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ITQ Archive

Hoki Story その2


まずは、Hokiの生態について、簡単に説明しよう。俺の手元には、NZのホキレポートがある。280ページで、凄い分量だ。漁獲の情報、漁獲の体長・年齢組成、CPUE、トロール調査、ぎょたん調査と、内容もてんこ盛り。ネットにもそれに近い情報があるので、関心があるひとは目を通してほしい。
http://fpcs.fish.govt.nz/science/documents/%5C2008%20FARs%5C08_62_FAR.pdf

この資料は基データに近い情報も多く含まれており、一般人には理解できない部分もあるだろうが、かなりしっかりとした評価をしているのは理解できるとおもう。

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みなと新聞に水産学会の記事がでていた


この前の水産学会の発表が記事になっていた。どうせなら、スーツを着ていけば良かった。隣の4面には、お魚マイスター嘉山がアンコウを下ろしている写真が掲載されていた。こちらはスーツなので、少し差をつけられてしまった。

クリックで拡大します

発表内容については、こちらで見られます

ニュージーランド漁業の歴史 その2


1996年 漁業法改正

ITQの導入から10年目の1996年に、Fishries ACT 1996と呼ばれる漁業法の改正があった。詳細はここで確認できる。
http://www.legislation.govt.nz/act/public/1996/0088/latest/DLM394192.html
たったの795ページだから、暇なときにでも目を通して欲しい。

制度運用の細かい部分まで具体的に、年限を区切って計画されている。また、細かい部分に修正を繰り返して、現在に至っていることもわかる。 ここでのポイントは3つある。ACEの導入、Deemed Valueの導入、およびマオリ対応だ。

ACEの導入

ACE(Annual Catch Entitlement)という権利が毎年の漁獲枠から、発生することになった。このACEの取引を自由化することにより、操業の自由度がグッと増した。これまでは、漁獲枠(ITQ)の永続的な譲渡のみを認めていた。漁獲枠の譲渡では、短期的な漁獲変動に十分に対応できない。たとえば、ある魚種の漁場が例年とは違うところに形成された場合、魚を捕りに行けるけど漁獲枠が無い漁業者と、漁獲枠があるけれど獲りに行けない漁業者が出てきてしまう。来年以降もその漁場にくる保障がないときに、大枚をはたいて「永続的な漁獲枠(ITQ)」を購入するのは難しい。こういう状況に対応するために、「その年の漁獲の権利(ACE)」の売買を認めたのだ。 ACEが導入される前のITQ制度は、賃貸契約が禁止されている不動産市場ような状態であった。ACEの導入によって、漁獲枠を買う資本力がない漁業者も柔軟に操業をできるようになった。その結果、漁獲枠を持たずにACEで操業を行う「ACE漁業者」が誕生した。

ITQの取引による長期的な経済効率の改善と、ACEの導入による短期的な資源・漁場の変動に対する柔軟性が、現在のITQの基本形である。たとえば、燃油が高騰したときに、燃費の悪い船のオーナーは、ACEを燃費が良い船に売ることで、利益を得ることができる。燃費が良い船のオーナーは、ACEを買い集めることで、まとめ取りで利益を高めることができる。ACE取引は、燃費がわるい漁業者にも、燃費が良い漁業者にも利益がある。現在、NZではACE取引は非常に活発である。売る側と買う側の両者に利益が無いとACE取り引きは成立しないことをかんがえると、ACEの導入は、持てるものにも、持たざるものにもメリットがあったといえるだろう。

Deemed Value

ITQの対象資源は順調に増加し、現在は94魚種、384資源がITQで管理している。ほとんど混獲しか無いような種も多く含まれている。NZでは海上投棄はすべて禁止されているので、漁獲物はすべて港に持ち帰らなければならない。漁獲枠を持っていない魚種が網にかかった場合、漁業者はACEをどこかから買ってくることになる。しかし、常にACEが購入可能とは限らない。漁期の最後までにACEを確保できなかった漁業者は、Deemed Value(みなし価格)を政府に払うことになる。

漁獲枠の超過を抑止するには、Deemed Valueは浜値よりも高くなければならない。また、Deemed Valueが高すぎると、今度は不法投棄の問題を引き起こしてしまう。 Deemed Valueの決定は、微妙なさじ加減の上に成り立っている。Deemed Valueが導入された当初は、いくつかの魚種で、低すぎる値が設定されていた。一部の不心得な漁業者が、漁獲枠を超えてこれらの魚種を水揚げした。NZ政府は、翌年にはこれらの魚種のDeemed Valueを引き上げるとともに、Deemed Valueの制度の改変を行った。対象魚種の総漁獲量がTACCを上回ると、Deemed Valueが段階的に値上げするようにした。これによって、浜値に不確実性があったとしても、特定の魚種への過剰漁獲を抑制できるようになった。

img09022402.png

Deemed Valueの具体的な運用は次の通りである。漁獲枠を持っていない資源を水揚げすると、その時点でDeemed Valueの基準額を前金として払う。漁期の終わりまでにACEを入手すると、前金は返金される。漁期の終わりまでにACEを入手できなかった場合は、Deemed Valueを支払うことになる。もし、該当魚種への漁獲量がTACCを下回っていれば、前金がそのまま入金される。もし、漁獲量がTACCを上回っていた場合は、Deemed Valueは基準額よりも高くなるので、その分の差額を支払うことになる。Deemed Valueの運用はかなり複雑で、漁業省の担当者から、半日レクチャーを受けて、ようやく全体を理解できた。

