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管理方式のまとめ
それぞれの管理方式によって、漁業を異なる方向に導くことを延々と説明してきた。
今までの内容をまとめてみよう
ダービー方式は、漁業者間の早どり競争を引き起こす。
漁業者はスタートダッシュでより多く獲るために設備投資を行うので、漁獲能力は更に過剰になる。
IQ方式は、早どり競争を緩和するので、漁業者は魚価をあげるために設備投資が出来る。
ただ、IQ方式には、過剰な漁獲能力を削減する機能はないので、
すでに漁船が過剰な状態では「みんなで貧乏」な漁業しか実現できない。
過剰な漁獲能力を削減するためには、漁獲量を譲渡して減船をする制度を導入する必要がある。
ノルウェー型の譲渡可能IQ方式なら、漁獲枠に見合った規模まで自動的に漁獲能力を削減できる。
漁船の維持に費やされるコストを削減できるので、収益性が増し、競争力が高まる。
売買を自由にしたITQ方式(ニュージーランド型)では、
利益率の高い経営体に漁獲枠が集まり、経済効率を向上できる。
限られた生物の生産力から、最大の収益を得るという観点からは優れているが、
漁業が企業化・大規模化する代償として、社会的平等性は失われる。
ダービー方式からiTQまで、様々な管理方式を比較したが、
これらの管理方式はTACをベースにしている。
生物の持続性を損なわないようにTACを設定することが大前提だ。
TACをABC以下にするという前提があって、これらの資源管理は成り立つのである。
慢性的にABCを遙かに上回るTACを設定している日本のTAC制度は、
ダービー(オリンピック)方式ですらないのである。
日本のTAC制度は資源管理ではなく、乱獲を容認する道具に過ぎないのだ。
乱獲放置状態の日本漁業は、ダービー方式と同じような方向に進んでいる。
過剰な漁獲能力による早獲り競争が、過剰装備と漁獲物の小型化を招く。
単価は下がる中で、少ない魚を我先に奪い合うようになる。
ダービー方式と無管理の違いは、資源の持続性が守られるかどうかである。
ダービー方式では、過剰競争で生産力が低下した漁業が、
産業として成り立たなくなるのは時間の問題である。
漁業はいずれ滅びるだろう。でも、資源は守られるのである。
無管理では、資源を道連れにして漁業が滅びるだろう。
管理方式のまとめ
資源の持続性 | 早獲り競争緩和 | 過剰漁船の削減 | 経済的最適化 | |
無管理(日本) | – | – | – | – |
ダービー方式 | + | – | – | – |
IQ(譲渡無し) | + | + | 0 | 0 |
IQ(譲渡あり) | + | + | + | + |
ITQ | + | + | + | ++ |
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そんなに心配なら、ITQの譲渡に制限すれば良いんジャマイカ?
ITQ制度には次のような効果が期待できる
1)過剰な(無い方がよい)漁獲能力を削減できる
2)収益性の高い経営体に漁獲枠を集めることで、漁業の経済性が向上する
一方で、ITQによる弊害を心配する声も根強い。彼らの描く未来像は、こんな感じだ。
より利益を出せる経営体によるITQの買収が進み、漁獲枠の寡占化を引き起こす。
「漁業者は漁獲枠を売ることが出来るが、漁獲枠を買うことができるのは企業だけ」という事態になる。
大企業化した漁船は、大きな港のみに水揚げをするようになり、地方の港、加工は衰退する。
漁獲枠を寡占した経営者が、従業員に漁業をさせながら、利益だけを得る。
漁村は寂れ、漁業者の小作化が進むことになる。
要するに、古き良き漁業が、利益至上主義の経済行為となってしまうことを心配しているのだ。
確かに、ITQにはそのような側面があることは否定できない。
漁業を投機対象にすることには社会的な懸念があるだろう。
(まあ、今の日本漁業の生産性では、投機の対象外であり、それよりはマシだと思うが・・・)
譲渡を制限することで、この問題はある程度回避可能である。
漁獲枠の所有は漁業従事者に限ることにすれば、漁業の小作化は回避できる。
経済的効率と社会的平等のどちらを重視するかによって、譲渡に対する制限が決まってくる。
経済的効率を重視して、譲渡の制限を少なくしているのが、ニュージーランドとアイスランド。
