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研究 Archive

日本漁業「責任」時代へ 35

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みなと新聞連載 第35回

みなと新聞 2010年2月19日 の1面に掲載

PDFは、こちらminato35.pdf

衛星を利用した漁船監視システム(VMS)について(後半)

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後半です。クリックすると大きくなります。

欧州会議はクロマグロの規制賛成に

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EP backs trade ban on blue fin tuna and polar bears .

2010年2月10日に、欧州会議(european parliament)は、タイセイヨウクロマグロをワシントン条約の付属書Iに掲載するというモナコ提案を正式に支持することを表明。EU27ヶ国にモナコ提案の支持を要求した。
去年の9月にモナコ提案の是非を巡って議論をしたときは、フランス、イタリア、スペインの反対により、「欧州会議としてモナコ提案を支持する」という結論を得られなかった。その後、保全への世界世論の高まりにより、イタリア、フランスが方向転換し、欧州会議として、正式にクロマグロの規制支持に回った。

今回の決定のポイントは、次の3点

  1. 国内取引の容認、伝統的な沿岸漁業の存続
  2. 漁船乗組員、漁船オーナーへのEUからの財政支援
  3. 違法漁業(IUU)への取り締まりの強化とペナルティーの増加

The Council is expected to take a decision on the EU’s position on February 26.

今回の決定には拘束力はないものの、影響は大きいだろう。EUとしての方針は2月26日に示される予定だが、賛成に拘束をかけることも、あり得る展開である。拘束をかけないとしても賛成国が多数だから、ワシントン条約締約国会議での大勢に影響はないかもしれない。

スペイン陥落は時間の問題かもしれんな。それにしても、イタリアは相変わらず、空気を読むのが抜群に上手い。今回も、タイムリーな方向転換で、存在感を示しつつ戦勝国入りですね。

今日の結論:歴史は繰り返す

マグロ規制に賛成するフランスの変節を産経新聞・山口昌子さんが一刀両断

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【パリの屋根の下で】山口昌子 マグロ抜き握りが流行!? (1/2ページ) – MSN産経ニュース.

禁止反対の日本は「(状況を)ひっくり返せるように努力したい」(赤松広隆農水相)と、禁止回避に向けて関係国への事前説得に力を入れる考えを示しているが、その声はフランスには届いていないばかりか、日本は「(クロマグロの)8割消費国」「スシ犯人説」などと被告人扱いだ。
ただ、ここ10年、クロマグロを大量に消費しているのは日本だけではない。フランスなど欧州でも健康食ブームとあいまって、スシやサシミが人気を呼んでおり、乱獲や価格高騰に“貢献”中だ。

おやおや、日本の消費への非難は「被告人扱い」で、フランスの消費は「乱獲に貢献で」すか。今でもクロマグロの8割は日本で消費されているのは事実である。欧州だってマグロを消費するだろうが、その量は日本の比ではないし、歴史も浅い。クロマグロをここまで減らした責任は圧倒的に日本にある。

残り少ないマグロを世界各国が消費を控える中で、日本は値崩れするほど買いまくっている。資源をここまで減らしたことに何の反省もなく、自国の沿岸では未成魚を獲りまくっている。挙げ句の果てに、大臣が「マグロは絶滅危惧ではない」と開き直っているんだから、海外の共感など得られるはずがない。「(状況を)ひっくり返せるように努力したい」(赤松広隆農水相)というのは、ようするに、クロマグロが直線的に減少している現状を変えないために努力をしているだけである。「資源減少?俺たちは最後の一尾まで食うだけだ」という日本の声はしっかりと世界に届いている。その結果が、ワシントン条約でタイセイヨウクロマグロの規制を求めるモナコ提案への賛同国の増加である。

近年は、欧州の裕福層を中心に、クロマグロの消費を控えるようになってきている。少なくとも、消費を抑えようという世論が欧州にはある。日本にそのような世論は皆無である。山の旅館でも、食べたくないのにマグロが出てくる日本よりも、マグロ抜きの寿司屋が出てくる欧州の方がまともだろう。海外の研究者から、「日本人は、なぜ減少したクロマグロをわざわざ食べるのか」という質問をしばしば受ける。彼らは、純粋に、日本の消費者の心理が理解できないのである。野生生物を消費する以上、その持続性に関心を払う責任があるという当たり前のことが、なぜ日本人には理解できないのか。産経新聞のようなメディアの責任はきわめて重大である。

山口昌子さんは、何が言いたいんだろうね。少なくとも、日本人にマグロを消費した責任を考えさせようという意図はないだろう。「フランス人もマグロを消費しているんだから、日本の消費にけちをつけるな」というニュアンスである。「フランスは、日本と一緒に漁獲規制に反対して、何も考えずに消費を続けるべきだ」と言いたいのだろうか。あと2~3年、クロマグロを輸出する代償として、国際イメージを著しく失墜させることが、フランスの国益にかなうとは思えない。どっちみち食えなくなるのは確定なんだから、規制に回った方がイメージアップになるというフランスの判断は妥当である。日本がイタリアやフランスの変節を非難するのは、「いい年して、こんなことばかりやっていられない」と仲間が次々と脱退した暴走族で、最後に残されたメンバーが、「あいつ等は根性がない」と脱退者を非難しているような印象だ。クジラに続いて、マグロでも、日本は、国際的に孤立してしまったわけだ。マグロ漁業国ですら保全に賛成せざるを得ないところまで、マグロ漁業に対する国際世論が厳しいのである。イタリアやフランスの変節を感情的に非難するのではなく、日本が置かれた状況を客観的に見るべきである。あと2~3年、クロマグロを輸入する代償として、国際イメージを著しく失墜させることが、日本の国益にかなうとはとうてい思えないのだ。

