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Dr. Daniel Pauly: Fish As Food: A Love Affair, Issues Included

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Dr. Daniel Pauly: Fish As Food: A Love Affair, Issues Included.

ダニエル・ポーリーが、水産物の消費に関する倫理的な話しをしておる。これは、特に消費者倫理の欠如した日本人にとって重要な指摘だと思う。魚食文化といいつつ、持続性に関する倫理観が欠如しているのは恥ずべき状態である。


In other words, you do not know where they are from, and indeed, what they are.

あなた方(消費者)は、その魚がどこから来たかをしらないし、実は、その魚で何であるかすら、知らないのである。

We need to seriously ask why the morality of advocating for increased fish consumption in developed countries is not as questionable as driving a Hummer or wearing a tiger skin coat.

先進国の人間が水産物の消費を増加させるのは、倫理的に考えて、(燃費の悪い)ハマーを運転したり、(絶滅のおそれのある)虎の毛皮を着るのと、どこが違うのだろうか。

動画は作り直して、再アップしようと思ったが、面倒くさいからそのままです。

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同じ時間を使うなら、新しいのを使った方が建設的だよね。

ということで、そのままでいいや。 😛

日本漁業の現状と課題 後編(動画)

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前日の続きです。
結論からいうと、「政治主導で、個別漁獲枠の導入を急げ」ということです。

動画のリンクを直しました。

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日本漁業の現状と課題 前編(動画)

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今日は、これからプレゼンです。準備をしたついでに、動画を作成してみた。前編と後編に分けてアップしますね。

内容は、今まで、主張してきたことの繰り返しですので、常連の皆様におかれましては耳タコだと思いますが、まあ、継続は力なりということですよ。

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事業仕分けはこうあるべき

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長期的な国益に適うかどうかと言う視点で、事業を仕分けしなくてはならない。それはどういうことか。簡単に私見を述べよう。

漁業が存続するには、まず、資源(魚)が必要である。その上で、魚を獲っている人たちが生計を立てていく必要がある。資源の持続性と漁業経営の2つが産業が成り立つための最低条件であり、その最低条件が満たされて初めて、雇用の創出や食糧の安定供給などの効果が期待できる。基本効果が成り立って初めて、地域経済や食文化などの多面的機能が期待できる。

魚が安定して獲れて初めて、漁業経営が成り立つし、漁業が多面的機能を発揮できるのである。にもかかわらず、水産庁は、これまで多面的機能を口実に、過剰な漁獲活動を維持するために税金を使ってきた。枝葉を口実に幹を切り落としてきたのである。世界最高額の補助金を漁業に注入しながら、日本漁業が衰退する理由はここにある。

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現在は、日本近海の資源が壊滅的に減少している。漁業者は少なくなった魚を奪い合い、自滅をしている。スーパーに行けば、小さな魚ばかりが並んでいる。乱 獲・早獲り競争の主役は巻き網という極めて効率的な漁法だ。本来は効率的な漁法ほど、適切に規制をしなくては、ならないのだが、残念ながら、日本漁業は無 規制に近い状態であり、巻き網船の無秩序な魚の奪い合いで、日本の漁業全体が傾いてしまった。ここでも指摘したように、波崎の計画は、値段がつく前の未成魚を乱獲しているような船を、わざわざ税金で増強する計画。高付加価値化と言いつつ、魚の単価はkgあたり54.6円から54.8円になるだけ。獲り方を変えるつもりはさらさら無いのである。これが「食糧安定供給」という名目で進行中なのだから、まさに本末転倒で、開いた口がふさがらない。税金を使って、漁業を衰退させているようなものである。

一方、石巻の計画は、波崎とは対照的に、資源の持続性を考慮している。船団全体の規模を、現行の755tを415tに削減する。船が小さくなるだけでなく、フィッシュポンプや冷凍設備の導入など、高付加価値化のための設備を導入し、もともと100円以上あった単価を、今後は123円まで増やす計画になっている。少なくなった魚を価値がある獲り方をすることで、漁獲圧を削減しながら利益を出していく考えだ。また、居住スペースの改善による労働環境の改善も計画に含まれている点も、大いに評価したい。石巻の計画は、漁業をより良い産業にするための投資としての価値が十分にある。残す価値があったと思う。