社会的平等を重視して、譲渡を厳しく制限しているのが、ノルウェーである。
● ニュージーランドのITQ制度
ITQは、TACCに対する割合で設定されている。
例えば、1%の漁獲枠を持っている人間は、商業漁獲枠が100万トンであれば1万トン、
100トンであれば1トンの漁獲が可能となる。
一つの経営体が所有できる漁獲枠には10%~45%の上限が設けられている。
ニュージーランドのITQ制度は、独占の弊害が出ない範囲で、最大限に譲渡を許容している。
寡占化の弊害よりも、経済的な最適化を重視しようという考え方だ。
ニュージーランドのように、漁業は経済行為と割り切ることが日本で出来るはずがない。
ただ、今のような非効率的な漁業システムを多額の税金を投入して支えていくのも無理だろう。
幾ら漁業者に補助金をばらまいたところで、漁業を支える資源がもたないことは明白だ。
そこで参考になるのがノルウェーのITQ(もしくは、譲渡可能IQ)制度だ。
● ノルウェーのITQ(もしくは譲渡可能なIQ)制度
高木委員への反論材料として水産庁が「ノルウェーの漁業と漁業政策」という資料をまとめている。
これを読めば、ノルウェーの漁業政策がいかに合理的かが一目瞭然なのだが、
いまのところ水産庁のサイトにアップされているのを発見できない。
これをネタに、いろいろと書きたいことがあるから、早くアップして欲しいものだ。
ノルウェーでは、漁獲枠を船に割り振っている。
IVQ(Individual Vessel Quota)というシステムだ。
これによって、漁業者間の早取り競争を回避している。
また、制限付きの漁獲枠の譲渡を認めることで、過剰漁獲能力の削減にも成功している。
ノルウェーで許容されている譲渡は以下の3つである。
UQS(Unit Quota System)
2隻の漁船を所有する漁業者が、一方の漁船を漁業から撤退させる場合、
当該漁船を売却する場合には13年間、スクラップにする場合には18年間、
創業を継続する漁船により2席分の割当量を漁獲できる制度。SQS(Structual Quota System)
2004年より沿岸漁業を対象に導入。
2005年からは、沖合・遠洋漁業の対象(UQSから移行)。
同種の許可を受けた2隻以上の漁船を所有する会社が、
1隻を漁業から撤退される場合(撤退する漁船のスクラップ処分が要件)、
当該漁船が受けてた漁獲割り当てを、操業を継続する同社の漁船にうつすことが出来る制度。QES(Quota Exchange System)
2004年より沿岸漁業を対象に導入。
2人の漁業者が協力して操業する場合に、特定の期間に限り、
1隻の漁船により二入の行啓の割当量を漁獲できる制度。
ノルウェーでは、沿岸漁業から、大規模漁業までこれらの譲渡制度が完備されている。
その結果として、過剰な漁獲能力の削減をすることができた。
現在の人間の漁獲能力は生物の生産力を遙かに凌駕している。
例えば、かつてのアラスカのオヒョウ漁は1年間の割り当てを24時間で消化していた。
このような状態では、のこりの364日間は漁船が遊んでいることになる。
漁船を維持するには莫大なコストがかかるので、それだけ無駄が生じることになる。
二人の船主が共同で操業をすることにして、1隻を廃船にすれば、船の維持費は半分で済む。
船を減らして、漁獲枠を集めれば、それだけ手取りは増えるのである。
もちろん、共同経営をするかどうかは、個人の自由である。
貧乏でも船の主でありたい経営者は、そのまま漁業を続ければよい。
ノルウェーの場合は、多くの漁業者は経済性を高める道を選んだのである。
この譲渡制度の素晴らしいところは、
借金漬けの赤字経営体が、漁獲枠を譲渡して漁業から撤退できることだ。
日本の漁業は、かつて右肩上がりであった。
儲けがでても税金でとられてしまうので、漁業の利益は設備投資に回すのが常識だった。
それどころか、漁業者は借金をしてでも設備投資をしてきたし、国もどんどん融資をした。
この拡張主義の漁業は、右肩上がりで漁業生産が伸びることが前提であった。
しかし、70年代に入って、EEZが設定されて漁場が狭くなると、漁業生産が減少に転じる。
資源が減ったとしても、漁船を維持するために漁獲量を確保しなくてはならない。
借金をして設備投資をしてしまったので、「魚が捕れないから辞めます」という選択肢はない。
借金を抱えて撤退もままならない経営体が、赤字を減らすために獲って獲って獲りまくる。
