの当然の帰着なのだ。

関サバ漁業が淘汰されるような制度では、日本漁業に明日はない。
日本人が高い金を出してでも食べたいと思うような良質な魚を
安定供給できるようなシステムに作り替える必要がある。

まず、TACをABCまで下げるのは、資源管理として当然だ。
でも、それだけでは関サバ漁業は生き残れない。
オリンピック制度では、スタートダッシュで獲りまくれる巻き網が漁獲枠を独り占めするだけだろう。
漁業者間の競争によって、漁期が短縮し、漁業の利益は限りなく減少していく。
漁獲枠を厳格にしたところで、オリンピック制度では資源は守れても漁業は守れない。
このことは、米国、カナダの失敗から明らかだろう。

過剰な早獲り競争を抑制するには、個別割当方式(IQ・ITQ)しかないだろう。
IQは、予め漁獲枠を個々の漁業者・漁船に割り振っておく制度である。
関サバ漁業者と巻き網漁業者にそれぞれ漁獲枠を予め配分しておくことで、
双方の漁獲量を保証することが出来る。
それぞれの漁業者は与えられた枠内での、利益の最大化を目指すことが出来る。

まとめ
漁業から持続的に利益を得るためには、
資源の再生産への影響を少なくしつつ高い利益を上げるのが望ましい。
関サバ漁業は、極めて理想的な漁業と言える。
しかし、現在の無管理状態では、不合理漁獲に淘汰されてしまう。
持続的に利益を上げられる漁業を守り、育てるためには、
IQやITQのような権利ベースの漁獲枠配分システムの導入が必要である。

「日本漁業にITQはなじまない」という嘘

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ITQへのありがちな反論として、「日本は多様な魚を利用しているから、ITQは無理」というのがある。
これがいかに的外れな批判かを説明しよう。

たしかに日本は多様な魚を利用しているが、そのすべてをITQで管理しろなどとは誰も言っていない。
俺の主張は、現在のTAC魚種の管理をオリンピック制度をITQに置き換えろというものだ。
日本漁業において、生産量として重要な魚種は限られている。
主要な魚種数が世界の漁業と比べても、特別に多いわけではない。
そのことを数字を使ってみてみよう。

FAOのThe State of World Fisheries and Aquaculture 2006のP29に以下のような記述がある。

Most of the stocks of the top ten species, which account in total for about
30 percent of the world capture fisheries production in terms of quantity (Figure 6 on p. 11), are fully exploited or overexploited and therefore cannot be expected to produce major increases in catches.
image08012301.png

世界の漁業では、上位10種で全体の漁獲量の30%を占めているというのだ。

一方、日本の漁業では上位10系群で海面漁業生産の約50%を占めている。
上位10種にしたら、もっと割合は上がるだろう。
日本で利用されている魚種は多いが、量として重要な魚種はそれほど多くないのである。

Image200801091.png

ITQは、企業的な大規模漁業を管理するためには不可欠である。
大臣許可漁業、特に巻き網のような漁業をターゲットにITQを導入すべきだと議論をしてきた。
それらの重要魚種の殆どは、既にTAC制度で管理の対象になっている。
現在のTAC対象種は、漁獲量の個別配分と譲渡のルールさえ決めれば、ITQの導入は可能である。
それだけで、日本の漁獲量の半分程度はカバーできるのである。
まずは、そこからやるというのは全然無理な話ではない。
むしろ、ITQではなく、オリンピック方式を採用していることが非常識なのだ。

現行のオリンピック制度をITQに改めろという我々の主張に対して、
「日本は多様な魚を利用しているから、ITQは無理」という反論はそもそも的外れなのだ。
「日本全国津々浦々の海産物全部をITQで管理しろ」なんて、誰も言っていない。
ITQの適用範囲は、現在のTAC魚種+数種に限定されるだろう。
日本の脆弱な研究体制では、ローカルな魚のABCまで推定できないことは、
実際にABCの計算に携わっている我々が一番よく知っている。
そもそも、ITQ先進国のアイスランドだって、ITQで管理しているのは沖合漁業のみで、
沿岸は地域ベースの管理である。それでも十分な効果があるのだ。

