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魚種別 Archive

新聞記事 自壊するマサバ漁業

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みなと新聞12月21日の記事をおいておきますね。

勝川俊雄の最新の記事をいち早く読めるのは、みなと新聞です。
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http://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/

 

Image200712226.jpg

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歴史は繰り返す

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何かと話題のミナミマグロの管理でも、OM的なアプローチが採用された。
IWC以外では、国際漁業管理機関として、世界初であった。
では、この試みがどうなったかを概説しよう。

ミナミマグロの管理委員会では、豪州と日本の意見が激しく対立し、
科学委員会として漁獲枠を提言できないという異常事態が続いていた。
要するに、IWCのNMP時代と同じような状態だったわけだ。
日本と豪州の対立の象徴的な出来事は国連海洋裁判所への提訴騒ぎだろう。
ミナミマグロの漁獲枠の削減で漁場が狭くなった。
豪州は狭くなった漁場以外では魚はいないと主張し、
日本は現在の漁場以外にもいるはずだと主張して、双方譲らなかった。

「だったら調査で明らかにしよう」といって、日本は漁場の外で調査漁業を行った。
そこでとれたマグロは「これは調査だから」といって、漁獲枠の外にしてしまった。
正規の漁獲枠にプラスアルファーして、漁場外調査の漁獲をおこなったのである。
豪州は、漁獲枠を無視する国際条約違反であると怒り、
国連海洋裁判所への提訴に踏み切ったのだが、裁判の結果は門前払い。
よーするに、「当事者で解決すべき問題を持ってくるんじゃねぇよ」ということだ。

こんな感じで、にっちもさっちもいかなくなっていたのであった。
このままじゃいけないということで、外部から専門家を招いて調停をしてもらった。
地域紛争の解決に国連のPKOを呼んできたような感じかな。
で、呼ばれてきたのがHilbornやAna ParmaやPopeなど、一流どころばかり。
さすがマグロは動く金が大きいだけに、だしおしみをしなかったようだ。
Image200712081.png

調停役である諮問パネルは、OM的なアプローチを採用した。
IWCと同様に、何が正しいかを議論するかわりに、
考えられる不確実性に頑健な漁獲枠計算法を探すことにした。
漁獲枠計算法のことを、IWCではCLAと呼んでいたが、ここではMPと呼ばれている。

様々な不確実性を考慮するために、
720通りのシナリオをそれぞれの重み付けに従い2000サンプル取り出してシミュレーションを行った。
これは、大変な手間ですね。いやいや、ご苦労様です。
でもって、下の表がシミュレーションの結果。

Image200712082.png
列がMP,行がMPを評価するための指標をしめしている。
青が豪州・ニュージー組、赤が日本、緑が台湾、紫が南ア&日が提案したMPである。
指標としては、

  • TACを初期に減少するかどうか
  • 長期的なTACの水準
  • SSBが10%いかに下がるリスク
  • 最終的にTACがどのていど上昇するか
  • TACの変動幅

など、多岐にわたる。
延々とシミュレーションと議論をした結果、
バターワース&森方式(D&M方式)が採用されたのでした。
そこに至る課程では、予定外に資源が減ってしまったりとか、
いろいろな困難があったわけですが、何とかMPの合意にこぎ着けたわけです。

ミナミマグロの場合も、苦労の末にMPが完成し、
あとはこれをつかって漁獲枠を計算するだけという段階になって、
想定外の横やりが入ってしまった。
どこかの不届きな国が大量に超過漁獲をしていたのである。
日本のミナミマグロの流通量はCCSBTのミナミマグロの漁獲枠の倍の水準であり、
どこかに漁獲枠を大幅に超過している無法国家があることは明白である。
現在の漁獲枠なら資源は緩やかに回復するはずなのに、
ふたを開けてみたら資源量を激減していたのですが、その理由がわかりました。