その結果、資源が枯渇すれば、健全な経営体はどんどん減っていく。
借金漬けの赤字経営体は、補助金による水産振興という誤った漁業政策のツケである。
小サバを初めとする小型個体の乱獲は、どう見ても経済的な価値を産み出さない。
将来の収入減を考えたら、明らかな赤字である。そんなことは、獲っている人間は百も承知だろう。
現在の日本の漁業制度では、これらの債務超過の経営体には他の選択肢は無いのである。
漁獲量を減らせば、即破産→夜逃げコンボが待っていたら、獲るしか無いだろう。
今の漁業政策を続ける限り、この問題は解決しない。それどころか、酷くなる一方だろう。
もし、ノルウェーのような個別漁獲枠譲渡制度が完備していたらどうだろうか。
船自体に価値が無くとも、船に付随する漁獲枠には借金をチャラにする価値は生じる。
債務超過の経営体は漁獲枠ごと船を売却して、借金を清算して、漁業から撤退できるのだ。
漁獲枠を譲渡した船を確実にスクラップ処分する制度があれば、過剰漁獲能力の整理は進むだろう。
漁獲枠譲渡制度は、去る漁業者にも、残る漁業者にも、メリットがある。
こういう制度を整えた上で、漁獲枠を絞っていく必要があるのだ。
今の状態で、漁獲枠の総量を絞っても、漁業は成り立たないだろう。
中の空気はそのままで風船を小さくするようなものであり、風船が破裂するだけだ。
早急に空気が抜ける道を整えてた上で、漁獲枠の総量を絞っていくべきだろう。
日本漁業に残された時間はそれほど無い。
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ITQ(譲渡可能個別割り当て)方式
ITQは、IQ同様に個別に配分した漁獲枠を金銭による譲渡可能にした方式である。
この譲渡可能性が経済的な最適化、特に過剰漁獲能力の削減に大きな役割を果たす。
個々の漁業者で、経済性は大きく異なる。
船を出しても赤字の漁業者もいれば、確実に利益を出す漁業者もいる。
同じ量の漁獲枠であっても、得られる利益は漁業者によって大きく異なるのだ。
例えば、1トンの漁獲枠から100万円の利益を出せる漁業者Aと、
同じ漁獲枠から10万円利益しか出せない漁業者Bが居るとしよう。
漁獲枠が譲渡不可能であれば、漁業全体で2トンの漁獲量から110万円の利益となる。
もし、漁獲枠が譲渡可能であったらどうなるだろうか?
1トンの漁獲枠は漁業者Aには100万円の価値がある。
一方、漁業者Bには10万円の価値しかないので、
漁業者Aは、漁業者Bの漁獲枠を10~100万円の価格で買い取るだろう。
例えば、50万円でBの漁獲枠をAに売却したとしよう。
この譲渡によってAが得た利益は、売り上げ増から漁獲枠購入費用を引いた50万円
この譲渡によってBが得た利益は、漁獲枠売却益から、本来の売り上げを引いた40万円
漁業全体の利益が110万円から200万円に増えるのである。
ITQでは、漁獲枠当たりに利益が高い経営体に漁獲枠を集めることで、
資源の経済的有効利用をはかることができる。
さて、漁業者Bの立場になってみよう。
漁獲枠を漁業者Aに売った方が、自分が獲るよりも利益が出る。
ということは、船をもっていても無駄になるわけだ。
船の維持費はバカにならない。現に船の維持費を稼げない経営体も多数存在する。
漁獲枠を譲渡した方が利益になるような経済的に劣った経営体は、
漁獲枠を永久に譲渡して、船を処分するだろう。
こうして、利益率の高い経営体に漁獲枠が集まる一方で、
利益率の低い経営体は撤退をすることが可能である。
儲かる部分を残して、漁獲能力の削減が可能なのだ。
ITQのまとめ
1) 漁獲枠を個別に配分することで早捕り競争を緩和する(IQと共通)
2) 利益率が異なる経営体の間で漁獲枠の譲渡が発生する
i) 譲渡によって、双方が利益を得る
ii) 譲渡によって、漁業全体の利益が増える
3) 利益率の低い経営体は、漁獲枠を譲渡して漁業から撤退する
i) 過剰な漁獲能力が自動的に削減される
ii) 利益率の高い経営体のみ残るので、合理化が進む
書いてて、思ったけど、やっぱりITQは良い。
過剰な漁獲能力と枯渇した資源の日本漁業が生き残るためには、
消去法的にコレしかないんじゃないかな。
オリンピック方式(笑)は論外として、IQでも漁業全体が共倒れになる可能性が高い。
ということで、今後もITQのすばらしさを伝導していこうと思う。
さあ、みなさん、ご一緒に
ITQ!! ITQ!!