「日本漁業にはITQがなじまない」と主張する人間には、
現在のTAC魚種を、ITQではなく、オリンピック方式で管理すべき理由を示すべきである。
もちろん、ITQが完璧な管理システムだなどというつもりはない。
しかし、世界の主要な漁業を見渡せば、ITQがもっとも成功している管理方式であり、
既に使えないことが証明済みなオリンピック方式よりも優れていることに異論の余地はない。
オリンピック方式を使わなければならない理由があるなら、それを示してもらいたいものだ。

「ITQは日本漁業にはなじまない」と主張する人間が、日本になじむ資源管理の実例を示した試しはない。
対案をださずに、ただ、反対をしているだけである。

ITQに反対している人たちは、資源管理自体に反対なのだろう。 
 

次のTAC魚種は、ずばり、これだ!

  • 2008-01-09 (水)
  • ITQ
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規制改革会議から出された今年の宿題に「TAC対象魚種の拡大の検討」というのがある。
水産庁もいろいろ忙しくて大変だろうから、宿題を手伝ってあげよう。

評価票に漁獲量の記載があった79系群の漁獲量をどんどん足していくと、次ような図になる。

Image200801091.png

最初の立ち上がりは急だが、20を超えた当たりからほぼ頭打ちになっている。
上位20系群で260万トンに対して、全79系群で280万トンである。
21位から79位までを足しても20万トンにしかならない。
確かに、日本沿岸の水産資源の種類は多いが、漁獲量として重要な種は限定的である。
日本沿岸が南北に長く、黒潮・親潮が混ざる複雑な海洋環境だから、地域によって魚が違う。
結果として、地域色豊かな海洋生態系がはぐくまれ、地域色豊かな多様な食文化が生まれたのである。
利用している魚の種類は多いけれど、漁獲量として重要なものは限られているのである。

2005年の漁獲量の上位20のランキングは、つぎのようになる。

魚種
系群
2005漁獲量
合計
1 サンマ 太平洋北西部系群 469479 469479
2 カタクチイワシ 太平洋系群 250974 720453
3 マサバ 太平洋系群 226493 946946
4 スルメイカ 秋季発生系群 223640 1170586
5 マサバ 対馬暖流系群 207000 1377586
6 マアジ 対馬暖流系群 183000 1560586
7 スルメイカ 冬季発生系群 178213 1738799
8 ゴマサバ 太平洋系群 160000 1898799
9 スケトウダラ 太平洋系群 159868 2058667
10 ホッケ 道北系群 121769 2180436
11 ゴマサバ 東シナ海系群 86000 2266436
12 カタクチイワシ 対馬暖流系群 74143 2340579
13 カタクチイワシ 瀬戸内海系群 57100 2397679
14 ブリ 55591 2453270
15 マアジ 太平洋系群 48000 2501270
16 マダラ 太平洋北部系群 26604 2527874
17 スケトウダラ 日本海北部系群 25910 2553784
18 マイワシ 太平洋系群 24877 2578661
19 ウルメイワシ 対馬暖流系群 20240 2598901
20 イカナゴ類 宗谷海峡 19777 2618678

上位20種の中でTAC対象資源を青で塗ってみた。
なんだかんだ言って、重要資源は既に資源管理の対象になっているのである。
誰が選んだか知らないが、TAC魚種というのはなかなかよく考えられている。
ただ、その管理の内容に問題が大ありだ。
TAC対象種の数を増やすよりも、現在のTAC制度をまともな資源管理に改良していくのが先決だろう。

