シーフードサミット その1

MSCのエコラベルの普及に代表されるように、環境NGOと漁業会社が共同で持続的漁業を推進するという動きが欧米諸国を中心に浸透しつつあります。

水産業界と環境NGOが共同で、シーフードサミットという会合を、毎年、開催しています。シーフードサミットは、水産業界と保全コミュニティーの代表が一堂に会して、水産市場を環境的・社会的・経済的に持続的にするための議論を行う場だそうです。10回目となる2011年は、カナダのバンクーバーで開催されました。

http://www.seafoodchoices.com/seafoodsummit.php

太平洋クロマグロの資源と漁業に関する話をしてほしいという依頼があり、今回、シーフードサミットに初めて出席しました。会場について驚いたのは、規模の大きさです。参加者は700人。欧州、北米、南米など、世界中から集まってきた人々が、熱い議論を繰り広げました。日本では、持続的な水産物のシンポジウムなどは細々と開かれているのですが、まるで規模が違います。

議題は多岐にわたります。ほんの一例を挙げると、

  • 持続的な魚食を普及させるために、シェフや鮮魚店が果たすべき役割
  • 海洋の酸性化
  • フェアトレード
  • トレーサビリティー
  • サーモンの養殖の環境負荷
  • 水産物の持続性に対して政府が果たすべき役割
  • 持続的な漁業への投資
  • IUU漁業への対応
  • 大西洋クロマグロのブラックマーケット

会場には、アジア系の人間はほとんどいませんでした。中国人を少し見かけたぐらいで、日本人は私だけでした。運営サイドも、そのことは認識しており、今後、広がっていく中国市場に持続的なシーフードという概念をいかに根付かせるかを、中国の加工業者、輸出業者、中国と取引がある業者があつまってパネルディスカッションもありました。次回のシーフードサミットは、2012年の9月に香港で開催されます。

漁業を持続的にしていくという共通の目的のもので、業界とNGOが建設的な関係を築いているのは、すばらしいと思った。日本では、環境NGOは漁業の敵だと思われていて、業界も行政も、警戒しているけど、持続性という目的は共通なのだから、協力できることも多いと思います。

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シーフードサミット その1 への4件のフィードバック

  1. はやと のコメント:

    素晴らしい。魚を資源としてとらえ、共有する意識がもっと芽生えるといいと思います。

  2. katukawa のコメント:

    漁業消費大国の日本こそ、こういう議論をしないといけないのです。

  3. 和田一彦 のコメント:

    みなと新聞の記事を拝見しました。

    2009年にサンディエゴで開かれた第8回シーフードサミットに参加しました。
    Sustainable Seafood in Japan – A Force in the Next Five Years?

    http://www.seafoodchoices.com/seafoodsummit/SeafoodSummit2009.php

    愛媛大学の野崎先生を始め数名の日本人が来場されていました。

    和田の発表資料です。(WWFに私の発表を英訳してもらいました。)
    http://www.seafoodchoices.com/seafoodsummit/documents/WadaK.pdf

    今年は勝川先生だけだったのですね。
    一昨年は、建設的な議論のためのガイドラインには気がつきませんでした。
    日本国内で、海外の動きがきちんと伝えられるとよいですね。

  4. katukawa のコメント:

    和田さん、ご無沙汰しております。

    2年前の会議には、出席されたのですね。
    その当時は、私はこの会合の存在すら知りませんでした・・・

    MSCもそうですが、この手の試みは、
    なかなか日本では広がりませんね。
    これからも美味しい魚を食べ続けようと思ったら、
    絶対に必要なことなのに・・・

    今後も、地道に、情報を流し続けますので、
    よろしくお願いします。

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