ITQ!! ITQ!!
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残された問題 ~過剰な漁獲能力~
IQ方式の限界
IQ方式には、既に過剰な漁獲能力を削減する機能はない。
資源に対して、過剰な漁獲能力が存在する状況でIQを導入しても、
資源の生産力と漁業者の数のアンバランスは解消されない。
漁業者と比べて資源水準が低い現状では、たとえ単価を向上させたとしても、
漁業経営は厳しいものにならざるを得ない。
過剰な漁獲能力(図の灰色の部分)を維持するためのコストもかかる。
もちろん、無駄な漁獲能力を肥大させる無管理やダービー方式は論外であるが、
過剰な漁獲能力を削減できないIQ方式では、まだ、不十分なのだ。
税金による漁獲能力削減(漁船買い上げプログラム)
漁獲能力を削減するには、税金で船を買い上げて、減船をするのが日本では一般的である。
漁船の買い上げには莫大な費用がかかる上に、効果は限定的である。
漁船の買い上げ制度が固定化すれば、いざとなれば税金で買い取ってもらえばよいので、
漁業者はどんどん設備投資をするようになる。
漁船買い上げ制度は、費用は掛かるばかりで、管理効果は疑問である。
たとえば、1998-99年に240億をかけて130隻のまぐろ漁船の減船が実施された。
1隻当たり2億円かかったが、漁獲圧を削減する効果は限定的であった。
結局、過剰な漁獲能力をもてあまし、ミナミマグロの不正漁獲を引き起こしてしまった。
中途半端な減船では、ほとんど漁獲圧の削減にならないぐらい、現在の漁獲能力は高いのである。
漁獲能力削減に秘策あり!
実は、税金を使わずに、過剰な漁獲能力を削減する方法がある。
個別に割り振った漁獲枠を譲渡可能にすることだ。
要するに、ITQの導入である。
ITQを導入した漁業では、適正水準まで船の数が自動的に減っていくのである。
そして、ITQへ・・・
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IQ(個別割り当て)方式
- 2007-09-05 (水)
- その他
ダービー方式は、漁業者間の競争を引き起こし、結果として漁業の収益を低下させる。
資源の保全に成功したとしても、漁業は儲からない産業になってしまう。
魚を救っても漁業を殺してしまう可能性が高い。(魚も漁業も共倒れよりはマシだが・・・)
ダービー方式の問題点を回避する代替案として、IQ方式が世界中で採用されている。
経営体に漁獲枠をあらかじめ配分することで、過剰な競争を防ごうという考えである。
他の漁業者に漁獲枠を奪われるおそれがないので、
漁業者は、与えられた漁獲枠の範囲で収入を増やすような操業が可能になる。
IQ方式では、漁業者(経営体)に漁獲枠を割り振る方式と船に割り振る方式がある。
漁獲枠の大きさと配分を決定するのは、管理主体である公的機関の役割である。
漁獲枠の大きさはABC(生物学的許容漁獲量)に安全率(1以下だよ)をかけた値、
漁獲枠の配分は過去の実績に基づく場合が多いようである。
IQ方式の未来予想図
②IQ方式の場合、他の漁業者との競争がないために、
ダービー方式のように、漁期のはじめに集中することはない。
むしろ、漁獲が集中して単価が下がれば、漁獲を控えるようになるだろう。
漁業者は漁獲能力に対する過剰な投資を控えることが出来る。
これは、加工・流通・消費などにも好都合である。
③ IQ方式では、他の漁業者よりも早く魚を捕る必要はない。
漁業者は、与えられた漁獲枠から得られる利益を増やそうとするだろう。
過剰な漁獲能力を増やすためでなく、漁獲の単価を上げるために投資をすることになる。
馬力を上げたり、網を大きくしたりする代わりに、
船上冷凍設備や、魚を傷めずに水揚げをするための真空ポンプに投資が出来る。
その結果、漁獲量が同じであっても、漁業の収益は上がっていく。
IQ方式のまとめ
IQ方式は、漁獲枠を個々の経営体(船)に配分する→漁業調整が重要
IQ方式は、漁業者間の競争を抑制する
→与えられた枠を経済的に有効利用するようになる
→過剰な漁獲能力への投資を抑制する
