- 2006-10-10 (火) 16:45
 - 研究
 
				    ひとたび乱獲の渦に巻き込まれると、
				    そのままズルズルと悪循環を繰り返す。
				    乱獲の渦から脱出するのは至難の業なので、
				    乱獲の渦には入らないように注意をすることが最重要だ。
				    乱獲を水際で止めるのは困難なので、
				    出来るだけ渦から離れる必要がある。
				
				    乱獲の渦への入り口は資源減少だけではない。
				    魚価が下落して、収益が悪化した場合や、
				    技術革新で漁獲率が上がった場合にも、
				    結果として、資源量が減少し、乱獲の渦へと入ってしまう。
				
				    
				
日本の水産行政の政策を見てみよう。
水産土木→沿岸の生産力の低下→乱獲の渦
新漁具開発→漁獲率の増加→一時的な漁獲増→資源減少→乱獲の渦
設備投資への金融援助→一時的な漁獲増→資源減少→借金苦→乱獲の渦
				    わざわざ漁業を乱獲の渦に誘導する政策が目白押しだ。
				    頼みの綱の栽培漁業も資源の生産力を底上げする効果は薄い。
				    これでは、漁業が次々とたち行かなくなるのはあまり前だろう。
				    現在の日本の漁業政策は世界の常識から完全に逆行している。
				    現在の政策を続ければ、多くの漁業がなくなるだろう。
				
				    では、どうすればよいのか?
				    現在の日本の水産行政と全く逆のことをやればよい。
				    沿岸を開発する代わりに、沿岸環境を保全すればよい。
				    漁獲効率を追求した漁具を開発する代わりに、
				    選択的な漁具を開発して、その利用を義務づければよい。
				    設備投資のための融資制度を廃止して、
				    資源の生産力に余力がある漁業のみ設備投資ができるような許可制にすればよい。
				
				    日本に限らず、世界中の漁業が過剰な漁獲努力量という問題に直面している。
				    その中で、長期的なビジョンを持って努力量の抑制に成功した漁業のみが、
				    生産をのばしている。
				    逆に、過剰努力量を削減できなかった漁業は衰退する。
				    税金で過剰努力量をつくった日本漁業が立ちゆかなくなるのは、自明の理である。
				    過剰努力量に蝕まれた漁業が生産量を減らす中で、
				    努力量管理に成功した漁業が、生産量のシェアを上げつづけるだろう。
				    漁業政策を根本的に改革しない限り、今後も水産物の自給率は低下するはずだ。
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