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漁業国益論 (7) まとめ

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国益の変化
終戦直後の国益:食糧増産
高度経済成長期以降の国益:食料の安定供給

現在の水産業の分析
無秩序な獲り尽くす漁業が日本全国で展開されており、
その結果として、漁業生産はコンスタントに減少を続けている。
水産行政は、つくり育てる漁業を維持しつつ、公共事業に投資するスタイル。
補助金で、すでに過剰な漁獲努力量を増やしたり、採算が獲れない漁業を維持して、
資源の更なる枯渇の原因をつくる。

今後の予測
選択肢としては、小さな水産庁(自由競争)、大きな水産庁(資源管理)の2つがある。
現状のままでは、国内の漁業生産は確実に衰退する。
その結果、水産庁は縮小し、自由競争を基本とする漁業のみが残るだろう。
現状維持などという選択肢は無く、
政策変更をしない限り小さな水産庁へと進むことになる。
資源の持続性を第一に考えて、資源管理に本腰を入れて取り組めば、
水産業を立て直して、長期的に発展させていくことも可能である。

小さな水産庁
漁業の経済規模から言えば、経済産業省 食糧庁 水産課ぐらいで充分だ。
小さな水産庁が実現した暁には、漁業は自由競争が基本になり、
行政は最低限の仕事だけをやることになる。
自由競争をすれば、不合理漁獲による生産力低迷は避けられず、
業界の空洞化が進むだろう。
それでも、現在のように過剰漁獲を税金でサポートするよりはマシだろう。

資源管理重視
資源の持続性を維持した上で、漁業者の収益を最大化するような漁業を行う。
今のようにあるものをひたすら獲るのではなく、
経済的に合理的なサイズを、必要とされる量だけ、計画的に漁獲する。
資源の再生産へのダメージを最小にしつつ、最大の収益を上げる。
環境変動など、不測の事態によって資源が枯渇してしまった場合は、
国の補償プログラムによって、資源回復のために漁獲を停止させつつ、
漁業者の生活を保障する。
正直者が馬鹿を見ないために、違法操業や密漁などは厳しく取り締まる。

水産行政の貢献度一覧表

 
国民の利益
漁業者の利益
ゼネコンの利益
食料の安定供給
短期的
長期的
公共事業

現状
(獲り尽くす漁業+公共事業)

×
×
小さな水産庁
(獲り尽くす漁業)

×

資源管理
(残す漁業)
×

記号の意味 ○:貢献度大 △:いまいち ×:足を引っ張る

Comments:13

匿名で甘えさせてもらっているヒト 06-10-03 (火) 22:34

氏へ
漁業国益論、終了ですか・・・なかなか興味深く拝読させて頂きました。
論理展開もさることながら、「読み物」としても良いデキでしたね(拍手)
総論としては、私にも理解しやすく、納得のできる内容だったと思います。

さて、
人間の行動原理は、「感情」と「利益」にあると私は思っています。
その「感情」と「利益」は、氏の言を理解するでしょうか?
氏がこれまで書いてきた内容は正しいと私も思いますが、これが実行に移されるには,どうしたら良いのでしょう?

以前のこのブログの中で、
資源解析の数値、というか、研究者の事を巻網の人たちは信用していないのではないでしょうか・・・と書いたら、氏は「イイトコ取りしかしない」とコメントされましたょね。
でも、「イイトコ取り」は当然の事です。それは、雑誌の星占いを見て、一喜一憂しながらも、自分の都合の良い部分だけを信じる女子高校生のようなもので(女子高校生の言葉には真理がある・・・と言った、つかこうへい氏に賛成な私)、なにも、沖合・遠洋の人たちだけの特性ではありません・・・と思います。
漁業者は、自分の技術と経験に自信を持って仕事をしている職人です。生活もかかってます。
かたや、水産行政の担当は、科学的数値と利害とを天秤にかけ、方針を定めます・・・だぶん。それが近視眼的であったとしても、担当者だけに責任を押し付けるのは酷というものです。なぜならば、現況の「政治」に長期的なビジョンがないからです。長くて5年ですか? そして、5年も経ずして配置換えしていく担当・・・
彼らを納得させなければならないのです・・・でも、これって、研究者の仕事かな?と疑問に思っては、もうダメ! だって、氏は、既に、「捨て身のブログ」を立ち上げ、「魚は食っても、漁業を食い物にはさせんぜよ」と痰火を切っちゃったんだもん・・・