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仕分け人は、長期的国益という視点で、水産関連の事業を仕分けすべきである。波崎の計画と、石巻の計画の違いを理解した上で、それぞれの事業が漁業の持続的発展に寄与するかどうかを判断しなければならない。残念ながら、現段階では、仕分け人はそのレベルに達していない。まあ、国内でこのレベルの政策判断が出来る人間は、専門家でもほとんどいないので、事業仕分けにも最初からそのレベルは期待できないのだけれど。事業仕分けが、現状で満足して、今のレベルにとどまるのなら、単なるパフォーマンスと批判されても仕方がないだろう。今年の経験を糧に、上を目指すつもりがあるならば、とても意義のある一歩と言える。どちらなのかは、現段階では判断がつかないのだが、政治家と官僚が予算について協議をする場を作ったこと自体は高く評価できる。世論の声も考慮しながら、この「場」を育てていって欲しいものである。

今のやり方が乱暴だという批判はその通りだと思う。現状では、議論がかみ合っていないので、最初は慣らし運転の方が良かっただろう。水産分野はまだまだ削れるけど、国防、外交が絡む部分は、しっかりとした調査をもとに慎重に議論をしてほしい。俺も直撃弾を食らって、来年の予定が立てづらい状況ではあるけれど、まあ、仕方がないのかなとあきらめ気味です。

事業仕分けについての雑感

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人民裁判だとかいろいろ言われているが、公開の場で予算が議論された意義はきわめて大きい。俺としては、事業仕分けは、減点方式ではなく、加点方式で評価したい。最初から、完璧な仕分けは無理だけれど、大きな一歩だったと思う。今までの予算は、納税者のあずかり知らぬところで、全て決まっていた。配る人ともらう人の都合だけで決められてきた水産の予算なんて、その最たるものだろう。事業仕分け人サイドへの批判も相当あるわけで、民意を問うという意味では、良い試みだろう。

仕分け人が、素人くさいという批判はもっともだ。日本国内では、予算の議論はクローズだったので、役人以外に予算のことを議論できる人間が育っていない。いままでやっていなかったことを、新しく始めたのだから、行政刷新会議が素人なのは仕方がない。また、評価対象の選定で財務省主導になるのも現段階では仕方がないだろう。日本で予算を削るプロといえば、財務官僚しかいないわけで、彼らの目から、無駄そうに見える物を、行政刷新会議が素人目線でチェックし直すというのは、理にかなっている。「今のやり方では、財務省の予算は削れないよね」という批判は、その通りだが、財務を含めて、全体を効率的に削れる対案は、俺には思いつかない。大きな混 乱を避けつつ、財務省以外の予算は削れるのだから、民主党のやり方は、よく練られた作戦だと思う。現段階で全ての省庁を敵に回すよりも、財務と組むのは合 理的判断だろう。このまま財務省主導で行くのか、それとも経験を積みながら、民主党色を出していくのか、今後の経緯を見守りたい。

仕分け人が高圧的とか、話しをきかないとか、いろいろ言われているが、これは相手が相手だけにそうならざるを得ないだろう。官僚は、そもそも逃げるのが仕事みたいなものだが、事業仕分けには、各省庁とも「逃げのスペシャリスト」を出しているはずだ。一方的に話し続けて、時間を潰すのが、彼らの常套手段であり、論点をはぐらかしながら、審議時間いっぱいまで、意味のない言葉を羅列するのは朝飯前だ。話が終わるのを、ぼーっと待っていたら、何の議論もできないまま時間切れになるだろう。だから、相手が論点をずらしだしたら、すぐに打ち切るのは、議事運営上やむを得ないと思う。

