- 2007-04-16 (月) 17:19
- 研究
「保護区設置」で水産資源を再生
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20070413/122749/?P=1
日経も最近は、漁業ネタが多いな。
マグロの養殖ネタに続き、今度は保護区ネタが出てきた。
漁業は、水揚げ以外にも様々なダメージを与えている。
網ズレによる死亡や海底の物理的破壊などなど。
生態系の保全には、Marine Protected Area(大規模海洋保護区)によって、
漁業の影響を受けない場所を設けるしかないという意見もある。
保護区の難しいところは、効果が読めないところだ。
漁業禁止の保護区によって、生態系自体の健全度が上がるのは間違いないし、
それは歓迎すべきことなんだろうけど、具体的な効果がわからない。
一方、漁場をなくすというのは、そこで生活をする漁業者には死活問題。
ということで、「大規模海洋保護区は、有効なんだろうなぁ」と思いつつも、
なかなか実施されていないのが現状なのだ。
そういう中で、かなり思い切った取り組みをしているのがニュージーランド。
中でも有名なゴートランド保護区の仕掛け人がDr. Bill Ballantineだ。
http://www.marine-reserves.org.nz/pages/papers.html
かなりエコ依りで、原理主義的な印象も受けるが、
世界的にも影響力がある人なので、彼の意見は知っておいて損はない。
ちょっと古いけど、このあたりのレビューが読みやすい。
http://www.marine-reserves.org.nz/papers/fisheri.pdf
特定の種の保護よりもむしろ生態系の保全が重要であり、
そのために海の20~50%を禁漁区にすべきだという意見の持ち主。
ダニエルポーリーも似たようなことを言っていたが、そっちは20%だったかな。
フロリダの研究チームの報告書も20%ぐらい必要と言っている。
Plan Development Team 1990 The potential of marine fishery reserves for reef fish management in the U.S. Southern Atlantic. NOAA Technical Memorandum NMFS-SEFC-261, 40 pp.
保護区推進論者は、最低でも20%は必要という線で意見が一致している。
また、Hilbornは保護区だけでは不十分で、従来の漁獲量の規制と組み合わせないと
充分な効果が無いと主張していたりもする。
と、まあ、いろいろと話題性のあるテーマなんだが、何せ保護区の事例が少ないんだよね。
そんな中で、ニュージーランドの世界的にも例がない大規模保護区の事例は、超重要。
今後も要チェックですね。
Comments:2
- david 07-04-16 (月) 18:47
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母国のニュージーランドが取り上げられて、プチコメントさせていただきます。
僕にとって面白かったのは、産業が今回の動きを歓迎しました(1)が、グリーンピースはまだまだ不満(2)だそうです。
(1) http://www.seafood.co.nz/040407
(2) http://www.greenpeace.org/new-zealand/press/releases/government-s-bottom-trawl-ban - 勝川 07-04-17 (火) 18:24
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davidさん、初めまして。
海洋保護区の実践という意味ではNZは最も進んでいますね。
最初は反対していた産業も保護区に理解を示し始めたというのは、
それだけ目に見える利益があったのでしょう。実に興味深いです。
NZの海洋保護区は今後も広がっていくとみて良いのでしょうか?グリーンピースは漁業を根絶させない限り不満でしょうね。
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