資源解析屋さんの数値が正しく認知され、使用されるためには、どうしたら良いでしょう。
少なくとも、現状では、国家権力によって押し付けるしかないのでしょうが(その国家権力がねぇ・・・漁業国益論を読むと、はなはだ心配)、それでは、本質的な問題の解決にはつながりません。って言うか、国家権力はホントに理解してるのかなぁ・・・
ここで、「県職員さん」のようなヒト達の出番なのかな?・・・あたしも?・・・でも知事許可漁業なら何とかなっても、大臣許可だと「お前らには関係ない」って、門前払い食らわされたことがあったって、聞いたことあるもんなぁ・・・

白状します。
私、氏を嫌い(苦手)なヒトに分類してましたf^_^:。
直接会って話をした事がなかったので恐縮ですが、シンポ等での話し方等々から、「怪しいヤツ」と思っていました。特に、「後出しじゃんけんで勝つ」なんて,ホントにできると思ってるのかなぁ、このニイチャン、なぁんて感じてましたし・・・漁具を変えなくっちゃ出来ない場合は絵に描いた餅だな、と・・・できる漁業ではすでにやってるしぃ・・・とか・・・
でも、
このブログで話をしていると、イメージは、かなり変わってきました。
今度、氏の話を聴く機会があったら、これまでのように斜に構えず、まともに聴こうって、思ってます・・・とりあえず(笑)・・・

ユウラ 06-10-04 (水) 15:49

匿名で甘えさせてもらっているヒトさんへ

水産行政の担当の変更には僕も疑問を持ちました。

以前の県庁にTAC制度の知事管理分についての聞き取り調査に行ったときの話です。

僕としては「TAC管理を行う側は漁業者に対してどのように接しているのか」
ということを聴きたかったのですが、その担当者は今年担当になったばかりみたいで、まだ、日にちが浅いもので知らぬ、存ぜぬ、で調査が終わってしまいました。

TACを管理する側が、その制度を完璧に理解していなければ、そりゃうまく管理もできないだろうな、と。

幅広く使える人間を育てようと、人事移動を行うことはわかりますが、その専門職を育てるのも大事なのではないか、と思いました。

匿名 06-10-04 (水) 23:29

ユウラさんへ

人事異動は、下の者を支配するための一つの武器です。
本来であれば、バックアック体制がとられるべきところがとれていない・・・そんなことは二の次なのですよ、きっと。
だって、『わかんない』じゃ、現場では済まされませんものね。そんなヤツは『プロ失格』ですが、責任の所在があいまいになるように、お役所の世界は旨くできているようです。

ちなみに、外資系企業だと、まず、トップ(責任者)から首を切られるとのコト・・・お役所では、やたらに『管理職的役職者』が多く、実務者が少ない世界に思われます。
マネージメント機能が重要であると、リストラは、まず、ヒラから行われ、高額所得者が温存される、妙な世界です。

日本の財政がこんなになった責任や、経緯・原因の総括も行わずに、小さな政府にすれば、復活するかのような、『逃げ』をうっている政府も、『異動したばかりだからワカンナァイ♪』と言ってしまう役人も、本質は一緒ではないでしょうか?・・・所詮、自分とは関係ない世界のお話なのです。

ボクは、氏ら、モデラーの人たちは(氏はモデラーではないとおっしゃってますけど)、非現実的な箱(PC)の中でゲームを行っていると思っていましたが、それは勘違いで、最もバーチャルな世界で遊居しているのは、霞ヶ関の雲上人達なのではないかと、最近、つくづく、感じます。
それでも、『企画・立案部門を残し、そのほかはリストラ』とする方向性は、間違いなく、お偉いさんにはあって(地方こそ、その傾向は強いかも)、それをマスコミも後押ししています。

さてさて、どーしましょうね。
現場の惨状は知らなくても、企画立案はできるってコトで、予算計画も作られちゃうんですょ・・・

このブログは、水産庁の方も見られているとのコトですが、ボクの『印象』は、『大間違いのこんこんちき』なのでしょうか?・・・それならば良いのですが・・・その時は、『ごめんなさい』ですけど・・・せめて、TACの造り方(ABCが基準になっているハズですよね)をお教え願えれば、少しは問題の糸口も見えてくると思うのですが・・・

