- 2015-09-03 (木) 15:29
- クロマグロ
太平洋クロマグロの資源管理に関する国際会議(WCPFC 北小委員会)が9/1-3まで開催されました。クロマグロの資源評価は、2年に一回行われます。最新の資源評価は2014年で、次回は2016年です。今年は谷間の年に当たるので、普段であればしゃんしゃんでした。しかし、クロマグロの新規加入が劇的に低下していることから、議論が紛糾しました。
下の図はクロマグロの新規加入量の指標です。急激に減少していて、2015年はさらに悪くなりそうです。(水産庁と巻き網業界以外の)関係者の間で、資源の存続に対する危機感が広がっています。米国は親魚を含む規制を再検討して、長期的な回復計画を提案しました。メキシコは、国際合意を待たずに漁獲枠を自主的に削減すると宣言しています。壱岐や対馬の一本釣り漁業者は産卵期産卵場での漁獲を自主的に禁漁しました。
日本は、クロマグロの新規加入が減少した時に適用される緊急ルールを提案しました。すでに新規加入が激減しているにも関わらず、「緊急時のルールを2016年に議論しましょう」と提案しているのだから、危機感が欠如しています。すでに火が燃え広がっているのに、火事になったらどうするかを悠長に相談しているようなものです。しかも、この緊急ルールはそもそも2年前に決めておくべきだったのです。
こちらに2013年の決定事項があります。
http://www.wcpfc.int/system/files/CMM%202013-09%20CMM%20for%20Pacific%20Bluefin%20Tuna.pdf
2ページ目に次のような記述があります。
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CCMs, in particular those catching juvenile Pacific bluefin tuna, shall take measures to monitor and obtain prompt results of recruitment of juveniles each year. An emergency rule shall be developed in 2014 which stipulates specific rules all CCMs shall comply with when a drastic drop of recruitment is detected.
新規加入が劇的に減少したことがわかったときに、全ての加盟国が従うべき緊急ルールを2014年に開発する。
今回の会議で議論をした緊急ルールは、2014年に決めることになっていたのです。議長が議事から外したために、実際には議論をされませんでした。2013年の時点では新規加入はそれほど悪くないと考えられており、将来のリスクに備えようということでした。この時点で緊急ルールを決めていれば、今年は緊急ルールが発動して、資源の減少にブレーキがかかったかもしれません。議論を先送りしている間に、緊急時が現実のものになってしまったのです。2016年に緊急ルールが合意できたとしても、実際に緊急ルールが適用されるのは2017年以降でしょう。後手後手の対応によって、どこまでも水産資源が減っていくという、日本漁業ではおなじみの光景が繰り返されています。
俺が疑問に思うのは次の二点ですね。
- なぜ2014年に緊急ルールを議論をしなかったのか。(北小委員会議長の宮原氏が答えるべき質問です。)
- 水産庁は現在の新規加入の激減は緊急時ではないという認識なのか?
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Comments:2
- hossytk 15-09-06 (日) 23:51
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初めてコメントさせて頂きます。勝川先生のブログや記事を多々拝見させているものですが、議長が議事から排除される会議に意味があるのかよく分からないのですが、よろしければ解説をお願い出来ないでしょうか?
- katukawa 16-11-25 (金) 10:36
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スポーツ競技の審判がプレーに参加しないのと同じことです。
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- WCPFC北小委員会が終わったようです from 勝川俊雄公式サイト