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漁業システム論(7) 共同体は十分条件ではなく必要条件

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この前の記事では、漁村共同体管理の限界について論じたのだが、
「現にコミュニティーベースの管理の成功例があるじゃないか!」
という反論があるだろう。
たしかに、自主管理の成功例はあるにはあるが、
引き合いに出されるのは、秋田のハタハタ、伊勢湾のイカナゴ、京都のズワイガニの3つだけ。
逆にこれしか上手くいっている事例が無いのだ。
ここ数年、新しいものは出てきていないし、
俺が把握している範囲では上手くいきそうな次の計画は見あたらない。
3つの例外的に上手くいった事例を除いて、全く広がっていかなかった。
成功例があるということよりも、成功例が非常に少なく、
後に続く漁業が無いことに着目すべきだろう。
3つの成功例の共通点から、自主管理が機能するための条件が見えてくる。

1)生産力が高い資源を自分たちだけで囲い込める
2)コミュニティーに個人の利益よりも全体の長期的利益を重んじるリーダーがいる
3)長期的な視点から、漁業者にものが言える現場系研究者がいる
4)資源の壊滅的な減少を経験

成功例である3つの漁業は、共同体で管理をするための条件が整っている。
ここまで条件がそろった資源は、かなり例外だろう。
さらに、これらの条件がそろった資源だって、最初から上手く資源を利用していたわけではない。
どの例をみても、過去に資源を壊滅的に減少させているのだ。
資源の崩壊を経験した後に、ようやく厳しい管理が出来るようになった。
コミュニティーがあれば乱獲を自動的に回避できるといった、
甘っちょろいものではないのだ。

漁村共同体があるから、管理をしなくても乱獲が回避できるわけではない。
実態は全く逆なのだ。
日本は行政主導のトップダウン型管理が機能していないから、
漁村共同体でボトムアップ型管理ができる資源しか守れない。
漁村共同体は、乱獲を回避するための十分条件ではなく、必要条件なのだ。
日本で資源管理が成功するのは、ラクダが針の穴を通るようなもの。
その針の穴がコミュニティーベースの自主管理であり、
針の穴を通り抜けた3匹のラクダが、ハタハタ漁業、イカナゴ漁業、ズワイガニ漁業である。

現在の日本で機能している資源管理の実例から学ばない手はない。
日本の漁業を守るためには、この3つの成功例を手本に、
自主管理の条件が満たされている資源から管理を進めるべきだろう。
自主管理が出来そうな資源は限られると思うが、探せばいろいろとあるはずだ。
11月の海洋研のシンポジウムでは、ハタハタとイカナゴの当事者の話が聞けてしまう。
3つのうち2つをまとめて勉強できてしまう、貴重な機会はそうあるものではない。
ズワイガニがそろえば大三元だったが、小三元でも実質4翻だ。
全ての水産関係者は、午前中だけでも聞いておくべきだろう。

Comments:4

匿名で甘えさせてもらっているヒト 06-10-17 (火) 23:16

現実的には,やはり,現在ある漁業協同組合を機軸にするしかないでしょう・・・実働部隊は彼らになるのだと思います。

「水戸黄門か?」ってのは,なるほど♪,って感じですが,せめて「はち」くらいの力って言うか,期待は持てるのではないでしょうか?
「そのうち,黄門さまが来てくれるぞぉ~」みたいな(^。^;)

少なくとも,3匹のラクダは針の穴を通り抜けたわけですから,可能性は秘められているんですよね!

>自主管理が出来そうな資源は限られると思うが、探せばいろいろとあるはずだ。

です!
灯台下暗しで,地元にヒトの気づかない場合もあります。
探しませう,4匹目・・・

勝川 06-10-19 (木) 17:00

もちろん、今あるリソースを最大限に活用する。
それで、何とかなりそうなところから手をつける。
これが重要でしょうね。
出来ることはいろいろあると思います。
はちを鍛えれば、スケさんぐらいにならないかな。

海外水産開発 07-12-14 (金) 16:03

初めてコメントさせて頂きます。私は、途上国での水産開発に従事しています。現在 沿岸漁業管理の実例紹介としてイカナゴを取り上げた映像教材の作成を企画しています。イカナゴ漁業管理の歴史、共同体での管理手法、合意形成過程を途上国の水産関係者に紹介するため、愛知、三重両県の行政、研究者、漁業者へのインタビュー、操業、市場調査、などの映像を入れる予定です。科学的資源量推定、漁獲量合意形成過程についても組み込みます。30分ほどの作品となる予定です。まずは英語版ですが、仏語、スペイン語も作りたいと考えています。
お知恵を拝借することもあろうかと存じますが、その際はよろしくお願いいたします。

勝川 07-12-20 (木) 16:17

海外水産開発さん、初めまして。

当事者に話を聞くのが一番だと思いますが、
私にできることであれば、喜んで協力します。

>まずは英語版ですが、仏語、スペイン語も作りたいと考えています。
是非、日本語版もお願いします。
日本でももっと広がってほしい取り組みです。

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