Deemed Valueの実際の金額は、漁期が終わらないと確定しない。これは、漁業経営にとって、不確実性となる。特に漁獲枠を持たずにACEを購入して漁業を行っている「ACE漁業者」にとっては、経営上のリスクとなる。また、Deemed ValueがACEの相場に大きな影響を与える。Deemed Valueが下がれば、それだけACEの相場も下がる。ITQ保持者は高いDeemed Valueを希望し、ACE漁業者は低いDeemed Valueを期待する。NZのQMSが機能するためには、Deemed Valueの価格設定が妥当でなくてはならない。様々な圧力がかかる中で、難しい舵取りを要求される。漁業省の担当者から、Deemed Valueの決定方法の分厚いマニュアルももらったのだが、本当にいろんなことを考えているよ。Deemed Valueの設定ミスで、管理に大穴があいてしまったのは、初年度のみなので、まずまずの運用といえるだろう。

Cost Recoveryが漁業省の予算となるのに対し、Deemed Valueは、国に回させる。そのため、漁業者への直接的な還元にならない。漁業省としては、業界に還元できるような方向性を模索しているようである。

マオリ対応

マオリの権利を保障するために、新規に設定される漁獲枠の20%をマオリに優先配分をすることにした。マオリは大規模な漁業を行っていないので、評議会がマオリ所有の漁獲枠を企業に貸し出して利益をえている。

これまで漁獲枠保持者から、資源利用料(Resource Rent)を徴収していたのだが、資源がマオリのものということであれば、利用料はマオリに納めるのが筋である。そこで、NZ政府は、資源利用料を廃止し、代わりに、資源回復費用(Cost Recovery)を徴収することにした。水産資源の管理責任を持つ国に対して、資源管理の費用を負担するという考え方である。まあ、要するに看板を変えただけで、実質的な変化はありません。

ニュージーランド漁業の歴史 その1


NZは70年代から80年代にかけて、国家財政が破綻し、小さな政府を目指した。財政破綻以前は、漁業振興のため漁船建造の補助金などが整備されていたが、全て廃止された。それまでお荷物であった水産業の立て直しの切り札としてITQ制度を世界に先駆けて導入した。革新的な制度を導入したNZ漁業の歴史は、試行錯誤の連続であった。彼らが、どのような困難に直面し、それをどのように打開してきたかを紹介しよう。

ニュージーランド漁業制度年表
1983 沖合漁業に割当制度が導入される
1986 商業漁業に全面的にITQ制度を導入
1990 割当が固定従量制から変動制に変更
1992 ワイタンギ条約に基づくマオリへの補償が確定
1996 漁業法の改正:割当配分方式を変更、調査費用の徴収、年間漁獲権(ACE)導入の決定

最初の割当制度(1983年)

1983年に沖合漁業の7魚種に割当制度を導入した。当時の沖合漁業は、外国船のみであり、政治的に導入がしやすかった。EEZから外国船を排除して、国内の漁業会社に漁獲枠を販売した。漁獲枠を取得できるのは、漁船と加工場を保有している企業に限られた。

ITQを全面的に導入(1986年)

沖合漁業でノウハウを蓄積した後、1986年に沿岸も含む国内漁業全般にITQ制度を導入した。このときは既存の漁業者から、猛反発があった。しかし、環境にうるさい国民の声を背景に、与党も野党も、ITQの導入を公約に選挙を戦った。最初は主要29種に対して、漁獲重量を固定した漁獲枠を設定した。トン数固定漁獲枠だと、配分した漁獲枠の上限がTACとなる。資源が減少して、漁獲枠を減らす必要が生じた場合には、政府が漁業者から漁獲枠を買い上げることで調整をすることにした。

相次ぐ訴訟で、漁獲枠削減が困難に

ITQの導入後、漁業が儲かる産業になると、漁獲枠の価格が高騰した。漁獲枠が金の卵であることに気がついた漁業者は、政府に漁獲枠を売らなくなった。漁獲枠の買い上げは難航し、TACの削減ができなくなった。そこで、政府は、漁獲枠の一律削減を試みたが、漁業者は猛反発をした。「10tの権利を国から買ったのに、それを勝手に8tにするのは怪しからん」ということで訴訟をして、国が敗北した。

割当を変動制に切り替え(1990年)

漁獲量一定では資源管理が成り立たないので、NZ政府は苦労して、1990年に漁獲枠を重量固定制から、割合固定制(重量変動制)へと変更した。漁獲枠は、商業漁業漁獲枠(TACC)に対する割合で設定される。10%の漁獲枠を持っている人間は、TACCが変動しても常にその10%の権利を有することになる。この制度改革によって、NZ政府は訴訟のリスクを負わずに、TACCを自由に変えられるようになった。

