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魚を骨ごと食べたときに、心配なのはセシウム。ストロンチウムじゃないよ


内部被曝に占めるセシウムとストロンチウムの比率

海水に大量の放射性物質が流出しましたが、2号炉由来が4700兆ベクレル。3号炉由来が20兆ベクレルなので、海水汚染の主役は2号炉です。2号炉の核種の濃度と半減期を考慮すると、海水中のセシウムとストロンチウムの比は、5/24現在で10:1程度と類推できます。仮に、海水の放射性セシウムが5Bq/Lとすると、ストロンチウムは0.5Bq/Lになります。魚(ほねごと)の濃縮係数はそれぞれ100と3だから、魚の汚染は、セシウムが500Bq/kg、ストロンチウムが1.5Bq/kgまで進むことになります(捕食魚だと飽和するまで半年以上かかる場合もあるので、現段階ではもっと低いはず)。仮に、汚染が進みきった魚(骨ごと)1kgを、乳児にあたえた場合、セシウム由来の内部被曝が0.01mSv, ストロンチウム由来の内部被曝が0.00001mSvとなる。

魚を骨ごと食べたとしても、ストロンチウム由来の内部被曝は、セシウム由来の内部被曝と比べて、圧倒的に少ない。放射線防護は、セシウム対策を中心に行うべきであり、セシウム由来の被曝を低く抑えれば、ストロンチウム由来の被曝も十分低く抑えられる。

核種ごとの影響を評価する

骨ごと魚を乳児にあたえた場合の内部被曝の内訳を示したのが次の図。初期は圧倒的にヨウ素の影響が大きい。ヨウ素は半減期が短いので2ヶ月ぐらいで影を潜める。その後は、セシウムの独壇場。ストロンチウムは存在してはいるけれど、セシウムと比べると被曝量は圧倒的に小さくなる。

それでも乳幼児~成長期は注意をするに超したことはないです

以上は、ストロンチウムの影響が大きな乳児の場合です。ストロンチウムが大人に与える影響はさらに小さくなります。このように数字だけ見るとストロンチウムの影響は軽微と言っても良さそうです。

ただ、乳幼児に対する放射性ストロンチウムの影響が、十分に解明できているかは疑問です。放射性ヨウ素が幼児の甲状腺癌の原因になることは、チェルノブイリで初めてわかったのです。チェルノブイリ以前は、放射性ヨウ素の危険性を大幅に過小評価していました。今後、放射性ストロンチウムが乳幼児にあたえる影響が明らかになる可能性も否定できません。放射性ストロンチウムが骨に取り込まれると、まず出てきません。骨髄が生涯β線にさらされる可能性もあります。安全な代替品が手に入るなら、避けるに超したことはないでしょう。一方、ストロンチウムを取り込みづらい上に余命も短い大人は、セシウムが基準値以下なら、ストロンチウムは気にする必要がないと思います。

ストロンチウムが気になる生物

セシウムとストロンチウムの濃縮係数をまとめると次のようになります。ストロンチウムの濃縮係数は一般的にセシウムよりも低くなっているので、セシウムの濃度が低ければ、ストロンチウムはさらに低くなるでしょう。ストロンチウムの比が高くなる褐藻、棘皮動物、甲殻類については、セシウムが検出された場合は、ストロンチウムの存在も考慮する必要があるでしょう。

紅藻 褐藻 棘皮 甲殻 頭足類 魚(骨ごと)
セシウム 27 27 22 9.7 8.9 100
ストロンチウム 1.9 17 21 55 0.3 3
Sr/Cs 0.070 0.63 0.95 5.7 0.034 0.030

Comments:9

シンパイしよう 11-05-24 (火) 20:34

貴重な御研究に敬意を表し感謝いたします。Csの方がSrより構成比からして大量にあり、危険だろうとのこと、心配症に付き=小生恐れ慄いております。

事故後初めて小生は、

講演記録:
アーネスト・スターングラス「放射線と健康」
http://fujiwaratoshikazu.com/2011disaster/

をば、小生=読んで吃驚致しました。Srと乳癌・膵臓癌、乳歯5000本のSr濃度調査と牛乳Sr濃度と原発からの距離、それらと病気との関係などが統計グラフとともに、17年も前に、一説があったとは。

Srについての説の左様なれば、Csの恐ろしさどれほどかと怯えおります。固より小生素人なれば、Csと病気との因果関係やCs濃度との対応関係など御教示下されば幸甚です。

三笠山 11-05-24 (火) 21:57

毎度詳細な解説ありがとうございます。チェルノブイリに甲状腺ガンの治療に行かれた先生と話したことがあります。甲状腺ガンの評価がチェルノブイリで変わった原因は、内陸と海岸沿いの人々の間での、ヨウ素のバックグラウンド量の違いに起因していると聞きました。広島や長崎の被爆患者等の人々は、海草類を多く食べていたので、ヨウ素やヒ素のBG値が大きく、内陸の人々と比較して、元来甲状腺ガンの発症率が低かったのだと。戦後のGHQによる精密な健康診断では、あまりにも日本人のヒ素値が高いため、アメリカ人研究者はかなり驚いたと言うことを別の先生から聞きました。だから、甲状腺ガンは気にしなくてよいというわけではありませが。
ストロンチウムの評価は、本当にわかりませんが、今後東電から出る値では、Cs/Sr比は、1000/1になるのではと思います。先のコメントの文献は、私にはよく理解できませんでした。Srの関与は、結局間接的に推測するのみのように思います。Srの起因は、原発よりも再処理施設だと思うのですが….違いますか?

