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世界の漁業 Archive

ノルウェーの政府関係者の聞き取りメモ


24 June 2009
Ministory of Fisheries, Norway

small scale fishermen policy

漁業、社会経済、環境については、40年間同じ目標だが、ウェイトは変わってきた。持続的でなければ、漁業は成り立たない。目的が、より多く獲ることから、長期的な漁獲を増やすことに変わった。TACについて議論はほとんど無い。

ノルウェーは魚種が少ないので、管理をしやすい

14000名の漁業者
船は7000隻

558加工工場 
13000人の雇用

昔は、漁業は魅力的ではなかった
大勢が漁業を離れた→離れて何をした?→オイル産業などに転職
漁獲量は一定で、船を減らす→利益がでる。

管理システム
いくつもの異なる手法を併用している→どの漁業をどう管理するかは、誰がどうやって決める?→漁業者の話し合い
漁獲枠、ライセンス

15年間の実験のフィードバックで確立された。マスタープランに従って進んだわけではない。
大きな改革はない。小さな修正を徐々に積み重ねてきた。
もっとも大きな改革は####聞き取れず

ノルウェーの方法を輸出するのは難しいかもしれない。EUの共通漁業政策は大きな改革をしようとしているが、ノルウェーはそのような経験がない。

漁獲枠がICESの勧告を超えることはある?
以前はあったが、現在は、ICESの勧告内になった。
ICESの勧告を守る強制力はない。

2つの要素
precautionary and stability
漁獲圧は控えめにすべき、

blue whitingは漁獲枠が勧告を超えている。→joint managementの失敗、no agreement at all, free fishing going on.  2年以内に、漁獲枠を減らす計画がある。

shrimpはIVQがあるが混獲枠はトロール漁業全体で設定。
メインターゲットにしかIVQはない。それ以外は、テクニカルレギュレーション。
若齢魚が多くなったら、その海域を閉鎖する。

cod haddokは予防的枠の範囲になっている。

cod haddokは魚種別の漁獲枠だけど、それ以外はエコシステムベースのアドバイスを行っている。
海洋生物の保全に対するnew acts , new obligation
monitor and consider impact of bycatch

ノルウェーのトロール

3-4 target
10-14 bycatch
20種で90%ぐらい。
100魚種ぐらいが商業価値を持つ。

変化をとらえるindicator をモニターし、よからぬ兆候があれば、triggerが発動する

混獲物を持って帰らせることが第一歩。

1987年に、バレンツ海のdiscardを持ち帰るようなルールを作った
2003年 19種-75種に増えた。
持って帰れば、養殖の餌に使える。海に捨てるよりもマシな使い方がある。

どうやって、漁業者にそうさせるかが重要。
獲れたものは、全部持って帰る。投棄には厳しい罰則。
持って帰ると利益の80%は没収される。
minimum allowed size以下の魚でも20%の収入は入る。
持って帰るインセンティブが生じる。

FAO unwanted mortalityをへらすためのガイドライン
国際的な関心になりつつある。

最初から、魚はノルウェー社会に属している。
ノルウェー人か、それとも州に属しているかという議論があった。
魚はノルウェー人のもの、漁業の利益は漁業者の私有物
リソース・レントはとらない。
資源維持のためのリソースレントの導入が議論をされたことはあるが、導入には至っていない。

open accessは失敗
IVQの導入

1890年 ロフォーテンで漁業規制
60年代前半から、資源管理が徐々に導入される
科学が進むにつれて、行政・漁業者・大衆に、漁業管理の重要性が理解された。
1970年代にヘリングが崩壊することによって、気運が高まった・

ノルウェーの漁業者は科学的アセスメントを重視する。
科学者が警告をすると、漁業者は、生活を守るために、自ら漁獲制限を求める

漁業者14000人
4000はパートタイム
4000はラージスケール(船が20m以上)
6000はスモールスケール

船は7000隻
4500は、10m以下

small scale (<10m cod) gross income 1mil NOK some are 2mil NOK
沿岸の小型船の売り上げは、1500万円ぐらい。多い人は3000万円。

補助金政策
水揚げ地から、加工工場まで距離がある場合に、輸送を補助する補助金があるぐらい(南北問題か)

liscence
漁業の参加するためのライセンスが必要:年間許可と永続許可がある。
ライセンスには漁獲枠がついてくる。
漁船のライセンスが必要
個々の漁業にはライセンスがある。
ライセンスがない漁業もあり、生活ぐらいはできる。