匿名で甘えさせてもらっているヒト 06-10-04 (水) 23:33

先ほど、投稿した文書(ユウラさんへ)に、名前、入ってませんでした?
もし、わすれていたら、ごめんなさいです。

ユウラ 06-10-05 (木) 16:23

匿名で甘えさせてもらっている人さんへ

>本来であれば、バックアック体制がとられるべきところがとれていない・・

確かに引継ぎとかしっかりしているのかなぁ、という疑問もありました。
今回ぼくが聞き取りに行った方はまじめな方(に見えました)だったので、今後調べておくので、また来てくださいね、といわれたのですが、「責任の所在があいまいになる」ために、このような事態になるのでしょうね・・。

現場の現状は知らなくても企画立案はできる・・・。

怖いですよね。これについてはモデルの理想と、国際関係による現実、TAC制度の留保枠の現実、などつっこみどころ満載ですww

TACの留保枠はまた違う話題かな?

で・・・・TACの決め方は、簡単にいうと

1.水産総合研究センターでABCを選定、それを提示し漁業者と意見交換を行う

2.水産庁はそれを踏まえ、漁業者経営等の事情を含めTACを選定

となっているはずです。

間違いがあったらご指摘をお願いします。

まぁ、ABCに加えて「水産庁が漁業者から反論がないように適度に枠を増やしている」との解釈もできなくないです。

・・いったい何のためのTAC??

県職員 06-10-05 (木) 17:45

TAC=国連海洋法を盾にして資源の囲い込みを可能にするための免罪符
形だけでも義務を果たさないと,権利を主張できません。ただ国連海洋法の精神から言うと,漁獲量がTAC枠を大幅に下回ると,他国にも利用させなければならなくなるという事態がおこると聞かされたような記憶が,,,
とはいえ導入当初は例え免罪符的な物であったとしても,徐々に改良していって役に立つ物にするべきでしょう。
TACって実は,我が国においては,水産資源は無主物だという従来の原則から,水産資源は国が管理すべき物だというパラダイムシフトをおこした制度的にみると画期的なものですよねえ。
公務員で人事異動がやたら多いのはやはり問題ですよね。ある程度変わっていく人もいれば,ベテランになって残る人も必要です。私も,漁師さんにどうせ何年かしたら替わるんやろとか,担当が替わったから昔のことはわからんやろうなんて良く言われました。事実そうなんですけど,悔しいから,昔の記録やら,歴史やらやたら読みました。新しく担当になったことを理由にして逃げてるなんて思われるのは,ほんまシャクでした。
長くいすぎるのも弊害がありますけど,やはり年数がかかる分野もありますね。

匿名で甘えさせてもらっているヒト 06-10-05 (木) 22:24

ユウラさんへ

>で・・・・TACの決め方は、簡単にいうと
>1.水産総合研究センターでABCを選定、それを提示し漁業者と意見交換を行う
>2.水産庁はそれを踏まえ、漁業者経営等の事情を含めTACを選定

十分に存じ上げております。
ボクの知りたいのは、『事情を含め』の部分なんですょ。

調査をして漁獲許容量を算出しても、その後、『行政的配慮』とやらで、水増しされてしまう例があるのです。なんか、「意味ないじゃぁん、調査」って感じ。

『漁業国益論』では、このような惨状についても、指摘していたのではなかったでしょうか?