TAC対象ではないのは、カタクチ、ホッケ、ブリ、マダラ、ウルメ、イカナゴがランキングした。
これらも将来的にはTACの対象にした方が良いとは思うが、難点も多い。
カタクチイワシは、単価がべらぼうにやすくて、漁業としての重要度は低い。
また、ホッケは親は岩場に入ってしまうので、まとまってとれるのは未成魚だけ。
親はつりでしかとれないので、資源量の推定が非常に難しい。
未成魚だけをみて資源全体を把握するのは至難の業である。
ただ、難しいからといって、放置しておいて良いわけではない。
カタクチイワシは最近減少が顕著であり、要注意資源になりつつある。
日本海のスケトウダラの崩壊が確実な北海道では、ホッケに崩壊フラグが立っており、
ホッケの管理体制を整えるのが急務である。
十分な情報が無いのはわかるけど、関係者で知恵を絞って何とかしないとまずい。

ランキングには入らなかった系群でも、漁獲枠で管理すべきものはいくつかある。
ロシアが大量に利用しているイトヒキダラ 太平洋系群は早急に管理を始めるべきである。
沿岸国の権利をしっかりと主張して、守るべきものは守らないといけない。
ベニズワイやアカガレイなどの底もの重要種も管理をした方がよいだろう。
この辺を重点的に検討してください>中の人


過去の最大漁獲量をつかって、同じような図をかいてみた。

Image200801092.png

こちらも20系群で頭打ち傾向が顕著である。
歴史的にみても重要種は限られているのである。
こちらの上位20位は次の通り。

魚種
系群
Max
合計
1 マイワシ 太平洋系群 2915763 2915763
2 マサバ 太平洋系群 1474434 4390197
3 マイワシ 対馬暖流系群 1283914 5674111
4 マサバ 対馬暖流系群 821000 6495111
5 サンマ 太平洋北西部系群 469479 6964590
6 カタクチイワシ 太平洋系群 415437 7380027
7 スルメイカ 冬季発生系群 379422 7759449
8 スルメイカ 秋季発生系群 317385 8076834
9 スケトウダラ 太平洋系群 294765 8371599
10 スケトウダラ オホーツク海南部 279135 8650734
11 マアジ 対馬暖流系群 277000 8927734
12 ホッケ 道北系群 205086 9132820
13 スケトウダラ 日本海北部系群 162898 9295718
14 ゴマサバ 太平洋系群 160000 9455718
15 カタクチイワシ 瀬戸内海系群 149900 9605618
16 カタクチイワシ 対馬暖流系群 128250 9733868
17 ゴマサバ 東シナ海系群 116000 9849868
18 スケトウダラ 根室海峡 111406 9961274
19 マアジ 太平洋系群 83000 10044274
20 ムロアジ類 東シナ海 80698 10124972


トップ4はマイワシとマサバが独占だが、どちらも巻き網に乱獲されて激減中。
巻き網はとても効率的に小さい魚からとれてしまう漁法だから、
日本のように補助金をばらまくだけで、まともな漁獲規制をしなければ必ずこうなる。
巻き網業界が困るのは自業自得なんだけど、
他の沿岸漁業者や加工や流通や消費者にとって、迷惑この上なしだ。

サンマは業界が強いので、巻き網に魚をとらせていない。
これがサンマ豊漁の秘訣だろう。
また、小型魚を投棄する選別機の使用を止めた英断も、資源に良い影響を与えたはずだ。
ただ、資源状態が良くなっても、それが収入につながっていない現状がある。
鮮魚にこだわらずに利益が出るような取り方を模索して欲しい。
工夫次第で、いろいろなやり方があると思う。

ここにかかれていないものとしては、ニシンの100万トンというものあるんだが、
完全に今は昔の夢物語になってしまった。
マサバ、マイワシをニシンの二の舞にしてはいけない。