結局、ミナミマグロが減ってしまったので、日本は世界に範を示すために
自ら進んで、漁獲枠を半減させたそうです。偉いですねぇ。
ちなみに、ミナミマグロの漁獲枠が減ったのは日本だけです。
とんでもない無法国家のせいで、無関係な日本の漁業者はいい迷惑ですよ。
無法国家の正体を突き止めるのは、マグロの最大の消費国の責任だと思います。
日本国内でしっかり調べれば無法国家の正体はすぐにわかると思うので、
一刻も早く徹底的な調査を行ってほしいものです。
それはそうと、日本漁業は不正漁獲と無関係にも関わらず、
日本の延縄データを使った解析を全面的にやり直しているのはなんででしょうね?
不可解なことが多すぎるので、誰かわかりやすく説明してください。

と、まあ、当てこすりはこれぐらいにしておこう。
何にせよ、不正漁獲のせい研究者の努力はオジャンです。
こんな不確実性までは試していないので、シミュレーションは全部やり直しだろうね。
漁獲枠をないがしろにしていたどこかの無法国家のせいで、
MPは全面的に作り直しになる可能性が濃厚です。

MPが完成して、科学者委員会で合意できたと思った矢先に、
外からでっかい横やりが入って、座礁してしまった。
ミナミマグロの管理は、奇しくもIWCのRMPと同じ運命をたどってしまったわけだ。
歴史は繰り返す、ということですな。
関係者の間では「OMは呪われている」とか「OMに関わると不幸になる」とか言われています。
ミナミマグロに関わらなくて、よかったぁ。


ミナミマグロの管理に関しては、ここを参考にしました。
http://homepage3.nifty.com/kurota/doc/060328_eco_presentation.pdf
このエントリーの画像はすべてここからのコピペです。

マサバ太平洋系群終了のお知らせ

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500g前後の個体の水揚げが落ちてきました。
どうやら、04年級群をほぼ獲り尽くしたようです。
みなと新聞の12月3日版の5面に「サバは11月中旬からペースダウンし、
散発的になっています」という記述があります。

1歳魚(06年級)、2歳魚(05年級)が殆ど居ないことは確定的なので、
来年、再来年のサバ供給は、輸入に頼ることになりそうです。
来年、再来年の産卵量は近年最低水準になると考えられるので、
08年級、09年級は期待薄ですな。

こうなると、唯一の好材料の07年級群も風前の灯火だろう。
期中改定で大盤振る舞いした漁獲枠は、0歳魚で消化されることになる。
虎の子の07年級もローソクで中国にたたき売られて終了の見通しです。
こういうときこそ、期中改定で漁獲枠を下げるべきなんだが、
大本営がそんなことをするはずがないですね。

年級群のまとめ
3歳(04年生まれ):多かったけど、ほぼ終了ようだ
2歳(05年生まれ):ほとんどいない
1歳(06年生まれ):ほとんどいない
0歳(07年生まれ):多いようだが、0歳から獲られて終了しそう

「07年級が成熟する2年後まで04年級で凌がなくてはならない」と、
ことあるごとに言い続けたのだが、
漁業者は、毎日1000トンとか水揚げして、値崩れさせて、獲り尽くすし、
大本営は、ほいほい期中改定して漁獲枠を激増するしで、終わってるよ。
先のことなんて何も考えていない。
ただ目先の収益が確保できれば満足なのだろう。
明らかに非持続的・非合理的な漁業が野放しな時点で、
日本の漁業にとって資源評価の不確実性が本質的な問題でないことは明白だろう。

脂ののった日本のサバを食べたいのだが、
芽が出た端から摘むような漁業を続ける限り、マサバ資源の復活は無いだろう。

スケソウダラの漁獲枠を巡る収賄事件

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北海道で漁獲枠を巡る収賄事件があったようです。
スケソウの漁獲枠を増やした見返りにワイロを自ら要求とは、お盛んですね。

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/61718.html
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/61909.html
http://www.stv.ne.jp/news/item/20071121185554/

国がTACをガツンと水増しした後に、道が賄賂をもらってやりたい放題ですか。
研究者がどれだけ苦労してABCを出してると思ってるんだ。
頭に来るなぁ。
漁獲枠なんて金で何とでもなるというのが北海道の現実なのか?