→kgあたり単価が高い個体を選択的に狙うようになる
→魚価を上げるための設備投資を促進する
ダービー方式では、時間の経過と共に収益が失われていく。
一方、IQ方式では、時間の経過と共に漁獲枠当たりの漁業収益は向上する。
IQ方式は、ダービー方式と比べて合理的な管理手法であり、どんどん採用すべきである。
境港の日本海ベニズワイ漁業で今漁期から、日本初の個別漁獲割り当てが始まる。
http://blog.livedoor.jp/kamewa/archives/50965050.html
IQによって、漁業がどう変わるかを、注意深く見守っていきたい。
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アイスランドが商業捕鯨中断
- 2007-08-31 (金)
- その他
アイスランド、不採算で捕鯨を中断 対日輸出できず
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070827-00000923-san-int
日本の市場狙いだったアイスランドの「商業捕鯨」が1年で中止に
http://www.news.janjan.jp/world/0708/0708280441/1.php
グッドフィンソン漁業相が「商業捕鯨は現時点では日本への輸出が前提。日本が受け入れないなら捕鯨を中止せざるをえなくなる」と強調し、日本が輸入を規制すれば「アイスランドという友好的な同盟国を失うことになる」と述べたとされている。
http://www.whaling.jp/news/061020m.html
日常的に流通して、クジラ食の裾のを広げてこそ、食文化と言える。
現状で安価な鯨肉を調達するには、商業捕鯨が可能な国から輸入するしか道はないわけだが、
その唯一の道を閉ざされたっぽい。
本当に商業捕鯨を再開したいなら、他国の商業捕鯨をサポートすべきだろう。
反捕鯨国は、その方が儲かるから反捕鯨国なわけで、
捕鯨が儲かるとなれば、方向転換をして、アイスランドに続く国も出てきただろうに。
これでは、「捕鯨は金にならない」と世界にメッセージを送ったようなものだ。
今回のアイスランドの撤退は商業捕鯨再開に対して、大きな逆風になるだろう。
日本が輸入をしなかった理由なんだけど、国内需要が無いとは思えない。
脂身のPCBが問題なら、赤身など、汚染が少ない部位だけでも輸入は出来なかったのだろうか。
ちなみに、北東大西洋海域ミンククジラの脂肪に含まれるPCBsは、0.60-20.76ppmらしい。
http://fenv.jp/20030331/topics/20010213_whale.htm
日本国内に流通しているクジラの値はここにある。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/01/h0116-4.htmlさまざまな食品のダイオキシン汚染調査
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/12/h1227-2b.html
全ての食品の中で、鯨の脂身の値が文字通り桁違い。
マグロは思ったよりも低い。
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水産業 「お魚大国」をどう復活させる(8月27日付・読売社説)
- 2007-08-27 (月)
- その他
高木委員の提言を紹介していますね。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070826ig91.htm
しかし、この社説の見出しはどうかと思う。
別に水産大国である必要は無いだろう。
持続的に安全で美味しい海の幸を食べ続けるためには、
水産大国志向を捨てて、小回りがきく漁業を目指すべきである。
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今日は、内部検討会です
今日は、スケトウダラの内部検討会です。
内容は非公開なので詳しくは書けません。
今年のブロック会議は、もめないで済むと良いのですね。