先住民(マオリ)との法廷闘争

NZ政府が抱えたもう一つの訴訟が、先住民である。マオリの伝統漁業は、漁獲枠の取得要件を満たしていなかったので、マオリには漁獲枠が配分されなかった。新しい法律を知らないマオリは今まで通り、魚を捕りに行き、逮捕された。マオリは自分たちの権利が侵害されたと感じたマオリは、NZ政府を訴えた。

ニュージーランドでは、先住民と移住者の間にワイタンギ条約という取り決めがある。これは1840年に、イギリス王冠と先住民の間で交わされたもので、先住民の土地に関する主権を認める内容になっている。この内容に照らし合わせれば、マオリの漁獲を白人が規制する権利は無いことになる。この裁判は、イギリスの連邦最高裁判所まで行き、「王冠の契約は絶対である」ということで、マオリが勝ったのである。これにより、NZ政府は莫大な賠償金をマオリに支払うことになった。結果として、漁獲枠を売却して得た政府の利益は吹っ飛んでしまった。マオリへの敗訴はNZ政府にとって大きな痛手となった。その後も対応に苦慮することになる。

改革のゴールについて


漁業先進国の政策は、明確な戦略に基づいている。
EEZ時代の漁業戦略を単純化すると次の2点である。
1)資源の持続性を最優先し、生産力を維持する
2)個別割当によって、早どり競争を抑制して、単価を上げる
ノルウェーもニュージーランドも上の2点を高いレベルで実現しているが、
実装のディテールをみると、方法論には大きな差があることがわかる。
他国の制度は、その国の漁業・政治価値観と不可分に結びついている。
ノルウェーのやり方をニュージーランドにもっていってもうまくいかないだろうし、
逆もまたしかりである。
日本にも、日本漁業に適したスタイルで、上の2点を実装する政策設計が必要だ。
EEZ時代に入って、30年以上、何もしてこなかった日本の漁業関係者が、
零から制作設計をできるとは思えない。
他国の政策を参考にする必要があるだろう。
新自由主義のニュージーランドよりも、
既得権重視の社会的価値観をもつノルウェーの方が、まだ日本に近い。
ノルウェーの漁業政策をたたき台に、日本独自の方法論を模索すべきである。

俺の頭の中には、ノルウェーの資源管理を日本向けにカスタマイズしたものの青写真がある。
そう遠くない将来に、この青写真と近い制度が日本にも導入されると思う。
ただ、それは改革のゴールではない。むしろスタート地点である。

EEZ時代に適応した漁業国のシステムを輸入することで、日本漁業は当面延命できる。
しかし、それでは一時しのぎに過ぎない。
世界の漁業を取り巻く状況は日進月歩である。
ノルウェーやニュージーランドは、今日も漁業制度についての議論を重ねている。
来年はよりよいシステムに改善するだろう。
現在のノルウェーやニュージーランドのスナップショットに追いついたところで、
彼らは常に先に進んでいるのである。
日本漁業が再び沈没するのは時間の問題だろう。

日本の漁業改革の最終目的は、日本の漁業を自己改革できる組織にすることだ。

米国のラジオでITQが紹介されてるよ



ITQに関するラジオ番組を井田さんから教えてもらったよ。
ネットワークプロバイダーとして活動するNPOらしい*1が、なかなかおもしろいね。
米国の漁業者も、新しい制度に対して、
戸惑いや不安を感じているようだ。

http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=98791630

*1:国営ラジオではないようです。つっこみありがとうございます。

NZのITQは資源管理として機能していない? その3


2) Do you have any alternative idea other than ITQ?

There are some specific elements that I think need to be in any system.  These include:

a) A public process for considering the areas that should remain unfished and for avoidance of and protection of these and vulnerable marine ecosystems as per the UN General Assembly resolutions on the impacts of damaging fishing techniques;
b) A presumption of closed to fishing until open after due consideration of ecosystem values and that the opening to fishing should consider fishing impacts and methods, areas, vulnerabilities and sustainability considerations;
c) Management within an ecosystem based framework;
d) Strong institutions and processes for environmental and stock assessment, with commissioning and conduct of research open to public discussion and review and independent of the fishing industry;
e) Minimum stock rules that do not allow stocks to fall below agreed benchmarks.  With our stocks they are often less than 30% of Bmsy, often much less, and it is a battle to get fisheries closed.  Some of our Orange roughy stocks have been allowed to decline to 7% and 3% before there has been closure.
f) Provisions for the protection of bycatch and incidental mortality.
g) Public good science available to interested community groups and support for their involvement in decision making.
h) Some form of clawback or retirement of quota if any quota management system is instituted.

There are many other provisions.

質問2) ITQ以外にどのような管理方法がありますか?