パチンコの借金のために、好き勝手に漁獲枠を割り振られたら、
他の漁業者はたまったもんじゃない。
「漁業者は生活がかかってる」とかこの場長のような奴に限って言うんだよ。
「漁業者の皆さんのためにスケトウダラの漁獲枠を確保します!」とか、
何年か前のブロック会議で宣言してた道の職員がいたが、もしかしてこの人?

それにしても、道警はグッジョブだな。
今後も、こういう不正は、どんどん取り締まってください。

漁獲枠の配分という重要なプロセスが不透明で、
行政の胸先三寸でどうにでもなってしまう現状を放置しておけば、
こういう事件は今後も起きるだろう。
行政は、全体の漁獲枠が生物の持続性の範囲に収まっているかに、
責任を持てばそれでよい。
余剰枠の再配分なんて、漁業者の協議で決めればよい話であり、
そんなところに行政が口を挟むから、おかしくなことになるのである。

動画で見るノルウェー漁業 その3

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その3が目で見るシリーズの最終回です。
魚が冷凍されるまでのプロセスをフォローします。
最後に、日本漁業を立て直すための緊急提言もアリます。

動画を見るには、こちらをクリックしてください。

ノルウェーではサバは一番高い時期に一番高く売れるものしか狙いません。
漁獲枠も科学者の勧告(日本よりずっと厳しいヨ)にしっかり従います。
だから、持続的に価値の高い魚を生産できるのです。
限られた魚を高く売るために、いろいろな工夫をしています。

日本では、「漁業者には生活がある」と言っては、いくらでも獲らせてしまう。
漁業者は、多く獲ることばかり考えて、魚の質は2の次です。
結果として、単価は上がらない。
漁業者は、値段を上げる努力をするどころか、
目先の利益を確保するために、小さい魚まで獲りまくるから、ますます資源は減る。
結果として、自分で自分の首を絞めているのです。

ノルウェーのやり方と、日本のやり方のどちらが、
本当の意味で、漁業者の生活を守ることになるのかは明らかです。
日本のやり方はその場しのぎであり、長い目で見て漁業者の生活を守れません。

もちろん、それぞれの国によって、事情が違いますので、
ノルウェーの猿まねをすればよいという訳ではありませんが、
持続性を大切にすると言う姿勢は見習う必要があります。

 

動画で見るノルウェー漁業 その1

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期中改定で資源回復の芽を摘みそうなマサバ太平洋系群は、
今日の会議で、期中改定の内容が確定するはずなんだが、どうなったんだろう。
マサバ太平洋系群の資源評価票には、肝心なパラメータが記載されていないし、
試算が出来ない状況です。

まあ、マサバについては、状況が確定してから、バッチリ書くことにして、
取りあえずは、ノルウェーの話をしていきましょう。

日本の水産関係者がノルウェーに視察に行くっていうのは、ありふれた話で、
文字としての情報はそれなりにあると思う。
ただ、自分の目で見ると、「ああ、これは日本とは雲泥の差だ」と強く実感をした。
水揚げから冷凍に至るプロセスの一つ一つが魚のクオリティーを保つことに配慮されている。
サバの水揚げから、冷蔵までの一部始終をビデオ撮影してきたので、
動画によって現地で体感した衝撃の一部だけでも伝われば幸いです。
動画を見るには、「続きを読む」をクリックしてください

スケトウダラの未来のために その7

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俺はトキの保全は、何がやりたいのか全然わからない。
日本のトキは、とっくに絶滅しているのに、
中国から輸入してきたトキに人工繁殖までしているわけだ。
既に絶滅したトキをミイラみたいな状態で維持するために莫大な金が投資されている。
その一方で、ほとんど顧みられることなく、多くの種が絶滅に瀕している。
すでに絶滅したトキよりも、まだ絶滅していない生物の保全が大切だと思う。
トキの絶滅を教訓に、次なる種の絶滅を防ぐ方が大切だろう。

資源管理もそれと同じ。
日本海北部系群は、もうどうすることもできないので、
スケトウダラの太平洋系群へと俺の関心は移っている。
この資源は、今がまさに勝負所だと思う。