去年同様、声の大きさで勝負するなら負ける気はしませんが・・・
そういえば、今のブログに移行したのが、
ちょうど去年の内部検討会の頃だったわけですが、
密度が濃い一年でした。
情報発信と社会貢献の方面でがんばった反面、
研究活動が少しおろそかになってしまったのが反省点。
そろそろ引き籠もって、論文を書こうと思ったら、マイワシの期中改訂だし。
参った。
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「サバ時代到来明るく、中央水産研究所報告」を検証する
サバ時代到来明るく、中央水産研究所報告
http://www.news-kushiro.jp/news/20070807/200708073.html
サバ時代到来ですか。マジですか。釧路新聞は凄いなぁ。
この記事の元になったのは、
平成19年度第1回太平洋イワシ・アジ・サバ等長期漁海況予報と思われます。
http://nrifs.fra.affrc.go.jp/yohou/2007_1/5.pdfhttp://nrifs.fra.affrc.go.jp/yohou/2007_1/5.pdf
では、中を見てみましょう。
1. 資源状態
(1)マサバ
資源量は1990 年以降依然として低い水準にあるが、加入量水準の高い2004 年級群の発生により資源量は増加傾向にある。2003 年級群(4 歳魚)以上の残存資源量は少ない。
2004 年級群(3 歳魚)現在の残存資源尾数は2.6億尾と、3 歳魚としては近年にない高い水準である。
2005 年級群(2 歳魚)加入量水準の低い2001、2003 年級群並みの水準と判断される。
2006 年級群(1 歳魚)2005 年級群をさらに下回る水準と評価されている。
2007 年級群(0 歳魚)は、黒潮-親潮移行域中層トロール幼魚調査(中央水研・北水研)による加入量指数が12.1 と、2004、2005 年並みの高い値であった。東北水研による北西太平洋中層トロール資源調査(サンマ漁期前調査)から推定される推定資源尾数は105 億尾(暫定値)と、2004 年級群(64 億尾)を上回った。茨城県の船曳網、千葉県の定置網など沿岸域でも昨年、一昨年よりマサバ0 歳魚の分布が多くみられているほか、釧路水試による流し網調査においても分布が確認されている。これらのことから2007 年級群は2005、2006 年級群より加入量水準は高いと考えられる。しかし発生後間もない現時点での調査結果に基づく評価は極めて不確実である。
以上のことから本予測期間は2004 年級群(3 歳魚)が主体となる。これに2005 年級群(2 歳魚)、2006年級群(1 歳魚)が混じるが少ない。期後半に2007 年級群(0 歳魚)が漁獲され、漁獲の主体になる可能性もあるが、0 歳魚の加入量の見積もりは非常に不確実である。マサバ全体としては、多かった前年を下回ると考えられる。
(4)資源管理
マサバの親魚量は2004 年級群の高い加入により増加傾向にある。2007 年産卵期は2004 年級群が3 歳魚として活発に産卵した。産卵量は2007 年1~6 月でサバ類で312 兆粒、マサバのみでも251 兆粒と大きく増加、1982 年以来15 年ぶりに200 兆粒を超えた。しかし2005、2006 年級群の加入量水準は低く、親魚量は今後減少すると考えられる。続く2007 年級群は、現段階では不確実であるが、比較的豊度の高い年級であると期待され、2007 年級群を保護することにより親魚量の減少を一時的なものにとどめ、更なる増加につなげることができると期待される。現在マサバ太平洋系群の親魚量の回復を目指した資源回復計画が実行されている。親魚量の増加傾向を維持しマサバ資源の回復を図るため、若齢魚の保護を継続することが肝要である。
以上をまとめてみると、こんな感じ。
- 主力の3歳は、約2.6億尾と推定されている。
- 0歳は、今の段階ではまだ何とも言えないが、3歳の1.5倍ぐらいいるようである。
- 1歳、2歳、4歳以上は殆ど居ない。
- 0歳の獲れ方次第だけど、漁獲量は前年を下回るんじゃないの?