平成19年度奨学金の延滞者に関する属性調査結果

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平成19年度奨学金の延滞者に関する属性調査結果

旧育英会の追跡調査の結果が公表された。

無延滞者と延滞6ヶ月以上者の割合がわからないので、何とも言えない部分もあるが、現実は厳しい。

延滞者はアルバイトと無職で5割を超える。

年収はこんな感じ。延滞者は66%が年収200万円未満。


大学はこんな感じ。全体とあまり変わりませんね。ここの母数が一番大きいのかな。

OECD(経済協力開発機構)30カ国の中で、大学の授業料が有料で給付制奨学金もない国は日本だけなんだよね。授業料も高くなる一方だし。優秀な学生は、生活の心配なく学業に専念できるようにしてほしいと切に思う。次世代にしっかりと投資をして、若者が夢を持てる社会にするのが、大人の責任なのだが、実際には逆になっているからなぁ。

大学だって、院生を増やしておきながら、ポストは減るわ、定年は延びるわで、新陳代謝落ちまくり。新規加入がきわめて難しい状況になっている。残念ながら、優秀な学生がいても、「大学院に来い」とは言いづらい状況だ。三重大は定年が60歳のままであり、その点については評価できるのだが、俺より若い定職の研究者がほとんどいない時点で、かなりやばいと思う。

ノルウェーの政府関係者の聞き取りメモ

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24 June 2009
Ministory of Fisheries, Norway

small scale fishermen policy

漁業、社会経済、環境については、40年間同じ目標だが、ウェイトは変わってきた。持続的でなければ、漁業は成り立たない。目的が、より多く獲ることから、長期的な漁獲を増やすことに変わった。TACについて議論はほとんど無い。

ノルウェーは魚種が少ないので、管理をしやすい

14000名の漁業者
船は7000隻

558加工工場 
13000人の雇用

昔は、漁業は魅力的ではなかった
大勢が漁業を離れた→離れて何をした?→オイル産業などに転職
漁獲量は一定で、船を減らす→利益がでる。

管理システム
いくつもの異なる手法を併用している→どの漁業をどう管理するかは、誰がどうやって決める?→漁業者の話し合い
漁獲枠、ライセンス

15年間の実験のフィードバックで確立された。マスタープランに従って進んだわけではない。
大きな改革はない。小さな修正を徐々に積み重ねてきた。
もっとも大きな改革は####聞き取れず

ノルウェーの方法を輸出するのは難しいかもしれない。EUの共通漁業政策は大きな改革をしようとしているが、ノルウェーはそのような経験がない。

漁獲枠がICESの勧告を超えることはある?
以前はあったが、現在は、ICESの勧告内になった。
ICESの勧告を守る強制力はない。

2つの要素
precautionary and stability
漁獲圧は控えめにすべき、

blue whitingは漁獲枠が勧告を超えている。→joint managementの失敗、no agreement at all, free fishing going on.  2年以内に、漁獲枠を減らす計画がある。

shrimpはIVQがあるが混獲枠はトロール漁業全体で設定。
メインターゲットにしかIVQはない。それ以外は、テクニカルレギュレーション。
若齢魚が多くなったら、その海域を閉鎖する。

cod haddokは予防的枠の範囲になっている。

cod haddokは魚種別の漁獲枠だけど、それ以外はエコシステムベースのアドバイスを行っている。
海洋生物の保全に対するnew acts , new obligation
monitor and consider impact of bycatch

ノルウェーのトロール

3-4 target
10-14 bycatch
20種で90%ぐらい。
100魚種ぐらいが商業価値を持つ。

変化をとらえるindicator をモニターし、よからぬ兆候があれば、triggerが発動する

混獲物を持って帰らせることが第一歩。

1987年に、バレンツ海のdiscardを持ち帰るようなルールを作った
2003年 19種-75種に増えた。
持って帰れば、養殖の餌に使える。海に捨てるよりもマシな使い方がある。

どうやって、漁業者にそうさせるかが重要。
獲れたものは、全部持って帰る。投棄には厳しい罰則。
持って帰ると利益の80%は没収される。
minimum allowed size以下の魚でも20%の収入は入る。
持って帰るインセンティブが生じる。

