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IQ(個別割り当て)方式

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ダービー方式は、漁業者間の競争を引き起こし、結果として漁業の収益を低下させる。
資源の保全に成功したとしても、漁業は儲からない産業になってしまう。
魚を救っても漁業を殺してしまう可能性が高い。(魚も漁業も共倒れよりはマシだが・・・)

ダービー方式の問題点を回避する代替案として、IQ方式が世界中で採用されている。
経営体に漁獲枠をあらかじめ配分することで、過剰な競争を防ごうという考えである。
他の漁業者に漁獲枠を奪われるおそれがないので、
漁業者は、与えられた漁獲枠の範囲で収入を増やすような操業が可能になる。

IQ方式では、漁業者(経営体)に漁獲枠を割り振る方式と船に割り振る方式がある。
漁獲枠の大きさと配分を決定するのは、管理主体である公的機関の役割である。
漁獲枠の大きさはABC(生物学的許容漁獲量)に安全率(1以下だよ)をかけた値、
漁獲枠の配分は過去の実績に基づく場合が多いようである。

IQ方式の未来予想図

image07090501.png

②IQ方式の場合、他の漁業者との競争がないために、
ダービー方式のように、漁期のはじめに集中することはない。
むしろ、漁獲が集中して単価が下がれば、漁獲を控えるようになるだろう。
漁業者は漁獲能力に対する過剰な投資を控えることが出来る。
これは、加工・流通・消費などにも好都合である。

③ IQ方式では、他の漁業者よりも早く魚を捕る必要はない。
漁業者は、与えられた漁獲枠から得られる利益を増やそうとするだろう。
過剰な漁獲能力を増やすためでなく、漁獲の単価を上げるために投資をすることになる。
馬力を上げたり、網を大きくしたりする代わりに、
船上冷凍設備や、魚を傷めずに水揚げをするための真空ポンプに投資が出来る。
その結果、漁獲量が同じであっても、漁業の収益は上がっていく。

IQ方式のまとめ
IQ方式は、漁獲枠を個々の経営体(船)に配分する→漁業調整が重要
IQ方式は、漁業者間の競争を抑制する
  →与えられた枠を経済的に有効利用するようになる
  →過剰な漁獲能力への投資を抑制する
  →kgあたり単価が高い個体を選択的に狙うようになる
  →魚価を上げるための設備投資を促進する

ダービー方式では、時間の経過と共に収益が失われていく。
一方、IQ方式では、時間の経過と共に漁獲枠当たりの漁業収益は向上する。
IQ方式は、ダービー方式と比べて合理的な管理手法であり、どんどん採用すべきである。

境港の日本海ベニズワイ漁業で今漁期から、日本初の個別漁獲割り当てが始まる。
http://blog.livedoor.jp/kamewa/archives/50965050.html
IQによって、漁業がどう変わるかを、注意深く見守っていきたい。

Comments:3

県職員 07-09-05 (水) 12:03

ABCが科学的に十二分に信頼性がおけるものとなったとしても,漁場の形成,魚群の来遊に関しては,未だ未解明な部分が多いと思います。
漁場が限られる県知事許可漁業では,操業可能な漁場に魚が来遊している時に獲らないと,いつ獲れなくなるわからないという危機感がいつもつきまといます。IQで配分されていても,この危機感が元になって,魚が来たらどうしても早く獲とろうとしてしまうような気がします。
 計画的な漁獲というのはなかなかなじまないのかもしれません。まあ,最終的には経営上の問題として,個人個人がかぶることになるとは思いますが。
 

業界紙速報 07-09-05 (水) 13:44

昨日のみなと新聞に関連記事が掲載されています。
http://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/week1/2007/sep/m070904.html#1
結構詳細な記事で、漁業生産者、流通、加工業者らが2年前から3者協議会を組織、今回の総漁獲量の1割削減については、3者総意で受け入れたことを書いてあります。
偶々ですが、いま注目を集めているサバとサンマの記事もあります。記事全文をご覧になれればいいのですが。

勝川 07-09-06 (木) 7:01

県職員さん
>IQで配分されていても,この危機感が元になって,
>魚が来たらどうしても早く獲とろうとしてしまうような気がします。
それも操業の自由と言うことで良いと思います。
ITQであれば、漁場が形成された場所の漁業者に漁獲枠を譲渡することも可能です。
計画的な漁獲が馴染まないのは漁業者の意識の問題もあると思います。
魚は海から無尽蔵に沸いてくると思っていれば、計画もなにもありません。

業界紙速報さん
みなと新聞をとりあえず半年とることにしましたので、手もとにあります。
今回のIQに関しては、ここで書いたような資源管理上の効果を狙ったと言うより、
漁業調整の色合いが強いようですね。
動機はどうであれ、操業の自由が漁業にもたらす影響は興味があります。
漁業者の過剰競争で、漁期が短縮されているサバとサンマの記事が隣にあるのも、
なかなか興味深いですね。
サンマなんてもうけが出るのは最初の1月だし、サバは旬の前に終漁っぽいし・・・
こういった事態の打開策として、IQの導入が必要でしょう。

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