- 07年級群を産卵まで残さないと、更なる増加には繋がらないだろう
原文を読むと「マサバ時代到来!!」というトーンでは無いことがわかる。
3歳の近年にない高い水準(2.6億尾)というのは、具体的にどの程度かというと、こんな感じ。
90年代に入って、資源量が低迷してからであれば例外的に多いのだが、
70年代、80年代と比べると依然として低い水準である。
さらに、3歳の上も下も居ないことに注意が必要だ。
年齢組成を見るとこんな感じになる。
3歳はかろうじて見えているが、のこりは0歳しかいない。
0歳は、70年代の高水準期には適わないものの、歴史的に見ても高い水準である。
だからといって安心することは出来ない。
この予測値と同程度の加入があった96年級群は、未成熟のうちにほぼ獲り尽くされてしまった。
つまり、現在の漁獲能力であれば、獲り尽くせる水準なのである。
また、「発生後間もない現時点での調査結果に基づく評価は極めて不確実である」との記述もある。
では、実際にどの程度のズレがあるかを見てみよう。
マサバ太平洋系群の資源評価票(平成18年版)の25ページに次の2つの表がある。
- 補足表4-1.太平洋における浮魚類の資源量調査の概要
- 補足表4-2.各調査による資源量指標値
このなかの4番(東北水研 6~7月)の調査が0歳魚の推定に用いられたのだろう。
(ただ、2004年が101億尾となっているので、平成19漁海況予報の64億尾という記述とはずれるので、要確認)
補足表4-2に実際の値があるので、その後の情報から推定された加入量と比較してみよう。
トレンドとしては良く追えているけれど、絶対量はあまりあてにならないことがわかる。
全体的に過大推定の傾向がある。
この東北水研の調査は、おそらく「サンマの資源量を調べるついでに獲れたサバの数も数えてみました」というものだろう。
その年のマサバの分布域がサンマとかぶるかどうかに大きく影響されてしまう。
そういう意味で、精度はあまり期待できない。参考程度につかうべき値だ。
ただ、いろんな場所で0歳のサバが捕れているのは事実であり、この年級群がそれなりに居ることは間違いない。
だからといって、「サバ時代到来明るく」と言えるような状況ではない。
04、07と卓越年級群が発生したことで、最低水準からは脱しつつあるが、
04年生まれはもってあと1~2年。その間に07年生まれをつぶしてしまえば、そこでアウトだ。
三陸沖で、「サバが獲れて獲れて困っちゃう」とか良いながら、ガンガン獲っているようだが、
そういう獲り方をしても値段は付かないし、資源の回復の芽を摘むだけである。
この漁海況予報のなかで、最も気になる記述はこれ。
※付記
東北海区サバ長期漁況予報の太平洋イワシ・アジ・サバ等長期漁海況予報への統合のお知らせ
これまで三陸沖でのサバ類を対象とした漁業に対応するため、毎年10 月始めに東北海区サバ長期漁況予報を出して参りましたが、近年ではサバ資源の分布回遊範囲の縮小と対象魚群の若齢化によって漁期が早まり、10 月には三陸沖漁場が終盤となる状況になっています。
そのため、東北海区のサバの漁況予報は、現在、太平洋全体のサバ類の漁況予報として中央水研で出される太平洋イワシ・アジ・サバ等長期漁海況予報の7 月の予報に統合することが適切であることから、今後は当該予報に東北海区におけるサバ類の漁況予報を統合することとして整理し、予報精度を維持・向上して参ります。従いまして本年10 月から東北海区サバ長期漁況予報は出されなくなりますのでご承知ください。
日本サバが美味しくなるのは、秋から冬。特に三陸沖の脂ののったサバは最高だ。
現在は、美味しくなるまえに、漁業が終わってしまうというお寒い現状なのだ。
本当にもったいない話である。
美味しい日本のサバが食卓に並ばない理由はここにある。
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高木委員提言
- 2007-08-06 (月)
- その他
高木委員提言についての雑感
水産基本計画や水産白書の基本路線
1)成功しているところのみを針小棒大に宣伝し、全体として失敗していることを隠す
2)失敗は環境変動やクジラなど、業界外部の要因のせいにする
3)35年以降機能していないシステムの維持に全力を注ぐ
資源の枯渇は、環境変動とクジラのせいにする。
未成魚の多獲は無いことにする
市場価値が上がる前に獲り尽くしているけど、魚価の低下は市場のせいにする
すでに効果がないことがわかっている施策を惰性で続ける。
それに対して、高木委員の提言
1)水産業が上手くいっていない現状分析に立ち、
2)水産行政が機能していないという問題点を指摘した
3)その上で、変化の方向性についても提言をした
基本的な方向性として、「このままではマズいから何とかしよう」というのがある。
この姿勢は評価できる。というかこういう姿勢をもった団体は他にない。
委員会は20人程度の業界関係者からなるのだけど、そこには様々な利害の対立がある。
文章を読むと、特定の委員の顔が浮かんでくるような箇所もある。
そういう意味では確かに限界がある。
現状分析や対応策については、今後も検討を続ける余地は大いにある。
賛成できる点、賛成できない点を洗い出して、
賛成できない点に関しては、その理由を明示したい。
大切なことは、高木委員の提言をネタに、みんなで言いたいことを言うことだろう。
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