これが太平洋系群の資源量。90年代中頃からコンスタントに減少している。
image07110201.png

RPSは低水準で安定している。
現在の漁獲圧は、90年代前半なら問題ないのだが、90年代後半以降の水準では資源を維持できない。
近年のRPSで資源を維持できる見合った水準まで、早急に漁獲圧を減らす必要がある。
image07110202.png

RPS(卵の生残率)が低迷し、漁獲圧がそれに対応できず、資源がズルズル減っている。
この状況は、日本海北部系群の10年前と酷似している。
この資源は今がまさに勝負所であり、これから5年の間に行く末が決まると思う。

この資源のBlimitとしては、過去最低の親魚量154000トンが設定されている。
現在、Blimitに徐々に近づきつつあり、
10%の確率で2013年度にはBlimitを下回るというシミュレーション結果が得られている。
絶対に、絶対に、このBlimitは死守しなくてはならない。

そのためには、Blimitまで達したら、abcをどこまで減らすかを研究者で決めておき、
予め漁業者に周知しないといけない

そうすることで、Blimitに近づいた時点で、漁業者に注意を促すことが出来る。
北海道の関係者であれば、Blimitに達してから「どうしましょう?」では、お話にならないことは、
日本海北部系群の経験から痛いほどわかっているはずである。
資源量推定値がBlimitを下回ったら、何があろうともABCを予告通り削減する。

資源量には、過小推定の可能性ばかりでなく、過大推定の危険性もあるので、
資源評価の不確実性を理由に先延ばしは許されない。

Blimitを防衛ラインと位置づけて、そこで頑張るのは当然のことであるが、
ベストを尽くしたとしてもBlimitを下回っても漁獲にブレーキがかからずに、
資源がズルズル減っていく可能性はある。だから、それに対する備えも必要だ。
今のうちにBbanも決めておき、Bbanまで資源量推定値が下がったら、
必ずABC=0にすると宣言すべきである。
Bbanは、我々の管理能力が無い場合の保険として必要なのである。
今までBlimit以下に減らしたことは無いわけで、Blimit以下になったとき時に資源がどうなるかはわからない。
よって、Bbanを科学的見地から一意的に決めることは不可能である。
ただ、資源が減らしすぎると増加能力が失われて、元の水準に回復しない事例が多数知られている以上、
ずるずると減らさないための閾値は必要である。

現在、俺が太平洋系群に対して、要求していることは以下の3つ。
1) Blimit以下になったら、ABCをどこまで削減するかを予め決めておくこと
2) 資源の減少に歯止めがかからない場合を想定し、予めBban決めておくこと
3) 水研、水試で1)および2)に対して合意形成をした上で、漁業者に周知すること

Blimitが近づいている現状では、残された時間はわずかであることを、肝に銘じて欲しい。

ノルウェーに行ってきました

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1週間ほどノルウェーに行き、
漁業とその管理について学んできました。

ノルウェーの漁業制度などは日本からでも勉強はできるけど、
現地に行かないとわからないことも多い。
「どういう経緯でその制度になったのか?」とか、
「実際のところ、どんな感じなのか?」とか、
「漁業者はどうおもっているの?」とか、
そういうところを忌憚なく聞いてきました。

ノルウェーの漁業政策はオープンな議論を重ねて方向を決めていきます。
だから、なぜ現在の政策になったかを皆が理解しています。
もちろん、細かい部分での不満はいろいろありますが、大筋では納得しているし、
細かい部分は今後の議論を通して解決していけると思っている。
漁業者のみならず、加工業者、流通、自然保護団体など多くの人間の意見が、
政策に反映されている。

日本のTACなんて、よくわからない値が密室で決められて、
何でその値になったのか誰も説明できないのとは雲泥の差ですね。

大勢の方に協力していただき、実に有意義な訪問スケジュールでした。
ぎっしり詰め込まれて、一分の隙も無いぐらいです。
フリーは28日(日)だけでしたが、この日は雨と風が強かったので、
次の日のアポに備えて、ホテルで予習&復習をしていました。

