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マイワシの変動と海洋環境

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ここで紹介したページを読めばわかるように、
マイワシは、海洋環境の影響で増えたり、減ったりする。
海洋環境が資源変動に影響を与えるのは、マイワシに限った話ではない。
多くの種で産卵場の水温と卵の生残率の間に相関があることが経験的に知られているのだが、
変動幅の大きさという意味では、マイワシやニシンなどのニシン科魚類がずば抜けている。

海洋環境が水産資源に与える影響は、つい最近まで過小評価されてきた。
水産生物資源の自然変動に関する研究の歴史を理解するには、
このパワーポイントファイル(California Sardines: A Fishery Biologist’s History)が最適だろう。
マイワシの自然変動を考える上で、重要な研究を2つ紹介しよう。

Kawasaki(1983)は、太平洋の両岸でマイワシの増えたり減ったりするタイミングが同期している事を発見した。
これらのマイワシは、分布が独立した別種であるにも関わらず、同じタイミングで増加・減少をしたのだ。
北太平洋の全域をカバーするような大規模な海洋環境の変動によって、資源変動が引き起こされていると示唆される。

Baumgartner et al.(1992)は、海底の堆積物のマイワシの鱗の数を計測し、
過去2千年にわたりカリフォルニアのマイワシとカタクチイワシが交互に増減を繰り返してきたことを明らかにした。
マイワシは、人間の漁獲が軽微であった時代から、大変動を繰り返していたのだ。

こういった一連の研究を組み合わせていくと、
大規模な海洋環境の変動に対応して増えたり減ったりするという、
マイワシの生物学的な特性が見えてくる。

1)マイワシは、数十年周期で自然に増えたり減ったりする。その変動幅は極めて大きい。
2)自然変動は、太平洋の全域をカバーするような大規模な海洋環境の変動によって引き起こされる。


では、日本のマイワシの歴史を簡単に振り返ってみよう。
マイワシの長期漁獲量は、ここにある。
http://eco.goo.ne.jp/business/csr/ecologue/wave21.html
1930年代に豊漁であったマイワシは、1940年代後半から減少し、
60年代には幻の魚と呼ばれるぐらい減少し、漁獲量が7千トンまで減った年もある。
そのマイワシが1972年から突如増加し、単一種で450万トンというとんでもない漁獲量を記録した後、
1988年から突如減少を始めた。
この減少に関しては、乱獲か、それとも自然現象かという議論があった。
この論争に白黒をつけたのが、Watanabe et al.(1995)だ。

太平洋海域におけるマイワシの年間総産卵量を見ると(図5)、再生産が順調であった1984~1987年の平均産卵量は3700兆粒、再生産が不調になった1988~1991年は4600兆粒と推定されている。再生産水準が著しく低下した1988年以降十数年のうちの最初の4年間の産卵量は、再生産が順調であった1980年代半ばと比べて決して低くなかった。産卵量の減少が1988年以降の再生産の失敗を引き起こしたのでないことは明らかである。
1988年以降も数年間は、マイワシ親魚が大量の卵を産みだしていたにもかかわらず、1988年から再生産の失敗が連続しということは、産み出された卵が資源に成長するまでのある段階で大量に死亡したことを意味する。

マイワシが激減しだした1988-1991年には、産卵量は多かったが漁獲対象となる前に死んでいたのだ。
漁業が関与できない生活史段階で減耗が起こっていた以上、激減は自然現象と考えるしかない。
Watanabe et al.(1995)によって、一時は有力であった乱獲説は完全に消滅した。
Wikipediaにも、「イワシ資源変動の原因については諸説があるが、
基本的に長期的に資源量に変化があるものであり、乱獲や鯨などの海洋生物の捕食によるものではなく、
長期的な気候変動(とその影響の餌のプランクトンの増減)による
ということが今日では通説となっている。」と書かれている。
これ以降、日本のマイワシ研究において、漁業の影響は無視されるようになる。
研究者の関心は、マイワシを変動させる環境条件を特定することへと移行した。
現在まで、マイワシの減少のメカニズムは特定されていないが、
その間も順調にマイワシ資源は減少を続けている。


References

Kawasaki, T. 1983. Why do some pelagic fishes have wide fluctuations in their numbers? – biological basis of fluctuation from the viewpoint of evolutionary ecology., p. 1065-1080. In G.D. Sharp and J. Csirke (eds.), Reports of the Expert Consultation to Examine Changes in Abundance and Species Composition of Neritic Fish Resources. FAO Fish. Rep. 291 (2, 3): 1224 p.

Baumgartner, T.R., Soutar, A., and Ferreirabartrina, V. 1992. Reconstruction of the History of Pacific Sardine and Northern Anchovy Populations over the Past 2 Millennia from Sediments of the Santa-Barbara Basin, California. California Cooperative Oceanic Fisheries Investigations Reports 33: 24-40.

Watanabe Y, Zenitani H, Kimura R (1995). Population decline of the Japanese sardine Sardinops melanostictus owing to recruitment failures. Canadian Journal of Fisheries and Aquatic Sciences., 52, 1609-1616.

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