ITQにかぎらず、どのようなシステムにでも次の要素が必要でしょう。

a) 漁業の生態系破壊に関する国連総会決議に則り、大衆参加の下で、傷つきやすい海洋生態系を保全するために、漁業を禁止にする保護区を検討すべきです。
b) 漁業を当面中止して、生態系の価値について熟慮をする。漁獲の影響、方法、漁区、(生態系の)傷つきやすさ、持続性について十分に考慮した上で、漁業を再開する。
c) 生態系ベースの枠組みで管理を行う
d) 環境および資源評価を行う強力な組織、プロセスが必要。漁業から独立した議論・レビューを促すために、大衆への公開を前提に、調査を遂行する。
e) (それ以下だと禁漁になる)最低資源量は、MSY水準の30%と決まっているが、この水準は多くの魚種にとって低すぎる上に、漁業を閉鎖するための交渉に時間がかかります。オレンジラフィーの資源では、漁業閉鎖の前に7%や3%に減少したものもあります。
f) 混獲と水揚げされない漁獲死亡(ゴーストフィッシングとか)に対する規制
g) 科学的な知見を関心をもつコミュニティーグループに公開し、彼らが意志決定に加わることを促進する
h) 漁獲枠による資源管理を行う場合、何らかの形で漁獲枠を回収できるようにするか、漁獲枠利用権に有効期限をもうけておくべきです。

これ以外にも多くの規定が必要でしょう。

NZは、エコ系の人間が大変な力を持っている。Cathさんは、その典型だろう。
彼らが要求するのは、漁業の影響を受けない大規模保護区と、
生態系に対する十分な考慮ができるまで、漁業を一時中断することである。
こういった価値観にたてば、NZのQMSなど不十分にもほどがあるとなるわけだ。
俺的には、既存の漁業を続けながら、生態系への考慮を高めていく方が良いと思う。
これは価値観の違いであり、どちらがより長期的な利益にかなうかをみていくべきだろう。

日本がすでにCathさんのaからhの提言を実行しているなら、Cathさんの言葉を引用し、
今更NZの資源管理から学ぶことなどないといってもよいだろう。
しかし、日本には生態系への配慮はおろか、まともな資源管理制度がないのが実情だ。
NZのQMSでも不満のCathさんに、日本のTAC制度を紹介したら、卒倒しかねない。
水産庁には、Cathさんの言葉を引用し「NZの資源管理は機能していない」と主張する資格はない。

また、Cathさんは、QMSをやめて漁業者任せにすればよいと言う意見の持ち主ではない。
寿命が長く、低水準な資源には、現状よりも厳しい漁獲枠の削減が必要だと考えている。
また、本来は国民の財産である水産物の利用権を漁業者に永続的に与えるのではなく、
短期的なリースによって、レンタル費用を回収し、国民に還元すべきという意見のようだ。
(この件に関してはNZ全体で議論が続いている)

俺個人としては、Cathさんの意見には賛成しかねる部分も多い。
しかし、彼のような人物は必要だ。
Cathさんのような勢力が、業界と綱引きをすることで、NZの漁業はよりよい方向に向かうだろう。
出来レースのぐだぐだ検討会で、権力者が予め決めたコースを進むより、よほど良い。
NZ漁業と日本漁業の根本的な違いはここだろう。

Cathさんの主張については、次の文献をよむとよくわかるだろう。

Wallace, Cath and Barry Weeber. (2005) The devil and the deep sea – economics, institutions and incentives: the theory and the New Zealand quota management experience in the deep sea. Shotton, Ross ed (2005) Deep Sea 2003 : Conference on the Governance and Management of Deep-sea Fisheries, Part 1: Conference Reports, Queenstown, New Zealand, 1-5 December 2003.  FAO Fisheries Proceedings. No 3/1. Rome, FOA.2005. 718p. ISBN 92-5-105402-9, 511-543

http://www.fao.org/docrep/009/a0210e/a0210e0s.htm

NZの資源管理のことを知らない人間を集めて、
NZの資源管理の悪い点だけを意図的に集めた資料をくばり、
「だから、ITQをやめましょう」という結論を導く。
こんな茶番を税金を使ってやっているのだから、あきれてしまう。

IQ入れると440億円かかる?を検証する


「ITQイヤイヤ懇談会」の結論としては、ITQは金がかかるから駄目ということらしい。

今の日本では、TAC制度には、ほとんど金をかけてない。
資源評価もいれて30億ぐらいでしょうか。(知っている人いたら教えてください)
漁業の未来のために、しっかりと投資をするのは大賛成だが、
ITQを導入すると管理コストが跳ね上がるというのは、おかしな議論だ。
440億円って、どっから出てきた数字なの、という素朴な疑問が沸いてくる。

水産庁の出してきた440億円の根拠は計算根拠は、次の資料の17(15)ページにある。
http://www.jfa.maff.go.jp/suisin/yuusiki/dai5kai/siryo_18.pdf