漁船の大きさは、作る人間の自由。漁獲枠に見合ったサイズになる。
サイズと漁具によって、操業可能海域が決定される。
many different line
非常に複雑な線引きがされている。
conflictを避けるために、必要。
大型トロールは4マイルまでは入れない。
最初は漁具の接触を避けるためであったが、徐々に保全が目的になってきた。

15m以上の船にVMS VMS 10000 – 15000 NOK
排他的な漁業権を行使する以上、ルールに従う義務がある。

産業の生産性が増すと、自立した方が良いので、補助金の要求は無くなった。
補助金は変化へのインセンティブを失わせるので良くない
漁業補助金の問題点については、OECDレポートにある。

Rebuilding Global Fisheries 要約


サイエンスに重要な論文が掲載されたので紹介しよう。

Worm B, Hilborn R, Baum JK, Branch TA, Collie JS, Costello C, Fogarty MJ, Fulton EA, Hutchings JA, Jennings S, Jensen OP, Lotze HK, Mace PM, McClanahan TR, Minto C, Palumbi SR, Parma AM, Ricard D, Rosenberg AA, Watson R, Zeller D (2009) Rebuilding Global Fisheries. Science 325: 578-585.

背景

この論文の背景から少し説明をしよう。まず、Wormらが次の論文で、「このままだと世界の漁業は2048年に消滅する」と述べ、世界中のメディアにこぞって取り上げられた。

Worm B, Barbier EB, Beaumont N, Duffy JE, Folke C, Halpern BS, Jackson JBC, Lotze HK, Micheli F, Palumbi SR, Sala E, Selkoe KA, Stachowicz JJ, Watson R (2006) Impacts of biodiversity loss on ocean ecosystem services. Science 314: 787-790.

それに対して、俺たちのHilborn先生が、「ちゃんと管理されている漁業は、大丈夫」と主張したのがこれ。さらに、「NatureやScienceの査読者は、漁業が破滅に向かっているという先入観に基づき、研究の質ではなく話題性で論文を選んでいる」と痛烈に批判をしたのだ。

Hilborn R (2006) Faith-based fisheries. Fisheries 31: 554-555.


「で、本当のところどうなのよ?」というのが、みんなの関心があるところだと思う。そこで、WormとHilbornを中心に、21人の大御所が集まって、出してきた結論が、この”Rebuilding Global Fisheries”という論文なのだ。おもしろそうでしょ?いろいろと議論をしても、最後は、データに基づいて、白黒つけようという姿勢が素晴らしい。

適当に、要約をしてみたのだけど、興味がある人は、原文を読んで欲しい。そんな長い論文じゃないし、さくっと読めるはずだ。


イントロ

乱獲が、海洋における最大の環境・社会経済問題と考えられている。漁業が、種の多様性と生態系機能に悪影響を与えてきたことに疑問の余地はない。しかし、現在も乱獲が進行しているかについては、議論が分かれている。本研究では、世界中の資源評価研究(生態系モデル、資源評価、調査漁獲)の結果をまとめて、世界の水産資源・生態系が回復に向かっているかを議論する。

資源評価

世界の166の資源評価結果を集計したところ、63%の資源量がMSY水準を下回っていた。(俺注:MSY水準というのは、持続的な生産量を最大にするような資源量のこと。MSY水準を下回ると「資源が健全ではない」→「回復が必要」ということになる)そのうち約半分(全体の28%)の資源は、最近、漁獲圧が減少傾向にあり、資源はMSY水準に向かっている。残り(全体の35%)は、現在も乱獲行為が継続している。

資源量の推定値が得られた144例について、1977年と2007年の資源量を比較すると、全体のバイオマスは11%減少していた。この減少は、主に中層の浮魚類の減少に起因する。北大西洋の底魚の減少は、北太平洋の底魚の増加によって相殺され、底魚バイオマスは全体としては安定だった。

 

トロール調査(俺注:主に底に住む魚を漁獲する)