23日 午前:日本発
     深夜:ベルゲン着
24日 午前:サバ水揚げから冷凍までのプロセスを見学
     午後:輸出会社訪問
25日 午前:販売組合を訪問
     午後:オスロに移動
26日 午前:オスロでオロオロ
     午後:漁業省訪問
27日 終日:ベルゲンに戻る
28日 終日:雨のためホテルで資料整理
29日 午前:販売組合を訪問
     午後:漁業庁、海洋研究所を訪問
30日 早朝:日本に出発
31日 昼 :日本に到着

スケトウダラシリーズを、片付けたら、ノルウェー訪問記を書きますね。

ベルゲンの町並みは、とても美しかったです。
なんか、おもちゃの町みたいでした。
ber01.jpg

ノルウェーのサバ漁船
噂に聞いていたとおり、設備もグッドでしたよ。
ノルウェーでは古くなった船はデンマークなどに売って、常に最新の船を使うようです。
ber02.jpg

ノルウェーの海洋研究所の調査船は、格好いいですね。
何隻も船があるのだけど、これは一番大きなG.O.SARS号。
生物のモニタリングのために、静穏性が非常に高いそうです。
Hjort号なんていうのもあるようですよ。
ber03.jpg

スケトウダラのおもひ出 その6

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卓越年級群を未成熟のうちに取り尽くしたことがわかって、
「まあ大変」という状況で、俺が北海道に呼ばれたのだった。
その時点では、資源的にはまだ間に合ったが、漁業的には手遅れだったと思う。

この資源は90年代から減り始めたが、
漁獲量の削減が真剣に議論されるのは、ほんの数年前。
誰の目から見ても資源の枯渇が明らかになってからである。
この状態になると、漁業経営は苦しくなっており、
漁獲を控えめに減らすのはすでにできない相談である。
年収800万が400万になるのと、
年収400万が200万になるのでは、話がぜんぜん違う。
すでに厳しい状況でさらに減らすというのは無理だろう。
資源が減れば減るほど、漁業者から漁獲枠を上げるようにプレッシャーが強まり、
TACはABCから乖離していく。

研究者もまた、ABCを増やすことで、漁業者に迎合してきた。
スケトウダラ日本海北部系群の管理目標は、毎年、下方修正されている。

平16年度:2014年度の親魚量が184千トンを上回る
平17年度:2021年度の親魚量が184千トンを上回る
平18年度:2026年度の親魚量が 85千トンを上回る
平19年度:2027年度の親魚量が 55千トンを上回る

管理目標を下方修正すれば、当面のABCを水増しできる。
その年の合意形成はやりやすくなるかもしれないが、
資源状態が悪化するほど、高い漁獲率を許すのは資源管理ではない。
平成17年から平成18年にかけて大幅な目標修正があった。
管理目標が資源回復ではなく現状維持に変わったのだ。
資源が良い状態に回復したなら、現状維持に目標を変えても良いかもしれないが、
資源が減っている中で目標を現状維持に変えるのは好ましくない。
また、資源管理に一貫性をもたせるためには、平成19年度の管理目標は、
平成18年度の目標(2026年度当初のSSBが85千トンを上回る)をそのまま利用すべきである。

資源が減ればそれだけ目標水準を減らしていたら、いつまでたっても漁獲にブレーキはかからない。
このように資源が減るたびに目標を下方修正していけば、
一見、管理をしているように見えて、資源はどこまでもずるずる減っていく。
前に進んでいるように見えて、後ろに進むムーンウォークのようなものである。
(やっぱり、マイケルの動きはキレがちがうね!)

この資源を持続的に利用するうえでの本当の勝負所は、90年代中頃だっただろう。
卓越がでなくて、資源が減ってきたことは実感としてあったと思う。
この時代には、まだがんばれば獲れたが、ここで漁獲量を減らすべきだった。
がんばっても獲れなくなってからでは遅いのだ。
そして、1998年級群を未成熟で獲らずに産卵をさせていたら、
今頃、全く違う展開になっていただろう。

スケトウダラ北部日本海系群は獲らなくても減るような資源ではない。
適切な時期に適切な漁獲量まで減らしていたら、今後も持続的に利用できたはずだ。
産・官・学が強固なスクラムを組んで、問題を先送りすることで、
雪だるま式に問題を深刻化させて、
ついには解決不可能にしてしまったのである。