日本のTAC制度はオリンピック方式ではない。それどころか資源管理ですらない。

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今まで見てきたように、ダービー方式(オリンピック方式)は問題が多い。
資源を守る代償として、漁業がぼろぼろになってしまうのである。
日本の漁業もぼろぼろだが、それはダービー方式の副作用ではない。
それ以前の問題なのだ。
資源管理には、乱獲を抑制して持続的に漁業をするというゴールがある。
ダービー方式でもきちんと運用をすれば、資源は守れる。
日本のTAC制度には、漁獲量を抑制する効果が全くないので、資源は減り続けている。
これを資源管理と呼ぶのは、まじめに資源管理をしている漁業に失礼だ。

正しい資源管理
生物の生産力を評価して、持続的な漁獲量の上限を推定する。
この持続的な漁獲量の上限が、ABC(Acceptable Biological Catch)である。
生物の持続性を守るためには、漁獲量をABC以下に抑える必要がある。
そのために全体の漁獲枠(TAC: Total Allowable Catch)を設定する。
TACはABCよりも低くないといけない。
乱獲を回避するために設定されたTACを配分する手段として、
ダービー、IQ、ITQなどがあるわけだ。
配分法によって、漁業の行く末や漁業者の痛みは全然違うが、
TAC<ABCであれば、生物の持続性は守られる。
ダービー制度、IQ,ITQはすべて、乱獲回避というゴールを達成できる。
そのいみで、これらの制度は全て資源管理なのである。

日本のTAC制度は乱獲のお墨付き
日本のABC、TAC、実際の漁獲量の関係はこんなかんじ。
image07092501.png
青棒がABC。「これ以上獲ったら乱獲になります」という漁獲量を科学者が推定したものだ。
赤棒が日本国によって実際に設定されたTAC。
白棒が実際に漁獲された量。
本来はABC>TAC>TAC採捕数量となるべきなんだが、
まともなのはサンマぐらいで、軒並みABCを上回るTACが設定されている。
これでは、国として乱獲にお墨付きを与えて推奨しているようなものである。
ただ、日本国が幾ら獲って良いと言っても海に魚が居ないんだから、
漁獲量がTACまで到達することは極めて希である。
この希なことがおこると、漁獲を制限するどころか、TACの方を増やしてしまう。
これで資源が守れるなら、資源管理なんて必要ないだろう。

日本のTAC制度は、ダービー制度ですらない。
資源枠組みを輸入したが、運用の段階で完全に骨抜きになっているのだ。

まっとうな資源管理と日本のTAC制度の違い

image07092508.png

まっとうな資源管理では、道筋こそ違えども、乱獲回避というゴールにはたどり着く。
一方、日本のTAC制度は、乱獲状態を容認している時点で、資源管理とは言えない。
日本漁業は、実質的には無管理であり、
時代遅れのオリンピック制度ですらないのである。
日本の資源管理は、スタート地点にすら立てていないのだ。

米国ですらITQに方向転換

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自由競争を国是とする米国では、権利ベースのITQへのアレルギーはすさまじかった。
1990年に最初にITQが導入されたものの、
1996年にITQモラトリアムを決定した。
すでに実施中のものをのぞき新規のITQ導入を見合わせることにしたのだ。
過剰な漁獲能力の削減は、税金による減船で行うことになった。
世界の流れとは、全く逆の方向に進んだのである。
その結果として、米国の漁業管理は難航し、漁業者は苦しんだ。

ダービー制度でちゃんと資源を守ろうと思うと、漁期はどんどん短くなる。
漁期が1月とかは良くある話で、3日とかいうのも少なくない。
俺がカナダで聞いた話では、産卵親魚を対象としたある漁業は、
漁業開始から終漁まで、なんと15分しか無いと言う。
最初は冗談だろうと思ったら、本当の話らしい。
どうやって漁獲量を集計するのかわからないけど、凄い話だ。
よーいドンで、狭い漁場に漁船が一斉に向かうわけだ。
すさまじい場所合戦で、船が転覆したり、死傷者が出たりするらしい。
「今年は、死人が出なくて良かった」とか話してるんだから、呆れてしまったよ。
そんな競争を毎年やらされる側にとっては、溜まったもんじゃないだろう。

