俺はトキの保全は、何がやりたいのか全然わからない。
				    日本のトキは、とっくに絶滅しているのに、
				    中国から輸入してきたトキに人工繁殖までしているわけだ。
				    既に絶滅したトキをミイラみたいな状態で維持するために莫大な金が投資されている。
				    その一方で、ほとんど顧みられることなく、多くの種が絶滅に瀕している。
				    すでに絶滅したトキよりも、まだ絶滅していない生物の保全が大切だと思う。
				    トキの絶滅を教訓に、次なる種の絶滅を防ぐ方が大切だろう。
    資源管理もそれと同じ。
				    日本海北部系群は、もうどうすることもできないので、
				    スケトウダラの太平洋系群へと俺の関心は移っている。
				    この資源は、今がまさに勝負所だと思う。
    これが太平洋系群の資源量。90年代中頃からコンスタントに減少している。
				    
    RPSは低水準で安定している。
				    現在の漁獲圧は、90年代前半なら問題ないのだが、90年代後半以降の水準では資源を維持できない。
				    近年のRPSで資源を維持できる見合った水準まで、早急に漁獲圧を減らす必要がある。
				     
				
				    RPS(卵の生残率)が低迷し、漁獲圧がそれに対応できず、資源がズルズル減っている。
				    この状況は、日本海北部系群の10年前と酷似している。
				    この資源は今がまさに勝負所であり、これから5年の間に行く末が決まると思う。
				
				    この資源のBlimitとしては、過去最低の親魚量154000トンが設定されている。
				    現在、Blimitに徐々に近づきつつあり、
				    10%の確率で2013年度にはBlimitを下回るというシミュレーション結果が得られている。
				    絶対に、絶対に、このBlimitは死守しなくてはならない。
				
				    そのためには、Blimitまで達したら、abcをどこまで減らすかを研究者で決めておき、
				    予め漁業者に周知しないといけない。
				    そうすることで、Blimitに近づいた時点で、漁業者に注意を促すことが出来る。
				    北海道の関係者であれば、Blimitに達してから「どうしましょう?」では、お話にならないことは、
				    日本海北部系群の経験から痛いほどわかっているはずである。
				    資源量推定値がBlimitを下回ったら、何があろうともABCを予告通り削減する。
				    資源量には、過小推定の可能性ばかりでなく、過大推定の危険性もあるので、
				    資源評価の不確実性を理由に先延ばしは許されない。
				
				    Blimitを防衛ラインと位置づけて、そこで頑張るのは当然のことであるが、
				    ベストを尽くしたとしてもBlimitを下回っても漁獲にブレーキがかからずに、
				    資源がズルズル減っていく可能性はある。だから、それに対する備えも必要だ。
				    今のうちにBbanも決めておき、Bbanまで資源量推定値が下がったら、
				    必ずABC=0にすると宣言すべきである。
				    Bbanは、我々の管理能力が無い場合の保険として必要なのである。
				    今までBlimit以下に減らしたことは無いわけで、Blimit以下になったとき時に資源がどうなるかはわからない。
				    よって、Bbanを科学的見地から一意的に決めることは不可能である。
				    ただ、資源が減らしすぎると増加能力が失われて、元の水準に回復しない事例が多数知られている以上、
				    ずるずると減らさないための閾値は必要である。
				
				    現在、俺が太平洋系群に対して、要求していることは以下の3つ。
				    1) Blimit以下になったら、ABCをどこまで削減するかを予め決めておくこと
				    2) 資源の減少に歯止めがかからない場合を想定し、予めBban決めておくこと
				    3) 水研、水試で1)および2)に対して合意形成をした上で、漁業者に周知すること
				
Blimitが近づいている現状では、残された時間はわずかであることを、肝に銘じて欲しい。
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