○漁港漁場整備法に基づく第2種漁港(496港)及び第
3種漁港(101港)に検査官3名が周年駐在。

○大臣管理漁業対象漁船(3808隻・統。左図から算定)
に検査官1名が乗船。

【試算結果】
(検査官人件費×3名+事務所借料)×597港
=13,969,800千円

検査官人件費×3808隻・統=29,702,400千円
合計:43,672,200千円

一定規模以上の港に3人、一定規模以上の船に1人を常駐させる人件費だそうです。
ちなみに、船に乗る人間の費用は、一人当たり年額780万円。
港の検査員も同じ費用がかかるとすると、事務所借料が0円になってしまう。
港の検査員の方が一人当たりの費用が安くなる理由がわからない。
たぶん、人件費だけ計算をして、それじゃあまりにかっこわるいから、
「事務所借料」という文だけを加えたのだろうか。

また、2種漁港すべてに、3人も常勤する必要は無いだろう。
特定第三種には、一人ぐらい貼り付けても良いかもしれないが、
2種漁港に常勤3人は明らかに過剰である。
(参考:http://ja.wikipedia.org/wiki/日本の漁港一覧

440億円という金額自体も法外だが、これらのコストはITQだから必要なわけではない

オリンピック制度でも、それぞれの港で水揚げを迅速かつ正確に確認べきだから、
港の漁獲量把握のための行政コストは、現状でも必要なはずだ。
べつに漁獲枠を個別割り当てにすることで、発生するコストではない。
オリンピックだろうと、ITQだろうと、総量規制をしていたら必要になるはずだ。

また、ITQは出口管理だから、個別の船の水揚げを港でチェックすればよい。
よって、船に監視員を配置する必要はない。
検査官人件費×3808隻・統=29,702,400千円は不要。

水産庁は、TACやITQのような量的規制よりも、操業規制が有効であると主張してきた。
操業規制が守られているかどうかを確認するには、船に監視員が必要になる。
つまり、この300億円はITQではなく、水産庁が主張する操業規制の必要経費なのだ。
水産庁の計算によると、ITQなら、操業規制の半額で済むことになる。
語るに落ちるとはこのことだろう。
実は、隠れITQ推進派が資料を作っていたりして(笑

まとめ

漁港検査費用(13,969,800千円)
ITQを導入する、しないに関わらず、港での漁獲量の把握は必要。
これは、TAC制度を入れた時点で必要な費用であり、
オリンピック制度からITQに移行することで生じるコストではない。

乗船検査官人件費(29,702,400千円)
ITQは水揚げ量の規制なので、検査官を乗船させる必要はない。
これは、水産庁がITQの対案として主張する操業規制のコストである。

ITQをやらない言い訳づくりの一環として、法外な管理コストを試算して見せたのだが、
コスト計算の前提自体がナンセンスであり、
440億円という費用はITQの導入と関連するわけではない。
あまりに、稚拙な計算だと思う。

有識者の皆さんは、この試算に、どんなコメントをしたんだろうね。
議事録が楽しみです。

お金がかかるからIQは導入しません


11月10日のみなと新聞

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11月10日付のみなと新聞によると、水産庁のお手盛り懇談会が、
「個別漁獲枠制度(IQ制度)は導入困難」と、きっぱり明言をしたようだ。
(この記事は事実に反するという指摘をいただいたので、
最終判断は議事録を見てからにしたいと思います。
でも、主な意見のPDFを見る限り、記事の内容はそれほど外れてはいないと思います。
http://www.jfa.maff.go.jp/suisin/yuusiki/dai5kai/siryo_19.pdf)
IQを導入できない理由を並べているのだが、理論武装がまるでなってない。
1年間、税金使って考えて、出た結論がこれでは、脱力してしまう。
やる気がないのは最初からわかっていたが、
もうちょっとマシな言い訳は準備できなかったのだろうか。

IQ制度の前提条件からして、お粗末だ。
「関係者の不満のない漁獲枠配分」なんて無理に決まっているだろう。
魚を獲りたい人間に対して、魚があまりに少ないために、
早い者勝ちの、無秩序な魚の奪い合いによって、生産性が低下している。
早どり競争を抑制するために、個別配分が必要なのだ。
「関係者の不満のない漁獲枠配分」が無理だから、
IQ制度は導入しないと言うのは本末転倒である。

また、「漁獲量などの迅速かつ的確な把握が可能であること」とあるが、
ノルウェーをはじめとする多くの漁業国は、リアルタイムで漁獲量を正確に把握している。
日本で漁獲量の把握ができていないのは、水産庁の怠慢である。
これを資源管理をやらない口実に使うのではなく、
水産庁に対して「漁獲量の把握に向けた取り組みをまじめにやれ」と言うべきだろう。
水産庁には、漁獲量の把握すら荷が重いということであれば、
資源管理をするための独立した政府組織をつくるべきだ。

