- 2014-09-04 (木) 15:56
- クロマグロ
先ほど終了したWCPFC北小委員会に関する情報を整理しました。
クロマグロ資源の概要
漁獲が無かった時代の4%という危機的な低水準→回復措置を獲る必要がある。
科学委員の資源評価レポートの概要
http://isc.ac.affrc.go.jp/pdf/Stock_assessment/PBF_2014_Exec_Summary_4-28-2014_gtd.pdf
その和訳 http://katukawa.com/?p=5746
漁業の概要
未成魚・成魚ともに日本が漁獲の大半をしめる。次いで、メキシコと韓国の未成魚の漁獲が多い。乱獲行為が継続し、資源は乱獲状態に陥っている。
乱獲行為 → 非持続的な漁獲圧をかけている → 漁獲圧削減が必要
乱獲状態 → 非持続的な漁獲で、資源がすでに減少している → 資源回復が必要
クロマグロ漁業の3つの問題点
① 卵を産む前に95%以上の個体をとってしまう
② 産卵場で待ち伏せして、卵を産みに来た親を一網打尽
③ 非持続的な漁業を規制するルールが存在しない
参考リンク→ http://katukawa.com/?p=5753
今回の会議の意義
クロマグロ資源を回復させるには、未成魚への高い漁獲圧を削減が不可欠である。日本が提案した未成魚の漁獲量半減措置が今回の会議で合意されたので、加盟国である日本と韓国は、未成魚の漁獲量に上限が設けられることになった。クロマグロの資源回復に向けて、一歩前進。日本代表は、難しい交渉を良くまとめたと思う。
韓国の漁獲量は多くないのだけれど、韓国が例外措置と言うことになると、「何で韓国が獲っているのに、日本は我慢しないといけないんだ」と日本の漁師から不満の声が上がり、国内の規制がやりづらくなるのは目に見えていた。国内の規制を潤滑に進める上で、韓国も含めた合意が出来たのは大きい。
残る未成魚の主要漁業国はメキシコのみである。メキシコの漁獲規制については10月に開催されるIATTCで決定する。未成魚の規制に難色を示しているメキシコにプレッシャーをかける上でも、今回、西太平洋での未成魚漁獲量削減の合意ができたことは大きい。
今後の課題
これまでと比べれば、クロマグロの規制は前進したが、今回の措置のみでは資源は回復しないだろう。今回合意した措置は、実はそれほど大幅な漁獲量の削減にはならないし、国内の漁獲規制の制度設計と、産卵場の保護という大きな問題が残っているからだ。
漁獲量半減でも、漁獲圧はそれほど下がらない
「漁獲率を2002-2004の半分に削減すれば資源量は回復する」というシミュレーション結果が得られているが、今回の決定は「漁獲量を2002-2004の半分に削減する」という内容。資源量はすでに2002-2004年の水準の半分に減っているので、漁獲量を当時の水準から半減したところで、漁獲率としては2002-2004年レベルと大差が無いのである。この漁獲枠だと資源の回復に結びつかず、近い将来に、漁獲枠を更に削減することになるだろう。
漁獲量を制限するための日本国内の体制が整っていない
水産庁は、漁区を6つのブロックに区切って、ブロックごとに、早い者勝ちで未成魚を奪い合わせる計画である。競争のための無駄な燃油が浪費されるうえに、漁期の前半しか魚が供給されない可能性もある。早獲り競争を抑制するには、漁獲枠を更に細かく分けて配分していく必要があるだろう。
産卵場の保護
産卵親魚の減少が問題視されているにも関わらず、大型まき網船による産卵場での集中漁獲が継続している。産卵場での漁獲規制は、未成魚と比べて、きわめて緩い。2002-2004年の漁獲量が1000㌧弱であったにも関わらず、業界団体が2000㌧という過剰な枠を自主規制で運用している。がんばって未成魚を獲り控えても、産卵場に集まったところを一網打尽にしていたら、何の意味もない。産卵場の漁獲規制が急務である。
- Newer: あまり意味の無いウナギの池入れ上限
- Older: 日本が提案しているクロマグロの漁獲規制について解説
Comments:0
Trackbacks:0
- Trackback URL for this entry
- http://katukawa.com/wp-trackback.php?p=5794
- Listed below are links to weblogs that reference
- WCPFCで合意をしたクロマグロの規制について from 勝川俊雄公式サイト