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シーフードサミット その2 建設的な議論のためのガイドライン

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欧米では、MSCの成功が大きな追い風になり、水産企業と環境NGOの間に、協力関係が生まれつつあります。といっても、数十年前までは、完全に水と油の関係であり、今でもしこりは残っています。「環境とビジネスの両立が重要」と言うことは、シーフードサミット参加者の共通認識ですが、軸足が環境にある環境NGOと、軸足がビジネスにある漁業会社の価値観は一枚岩ではありません(だからこそ、対話が重要!)。
シーフードサミット主催者は、水産企業と環境NGOが、価値観の違いを乗り越えて、建設的な議論を行うために「対話のガイドライン」を策定しています。ガイドラインは、大きなパネルに表示され、すべての会場の目につくところに展示されていました。良い内容だと思ったので、写真に撮ってきました。

対話のガイドライン

  • 「相手」ではなく、「問題」に対して厳しい態度で望むこと
  • 非難するのではなく、解決策を探ること
  • 発言権を独占しない
  • 一度に一人ずつ発言しましょう
  • 同意できないとしても、お互いの価値観を尊重しましょう
  • セッション中は携帯電話を鳴らさないこと
  • 話すときは自己紹介
  • はっきりと、部屋全体に話しかけてください
  • コメントと質問は、簡潔で平易な表現で

環境NGOの中には養殖を全否定するような発言をする人もいました。それに対して、養殖業者から、自分たちの環境配慮に関する情報提供がありました。また、「カタクチイワシなどの浮魚を魚粉として使うのではなく、直接食べるべきだ」という研究者の主張に対して、「現実問題として需要がないのだから魚粉にして有効利用するのも悪くない」という反論もありました。対立する意見を並べてもらえれば、第三者としても、双方の言い分を考慮した上で、自分の意見を決めることができます。ややもすると、相手の揚げ足取りに終始してしまう日本国内の議論とは大きな違いを感じました。

セッション外で、保護団体の人たちと話をする機会を得ました。彼らの関心は、なんと言っても鯨です。「鯨は賢くてかわいいから、食べるべきではない」とステレオタイプの主張をされたので、「ブタだって、賢くて可愛いじゃないか」とステレオタイプの反論をしてきました。その上で、「持続性は、世界全体の義務であり、日本がその義務を果たしていないのは事実。そのことを非難されるのは仕方が無いし、今後、改善をしていく必要がある。でも、持続性の範囲で何を利用するかは、価値観の問題であり、外からとやかく言われることではない」と主張してきました。

鯨に関して言えば、ハードコアな環境保護主義者との議論は、平行線です。お互いの意見が違うのは、最初からわかっています。だからといって、対話を避けるべきではありません。ここでいう対話とは、口論ではなく、意見交換。お互い、どう思っているかを情報交換するだけで、相手をやり込める必要はありません。同意するにせよ、しないにせよ、相手の話をしっかり聞いた上で、自分の意見を、きちんと主張していくことが大切なのです。こういう冷静な議論を積み重ねることで、理解者も増えるし、お互いの価値観がわかれば、落としどころも見えてくるのではないでしょうか。実際に、我々の議論を聞いた上で、こちらの意見に同意してくれる人も、少なくありませんでした。

シーフードサミットに日本からの参加者がいなかったことが、残念でなりません。これからの水産業において、「環境」や「持続性」が、核となるべきテーマです。水産は世界的なビジネスとして、発展しているわけですが、成長著しい欧米市場がなにを要求しているかをしらないのは致命的です。また、持続的な魚食に関する議論に、日本の価値観が全く反映されないのも残念です。これまでの日本は、国際的な議論には参加しないで、出てきた枠組みに文句を言うだけでした。今後は、積極的に議論に参加して、他国の価値観を理解しようと努力すると同時に、言うべきことはしっかりと主張していく必要があるでしょう。

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