漁獲隻数や水揚げ漁港の多さとか言っているが、
漁船数が多いと言っても、大臣許可はたいした数がないし、
知事許可(沿岸)は、自称・資源管理に積極的な漁業組合に業務委託をすればよい。
港にしても、数は多いが、実際にまとまった水揚げがある港はごくわずか。
そのごくわずかをしっかりと抑えた上で、他の漁港にも報告義務をつければよい。
普通に出来ることだし、そもそも、やらないといけないことばかりである。
ただ、漁港の数が多すぎるというのはその通り。
バス停ごとに、コンクリートでガチガチに固めた豪華な漁港がある国なんて、日本ぐらいだよ。
漁業が行われていない廃船係留所みたいなの漁港だって、いくらでもある。
漁港を減らせば、水産土木予算も浮くことになるし、一石二鳥だね。
で、空いた漁港はヨットハーバーにでもすれば良いだろう。
漁業よりも、環境負荷が少なくて、経済効果も大きいので、村おこしにはもってこいだ。

436億円もかかるから出来ませんと言っているのだが、算出根拠はどこにあるんだろう?
ちなみに、97魚種、629系群をITQで厳密に管理をしているニュージーランドは、
漁業者から徴収した資源回復税(Cost recovery levies)の35m$で全てをまかなっている。
1NZ$=55YENとしてたったの19億円だ。
436億円も必要になるのは、組織として非効率ではないか。

仮に、436億円が必要だとしても、がんばって捻出すべきだろう。
だいたい、年間予算が4000億円もあって、
未来の食糧供給に必要な資源管理の費用をケチる理由がわからない。
利用者もいないような漁港建設を控えれば、400億円なんてなんとでもなるだろうに。
漁業者が騒げば、ぽんと600億くれてやるくせに、
あ、追加で600億だから、全部で1200億円か。

(つづく)

規制改革と日本の資源管理(無修正版)


10月に農林漁業金融公庫が、他の公庫と合体し、日本政策金融公庫が誕生した。
農林漁業金融公庫時代から続く機関誌AFC Forumの10月号(日本政策金融公庫としての第一号)は、
「規制改革急ぎ水産再生を」ということで、必読です。

http://www.afc.jfc.go.jp/information/publish/afc-month/2008/0810.html

俺がトップバッターで、小松さんに加えて、アミタの有路さんと大水の石原理事という布陣。 

この4人でも個々の意見に多様度はあるが、
漁業の現状を何とか打開したいという思いは同じだろう。

 

この原稿は、8月に学生の航海実習で海に出ているときに、一気に書き上げた。

「いま、この文章を書かねばならない」という使命感に燃えて、暑く書いたのだけど、

AFC事務局の手直しで、かなりぬるくなってしまった。読んでいて、テンポが悪いのです。

俺としては、元の文章の方がしっくりくるので、このブログには修正前のバーションを掲載する。

PDFや印刷物とは、細部が少し違うのですが、こっちがオリジナルです。


規制改革と日本の資源管理

 かつては世界一の水揚げを誇った日本漁業は、衰退の一途をたどっている。日本近海の水産資源は枯渇し、漁獲量および漁獲高の減少に歯止めがかからない。日本漁業の生産性が極めて低く、公的資金によって存続している状態だ。

日本では漁業は衰退産業だと考えられているが、世界的に見れば、漁業は成長産業である。持続的に利益を伸ばしている漁業国が複数ある以上、漁業自体が衰退産業なのではなく、日本漁業の構造に何らかの問題があると考えるのが自然だろう。

 

漁業を持続的に発展させる4つの条件

ノルウェー、アイスランド、豪州など、積極的に資源管理に取り組んできた国は、資源量を維持しながら、漁業生産をコンスタントに伸ばしている。これらの国は豊かな先進国であり、人件費は日本よりも高い。また、国内の水産物市場が小さいため、高い輸送料を上乗せした上で、変動の大きな国際市場で利益を出している。成功している漁業国の共通点から、漁業の持続的な発展に必要な4つの条件が見えてくる。

 

①個別漁獲枠制度

漁獲枠を漁業者にあらかじめ配分する管理方法を、IQ(個別漁獲割当)制度と呼ぶ。IQ制度には、無益な早獲り競争を抑制し、無駄な投資を抑える効果がある。個人の漁獲量が制限されれば、他の漁業者よりも早く獲る必要性がなくなるからだ。IQ制度のもとで利益をのばすには、重量あたりの単価を上げる以外に方法はない。漁業者は、自ずと価値の高い魚を選択的に獲るよう努力し、結果として漁業全体の利益が増加する。

 

②譲渡可能性

個人に配分された漁獲枠を、相互に売買することを許可する制度をITQと呼ぶ。譲渡によって、漁獲枠の譲渡によって、漁業から無駄を省き、経済効率を高めることができる。漁獲枠の譲渡をどこまで許容するかは、漁業の方向を決定する上で重要なファクターである。ここでは保守的なノルウェーと、進歩的なニュージーランドの事例を紹介しよう。

 

ノルウェー方式(減船する場合のみ譲渡が可能)

ノルウェーは、漁業者の既得権を最優先に考え、過剰努力量の削減のみ目的とした、限定的な譲渡を認めている。ノルウェーでは漁獲枠を漁船に配分しているので、漁業者以外は漁獲枠をもてない。漁獲枠の売買は原則として禁止されているが、漁船を廃船にする場合に限り、他の漁船へ漁獲枠を移転できる(図1)。漁獲枠を他の漁業者に売ることで、採算のとれない漁業者が、漁業から撤退する道筋を作ったのである。