タラとサメ・エイが顕著に減少していた。全体のバイオマスは32%減少。大型底魚(最大体長90cm以上)は56%減少、中型底魚(30~90cm)は8%減少、小型底魚は1%減少していた。一方、無脊椎動物は23%増加、浮き魚は143%増加していた。底魚が減少したことによって、余った餌を消費して、増えたのだろう。また、1959年と比較して、最大体長は22%減少していた。

漁獲量

1950年から4倍に増加した。80年代終盤に、8千万トンに達した後、安定的に推移している。大型底魚類が漁獲に占める割合は、1950年の23%から、現在は10%へと減少した。

種の崩壊

バイオマスが、漁獲がない場合の1割以下に減少すると「崩壊状態」と定義をする。資源評価で得られたバイオマスに着目すると、全体の14%の資源が崩壊状態であった。ベーリング海は崩壊率がほぼゼロなのに対し、カナダ東海岸では、6割が崩壊、米国の北東は25%が崩壊状態であった。

情報が得られている10の生態系のうち、7つの生態系で、近年、漁獲圧が減少していた。しかし、個々の資源は十分に回復していない。全体の漁獲圧の削減は、漁業の影響を受けやすい種にとっては、まだ不十分なのだろう。漁獲の影響を受けやすい種については、さらに取り組みを強化する必要があるだろう。

小規模漁業

この研究では、117の科学的資源評価と、1309のトロール調査の結果を解析した。これらの調査が行われているのは、主に先進国である。先進国の50万人の大規模漁業者にたいして、1200万人の小規模漁業者が存在する。これらの小規模伝統漁業の漁獲量は、2000年に2100万トンと推定されているが、漁獲統計が取られていない場合も多く、よくわかっていないのが現状である。小規模漁業は、データが少なく、地理的にも分散している。そして、漁業者は、漁業以外の食糧源や雇用を持たない場合が多く、これらの管理は難航している。

回復の手段

乱獲を抑制した生態系はどのような手法が使われていたか。重要性を含めて加点をすると次のようになる。

TAC 18
禁漁区 15
漁具規制 14
個別枠 13
漁獲能力削減 10
コミュニティーベース 8
努力量削減 5

それぞれの方法の効果は、漁業、生態系、行政システムの特性によって、大きく異なる。

魚が激減し、乱獲が明白になってから、資源回復の試みが始まる場合が多い。漁業の不確実性を考えると、そうなる前に毅然とした対応をとる必要がある。特に地球規模での海洋変動を考慮すると、早い行動が必要になる。

回復の問題点

漁業を回復さえるための短期的なコストが問題になる。乱獲状態からの回復には、10年から数十年かかることも少なくない。その期間は、漁獲量を低く抑えることになる。

世界規模で見ると、先進国から、途上国への漁獲努力量の移動が問題である。先進国の船が、途上国で漁獲を行っている。これらの外国船によって、漁獲される魚のほぼ全てが先進国で消費される。漁獲の南北問題が、途上国の食糧安全、生物多様性への脅威と成っている。

結論

海洋生態系が、直面している漁獲圧は、場所によって大きく異なる。漁業資源・生態系も、安定、減少、崩壊、回復など様々な状態が入り交じっている。資源管理によって、漁獲圧が削減された場所もあるが、現状のままでは、多くの資源が枯渇へと向かうだろう。

この論文は、漁業が比較的管理されているエリアのみを扱った。これは、海全体の25%をカバーしているに過ぎない。しかし、漁獲規制を行ったいくつかの生態系で、回復が観察されたことから、漁獲圧を十分に下げれば、他の海域でも生態系が回復すると考えることが出来る。水産学研究者の間では、MSYを実現する漁獲圧を、管理目標ではなく、上限にすべきだというコンセンサスが広がっている。他の管理手法も併用しつつ、大幅に漁獲圧を下げる必要があるだろう。

また、水産学の研究者と、保全生態学の研究者が、データを共有し、異なる学問領域の橋渡しをすることで、生態系の管理を発展することができる。生態系の回復は、短期的なコストを必要とする、険しい道のりである。しかし、それ以外に、漁業と海洋生態系の衰退を食い止める方法は無いのである。


資源研究不毛の地の研究者の独り言

この論文で注目して欲しいのは、図1の調査・研究を行った場所の分布。

北米東海岸 16
欧州 15
北米西海岸 14
オセアニア 8
中南米 5
アフリカ 3
東南アジア 2
東アジア 0

 

