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漁船造船の国内事情と海外のトレンド

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日本の漁船を造る造船所で、大手は、三保、カナサシ、新潟の3社。三社とも、更生会社であり、現在も経営は厳しいようだ。特に、カナサシは、先月3/31に新卒19人の内定を取り消して、大々的に報道された。結局、4/10に会社更生法の適用を申請し、受理されたようである。内定者には気の毒だが、3月末の資金繰り失敗による倒産では、他に選択肢は無かったのかもしれない。

みなと新聞では、4/15から、三保造船の会長と社長のインタビュー記事を連載している。本音トークが炸裂していてい、実に読み甲斐がある。ここまで、言うのは、並々ならぬ覚悟が必要だ。座して、死を待つよりはということだろう。特に重要と思われる部分を抜粋してみた。

漁船漁業は、造船業だけでなく、関連産業を扶養できないほど、落ち込んでいる。

日本では特殊な例をのぞいて、外国漁船の建造はできない。法的には規制されていない。しかし、民間からそういう申請が出てくると、経済産業省が農林水産省にお伺いを立てる。水産庁はそれが自国の漁業に何らかの影響を与えると判断すると、許可をしない。そして、通常は許可をしない。だから、現実問題として外国の漁船を造ることは出来ない。

何十年か前までは、日本の漁船は確かに先進的だったかもしれないが、今は、北欧などの漁船が先進的になってしまった。トロールと巻き網を兼業したり、特に船形も自由にできるので技術は発達している。日本はがんじがらめ。どこの造船所が作っても、たとえばマグロ延縄船は同じ格好になってしまう。

韓国の船主さんが日本で海巻船を建造できないかと、見に来てくれたことがある。だけど「国が許可しないよ」ということになってしまった。結局、台湾で建造した。

今のような状態の中では、恐らく10年後に漁船技術を持った造船所があるかと逝ったら、非常に心配だ。

国も国内漁業調整のみに終わらず、大局的な視点に立って国益を守る施策が欲しい。

日本は、規制で、産業をつぶしかけている。では、海外はどうだろう。欧州では、漁船建造ラッシュが続き、欧州の造船拠点のスペインでは、この先、何年分もの注文が埋まっているそうだ。待ちきれない船主は、台湾にも注文をしている。つい先日も、アイスランドの会社が台湾に注文していた最新船が完成したようだ。

http://www.sth.is/frett.asp?Nr=109

写真
http://www.sth.is/Frettamyndir/mynd109s.jpg
http://www.sth.is/Frettamyndir/mynd108s.jpg

アイスランドのSkinney社の漁船なんだけど、実に、モダンではないですか。マグロの巻網船の造船で有名な、台湾のChing Fu造船所が建造した。全長29メートル、幅9.2メートル。メインエンジンは、700馬力の三菱製。トロール(single, twin-rig)、駆け廻し(Danish-type fly-shooting)、刺し網の操業が出来る多目的漁船。最近の船らしく、作業台が一段高いところにある。海が荒れていても、安全に操業できるのだ。また、高性能の製氷機など、魚の質を維持するための設備は充実している。船倉はそれほど大きくないが、断熱処理されて、0度まで冷やすことが出来る。11人乗りらしいが、船の見取り図をみると、ずいぶんと住居スペースがあることがわかる。こういう最新鋭の漁船は日本では造れない。

世界の造船は国際的な分業体制が確立されつつある。この漁船にしても、電子機器は、SimradとFuruno。トロールブロックはデンマーク製、刺し網はノルウェー製、エンジンは三菱で、スクリューはノルウェー製。また、欧州では、漁船の設計と、造船は別の会社が行う場合が多い。設計はノルウェーの会社で、造船はスペインというようなことが普通に行われている。おそらく、この船も設計は欧州(ノルウェー)だろう。

水産庁は、自国の造船会社に海外の漁船を造らせないことで、いったい何を守ったのだろうか。ただ単に、日本の造船業を干上がらせて、かつては先進的だった日本の漁船技術をガラパゴス化しただけである。日本の漁船造船技術は、世界から取り残され、どんどん遅れているという事実を認めた上で、門戸を開かなければ、日本の漁船造船の灯が消えるのは時間の問題だろう。

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