FAO unwanted mortalityをへらすためのガイドライン
国際的な関心になりつつある。

最初から、魚はノルウェー社会に属している。
ノルウェー人か、それとも州に属しているかという議論があった。
魚はノルウェー人のもの、漁業の利益は漁業者の私有物
リソース・レントはとらない。
資源維持のためのリソースレントの導入が議論をされたことはあるが、導入には至っていない。

open accessは失敗
IVQの導入

1890年 ロフォーテンで漁業規制
60年代前半から、資源管理が徐々に導入される
科学が進むにつれて、行政・漁業者・大衆に、漁業管理の重要性が理解された。
1970年代にヘリングが崩壊することによって、気運が高まった・

ノルウェーの漁業者は科学的アセスメントを重視する。
科学者が警告をすると、漁業者は、生活を守るために、自ら漁獲制限を求める

漁業者14000人
4000はパートタイム
4000はラージスケール(船が20m以上)
6000はスモールスケール

船は7000隻
4500は、10m以下

small scale (<10m cod) gross income 1mil NOK some are 2mil NOK
沿岸の小型船の売り上げは、1500万円ぐらい。多い人は3000万円。

補助金政策
水揚げ地から、加工工場まで距離がある場合に、輸送を補助する補助金があるぐらい(南北問題か)

liscence
漁業の参加するためのライセンスが必要:年間許可と永続許可がある。
ライセンスには漁獲枠がついてくる。
漁船のライセンスが必要
個々の漁業にはライセンスがある。
ライセンスがない漁業もあり、生活ぐらいはできる。

漁船の大きさは、作る人間の自由。漁獲枠に見合ったサイズになる。
サイズと漁具によって、操業可能海域が決定される。
many different line
非常に複雑な線引きがされている。
conflictを避けるために、必要。
大型トロールは4マイルまでは入れない。
最初は漁具の接触を避けるためであったが、徐々に保全が目的になってきた。

15m以上の船にVMS VMS 10000 – 15000 NOK
排他的な漁業権を行使する以上、ルールに従う義務がある。

産業の生産性が増すと、自立した方が良いので、補助金の要求は無くなった。
補助金は変化へのインセンティブを失わせるので良くない
漁業補助金の問題点については、OECDレポートにある。

水産分野の事業仕分けについて、専門家の視点から分析してみる

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事業仕分けが盛り上がっているね。国民の見える場所で議論をするのは大事だと思うよ。水産分野もびしびし削られている。実に、めでたい話でございます 😛

たとえば、漁船構造改革が全額返納になった。俺は全面的に支持する。現在、日本の漁船は明らかに過剰な状態。魚もいないのに漁船ばかりある。結果として漁業が儲からずに、船の固定費すら払えないので、漁船の老朽化が進んでいる。こういう状態で税金で大型船を増やすのは愚の骨頂である。こんな馬鹿な国は日本ぐらいだよ。ノルウェーを筆頭に、まともな漁業国は、適正規模まで漁船を減らすために税金を使っている。

たとえば、波崎地区の取り組みを見てみよう。事業計画はここにある。

http://www.suisankai.or.jp/gyogyou/hasaki-keikaku.pdf

中身を見ていこう。

Image200911183

巻き網の乱獲によって、日本近海からはイワシもサバも消えてしまったわけだ。100船団あった物が現在27船団まで減ったのだが、まだ船が多すぎる。資源が少し回復するとよってたかって、たたいては回復の芽を摘んできた。すでに経営が成り立っていない漁業に対して、「資源回復計画」と称して、乱獲資金を提供しているのが実情だ。マサバ太平洋系群は資源回復計画の予算の7割だかを入れているんだけどいっこうに回復しない。

Image200911188

↑これのどこが回復基調なんだよ 👿
水産庁は、マサバ回復計画を成功例として祭り上げているのだが、他の回復計画はもっとひどいのだ。資源回復計画も数えるのも面倒くさいぐらい数を増やしているのに、まともに回復した事例はゼロ。何もしなくても、偶然回復する資源が1個ぐらいありそうなものだが、「下手な鉄砲数打っても当たらない」状態だ。