日本周辺は全くの空白地帯。この論文に使われた調査・研究がゼロです。漁業大国、ニッポンを擁する東アジアが、アフリカよりも、東南アジアよりも、資源研究で遅れているのです。

世界漁業は成長産業 その3


主要な輸入国の輸入量は次のようになる。

Image2009081502

ここでも日本のみが減少傾向、他が増加傾向である。特に2002年以降の日本の輸入量の減少が顕著である。その理由は、輸入単価のトレンドから明らかである。

Image2009081503


不況の影響で、日本の輸出単価は1990年代中頃から下降傾向にあった。2002年に、輸入単価が上昇中の欧州に追いつかれたのである。その後は、欧州との魚の奪い合いにより、同調して単価が上がっている。2002年以降に日本の輸入単価が上昇しているのは、この価格以下なら、日本市場が要求する水準の水産物が確保できないからだ。不景気の中で、値段が上がれば、当然のことながら、量が減る。日本の輸入量の減少は、消費者の魚離れではなく、国際価格の高騰による買い負けである。水産庁は「自給率が上がった」などと、大々的に宣伝をしているが、日本が貧乏になって魚を輸入できなくなっただけである。

先日訪れたチャタム島でも、80年代は、ロブスターの9割が日本に輸出されていたが、現在は5%しか日本に行かないそうだ。

ノルウェーに行ってきたよん


漁業省、漁業庁、組合、輸出業者、ミール工場など、いろいろなところを見学し、昨日、帰ってきました。1週間ほどの短い滞在でしたが、今回も盛りだくさんで、勉強になったYO。近日中に滞在記でも書きたいところだが、なんか時間が無いっぽいな。まあ、期待せずに待っててください。

でもって、今日は東大の工学部で授業でした。時差ぼけ&体調不良で、後半に少し息切れをしたけれど、無事に終わって良かった。いつも思うんだけど、水産と無関係の人間に話をするのは難しいね。講演などで、俺の話を聴くために集まった人間なら、それなりに話を聞いてくれるんだが、工学部の授業だと漁業に興味も関心もない学生が多くいる。そういう学生にも聞ける話をするには、特に導入部が重要になる。そのことは、わかっているのだが、実践はまだまだ不十分だ。次は、三重大で情報科学基礎の授業だが、これも重要。漁業の改革も、授業も、チャレンジの連続ですよ。

「NZのITQは、資源管理としては機能していない」とか、誰か言ってなかったっけ??


そういえば、「NZのITQは経済政策としては成功したが、資源管理としては機能していない」とかいう、面白レポートがあったよね(http://katukawa.com/category/study/reform/nzreport)。あの検討会の議事録は、政府の公式文書として認めてもらえなかったという話を小耳に挟んだけど、内容が内容だけに、仕方がないだろう。

レポートでは、NZのITQが資源管理として機能していない根拠として、ホキ(白身魚)のTACが近年減少していることを挙げていた。実際には、NZの漁業者は過剰漁獲をしていたわけではない。卵の生き残りが悪くて、一時的にホキ資源が減少した。それを素早く回復させるために、NZ政府は予防的に漁獲枠を絞ったのだよ。いくらでも魚が捕れる段階で、漁獲枠を半減できたのだから、立派なもんだ。すぐに元の水準に戻るだろうと予想していた(http://katukawa.com/category/study/species/%E3%83%9B%E3%82%AD)が、予想以上に早く回復したみたいだね。

nzhoki
(みなと新聞6月9日より引用)

ノルウェーのカペリンでもわかるように、魚はちゃんと残せば、ちゃんと回復する。早めにブレーキを踏めば、それだけすぐに回復をする。自然変動が原因だろうと、何だろうと、魚が減ったら、漁獲圧をゆるめるのが世界の常識であり、資源が減ったら、漁獲圧が強まる日本のマイワシ漁業のような状態はあり得ないのである。獲りたい放題獲っておいて、「地球温暖化が悪い」とか居直っているから、漁業は衰退を続けるのだ。