北米では、ダービー漁業による魚の奪い合いに明け暮れる中、
自由競争を捨てて権利ベースのIQ・ITQに移行した国々は、着実に漁業収益を伸ばした。
学習能力がある米国は、2002年にITQのモラトリアムを解除した。
そして2006年に、漁業資源保存管理法が改定され、
ITQが政策の中心として推進されることになった。
やると決めたら徹底的にやるお国柄だから、本気でITQに向けてひた走るだろう。

自由競争原理主義の米国ですら、権利ベースのITQへ移行している。
これは、キリスト教原理主義者がコーランを受け入れる様なものである。
ダービー制度の総本山が既に敗北宣言をしているのだから、
全ての資源管理は、権利ベースの配分制度に進んでいると言っても良いだろう。
残された問題は、漁獲枠の譲渡をどこまで許容するかであろう。 

日本は何も考えずに、米国の漁業制度の猿まねをしてきた。
現在の日本のTAC制度は、90年代の米国の管理システムを、
そのまま骨抜きししたようなものである。
そして、米国ですら諦めたダービー制度に、未だにしがみついている。
自由競争好きの米国と違って、日本は既得権大好きなんだから、
そもそもダービー制度に固執する理由など無いと思うのだが。

まあ、水産庁の米国好きは筋金入りだから、
米国のITQ移行が本格化したら、日本もすぐさまITQに移行するかもしれない。
いや、冗談抜きで、本当に。

米国の漁業制度に関しては、これが参考になります。

水産振興 473号
米国の漁業管理政策について
-マグナソン・スティーブンス漁業資源保存管理法改正からの示唆-
水産庁資源管理部管理課資源管理推進室 課長補佐 大橋 貴則

http://www.suisan-shinkou.or.jp/gekkann.htmから申し込むとタダでもらえるので、
興味がある人は是非。
442号の「本音で語る資源回復計画」とセットで読むと、味わい深いです。

管理方式のまとめ

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それぞれの管理方式によって、漁業を異なる方向に導くことを延々と説明してきた。
今までの内容をまとめてみよう

ダービー方式は、漁業者間の早どり競争を引き起こす。
漁業者はスタートダッシュでより多く獲るために設備投資を行うので、漁獲能力は更に過剰になる。
IQ方式は、早どり競争を緩和するので、漁業者は魚価をあげるために設備投資が出来る。
ただ、IQ方式には、過剰な漁獲能力を削減する機能はないので、
すでに漁船が過剰な状態では「みんなで貧乏」な漁業しか実現できない。
過剰な漁獲能力を削減するためには、漁獲量を譲渡して減船をする制度を導入する必要がある。
ノルウェー型の譲渡可能IQ方式なら、漁獲枠に見合った規模まで自動的に漁獲能力を削減できる。
漁船の維持に費やされるコストを削減できるので、収益性が増し、競争力が高まる。
売買を自由にしたITQ方式(ニュージーランド型)では、
利益率の高い経営体に漁獲枠が集まり、経済効率を向上できる。
限られた生物の生産力から、最大の収益を得るという観点からは優れているが、
漁業が企業化・大規模化する代償として、社会的平等性は失われる。

image07091201.png

 
ダービー方式からiTQまで、様々な管理方式を比較したが、
これらの管理方式はTACをベースにしている。
生物の持続性を損なわないようにTACを設定することが大前提だ。

TACをABC以下にするという前提があって、これらの資源管理は成り立つのである。
慢性的にABCを遙かに上回るTACを設定している日本のTAC制度は、
ダービー(オリンピック)方式ですらないのである。
日本のTAC制度は資源管理ではなく、乱獲を容認する道具に過ぎないのだ。

