- 2006-08-31 (木) 11:42
- 研究
2004年に外部委員を引き受けてから、
「ABCに人間の都合は持ち込むな」ということを一貫して主張してきた。
その結果、北海道では人間の都合をABCや評価表に持ち込む人はいなくなった。
これは大きな成果だと思う。
未だに、人間の都合を持ち出すのは霞ヶ関から来た一部の人たちだけだ。
その一部の人たちは「こんな記述は、漁業者が納得しない」と言うが、
会議に出席している漁業者たちは、納得をしないどころかABCに協力してくれる。
この違いは、どうして生じるのだろうか。
俺が思うに「漁業者が納得しない」のではなく、
「説明が悪くて漁業者を納得させられない」のではないだろうか?
北海道の人たちにABCの重要性を納得してもらうために、
特別なことをしたわけではない。
なぜABCと人間の都合を切り離さないといけないか、
その理由をABCの起源まで遡って説明しただけだ。
資源を守るためには、資源の状態を正確に把握する必要がある。
そのために、資源評価票やABCが存在する。
正確な状況を把握するためには、人間の都合とは切り離して、
厳密に資源評価をしないといけない。
厳しい数字が出るかもしれないが、10年後の北海道漁業のために協力して欲しい。
ということを、誰かが人間の都合を持ち込もうとするたびに繰り返した。
それだけで、ちゃんと理解してもらえた。
ブロック会議には、漁業者の代表も来ている。TACが減ったら、一番困る人たちだ。
彼らは「何が何でもABCを増やせ」とか、
「評価票から、資源が減少したという記述を取り除け」とは言わない。
その代わり、「この年には、水温の関係で資源が沿岸まで来なかった」とか、
「この年はホッケが好漁だったから、みんなそっちを獲りに行ってた」とか、
漁獲統計の数字だけ見ていてはわからない情報を提供してくれる。
ABCの大切さを理解した上で、
より生物学的に妥当なABCを出すために協力してくれる。
俺が北海道の漁業者と話していて感じるのは、資源に対する意識の高さだ。
「資源が減ったのは、わかっている。
守らなくてはいけないのもわかっている。
ただ、大事にしていたのに何で減ったのかその理由を知りたい」
と彼らは口をそろえて言う。
ABCの重要性をきちんと説明すれば、理解が得られるはずだ。
では、なぜ、一部の人たちは漁業者を納得させられないのだろうか?
理由は簡単だ。
彼ら自身が資源評価を軽視していて、その中身の理解も不十分だからだ。
これでは、漁業者にABCの大切さを伝えられるはずがない。
「漁業者が納得しないから、評価票を書き換えろ」などという暴論を吐く前に、
漁業者を納得させられるように評価票の中身を勉強するべきだろう。
俺の見た限り、北海道の漁業者はABCに理解を示してくれる。
彼らが納得していないのは、ABCではなく、TACの配分だ。
資源を獲っちゃった人たちの漁獲枠が増えて、
獲らずに待ってた人たちの漁獲枠が減るのは、あんまりだろう。
まあ、それについては、後々詳しく書くことにしよう。
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