もちろん、ノルウェーやNZの漁業だって完璧ではないし、直すべき問題点は山ほどある。しかし、これらの国の漁業が、資源を持続的に利用しながら、経済的にも成り立っているのは、紛れもない事実である。「日本とは状況が違うので、参考にはならない」と居直ったり、生半可な知識で揚げ足取りをしても、かえって自らの無知を晒すだけだ。それよりも、これらの漁業国の成功を謙虚に認めた上で、その長所を日本漁業にどのように取り込むかを議論すべきだ。お互いに、もっと有意義なことに時間をつかいたいものである。

組合・個人ベースで利益を伸ばすノルウェー漁業


企業化を進めて、国際競争力を高めている代表的な国が、ニュージーランド(NZ)である。一方、組合が企業の役割を補完して個人ベースの漁業で生産性を上げているのがノルウェーだ。

ノルウェーの漁船漁業は、世襲の家業である。親父の船を息子が継いで漁を続けている。サバを獲っているような旋網船は、船主の所有物である。このあたりの構造は、銚子の漁船漁業とほぼ同じ。漁業が儲かる家業のノルウェーでは、漁業を辞める人間がいない。だから、ノルウェーで漁業をするには、漁業者の子供として産まれる以外に方法はないという話だ。

個人・組合ベースであっても、ちゃんとやれば利益がでることを、ノルウェー漁業は証明している。ノルウェーの基本戦略は次の2点だ。

1)国が資源の持続性を保障するために、責任ある管理措置をとる。
2)個別漁獲枠制度を導入し、早どり競争を抑制する
3)単価が上がるように、組合が努力をする

ノルウェーはEUと協力して、サバ資源の管理に取り組んでいる。資源水準は良好であり、漁獲は厳しく資源されている。また、個別漁獲枠制度によって、自分の漁獲の権利は保障されているから、焦って獲る必要はない。豊富な資源の中から、高く売れるサイズを、高く売れるタイミングで獲りに行けばよい。資源は豊富だが、漁獲枠が限られているという状況なので、探索船や運搬船などの余計な設備は不要である。魚の奪い合いに無駄なコストをかけずに、良い魚をコンスタントに水揚げできる。

魚価を上げるために組合は最大限の努力をしている。たとえば、最低価格制度というものがノルウェーにはある。最低価格制度というと、日本の漁業関係者は、「安い値段しかつかなかったら、最低価格との差額を税金で補填して貰えるのかな」と思うだろうが、そんな甘っちょろい制度ではない。ノルウェーでは全ての魚は組合を通して販売しなくてはならないのだが、組合は自らが設定した最低価格以下では、魚を売らないのである。もし、設定した最低価格で売れなければ、その魚は鮮魚市場では売れずに、ミール工場に直行だ。漁業者からすると、自分の漁獲枠を安価なミール向けの魚では埋めたくない。だから、最低価格に届かない品質の魚は、極力獲らないのである。ノルウェーの最低価格制度は、最低品質制度ともいえる。バイヤーは、ノルウェーの魚は買いたたけない代わりに、品質については安心して買うことが出来るのだ。

最低価格制度が、経営の柔軟性を奪っている側面もある。ライバル国(たとえばアイスランド)は、ノルウェーが最低価格以下では売れないことを知っている。だから、ノルウェーの業者よりも、少し安い金額を提示して、商談をまとめることもある。そういう不利益は百も承知で、ノルウェーは最低価格制度を続けている。品質と供給が安定させれば、魚価は自ずと上昇することを、ノルウェー人は知っているからだ。安売りをしないことで、短期的に失う利益よりも、長期的に得る利益の方が多いことを理解しているのだ。

今でこそ、高品質で知られているノルウェーのサバも、90年代に日本に入ってきた当初は値段が安かった。日本の消費者にとっては、単なる輸入魚に過ぎなかったのである。しかし、安定した品質の魚を、安定供給することで、日本国内でのノルウェーサバの認知度は向上した。今では、店頭でノルウェーサバの方が値段が高いのが当たり前だし、塩鯖ならノルウェーという消費者も多いだろう。

また、ノルウェーの組合は、出来るだけ高い値段で売れるように、ネット上でのセリを運営している。少ない人員・コストで、大きな成果を上げている。オークションの結果は、インターネット上で、リアルタイムで確認できる