 

ニュージーランド方式(漁獲枠の自由な譲渡が可能)

ニュージーランドは、経済効率を高めるために、漁獲枠を漁船から切り離した上で、自由な譲渡を認めている。利益率の高い漁業者が漁獲枠を買い集めることで、漁業全体の利益増加する。また、漁獲枠を投機の対象とすることで、外部から資金を調達できるというメリットもある。

ニュージーランドでは、97魚種384資源がITQで管理されている。漁獲枠はTACに対する割合で配分される。ある資源のTACが10トンだったとしよう。20%の漁獲枠を持っている漁業者は、2tの年間漁獲権(ACE Annual Catch Entitlement)を得ることになる(図2)。ニュージーランドでは、漁獲枠の譲渡だけでなく、ACEの売買も認めている。この漁業者は、自分で2tの魚を獲っても良いし、漁獲の権利を他の漁業者に売ることもできる。漁獲枠を売却すると来年以降のACEも手放すことになるが、ACEのみを売却すれば、来年以降もACEを得ることができる。

ACEの売買によって、短期的な操業の自由度が増し、漁業の適応力が高まる。たとえば、燃油価格が高騰し、燃費がわるい漁業者は漁に出ても赤字になるとしよう。赤字の漁業者は、黒字の(燃費の良い)漁業者にACEを売却することで、一定の収入を得ながら、燃油価格が下がるのを待つことができる。ACEの売却が許可されていなければ、赤字の漁業者が利益を確保する手段はない。

ACEの売買を許可すると、漁獲枠の所持者と実際に魚を獲る人間が一致しなくなるので、不在地主問題が生じる。ニュージーランドでは先住民に15%の漁獲枠を与えているが、彼ら自身は商業漁業を行わず、ACEをレンタルして収入を得ている。一方、漁業者の中には、漁獲枠を持たず、ACEを購入して漁業を営んでいる者もいる。

ニュージーランドでは、一つの経営体が保持できる漁獲枠の上限が、35%と定められている。漁獲枠を集中した方が、合理的な操業が可能な種については、寡占化を促進するために、上限を45%まで引き上げている。ニュージーランドでは、規制の範囲内で寡占化が進行しているが、同じくITQを導入している豪州では寡占化の動きはない。ITQにすれば、必ず寡占化が進行するというわけでは、ないようだ。
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③予防原則に基づく控えめなTAC

 先進漁業国では、科学者が予防原則に基づく控えめな漁獲枠を提案し、漁業者もそれを当然のものとして受け入れる。原因が人為的か否かを問わず、資源が減れば禁漁を含む厳しい措置をとる。たとえば、ノルウェーはシシャモが自然減少したときに、素早く禁漁にして、短期的に資源を回復させた。また、ニュージーランドの主要魚種のホキが加入の失敗により減少した時に、政府がTACを20万トンから12万トンに削減するよう提案した。それに対して、漁業関係者は、より保守的なTACを要求し、TACが9万トンへと引き下げられた。資源状態が悪くなると、価値の高い大型魚が減り、単価が下がる。無理に漁業を続けるよりも、資源回復を最優先させた方が、結果として長期的な利益につながるのだ。TACを早めに削減するのは、合理的な経営判断である。


④厳正な取り締まり

 自分が我慢をしても、他の漁業者が根こそぎ獲ってしまうような状況では、規制は守られない。資源管理に実効力を持たせるためには、厳正な取り締まりが必要である。厳正な罰則規定は、漁業者を罰するためではなく、皆が安心してルールを守るために必要なのだ。資源管理が軌道に乗れば、安定した漁業利益がえらるようになる。その段階になれば、リスクを冒してまで、違法行為をする漁業者はいなくなる。

 

日本の資源管理の現状

 

TAC対象魚種が少ない

TAC制度の対象はたったの7魚種しかない。そのうち法的な拘束力があるのはスケトウダラとサンマの2種のみ。他の5魚種に関しては、「中国・韓国との漁業協定が無い現状では、日本人だけ取り締まれない」という理由で法的拘束力を除外している。少なくとも太平洋側の資源に関しては、日本のみで管理できるはずである。多種多様な魚を利用する日本漁業の管理としては、極めて不十分である。

 

早い者勝ちのオリンピック制度

日本のTAC制度は、全体の漁獲枠を決めているだけで、個別に配分されていない。他に先駆けて早く大量に魚を捕れば、自分の取り分が多くなる仕組みである。漁業者間の過剰な競争をあおることから、「オリンピック制度」と呼ばれている問題が多い方法だ。他の漁業者よりも早く獲るために、過剰な設備投資をして、高く売れないことが分かっている小魚まで、根こそぎ獲ることになる。

 

生物の持続性を無視した過剰なTAC

 日本では、科学者の勧告を無視した、過剰なTACが慢性的に設定されている。乱獲を抑制するどころか、乱獲のお墨付きを与えているようなものである。特に資源状態が悪いマイワシやスケトウダラで乖離が大きくなっている(図3)。
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TAC超過は野放し

