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2011-05-24

魚を骨ごと食べたときに、心配なのはセシウム。ストロンチウムじゃないよ

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内部被曝に占めるセシウムとストロンチウムの比率

海水に大量の放射性物質が流出しましたが、2号炉由来が4700兆ベクレル。3号炉由来が20兆ベクレルなので、海水汚染の主役は2号炉です。2号炉の核種の濃度と半減期を考慮すると、海水中のセシウムとストロンチウムの比は、5/24現在で10:1程度と類推できます。仮に、海水の放射性セシウムが5Bq/Lとすると、ストロンチウムは0.5Bq/Lになります。魚(ほねごと)の濃縮係数はそれぞれ100と3だから、魚の汚染は、セシウムが500Bq/kg、ストロンチウムが1.5Bq/kgまで進むことになります(捕食魚だと飽和するまで半年以上かかる場合もあるので、現段階ではもっと低いはず)。仮に、汚染が進みきった魚(骨ごと)1kgを、乳児にあたえた場合、セシウム由来の内部被曝が0.01mSv, ストロンチウム由来の内部被曝が0.00001mSvとなる。

魚を骨ごと食べたとしても、ストロンチウム由来の内部被曝は、セシウム由来の内部被曝と比べて、圧倒的に少ない。放射線防護は、セシウム対策を中心に行うべきであり、セシウム由来の被曝を低く抑えれば、ストロンチウム由来の被曝も十分低く抑えられる。

核種ごとの影響を評価する

骨ごと魚を乳児にあたえた場合の内部被曝の内訳を示したのが次の図。初期は圧倒的にヨウ素の影響が大きい。ヨウ素は半減期が短いので2ヶ月ぐらいで影を潜める。その後は、セシウムの独壇場。ストロンチウムは存在してはいるけれど、セシウムと比べると被曝量は圧倒的に小さくなる。

それでも乳幼児~成長期は注意をするに超したことはないです

以上は、ストロンチウムの影響が大きな乳児の場合です。ストロンチウムが大人に与える影響はさらに小さくなります。このように数字だけ見るとストロンチウムの影響は軽微と言っても良さそうです。

ただ、乳幼児に対する放射性ストロンチウムの影響が、十分に解明できているかは疑問です。放射性ヨウ素が幼児の甲状腺癌の原因になることは、チェルノブイリで初めてわかったのです。チェルノブイリ以前は、放射性ヨウ素の危険性を大幅に過小評価していました。今後、放射性ストロンチウムが乳幼児にあたえる影響が明らかになる可能性も否定できません。放射性ストロンチウムが骨に取り込まれると、まず出てきません。骨髄が生涯β線にさらされる可能性もあります。安全な代替品が手に入るなら、避けるに超したことはないでしょう。一方、ストロンチウムを取り込みづらい上に余命も短い大人は、セシウムが基準値以下なら、ストロンチウムは気にする必要がないと思います。

ストロンチウムが気になる生物

セシウムとストロンチウムの濃縮係数をまとめると次のようになります。ストロンチウムの濃縮係数は一般的にセシウムよりも低くなっているので、セシウムの濃度が低ければ、ストロンチウムはさらに低くなるでしょう。ストロンチウムの比が高くなる褐藻、棘皮動物、甲殻類については、セシウムが検出された場合は、ストロンチウムの存在も考慮する必要があるでしょう。

紅藻 褐藻 棘皮 甲殻 頭足類 魚(骨ごと)
セシウム 27 27 22 9.7 8.9 100
ストロンチウム 1.9 17 21 55 0.3 3
Sr/Cs 0.070 0.63 0.95 5.7 0.034 0.030

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