日本の旋網はなんで儲からないのか

銚子とノルウェーの旋網を比べると、むしろ、銚子の方が大規模かつ企業的だろう。ノルウェーは1隻(8~10人のクルー)で操業の全てをこなす。銚子の巻き網船団は、探索船、運搬船、旋網船×2の4隻がセットで操業をおこなう。それだけ、人件費も燃油もひつようになる。銚子の旋網船団は、最新のソナーで武装した探索船を駆使して、群れの奪い合いをしている。群れを見つけたら、他の船団に獲られる前に、とにかく獲る。値段は、港に帰ってのお楽しみである。早い者勝ちの一網打尽操業の結果、資源は低迷を続けている。卵の生き残りが良かった、当たり年産まれを取り尽くす操業形式であり、漁獲サイズに多様性がないので、多様な需要を満たすことが出来ない。

img09061702
(マサバの漁獲の年齢組成 資源評価票より引用)

今年も、円高で輸出が止まっているのに、国内需要がないような小型魚ばかりを水揚げして、せっせと凍らせているようだ。海に泳がしておけば、電気代もかからない し、成長するし、卵も産むのに、もったいない話である。まともな取り締まりもせずに、早どり競争を野放しにしている日本では、必然的にこうなる。

まとめ

ノルウェー漁業が儲けているのは、企業ベースだからではないし、漁業の規模が大きいからでもない。行政と組合がやるべき仕事をきちんとやっているからである。

もちろん、薄利多売でも短期的な利益が出るかもしれない。北巻にだって、利益を出している船はある。そういう船だって、マイワシに続いてマサバが、本当にいなくなれば、終わりである。今のままでは、「今年はいいけど、来年はわからないなぁ」という程度の経営しか成り立たないのだ。北巻が今まで続けてこられたのは、90年代以降のマサバの生産力が安定していたからである。もし、加入の失敗が数年か続 けば、マサバもマイワシと同じようになるだろう。そうなるまえに、ノルウェーを見習って、ほどほどの漁獲で利益が出るような体質に変える必要がある。

そのためにやるべきことは3点だ。

1)十分な産卵親魚を取り残すこと
2)漁獲枠を個別配分して、早どり競争を抑制すること
3)魚価を上げること(安売りをしないこと)

どれも、当たり前のことである。この当たり前のことをやらずに、漁船漁業構造改革総合プロジェクトとかいって、すでに過剰な漁船を増やすようだけれど、金が余っているなら、補償金でも積んで、0歳・1歳魚の漁獲を禁止にすればよいのに。これをきっちりやれば、2年後ぐらいには、資源も漁業もかなり良くなると思うよ。


ちゃんとした獲り方をすれば、ちゃんと儲かるということで、新聞記事をはっておきますね。

norway0905

みなと新聞6月5日より

こちらもどうぞ。

EUがITQを選んだ理由


今月から、ペルーのアンチョビーにITQが導入された。ペルーも要チェックですよ。

さて、欧州も共通漁業政策を見直して、ITQの導入を明記。ITQに向けて大きく舵を切った。このことは、業界紙、一般紙で取り上げられたので、目にした読者も多いだろう。

EU内部でどういう議論があったかを紹介しよう。

EUは共通漁業施策の見直しについて、議論を重ねてきた。
An analysis of existing Rights Based Management (RBM) instruments in Member States and on setting up best practices in the EU
http://ec.europa.eu/fisheries/documentation/studies/rbm/index_en.htm

彼らが重視したのはケーススタディーだ。EU圏内ではITQを含む様々な資源管理が行われている。どの管理方法が機能しているかを比較したレポートがつい先日でた。
http://ec.europa.eu/fisheries/publications/studies/rbm_2009_part1.pdf
http://ec.europa.eu/fisheries/publications/studies/rbm_2009_part2.pdf

このレポートで、一番重要なのは、それぞれの権利のQualityの評価だろう。権利の質(Q-Value)は、資源管理が機能する上で必要な、以下の4つの要素で評価される。

• Exclusivity: this requires appropriate monitoring and enforcement systems.
• Security an effective legal system is required to ensure rights and the title to
those rights are secure.
• Validity: This refers to the effective period to which the rights holder can
expect to retain title to the rights. Longer validity helps to bolster the holder’s
trust in the capacity of the system to respond to his/her long-term concerns.
• Transferability: Transfer of rights from one holder to another requires
ownership registries plus the rules and means to make them function.