近年、漁獲量がTACを超過する現象が頻発している。昨年2月に大臣許可漁業のサバ類の漁獲量がTAC6.6万トン超過したが、水産庁は自主的な停止を要請したのみであった。その後も、「アジなど」、「混じり」という名前のサバが水揚げされ続けた。また、去年の8月に、知事許可漁業がマイワシ太平洋系群のTACを超過したが、その後も漁獲は続けられ、最終的にはTACの倍近く漁獲をした。どちらの事例も、超過漁獲をした漁業者には何のペナルティーもなかった。

 

日本とノルウェーのサバ漁業の比較

資源管理をしていない日本と、資源管理をしているノルウェーのサバ漁業を比較してみよう(図4)。日本のマサバ太平洋系群は極めて低い水準にあるが、「漁業者の生活を守るため」に過剰な漁獲枠が設定されている。また、漁獲枠の超過も放置されているので、実質的には無管理状態と言える。日本のマサバは、0歳・1歳で獲り尽くされ、中国やアフリカに投げ売りされている。成熟する3歳まで生き残る個体はほとんどいない。

サバ漁は7月から新しい漁期が始まる。今年も、7月上旬に、大量の水揚げが記録された。漁期はじめにまとめてとっても、港の冷凍能力にも限界があるし、相場も崩れてしまう。漁業者もそのことは理解しているはずだが、資源管理をしていない日本では、値段が上がるまで待つことはできない。魚に価値が出るまで待っていたら、他の漁業者に全て獲り尽くされてしまうからだ。漁業者個人にできることは、他の漁業者よりもより早く獲ることのみである。

 国内漁業では大型のサバを安定供給できないので、日本のサバ市場はノルウェーからの輸入に頼っている。ノルウェーは、十分な親を残した上で、全ての年齢の魚をバランスよく利用している。ノルウェーのサバは、夏には脂がのりすぎているが、秋に成熟が進むにつれて体脂肪が減っていく。ノルウェーの漁業者は毎日、試験操業によってサバの成熟度を調べて、日本市場で値段が最も高くなるタイミングで操業に出かける。ITQ制度によって早獲り競争を抑制しているので、単価が上がるまでじっくりと待てるのだ。
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規制改革で日本漁業を再生する

日本のTAC制度は、資源管理としての機能を全く果たしていない。資源管理を放棄した日本漁業が衰退するのは、自明の理である。サバ漁業を見ればわかるように、日本漁業は非生産的な操業で、自滅をしている。漁業の生産性を上げるには、「親の敵と魚は見たら獲れ」という姿勢を改めて、魚の価値で勝負する必要がある。その変化を促すには、資源管理によって、早獲り競争を抑制しなくてはならない。

そのために何をすべきだろうか。オリンピック制度のままTACを下げると、早獲り競争が激化して、漁業が破綻する可能性が高い。まず、重要魚種の全てにIQ制度を導入し、違法操業への取り締まりができるよう法制度・組織を整えるべきである。その次に、過剰なTACを徐々に削減していくのが良いだろう。

日本には、資源の生産力と比べて、過剰な漁業者が存在する。IQ制度を導入しただけでは、みんなで貧乏になる以外に選択肢はない。漁業者の生活を安定させるには、数を減らすしかない。ノルウェーのように、漁業からの撤退を前提とした漁獲枠の譲渡を許可すべきだろう。ここまでやれば、漁業は自ずと回復へと向かうはずだ。

漁獲枠の譲渡をどこまで自由化するは、時間をかけて慎重に議論をすべきテーマである。譲渡の自由度を増せば、それだけ経済的な最適化が進む反面、寡占化などの社会的リスクが増大する。日本はどのような漁業を目指すのかを明確にした上で、適切な政策設定をする必要がある。

 

以上を踏まえた上で、規制改革の二次答申に目を通して欲しい。二次答申では、具体的施策として以下の4点が挙げられている。

(ア)生物学的に計算される漁獲許容水準に基づくTAC設定の厳正化、決定プロセスの透明化

(イ)TAC設定魚種の拡大

(ウ)TACの厳守に向けた合理的操業モデルの樹立

(エ)IQ制度の導入対象魚種の拡大及びITQ制度の検討

これら施策の必要性は、本文章で説明したとおりである。この4つの施策を軸に資源管理を行い、日本の漁業を持続的に利益を出せる産業に再生することが、規制改革の狙いである。

 

人間の漁獲能力が生物の生産力を凌駕している現状では、適切な資源管理を抜きに漁業の存続は不可能だ。「早い者勝ちで、獲れるだけ獲る漁業」を続ける限り、いくら公的資金を投入しても、日本漁業は衰退をつづけるだろう。ITQ制度を導入し、質で勝負する漁業に切り替えねばならない。日本では、漁業改革の取り組みは始まったばかりだ。今後もしばらくは厳しい時代が続くだろうが、我々は進まねばならない。何も考えず、好きなだけ魚を獲っていれば良かった、幸せな時代は終わってしまったのだ。

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