スケトウダラのおもひ出 その5

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卓越年級群の過大推定に関して、水研を責めるつもりはない。
誰がやっても不可避であっただろう。
資源評価など全く無視して、獲りたい放題の現状では、実質的な影響は軽微である。
たとえ、資源評価が正確であったとしても、同じように獲っただろう。

ただ、資源評価の問題点が明らかになった以上、
同じ過ちを犯さないように対策を練る必要がある。
大切なことは、失敗を認めて、原因を解明し、対策を練ることである。
平成18年の評価票には、次のように明記されている。

2003~2004年度の評価においては、資源動向が横ばいあるいは増加と、他の年とは異なる判断をしており、またこの期間に算出されたABCおよび過去の再評価結果の全てが、その後の資源状態の好転を予想した上で非常に高いABCを提示している(八吹 2003、2004)。これらの数値は、結果的に実漁獲量を上回った。これは、当時の1998年級群の好漁の結果、同年級豊度の評価を実際よりもかなり高く見積もり、その後の資源を支え、回復させる効果を過大に期待したことが原因であった。一方、2005年度以降の評価では、1998年級群の好漁が続かなくなり、当初想定したほど年級豊度が高くないと予想が修正されたこと、および2002年度漁期に、先の楽観的な資源予測の下で1998年級群を中心に獲り減らしてしまったことに伴い、資源状況およびABCの見積もり(過去の再評価、再々評価を含む)は大きく減少し、ABCは1万トン台で推移している(八吹 2005、本田ほか 2006)。なお、2005年度の実漁獲量はABCを上回った。

もちろん2003~2004年度の評価においても、当時使用しうる全ての情報を用いた上で、当時としては最適な評価を実施しており、1998年級群が当時想定したほど大きな年級群では無かったことは、当時の調査、研究技術の下では予見することが出来ず、当時の評価技術の限界によるものであった。これらを踏まえ、出来るだけ早い(若い)段階で年級豊度を正確に把握し、早急かつ適切に資源解析・評価に反映させることが必要となる。現在それを目的として、仔稚魚・若齢魚を対象とした計量魚探調査など、漁業情報と独立した調査の実施と情報の収集に取り組んでいるところである。

1998年級群の過大推定と資源評価の限界を認めた上で、
漁業情報と独立した調査の実施と情報の収集に取り組みを始めたのだ。

下の図は水試が行っている稚魚の調査結果である。
上が計量魚群探知機の調査で、下がトロールによる採取量を示したものである。
水研も時期をずらして同様の調査を行い、その結果を共有している。 *1
これらの調査によって、分布域のほとんどを網羅しているので、
漁業開始前に年級群の情報が得られるようになった。
現在、これらの調査結果は漁業者からも評価されているようである。

Image071027.png

1998年級群の過大推定という失敗を経て、北海道の資源評価は進歩した。
再び同じ失敗を起こさないような体制が整いつつある。
最近、じりじりと減少しているスケトウダラ太平洋系群に卓越が発生したとしても、
北部日本海系群の1998年級群のような過ちは犯さないであろう。
これはきちんと失敗に向き合ったからである。

日本における資源評価の歴史は短いし、十分なノウハウはない。
だから、不可避な失敗は山ほどあるだろう。
失敗に向き合う姿勢があれば、それをヒントに資源評価を改善していくことができる。
失敗事例というのは、貴重な財産なのである。

日本の水産業界には、失敗に向き合う姿勢が欠如している。
現在の日本の水産業はすごい勢いで衰退しており、問題があることは明らかである。
役所も漁業者も、何でもかんでも鯨や海洋環境のせいにして、
自分たちの責任をうやむやにすることしか考えていない。
この無責任体質によって、漁業がどこまでも廃れていくのである。


*1 公開当時は、「これは水研の調査だが、水試も同様の調査を独自に行い、結果を共有している」
と記述しておりましたが、上の図は水試の調査の結果でした。
メールにて指摘をいただいたので、10月30日に訂正しました。

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