Q-Valueが高い管理システムほど、漁業者が自らの権利を利用して、資源を合理的に利用できる。ただ、実際にその権利を適切に行使するかどうかは、また別のファクターがからむので、Q-Valueが高ければ必ず資源管理が成功するというものではない。ただ、Q-Valueが低ければ、まず間違いなく管理は失敗するだろう。

管理制度別のQ-Valueを比較したのが、↓の図です。

img09050103

CQというのは、Community Catch Quotaで、漁協のようなコミュニティーに漁獲枠を与える方式。これは玉石混淆だ(日本の沿岸と同じ!)。LLというのはライセンス&努力量規制。これが機能しないことは明白。IEとITEは、個別努力量割当で、それぞれの船の努力量に上限を設ける方法。IEは譲渡無しで、ITEは譲渡あり。IQは譲渡がない個別漁獲枠、ITQは譲渡可能な個別漁獲枠。TURFはTerritorial Use Rights in Fisheries。地域が永続的な漁業権を持っているような場合である。EUでは伝統的にTURFを使ってきたが、現在は沿岸の根付き資源(ほとんどの場合、貝)のみに使われている。移動性の生物は多くの地域が共有することになり、TURFでは利害の調整がうまくいかないために、現在は他の管理スキームに移行しているのだ。TURFで移動性資源の管理が難しいことは、日本の漁業管理が破綻している現状をみればわかるだろう。

P4に必要な資源管理に関する考察がある。

  • 漁獲枠を取り切るのに十分な努力量が無い場合は、漁獲枠は共有(オリンピック方式)でも良い
  • 漁獲枠を巡る競争がある場合、漁獲枠を個別配分する必要がある
  • 努力量が過剰な場合、ITQによって漁船規模の適正化を図る必要がある

image0905012

実際問題として、人間の努力量が足りない有用資源はほとんど無いだろう。日本の場合は、適正な漁業者は今の15%という試算もある。EUも相当な過剰努力量の状態にある。TURFで管理できている沿岸の貝をのぞけば、ほとんどの漁業はITQの導入が望ましいと言うことになるだろう。

また、それぞれの管理システムが機能する条件もまとめられているが、納得いく結論だ。

  • TURFは根付き資源のみ機能する
  • Effort Quotaは、努力量と漁獲量が強い相関を持つ場合のみ機能する
  • ライセンス制は、ほとんど機能しない
  • コミュニティー・ライトは、コミュニティー次第

欧州、北米、南米と、世界の漁業はITQに着実に向かいつつある。世界の漁業国は、どうやってITQを導入するかをテーマに議論を重ねている。彼らがなぜITQを選ぶのかというと、ITQが理論的に優れているだけでなく、実際に機能しているからに他ならない。利用者が顔が見える範囲に限定されているならTURFも良いかもしれないが、そうでない大半の資源に対してはITQしか、まともな選択肢がないのが現実なのだ。

世界の水産物消費の動向 その2


SOFIAもすばらしいのだが、それだけではわからない点も多い。グラフの元データを数値で見たいときとか、別の視点からデータを整理したいときもある。そんなときには、FAOStatという面白愉快なサイトから生データに直接アクセスできる。

世界の水産物消費量は急増している

FAOStatで世界の水産物消費量(t)を大陸別にまとめてみた。アジアは、日本と中国は別枠にした。

image2009042112

世界の水産物消費は、右肩上がりで、すでに生産力ぎりぎりまで利用されている。中国の増加が著しいのだが、これは自国の淡水養殖の消費がメイン。中国は日本とは食用魚のニッチがあまり重なっていない。ただ、中国の影響がないかというと、そういうわけでもない。かつては養殖の餌にしかならなかった小魚が、中国に食用として大量に輸出されている。中国の安価な魚への需要はとても強く、養殖魚の餌の価格の高騰の一因となっている。アフリカ、南米は量としても、成長率としても多寡がしれている。日本の食卓への影響が大きいのは、日本と同じプレミアマーケット志向の北米と欧州だ。

世界の水産市場に占める日本のシェアの低下

15年前まで、日本以外の先進国での、水産物の評価は低く、日本のような値段で魚を買う市場は存在しなかった。日本の商社は、世界中から、よりどりみどりで、水産物を集めてくることができた。水産物のプレミア市場は日本の独壇場であり、バブル期には、金額ベースで国際市場の3割以上を日本の輸入が占めていた。当時の日本は絶対的なプライスリーダーであり、水産物輸出国はいかにして日本に売るかを模索していた。完全に日本の買い手市場であった。