道産子 11-05-25 (水) 0:15

セシウムはカリウムに似た性質を示し、ストロンチウムはカルシウムに似た性質を示すので、生物学的半減期を考慮すれば、ストロンチウムの方が有害では?

三重県人 11-05-25 (水) 10:03

三重県で採れる海産物の放射能汚染は大丈夫ですか?
先日、東電が発表した汚染水の拡散シュミレーションでは、汚染水は銚子沖から東へ拡散すると伝えられましたが、汚染水が三重県まで流れて来ることはないのでしょうか?

また、三重県では(HPを見る限りでは)海産物はおろか野菜類も含めて食品の放射線測定結果を公表していないようですが、他に県内の水産物に関する放射線測定結果を公表している情報はないのでしょうか?

ジュンタカイ 11-05-25 (水) 10:52

CsとSrの比率が陸上の飛散比率を元に計算されている様に見受けられるのですが、Srは揮発性が低く、水溶性の物質なので、水中には多く出ます。又、Cs137とSr90は原子炉内ではほぼ同量が生産されているはずです。私は専門家ではありませんが、研究をされている方に確認を取りましたので、ご確認頂ければと思います。それでは大変失礼を致しました。

ジュンタカイ 11-05-25 (水) 11:02

大変失礼しました。1/100オーダーで誤りないようです。

ひろ。 11-06-30 (木) 18:34

 勉強になります。
Cs:Srの話ですが、内部被曝の変換係数(Bq→mSv)はいくつを使用しましたでしょうか。
そこが記載されていないのですが、計算結果が自分の計算と大幅に異なります。
Bqの比 Cs:Sr=500:1.5≒300:1、まではいいとして、
Sr の係数のほうが大きいので、
mSvの比が、Cs:Sr≒1000:1、となるのはおかしいと思います。
変換係数を間違っているのではないでしょうか?

半谷 11-07-24 (日) 16:21

はじめまして。
貴重な研究情報、非常に参考にさせていて頂いております。

さて、セシウムとストロンチウムの濃縮係数に関して、この出典元は何でしょうか。
お忙しい中かとは思いますが、教えて頂けると幸いです。

よろしくお願い致します。

はろ 12-07-26 (木) 7:34

海洋汚染に関しては、英国のセラフィールドから1970-80年代に垂れ流された放射能汚染を参考にするのが、今後の福島沖の汚染と向き合う最も良い資料になるかと思われます。

http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/TE_1429_web.pdf
↑世界の海洋汚染に関してのIAEA資料

http://homepage.eircom.net/~radphys/scope.pdf
↑セラフィールド海洋汚染の研究資料

セシウム137のみで比較すると、放出された量は42PBqで文中にある2号機由来の4700兆ベクレルの役8倍といった所でしょうか。ストロンチウム90(6PBq)やプルトニウム241(22PBq)など他の核種も凄まじいもので、しかも福島のように開けた太平洋という訳ではなく、アイリッシュ海は英国とアイルランドに挟まれた海水の滞留しやすい湾構造ですので、非常に長期間に渡って汚染水が滞留しました。

80年初等のアイリッシュ海「全体」のCs137の汚染濃度は現在の福島原発沖とほぼ同じレベルにまで達し、取れる魚もセラフィールド沖は平均で1000Bq/kgに達したとのことです。86年に放出をやめたことで、この値は下がりましたが、現在でも10Bq/kgの魚が捕れるということです。当時はこれらの魚に関して規制を設けなかった為、その地域で日常的に魚を摂取していた漁村住民は年間3mSvほどの被曝をしていたと推定されています。これは10万Bq/bodyほどのセシウム137の蓄積によるものかと。

以上資料を読む限りにおいては、現在の福島沖における漁の規制を完全に解除したとしても、英国における70~80年代以上の被害は出ないということかと思われます。英国国民がセラフィールドにおける海洋汚染で一体どれほどの健康被害を被ったかは全くわかりませんし、もしかしたら統計を調べれば疑いのある兆候というものを見つけることができるかもしれませんが、、少なくともチェルノブイリにおける甲状腺癌の増加などのような明確なエビデンスは見えなかったものと考えて良いのかと思います。

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