乱獲放置状態の日本漁業は、ダービー方式と同じような方向に進んでいる。
過剰な漁獲能力による早獲り競争が、過剰装備と漁獲物の小型化を招く。
単価は下がる中で、少ない魚を我先に奪い合うようになる。
ダービー方式と無管理の違いは、資源の持続性が守られるかどうかである。
ダービー方式では、過剰競争で生産力が低下した漁業が、
産業として成り立たなくなるのは時間の問題である。
漁業はいずれ滅びるだろう。でも、資源は守られるのである。
無管理では、資源を道連れにして漁業が滅びるだろう。

管理方式のまとめ 

資源の持続性 早獲り競争緩和 過剰漁船の削減 経済的最適化
無管理(日本)
ダービー方式 +
IQ(譲渡無し) + + 0 0
IQ(譲渡あり) + + + +
ITQ + + + ++

 

 

そんなに心配なら、ITQの譲渡に制限すれば良いんジャマイカ?

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ITQ制度には次のような効果が期待できる
1)過剰な(無い方がよい)漁獲能力を削減できる
2)収益性の高い経営体に漁獲枠を集めることで、漁業の経済性が向上する

一方で、ITQによる弊害を心配する声も根強い。彼らの描く未来像は、こんな感じだ。

より利益を出せる経営体によるITQの買収が進み、漁獲枠の寡占化を引き起こす。
「漁業者は漁獲枠を売ることが出来るが、漁獲枠を買うことができるのは企業だけ」という事態になる。
大企業化した漁船は、大きな港のみに水揚げをするようになり、地方の港、加工は衰退する。
漁獲枠を寡占した経営者が、従業員に漁業をさせながら、利益だけを得る。
漁村は寂れ、漁業者の小作化が進むことになる。

要するに、古き良き漁業が、利益至上主義の経済行為となってしまうことを心配しているのだ。
確かに、ITQにはそのような側面があることは否定できない。
漁業を投機対象にすることには社会的な懸念があるだろう。
(まあ、今の日本漁業の生産性では、投機の対象外であり、それよりはマシだと思うが・・・)
譲渡を制限することで、この問題はある程度回避可能である。
漁獲枠の所有は漁業従事者に限ることにすれば、漁業の小作化は回避できる。

経済的効率と社会的平等のどちらを重視するかによって、譲渡に対する制限が決まってくる。
経済的効率を重視して、譲渡の制限を少なくしているのが、ニュージーランドとアイスランド。
社会的平等を重視して、譲渡を厳しく制限しているのが、ノルウェーである。

● ニュージーランドのITQ制度

ITQは、TACCに対する割合で設定されている。
例えば、1%の漁獲枠を持っている人間は、商業漁獲枠が100万トンであれば1万トン、
100トンであれば1トンの漁獲が可能となる。
一つの経営体が所有できる漁獲枠には10%~45%の上限が設けられている。
ニュージーランドのITQ制度は、独占の弊害が出ない範囲で、最大限に譲渡を許容している。
寡占化の弊害よりも、経済的な最適化を重視しようという考え方だ。

ニュージーランドのように、漁業は経済行為と割り切ることが日本で出来るはずがない。
ただ、今のような非効率的な漁業システムを多額の税金を投入して支えていくのも無理だろう。
幾ら漁業者に補助金をばらまいたところで、漁業を支える資源がもたないことは明白だ。
そこで参考になるのがノルウェーのITQ(もしくは、譲渡可能IQ)制度だ。

● ノルウェーのITQ(もしくは譲渡可能なIQ)制度

高木委員への反論材料として水産庁が「ノルウェーの漁業と漁業政策」という資料をまとめている。
これを読めば、ノルウェーの漁業政策がいかに合理的かが一目瞭然なのだが、
いまのところ水産庁のサイトにアップされているのを発見できない。
これをネタに、いろいろと書きたいことがあるから、早くアップして欲しいものだ。