近年、購買力のある欧米先進国が、水産物のプレミア市場に参加したことにより、高級魚の争奪戦が勃発した。バブル以降の日本の購買力の低下も重なり、国際市場における日本のシェアは半減した。日本はすでに水産物のプライスリーダーではない。日本の輸入が今の水準をかろうじて維持できているのは、昔ながらの取引先の存在が大きい。しかし、完全に売り手市場の水産物輸出国の生産者の鼻息はあらい。「これまでの縁もあるから、今は日本に売ってあげているけど、日本が金を出せないなら、よそに売るだけだよ」というトーンである。今の値段しかつけられないなら、日本のシェアは今後も低下するだろう。

image2009042113

水産物の行く末は、円のレート次第ということになる。円がユーロや米ドルに対して優位が保てなければ、一気に魚を買えなくなるだろう。サブプライムで、欧州、米国が自滅をしたことにより、結果として円高になって、水産物の輸入減は一休みというところだが、今後の展開は極めて不透明である。

高級魚は、飛行機で運ばれる場合がおおい。プレミア魚の最大の入り口である成田空港における水産物輸入取扱額は、平成6年の1414億円から、平成19年の634億円へと半減した。国産魚の減少を輸入魚で補うという、今までのやり方は、見直す必要があるだろう。

「買い負け」という傲慢

かつての水産物のプレミア市場は、日本の独占であり、日本の商社間の争いしかなかった。日本が海外に負けると言うことが無かったのである。ここに欧米が参入することで、日本の独占状態が終わったのである。日本が好きなだけ、言い値で、魚を買いあさってこれた幸福な時代は、過ぎ去ってしまい、二度と戻ってこない。だからといって、悲観する必要は無い。

そもそも勝負の世界というのは、勝ったり負けたりするのが当たり前なのである。ちょっと負けたら大騒ぎするというのは、高級魚は日本が独占して当たり前という傲慢さの裏返しである。世界の貴重な水産物を日本一国が独占的に利用していた今までの方が、そもそも異常だったのだ。水産物のすばらしさを、世界の人々と共有できるのは、すばらしいことである(先進国しか供給できないという南北問題があるにせよ)。負けた、負けたと大騒ぎするのではなく、世界の水産物需要が今後も高まることを前提に、日本が必要な水産物を確保するための戦略を持つことが重要である。

FAOのThe State of World Fisheries and Aquacultureの最新バージョンが出てた


つい最近、気がついたが、FAOのThe State of World Fisheries and Aquaculture(通称:SOFIA)の新しいバージョンがでてた。世界の漁業の現状を把握するために必要な情報がてんこ盛りのSOFIAは2年に1回、アップデートされる。2008年までの情報をまとめた新バージョンが今年の3月にでたようだ。

2年後に次のバージョンがでるまでは、この資料をフル活用することになるだろう。ざっと読んだ感じでは、この前のバージョン(2006年版)とから、大きな変化はない。水産物の需要は着実に伸びているのに対して、生産は頭打ちで、水産物の奪い合いが着実に深刻化している。

SOFIAはデータが豊富で、表を見ているだけで何時間でも楽しめる。主要漁業国では日本が一番漁業者の数を減らしている、とか、ノルウェーはSQSによる過剰漁船の削減がほぼ完了した2000年以降は、漁業者が安定している、とか、いろいろわかる。

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また、世界の養殖生産は飛躍的に伸びているのだけど、日本はすでに衰退傾向にあるのもよくわかる。

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SOFIA2008は、ここから、全文ダウンロードできます。

またノルウェー漁業が記録更新です


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また、ノルウェーが記録を更新したようだ。ノルウェー漁業は、強いね。NZもそうだが、資源管理をしている漁業は、自国の通貨が弱くても強くても、安定した利益を出すことが出来る。一方、資源管理をしていない日本の漁業は、円が強ければ輸入魚に淘汰され、円が弱ければ途上国に小型魚を投げ売りして自滅。
うまくいっている漁業国の後追いすらせずに、公的資金で燃油補填をしてもらって当然みたいな態度は、正直、どうかと思います。

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from 18 Mar. 2009

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