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IQ入れると440億円かかる?を検証する

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「ITQイヤイヤ懇談会」の結論としては、ITQは金がかかるから駄目ということらしい。

今の日本では、TAC制度には、ほとんど金をかけてない。
資源評価もいれて30億ぐらいでしょうか。(知っている人いたら教えてください)
漁業の未来のために、しっかりと投資をするのは大賛成だが、
ITQを導入すると管理コストが跳ね上がるというのは、おかしな議論だ。
440億円って、どっから出てきた数字なの、という素朴な疑問が沸いてくる。

水産庁の出してきた440億円の根拠は計算根拠は、次の資料の17(15)ページにある。
http://www.jfa.maff.go.jp/suisin/yuusiki/dai5kai/siryo_18.pdf

○漁港漁場整備法に基づく第2種漁港(496港)及び第
3種漁港(101港)に検査官3名が周年駐在。

○大臣管理漁業対象漁船(3808隻・統。左図から算定)
に検査官1名が乗船。

【試算結果】
(検査官人件費×3名+事務所借料)×597港
=13,969,800千円

検査官人件費×3808隻・統=29,702,400千円
合計:43,672,200千円

一定規模以上の港に3人、一定規模以上の船に1人を常駐させる人件費だそうです。
ちなみに、船に乗る人間の費用は、一人当たり年額780万円。
港の検査員も同じ費用がかかるとすると、事務所借料が0円になってしまう。
港の検査員の方が一人当たりの費用が安くなる理由がわからない。
たぶん、人件費だけ計算をして、それじゃあまりにかっこわるいから、
「事務所借料」という文だけを加えたのだろうか。

また、2種漁港すべてに、3人も常勤する必要は無いだろう。
特定第三種には、一人ぐらい貼り付けても良いかもしれないが、
2種漁港に常勤3人は明らかに過剰である。
(参考:http://ja.wikipedia.org/wiki/日本の漁港一覧

440億円という金額自体も法外だが、これらのコストはITQだから必要なわけではない

オリンピック制度でも、それぞれの港で水揚げを迅速かつ正確に確認べきだから、
港の漁獲量把握のための行政コストは、現状でも必要なはずだ。
べつに漁獲枠を個別割り当てにすることで、発生するコストではない。
オリンピックだろうと、ITQだろうと、総量規制をしていたら必要になるはずだ。

また、ITQは出口管理だから、個別の船の水揚げを港でチェックすればよい。
よって、船に監視員を配置する必要はない。
検査官人件費×3808隻・統=29,702,400千円は不要。

水産庁は、TACやITQのような量的規制よりも、操業規制が有効であると主張してきた。
操業規制が守られているかどうかを確認するには、船に監視員が必要になる。
つまり、この300億円はITQではなく、水産庁が主張する操業規制の必要経費なのだ。
水産庁の計算によると、ITQなら、操業規制の半額で済むことになる。
語るに落ちるとはこのことだろう。
実は、隠れITQ推進派が資料を作っていたりして(笑

まとめ

漁港検査費用(13,969,800千円)
ITQを導入する、しないに関わらず、港での漁獲量の把握は必要。
これは、TAC制度を入れた時点で必要な費用であり、
オリンピック制度からITQに移行することで生じるコストではない。

乗船検査官人件費(29,702,400千円)
ITQは水揚げ量の規制なので、検査官を乗船させる必要はない。
これは、水産庁がITQの対案として主張する操業規制のコストである。

ITQをやらない言い訳づくりの一環として、法外な管理コストを試算して見せたのだが、
コスト計算の前提自体がナンセンスであり、
440億円という費用はITQの導入と関連するわけではない。
あまりに、稚拙な計算だと思う。

有識者の皆さんは、この試算に、どんなコメントをしたんだろうね。
議事録が楽しみです。

Comments:1

ある水産関係者 08-11-21 (金) 1:03

IQ制度の精度を高めるため、オブザーバー(検査官)の乗船は必須でなくてもベターではある。有識者連中が必要というのなら乗船させれば良いではないか。ただし、その経費は受益者(漁業者)負担である。それが納税者の感覚として当然だろう。現にロシア水域へ出漁する日本漁船は、IQをモニターするための高額なオブザーバー経費を負担している。ロシアの資源保護のために身銭を切っておいて、日本の資源保護のためには負担できないという理屈は成立しないだろう。
 もちろん、その経費は最終的には消費者へ回ってくる。漁業者も同経費を支払ったうえで採算をとるためには漁獲物を高く売らなければならない。そうすると必要以上にたくさん獲ったり、小さい魚を無理して獲ったりはしなくなるはずだ。
 要は、資源保護や管理に要する経費を漁業者(受益者)が一切負担することなく、タダで好き放題魚を捕れるようになっているシステムにも問題がある。
 他のIQ(ITQ)を実施している国でも漁業者は負担しないのだろうか? 納税者が黙っているのは(何も知らされていないのは)、大日本帝国くらいの気がするが・・・。
 
 役所と民間に同じ事業をやらせても、役所は、思いつく限りのありとあらゆる全ての経費を積算し、それを予算として要求する。このため、役所の予算は、実際には多くの「切りしろ」が含まれ、それがカラ出張や官官接待のための裏金の原資として大いに重宝された(ている)。一方、民間のやり方は、まず一定の目標金額を決めておいて無駄な経費を一切排除しつつ、その金額の範囲内で同じ事業をやり遂げようとする。
 わかりやすく言えば、お金の使い方について、役所は「他人の財布で買い物」をする感覚であり、民間は「自分の財布で買い物」をする感覚なのだ。大本営の440億円を見れば見るほど、役所の「他人の財布で買い物」をしようとする腐りきった根性がちらつくのだが・・・。

 

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