マサバは、92年、96年と卵の生き残りが良かったけど、乱獲で回復の芽を摘んだ。最近は、04年、07年と、卵の生き残りが良かったが、同じように資源をつぶしつつある。今年度は、毎月前年割れで、前年の6割しか獲れていない。まだまだ、漁獲圧が過剰なのだ。で、業界は二言目には「経営も考慮して、漁獲枠を増やせ」と主張してきた。現状では、船が多すぎるから、乱獲をしないと経営が成り立たない(まあ、どっちみち成り立ってないけど)。船が多すぎるのは自明だろう。で、なんで、税金で船を増やさないといけないの???

まず、この計画は現在4隻で操業している巻き網船団を3隻に減らすということ。ここでのポイントは探索船を減らして、網船を大型化するということだ。一般人のために、巻き網漁業について説明しよう(くわしくはここでもみてください)。日本の巻き網は4~5隻で船団を組む場合が多い。魚群を探す探索船、網で魚を巻く網船、魚を積んで港に水揚げをする運搬船の3種からなる。現在はソナーなどの探魚技術が進歩して、すべての船が探索船の機能を持っているので、純粋な探索船はぶっちゃけ無くても良い。漁獲能力は運搬船の容量に比例するのだが、この計画では運搬船は同じトン数なので、漁獲を減らす気はさらさら無いことがわかる。この企画書に書かれているように、資源は回復基調で、水揚げ量を減らすなら、普通に考えて網船を2.5倍に大型化する必要は無いはずだ。戦闘能力の高い最新の大型網船を税金でゲットして、残り少ないサバとイワシを独り占めする腹づもりなのだろう。

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「儲かる漁業創設支援事業」と言うより、「自分だけ儲かればよいと思っている漁業者支援事業」ではないか。省エネとか、適当に見栄えのするお題目を唱えておけば、何でも通ってきたのである。

収益の見通しもおかしい。

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水揚げ量と水揚げ高から、水揚げの単価が計算できる。現状でKg単価が54.6円だから、養殖のえさにしかならないような小魚ばかりを獲っている船だと言うことがわかる。人間が食べるサイズになる前に乱獲をしているような船は、食料安定供給の面からはマイナスでしかない。計画後の単価は、54.8円。高付加価値とかいいながら、現在の操業を変えるつもりはないのだ。日本人が食べるサイズの魚を捕れば、どうやったって100円にはなるはず。高付加価値とか言うなら、150円ぐらい書けばよいのに。

普通に考えて、あり得ない計画なのですが、運営者は元水産庁次官ですね。

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漁業にとって害のある予算が止まって本当によかった。漁船構造改革も、中にはまともな計画もあった。たとえば、石巻の計画は同じ巻き網ながら、トン数を大幅に減らし、漁獲をへらしながら、収益を確保するようになっている。こっちは残しても良いと思う。玉石混淆で石が多すぎるから、まとめて削った上で、時間をかけて玉の敗者復活をはかってほしい。あと、資源回復計画も、名前だけで、内容は乱獲資金をばらまいているだけだから、早く削ってください。水産庁の予算なんて、省エネや食料安定供給を口実にしたお土産や無駄な土木事業がほとんどだから、まとめて削ったうえで、本当に必要な予算を後からつければ良いと思います。

乱暴でも良い、たくましく削ってほしい

水産庁によれば、ブリは管理できているから、漁獲枠はいらないそうです

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ブリに関しては何の規制もない。完全な早い者勝ちだ。近年、巻き網の漁獲が増えているのだが、これは資源が増えたわけではない。ソナーが導入されて、群れで泳ぐ魚への漁獲効率がグッと上がった。マグロ、ブリ、鰹への巻き網の漁獲効率は、以前とは比べものにならない。ブリ漁業は、漁業生産を減少させながら、消費者にも迷惑を与えている。乱獲のツケは未来の世代が背負うことになる。