衛星を利用した漁船監視システム(VMS)について(前半)

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漁船監視システムで検索をしてくる人が多いので、昔書いた記事をアップします。みなと新聞2009年11月26日の一面に、掲載されました。

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ノルウェー漁業組合のインタビュー

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ノルウェーは伝統的に漁業者の力が強い。それを支えているのが、透明性が高く、効率的な漁業組合です。今回は、ノルウェーの浮魚組合のボス、Nakkenさんの独占インタビューをお届けします。

日本の漁業関係者にはかなり衝撃的ではないでしょうか。手数料はたったの0.65%です。それでも、効率的なインターネットオークションを運営し、高い値段で魚を売ってくれるのです。これは、漁業者は大助かりですね。

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アイスランド漁業の歴史に関するメモ

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アイスランドの資源管理の年表

1976より前 禁漁、禁漁区、禁漁期、漁具規制など、様々な規制の併用
1976 ニシン漁業に船別漁獲枠を導入(IQs)
1979 ニシンの船別漁獲枠が譲渡可能に(ITQs)
1980 カペリン(カラフトシシャモ)漁業に船別漁獲枠を導入(IQs)
1984 底魚漁業にITQが導入される。小型船(<6brl)は、ITQの適用除外。
1985 底魚漁業に努力量クオータ(effort quota option)が導入される
1986 カペリンの船別漁獲枠が譲渡可能に(ITQs)
1991 漁業全体が単一のITQシステムで統一される。小型船への適用除外は継続
1991-04 小型船への厳格な努力量規制が導入される
2004 小型船向けの独自のITQ制度が導入される

1976年より前は、今の日本と同じような状態であった。まず、大型船の主要漁業からIQを導入。それを譲渡可能にした。最初から、譲渡の自由度は極めて高かった。1984年に、全ての底魚にITQが導入された。底魚は、アイスランドの漁業生産の2/3を占めている。これによって、アイスランドの主要な漁業は網羅されたことになる。1991年には全ての大規模漁業の制度を統一した。

小型船へはITQの適用除外を行ってきたが、結果として小型船の漁獲能力が急増した。91-04年の間、非常に厳格な努力量規制を行ったが、過剰漁獲を抑えきれず、04年に小型船にもITQが導入された。

資源状態は良好で、漁業は利益を生んでいる。アイスランド人は、日本人以上に水産物を消費するのだが、水産物の自給率2500%である。

アイスランドの漁業制度についてしばしば批判されるのは、寡占化の問題である。これは、ほぼ無規制の売買を認めた結果である。社会的公平性の観点から、現在もITQを続けるかどうかについては議論が続いている。アイスランドの公平性の議論は、日本には当てはまらない。日本では漁業組合が沿岸の排他的独裁権を有しており、そもそも社会的な公平性が存在しないのである。

仏、クロマグロ取引禁止を支持 EU一致、日本に影響も – 47NEWS(よんななニュース)

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仏、クロマグロ取引禁止を支持 EU一致、日本に影響も – 47NEWS(よんななニュース).


イタリアに続き、フランスも方向転換したことで、EUの主要国で規制反対はスペインのみになりました。EUとしては、付属書I(取引禁止)でまとまったことになります。

ワシントン条約でのクロマグロの規制を巡る一連の動きは、こちらのまとめページをご覧ください。

ワシントン条約でのクロマグロ規制の動き(まとめ)

被弾の羅臼漁船2隻 位置記録が4時間半空白 安全水域外操業か-北海道新聞[道内]

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被弾の羅臼漁船2隻 位置記録が4時間半空白 安全水域外操業か-北海道新聞[道内].

銃撃のあった1月29日当時の2隻の衛星通信漁船管理システム(VMS)の記録の空白時間が4時間半に及び、これとは別に航跡を示す衛星利用測位システム(GPS)の記録も船内に残されていなかった

2隻のVMSが偶然、同じタイミングで故障し、再び同じタイミングで直り、GPSの記録もなぜか消えてしまったのかな。偶然が重なったのなら、しょうがないよね。

ロ側から銃撃「受けたと言えず」 国後沖で操業の乗組員 – 中国新聞

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ロ側から銃撃「受けたと言えず」 国後沖で操業の乗組員 – 中国新聞.

第58 孝丸(平藤孝幸船長)の乗組員が「迷惑を掛けてしまうので、銃撃を受けたことは言えなかった」と話していることが31日、関係者への取材で分かった。

漁協は、船の位置を衛星で把握するシステムの記録によると指定区域からの逸脱はなかったとしている。

魚を捕りに行って、命を取られたら、もともこもないので、何とかして欲しいですね。日本政府は、無実な国民の生命が脅かされたのだから、全面的に争うべきです。VMSのデータが、国際的に証拠として認められるものなのかも気になります。この事件も、今後の経緯を見守る必要がありますね。

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from 18 Mar. 2009

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