『事情』とは、『行政的配慮』とは、一体何なのか?
現在の技術水準を駆使して算出した数値を棚上げにするだけの、『論理の展開内容』が知りたいなってね♪

ユウラ 06-10-06 (金) 10:44

匿名で甘えさせてもらっているヒトさんへ

>十分に存じ上げております。

そうですよねww失礼いたしました。

TACのその『行政的配慮』についてはそうとうツッコミどころがありますよね。

僕も匿名さんと同じ考えで「それじゃ意味ないやん」です。

倫理の内容展開ですか・・。TAC関連の本を読んでもそこは「水産庁が事情を考慮し」としか書いていませんものね。

10年間たってそろそろ、効果が出てきていないことを受けて、試験的段階から抜け出してもいい時期だと思うのですが、おそらく抜け出す気はないのでしょうね・・。

県職員 06-10-06 (金) 12:08

N家財政状況
N家では最近家を購入した。かなりの借金を負ったので,家庭経営コンサルタントの助言を受け,家庭内お金の収支を見直すことにした。なかなか光熱費や,食費は減らせないが,頑張っていろいろと削っていくことにした。お小遣いも,皆平等に2割づつ削減し,お父さんのお小遣いは5万円,子供達は中学生の太郎が5000円,小学生の花子と次郎のお小遣いは2000円づつとなった。
しかし,我慢しているとはいえお父さんはお酒好き,時々クラブに行っては,ホステスさんにチップをおいてくる。子供達はといえば,頑張ってジュースも買わず,外出の際には家から持って行ったペットボトルに入れたお茶を飲むように切りつめている。でもたまにはマクドでハッピーセットでも食べたいなあなんて考えてたりする。
N家には近所におじさんがいて月に一度くらい遊びに来る。昔からお世話になっているので,おじさんが来ると何かごちそうしないといけない。お刺身やお寿司を買ってきたり,普段は買えないビール(N家では発泡酒あるいは第三のビール)位用意しないと嫌味を言われる。おじさんは金銭感覚には疎いようだ。
かくしてなかなかN家の財政状況は好転しない。お母さんは,お父さんや子供達のお小遣いをさらに1割ずつカットすることを考えている。とはいえお母さんの脳裏によぎるのは「子供達は納得するかなあ,お父さん仕事頑張ってるしなあ,おじさんあまり来ないで欲しいなあ,どうしたらいいのかなあ,実家から援助してもらおうかなあ」。お母さんはいろいろと悩ましい。

匿名で甘えさせてもらっているヒト 06-10-06 (金) 22:52

県職員さんへ

N家のお父さんのお小遣いは5万円ですか(*_*)・・・ボクは2万円です。
しかも,持ち家もないし。。。(〃_ _)

給料下がっても,予算が大幅に削減されても,全然,財政が健全化しないのは何故だろう,と思う,今日この頃・・・責任者出て来い!!!
  赤貧者なら,ここにいるよぉ~・・・

N家のお父さんの会社に転職はできないものでしょうか? f^_^;

県職員 06-10-07 (土) 11:38

N家=日本、財政=TAC資源、お母さん=水産庁、家庭経営コンサルタント=水研等研究者、お父さん=大規模漁業(指定漁業)、太郎、花子、次郎=小規模漁業(県)、おじさん=中韓台などの外国
言わないでも分かっていると思いますが一応。

匿名で甘えさせてもらっているヒト 06-10-07 (土) 22:21

ちなみに,『ボク』はとある地方自治体です♪

勝川 06-10-08 (日) 22:19

匿名で甘えさせてもらっているヒトさん

>白状します。
>私、氏を嫌い(苦手)なヒトに分類してましたf^_^:。
正直な人だなぁ。
まあ、数字をつかう人間は疑って掛かるのは正しい判断でしょうね。

TACについて
ABCには、必ず担当者の名前がでるし、
内容についても、第三者が追試を出来るようになっている。
一方、ABCよりも重要なTACはブラックボックスで、責任者の名前すらない。

TACが承認される会議の議事録はここにあります
http://www.jfa.maff.go.jp/iinkai/suiseisin/gijiroku/kanri/
http://www.jfa.maff.go.jp/iinkai/suiseisin/gijiroku/kanri/023.htm
ただ、この会議はでてきたTACの値を機械的に承認するだけ。
TACの値を実質的に決めるのは、水産庁の資源管理部 管理課です。
基本ルールとしては、ABCを知事許可と大臣許可に過去の実績で配分。
知事許可は1.3倍、大臣許可は1.5倍に水増しをする、
というのがあるようだけど、個々の魚種でみるとこのルールにそっていない。
管理課の胸一つと言うことでしょうね。
TAC>ABCな現状では、資源枯渇の責任がここにあることは明白。

県職員さん
N家=N水省かとおもった。
おじさんって誰だろう?といろいろと想像をしてしまった。
そういうことですか。
中韓は、日本海や西海区にとっては死活問題でしょうね。

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