ノルウェーでは、漁獲枠を船に割り振っている。
IVQ(Individual Vessel Quota)というシステムだ。
これによって、漁業者間の早取り競争を回避している。
また、制限付きの漁獲枠の譲渡を認めることで、過剰漁獲能力の削減にも成功している。
ノルウェーで許容されている譲渡は以下の3つである。

UQS(Unit Quota System)
2隻の漁船を所有する漁業者が、一方の漁船を漁業から撤退させる場合、
当該漁船を売却する場合には13年間、スクラップにする場合には18年間、
創業を継続する漁船により2席分の割当量を漁獲できる制度。

SQS(Structual Quota System)
2004年より沿岸漁業を対象に導入。
2005年からは、沖合・遠洋漁業の対象(UQSから移行)。
同種の許可を受けた2隻以上の漁船を所有する会社が、
1隻を漁業から撤退される場合(撤退する漁船のスクラップ処分が要件)、
当該漁船が受けてた漁獲割り当てを、操業を継続する同社の漁船にうつすことが出来る制度。

QES(Quota Exchange System)
2004年より沿岸漁業を対象に導入。
2人の漁業者が協力して操業する場合に、特定の期間に限り、
1隻の漁船により二入の行啓の割当量を漁獲できる制度。

ノルウェーでは、沿岸漁業から、大規模漁業までこれらの譲渡制度が完備されている。
その結果として、過剰な漁獲能力の削減をすることができた。

現在の人間の漁獲能力は生物の生産力を遙かに凌駕している。
例えば、かつてのアラスカのオヒョウ漁は1年間の割り当てを24時間で消化していた。
このような状態では、のこりの364日間は漁船が遊んでいることになる。
漁船を維持するには莫大なコストがかかるので、それだけ無駄が生じることになる。
二人の船主が共同で操業をすることにして、1隻を廃船にすれば、船の維持費は半分で済む。
船を減らして、漁獲枠を集めれば、それだけ手取りは増えるのである。
もちろん、共同経営をするかどうかは、個人の自由である。
貧乏でも船の主でありたい経営者は、そのまま漁業を続ければよい。
ノルウェーの場合は、多くの漁業者は経済性を高める道を選んだのである。

この譲渡制度の素晴らしいところは、
借金漬けの赤字経営体が、漁獲枠を譲渡して漁業から撤退できることだ。
日本の漁業は、かつて右肩上がりであった。
儲けがでても税金でとられてしまうので、漁業の利益は設備投資に回すのが常識だった。
それどころか、漁業者は借金をしてでも設備投資をしてきたし、国もどんどん融資をした。
この拡張主義の漁業は、右肩上がりで漁業生産が伸びることが前提であった。
しかし、70年代に入って、EEZが設定されて漁場が狭くなると、漁業生産が減少に転じる。
資源が減ったとしても、漁船を維持するために漁獲量を確保しなくてはならない。
借金をして設備投資をしてしまったので、「魚が捕れないから辞めます」という選択肢はない。
借金を抱えて撤退もままならない経営体が、赤字を減らすために獲って獲って獲りまくる。
その結果、資源が枯渇すれば、健全な経営体はどんどん減っていく。
借金漬けの赤字経営体は、補助金による水産振興という誤った漁業政策のツケである。
小サバを初めとする小型個体の乱獲は、どう見ても経済的な価値を産み出さない。
将来の収入減を考えたら、明らかな赤字である。そんなことは、獲っている人間は百も承知だろう。
現在の日本の漁業制度では、これらの債務超過の経営体には他の選択肢は無いのである。
漁獲量を減らせば、即破産→夜逃げコンボが待っていたら、獲るしか無いだろう。
今の漁業政策を続ける限り、この問題は解決しない。それどころか、酷くなる一方だろう。