ブリのような資源を無管理のままにしておくのは、日本人にとって大きな損失である。水産庁は、俺が何を言っても、四の五の言うだけでなにもしない。TAC魚種を増やすように、規制改革会議の二次答申に盛り込まれたのだが、それに対する水産庁の回答はこれ

対象魚種拡大の考え方
・①具体的な追加魚種については、採捕・消費量が多く、国民生活上又は漁業上重要な資源として、カタクチイワシ、ホッケ、ブリ類、マダラが浮かび上がるが、②これらの魚種については、TACの決定に足る科学的知見が十分といえない状況にあり、③さらに、従来からの漁業法等に基づく投入量規制や技術的規制、資源回復計画等の措置を講じており、資源状況の悪化もみられないことからも、現時点で、TAC管理を追加する必要性は低いと考えられる。なお、今後も、こうした観点からTAC対象魚種の追加について検討する必要がある。

論点を個別に整理しよう。

① 国による管理が必要な広域重要魚種というと、普通に考えれば、ホッケ、ブリ、マダラなどが思い当たるわけである。この件については、ここに書いたとおりである。
http://katukawa.com/2008/01/post_273.html

②「科学的知見が不十分とのことだからできましぇーん」ということらしいが、だったら、情報を集めろよ。2500億円も漁港建設に使っているのだが、その0.1%の予算をつければ、ブリの情報など十分に集まるはずだ。仕事をしないでおいて、前提条件がそろってないと開き直るのが、水産庁クオリティー。

③ 「従来からの漁業法等に基づく投入量規制や技術的規制、資源回復計画等の措置を講じており、資源状況の悪化もみられないことからも、現時点で、TAC管理を追加する必要性は低い」というのは、読んでいて吹き出してしまったよ。何も知らないのか、口から出任せの嘘つきなのか。どちらにせよ、こういうことを言う人間は信用できない。
まき網のブリの漁獲は、全くの無秩序状態であり、乱獲によって、潜在的な利益が大きく損なわれている。ブリ漁業の現状を見れば、従来からの漁業調整や資源回復計画が全く機能していないのは明白だ。読者の皆さんは、現在のブリ漁業がきちんと管理をされていて漁獲枠を設定する必要がないと思いますか?

水産庁が出した最終結論はこれ

しかしながら、これら魚種について実際に制度の対象とするかどうかについては、当該資源の管理上、TAC制度が最適かどうか、また、当該資源を漁獲する漁業種類にいかなる影響が及ぶのか等について総合的に検討の上、判断を行うべきではないか。

「総合的に検討の上、判断を行うべきではないか」というのはその通り。で、総合的な検討とやらはいつやるんだよ。TAC制度が始まって10年以上が立つのに、未だに何の検討もしていないじゃないか。「総合的に検討の上、判断を行うべきではないか」などとのたまうのは、行政官の怠慢以外の何物でもない。
ブリは、多くの異なる漁業が利用しているので、禁漁日や努力量規制など出来るはずがない。全体の線引きがないと、「獲れるうちに獲っておこう」と言うことに必ずなる。個別漁獲枠によって、それぞれの漁業の間で線引きをした上で、おのおのの漁業に応じた禁漁日や漁具の規制を自主的にやればよいのである。TACが適切かどうかなんて議論の余地もない。TACが無いこと自体が国として非常識なんだよ。

漁獲に占める成魚が2%なんて、明らかな乱獲状態。ブリに関しては、現行の漁業調整が機能していないので、公的機関による規制が必要なことは自明だろう。検討するまでもない。ブリの回遊は都道府県の規模では収まらないので、国が責任をもって管理をする必要がある。にもかかわらず、水産庁の管理課は何の対策も練っていない。それどころか、管理をしろという要求に対して、「検討が必要ではないか」と開き直って、何もしない。水産庁の無作為勢力が駄々をこねているうちに、漁業は衰退を続けているわけだ。また、この報告書から1年以上が経過するのだが、検討作業は何もしていない。やらない理由をあれこれ並べるだけで、やるべきことを一つもやらない。日本漁業の衰退における無作為行政の責任はきわめて重い。

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