Home > ニュージーランド | 研究 > 水産庁のNZレポートを徹底検証する その10

水産庁のNZレポートを徹底検証する その10


NZの資源管理システムとて、完璧ではない。今回はMSY水準を下回った25%の資源の内容をみてみよう。

枠組み的に無理 Bigeye tuna* Western & Central Pacific Ocean BIG1
Southern bluefin tuna* STN1 / Southern Hemisphere Stock
Yellowfin tuna* Western & Central Pacific Ocean YFN1
Paua PAU5A
Paua PAU7
QMSが機能していない Orange roughy ORH1 Mercury-Colville
Orange roughy ORH2A north – East Cape
Orange roughy ORH3B Northwest Chatham Rise
Orange roughy ORH3B East and South Chatham Rise
Orange roughy ORH3B Puysegur
Orange roughy ORH7A Challenger Plateau
Orange roughy ORH7B West Coast South Island
QMSが機能している Hoki HOK1 West
今後の情報待ち Gemfish SKI1, SKI2
Gemfish SKI3, SKI7
Rig SPO7
Snapper SNA8
Bluenose BNS1, BNS2, BNS3, BNS7, BNS8
Freshwater eels LFE20, LFE21, LFE22, LFE23
Oreos OEO 1/OEO3A Southland Smooth Oreo

1)NZのQMSでは、枠組み的に対処できない漁業

Bigeye, ミナミマグロ、yellowfinは、国際資源であり、資源の減少はNZのみの責任ではない。特にミナミマグロに関しては漁獲枠を無視した違法漁業を行っていた泥棒国の責任が重い。これらの資源に関しては、NZ国内の漁業管理であるQMSでの対応には限界があるので、地域漁業管理機構(RFMO)がイニシアチブをとる必要がある。

Pauaはアワビ。値段が高いので、一般人による密漁が多いとのこと。これは取り締まるのが難しいようだ。ウェリントンのあたりでも昔は大きいのがたくさん獲れたんだけど、都市生活者が取り出したらあっという間にいなくなってしまったとか。アサリとかで、日本でもトラブルがあるけど、それと同じ構図である。

2)QMSが機能していない資源

Orange roughyに関しては、資源管理がうまくいっていない。ORは、深海の成長がとても遅い高齢まで生きる魚である。資源量に対して、余剰生産量が極めて少ない。NZは先ほどまで好景気で、経済成長率が年7%ぐらいあったのだが、資源の自然成長率はそれよりもかなり低い。経済的なことだけを考えると、素早く取り尽くして、利益を銀行に預けておいた方が得になる。経済的なインセンティブだけでは、資源の保全ができないのである。Orange roughyの苦戦からも、資源を守るような経済的インセンティブを与える重要性がよくわかる。 Orange roughyの減少は、NZの漁業政策が完璧でないことを示している。まだ、課題は残されているのだ。

3)QMSによって漁獲にブレーキをかけた資源

Orange roughyとは全く事情が異なるのが、Hokiだ。経営の柱である最重要魚種を、網を引けばいくらでも獲れる状態にも関わらず、業界主導で漁獲枠を半減したのだ。日本だったら、確実に暴動が起きているよ。

Hokiは数年のうちに回復し、NZの資源管理の威力を世界に知らしめることになるだろう。現地でいろんな話を聞いて、「NZの資源管理は化け物か?」と実に驚いた。Hokiについてはおもしろい事例なので、あとで、まとめることにしよう。

4)ぶっちゃけようわからん

Gemfish,  Rig,  Snapper,  Oreo などは、TACを削減しているのだが、現在の削減幅で資源を回復させるのに十分かどうかは、現状では俺にはわからん。数年、見守る必要があるだろう。

まとめ

ITQは万能薬ではない。ITQを導入すれば全ての問題が解決するわけではない。NZにしても、Qrange roughyのようにうまく管理できていない資源も存在する。ただ、漁業全体をみれば、乱獲を最小限に抑えつつ、漁業の利益を伸ばしているのだから、立派なものだ。

Orange roughyの例を取り上げて、NZの資源管理は機能していないというのは、間違えた見方である。成長が遅い深海魚の管理は、世界中で苦戦が続いている。たとえば、ノルウェーにしても、Orange roughy と同じような特性をもつBlue whiting資源については、思うように資源管理ができていない。ノルウェーは、自国の資源は持続的に管理しながら、公海資源に努力量を輸出していると、批判する研究者もいる。残念ながら、成長率が遅い深海資源に適切な管理手法は、現在のところ存在しない。成長が遅い深海性の資源を管理するためには、新しい理論が必要なのだろう。実に興味深い研究テーマであるが、われわれ日本の研究者にはそのテーマに対する挑戦権はない。まずは、資源管理先進国の成功を参考にして、自国の普通の資源を管理できるように全力を尽くすべきである。

Comments:0

Comment Form
Remember personal info

Trackbacks:0

Trackback URL for this entry
http://katukawa.com/wp-trackback.php?p=1190
Listed below are links to weblogs that reference
水産庁のNZレポートを徹底検証する その10 from 勝川俊雄公式サイト

Home > ニュージーランド | 研究 > 水産庁のNZレポートを徹底検証する その10

Search
Feeds
Meta
Twitter
アクセス
  • オンライン: 3
  • 今日: 1080(ユニーク: 114)
  • 昨日: 2279
  • トータル: 6805489

from 18 Mar. 2009

Return to page top