もし、ノルウェーのような個別漁獲枠譲渡制度が完備していたらどうだろうか。
船自体に価値が無くとも、船に付随する漁獲枠には借金をチャラにする価値は生じる。
債務超過の経営体は漁獲枠ごと船を売却して、借金を清算して、漁業から撤退できるのだ。
漁獲枠を譲渡した船を確実にスクラップ処分する制度があれば、過剰漁獲能力の整理は進むだろう。
漁獲枠譲渡制度は、去る漁業者にも、残る漁業者にも、メリットがある。
こういう制度を整えた上で、漁獲枠を絞っていく必要があるのだ。

今の状態で、漁獲枠の総量を絞っても、漁業は成り立たないだろう。
中の空気はそのままで風船を小さくするようなものであり、風船が破裂するだけだ。
早急に空気が抜ける道を整えてた上で、漁獲枠の総量を絞っていくべきだろう。
日本漁業に残された時間はそれほど無い。

ITQ(譲渡可能個別割り当て)方式

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ITQは、IQ同様に個別に配分した漁獲枠を金銭による譲渡可能にした方式である。
この譲渡可能性が経済的な最適化、特に過剰漁獲能力の削減に大きな役割を果たす。

個々の漁業者で、経済性は大きく異なる。
船を出しても赤字の漁業者もいれば、確実に利益を出す漁業者もいる。
同じ量の漁獲枠であっても、得られる利益は漁業者によって大きく異なるのだ。
例えば、1トンの漁獲枠から100万円の利益を出せる漁業者Aと、
同じ漁獲枠から10万円利益しか出せない漁業者Bが居るとしよう。
漁獲枠が譲渡不可能であれば、漁業全体で2トンの漁獲量から110万円の利益となる。
もし、漁獲枠が譲渡可能であったらどうなるだろうか?
1トンの漁獲枠は漁業者Aには100万円の価値がある。
一方、漁業者Bには10万円の価値しかないので、
漁業者Aは、漁業者Bの漁獲枠を10~100万円の価格で買い取るだろう。
例えば、50万円でBの漁獲枠をAに売却したとしよう。
この譲渡によってAが得た利益は、売り上げ増から漁獲枠購入費用を引いた50万円
この譲渡によってBが得た利益は、漁獲枠売却益から、本来の売り上げを引いた40万円
漁業全体の利益が110万円から200万円に増えるのである。

ITQでは、漁獲枠当たりに利益が高い経営体に漁獲枠を集めることで、
資源の経済的有効利用をはかることができる。

さて、漁業者Bの立場になってみよう。
漁獲枠を漁業者Aに売った方が、自分が獲るよりも利益が出る。
ということは、船をもっていても無駄になるわけだ。
船の維持費はバカにならない。現に船の維持費を稼げない経営体も多数存在する。
漁獲枠を譲渡した方が利益になるような経済的に劣った経営体は、
漁獲枠を永久に譲渡して、船を処分するだろう。
こうして、利益率の高い経営体に漁獲枠が集まる一方で、
利益率の低い経営体は撤退をすることが可能である。
儲かる部分を残して、漁獲能力の削減が可能なのだ。

image07091001.png

 

ITQのまとめ
1) 漁獲枠を個別に配分することで早捕り競争を緩和する(IQと共通)
2) 利益率が異なる経営体の間で漁獲枠の譲渡が発生する
   i)   譲渡によって、双方が利益を得る
   ii)  譲渡によって、漁業全体の利益が増える
3) 利益率の低い経営体は、漁獲枠を譲渡して漁業から撤退する
   i)  過剰な漁獲能力が自動的に削減される
   ii) 利益率の高い経営体のみ残るので、合理化が進む

書いてて、思ったけど、やっぱりITQは良い。
過剰な漁獲能力と枯渇した資源の日本漁業が生き残るためには、
消去法的にコレしかないんじゃないかな。
オリンピック方式(笑)は論外として、IQでも漁業全体が共倒れになる可能性が高い。
ということで、今後もITQのすばらしさを伝導していこうと思う。

さあ、みなさん、ご一緒に

ITQ!! ITQ!!
ITQ!! ITQ!!

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from 18 Mar. 2009

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