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漁業国益論 (5)

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税金の無駄遣いは確かに問題だ。
でも、水産行政の問題は更に深刻と言えよう。

行政が特定の産業を援護射撃しようとしても、無駄に終わる場合が多い。
現場を知らないとか、身銭を切っていないから真剣みがないとか、
いろんな原因があるだろう。
これは漁業に限った話ではない。
たとえば、経済産業省も過去にいろんな無駄遣いをしている。

第5世代コンピュータ
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/1a529720d99d05f354e96d4b82a1b331

シグマ計画
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/cfae4a4a5672fc806b05a2d2c8ec9ea9
プロジェクト×(ペケ) -失敗者たち-「Σ(シグマ)計画」
岸田孝一、Σを語る

最近では、こんなのもある。
グーグルに対抗、「日の丸検索エンジン」官民で開発へ
見事なまでに、当事者以外からはなんの期待もされていない。
日の丸親方のサーチエンジンなんて、誰も使わないだろ。
中国の国営サーチエンジンみたいに、
政府に都合が悪い情報をブロックしたいのか? 

水産分野以外でも、無駄遣いは山のようにあるが、
これらのプロジェクトは、ばらまかれた税金が無駄になるだけで、産業の首を絞めない。
特定の企業(産業)に対する財政支援は国際競争力の観点から有益だ。
たとえば、車検制度などは自動車産業への援護射撃であり、
日本の自動車産業の国際競争力に寄与している。
漁業以外の産業は、投資を増やせば、生産が増えるので、
ばらまき型の援護射撃もある程度は機能するのだ。
漁業の場合は、自然の生産力という限界があり、
ある水準以上に投資を増やせば、生産は減ってしまう。
現在は過剰投資の状態にあり、不用意に税金をばらまくと、生産は減少する。 

現在の沿岸漁業は「水産土木栄えて、水産業滅びる」という状態だろう。
地元の意向などまるで無視して、いつの間にか工事が始まる。
漁業にはなんの役にも立たない施設のために、沿岸の生産力が奪われる。

また、漁業に対する補助金も、産業の長期的発展を阻害する。
借金で漁獲装備を整えさせて、乱獲せざるを得ない状況をつくる金融支援。
資源回復計画と称して、採算が合わないような不合理漁業を温存し、
資源回復の芽を摘む休漁補償。

資源管理型漁業だって、名ばかりだ。
もともと少ない生物資源の基礎研究の予算は削られる一方。
科学的に乱獲と判断されるような漁獲枠を設定し続けるTAC制度。
減少が誰の目からも明らかな資源の評価票から、
「資源が減少した」と言う記述を取り除くために怒鳴り込んでくる役人。

海の幸を永続的に利用できるように、海の生物生産を保つこと。
これが行政の最大の責務だと思うのだが、
実際にやっていることは、その逆に見える。

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