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再考:食料危機をあおってはいけない

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「食糧危機」をあおってはいけない (Bunshun Paperbacks)

ちゃんと読んだら、とても良い本でした。水産分野のダメっぷりに驚いて他の部分を読んでいなかったんだけど、面白い内容が多かったです。徹頭徹尾、楽観的だね、この人は。でも、それはそれで、重要でしょう。

素人には誤解されやすいんだけど、将来はどうなるか、専門家だってわからない。食料全体の供給がどうなるかは、はっきり言えば、誰にもわからない。もちろん、ある程度の予測はできるんだけど、それは、その人のバックグランドと情報に大きく支配される。100人の専門家がいれば、100通りの予測が出てきてもおかしくはない。そして、どの予測が正解かは誰にもわからない。環境問題でいろんな説が出てくるのは、誰かが嘘を言っているからではなく、それだけ不確実性があるからなのだ。

正解がないからといって、何もしないわけにはいかない。これが実学の悩ましいところだ。俺の専門である水産資源学も、歴史的にこの課題に直面してきた。そういう状況で、我々がどうしてきたかというと、まず、もっとも楽観的なシナリオと、もっとも悲観的なシナリオを作ってみる。未来は、2つの極端なシナリオの間のどこかにあるはずだ。最初に想定の範囲を示しておくと、その後のプランが立てやすい。理想を言えば、想定の範囲すべてに対応できるような方策を準備したいんだけど、一般的に想定の範囲はとても広くなるから、何が起きても大丈夫というケースは例外。ある程度、運が悪くても適応できる戦略を考えておくのが、現実的ということになる。
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この本は、すべての歯車が楽観的な方向に廻ったら、どうなるかというビジョンを示しており、楽観的な上限を考える上では、参考になる。この本の最大の効果は、悲観的なシナリオを過度に強調し、消費者に全く寄与しないお荷物生産者を守ろうする、「自給率ナイナイ詐欺」の呪縛から、読者を解き放つことだろう。水産分野を見ればわかるように、この本は楽観的な方向に激しく偏っており、ツッコミどころは多い。だからといって、読まないのは実にもったいない。この本に書かれている楽観的な予測は、まず当たらないと思うが、視野を広げるという意味では読むべき価値がある本である。当ブログの読者にも、是非、目を通してもらいたい。いろんな発見があると思うよ。

それにしても面白い本が出たものだ。「一億総飢餓を防ぐために、零細生産者を守れ」という念仏を、大声で唱えていれば、研究費もポストも空から振ってくる。そういう世界で、こういう本はなかなか書けない。たぶん、筆者は、正直者というか、お調子者なのだろう。こういう人がどんどん出てくると、世の中、面白くなるね。

日本の一次産業も盛り上がって参りましたっ!!

VOX AC4TV8

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とりあえず買ってみたら、予想以上に良かったのでレビューをしてみよう。英国のVox社が満を持して放つ、小型のフル・チューブのアンプ。Fenderや、グレコも、似たようなコンセプトの小型チューブアンプを販売し、人気を博していた。しかし、昼間は仕事で、夜にしか弾けない人間としては、これらのアンプの5wでも音が大きすぎるという問題があった。その点、Vox AC4TV8は、4w、1w、0.1wの3段階に切り替え可能なアッテネータを装備しているので、ワット数を絞れば小さい音でも、真空管サウンドを楽しめるのでありマース。

imagevox

ごく最近まで、アンプを買う気は、全くなかったんだよね。PC上で動作するアンプシミュレータのAmplitube2をつかっているんだけど、シミュレータなら、騒音を気にせず、音作りが楽しめる。「自宅で、音量を気にしながら、アンプで音を出す時代は終わった!」と、思っていたのです。つい先日、新宿の楽器屋に行ったら、白いボディーのこいつが目に止まったとでありますよ。すでに在庫は完売、展示品のみという状況で、試奏させてもらったら、びっくり仰天。これは、楽しい。ボリュームやピッキングの強さで音の表情が変わるから、弾いていて、おもしろい。ちょっとだけのつもりが、ついつい長居をしてしまって、気がついたら、資源解析の送別会に遅刻寸前で、慌てて夜の新宿を走ったのでした。

音量的に家でも十分に使えそうだったので、購入を決意するも、どこも売り切れ。あのクオリティーがあの値段なら、争奪戦になるのもしかたがないだろう。ただ、生産自体は順調みたいで、待っていればコンスタントに入ってくるような話だったから、ネットで注文。先日、ようやく届いたので、早速、ギターからアンプに直結で、弾きまくってます。直結ということもあり、ピッキングのニュアンスが如実にでる。下手っぷりもダイレクトに表現されてしまう。でも、楽しい。アンプシミュと真空管は、キーボードとピアノのような違いがあると実感。音作りを楽しめるアンプシミュも、アナログ楽器として音を出す楽しみがある真空管アンプも、それぞれ特徴があって面白い。先日は、延々と夜の一人ライブをしたのだが、「眠い」、「まだ弾きたい」、「でも眠い・・・」となって、ギターを抱えたまま寝てた。と、まあ、それぐらい弾いてて楽しいのだ。

これは良い買い物でした。ただ、いくつか気になる点もある。売りの一つの0.1wは、ぶっちゃけ使えない。夜間でも演奏可能なレベルの音量で、かなりゆがむのだけど、音がダメだ。濁った音で、弾いてて楽しくない。これなら、アンプシミュ+ヘッドフォンの方が良い。0.1wは、最初にちょっと遊んだだけで、全く使っていないです(試奏したときに、これぐらい確かめておけよ>俺)。実は、この0.1wモードは日本のみの仕様みたいだね。日本以外は、型番がAC4で、4w/1w/0.25wらしい。俺的には、「0.1wより0.25wの方が良かったんじゃないかなぁ」という気がしてならない。その点はちょっと残念。ただ、現在メインで使っている1wと4wは、実によい。1wは、昼間なら、ゆがむ音量を出しても、ぎりぎりセーフなので、ナチュラルなクランチサウンドを楽しめる。そして、特筆すべきは4wのクリーンサウンド。つやがあって、良い音です。コードをジャラランとならすだけで、楽しい。でも、音がでかいので、現在の住環境では、4wクランチはむりぽです。野中の一軒家なら、OKなんだろうけどなぁ。

このアンプは、とても気に入ってます。音もグッドだし、パネルがシンプルなのも個人的には○。3つのつまみそれぞれが、ダイレクトに音に反映されるのが痛快です。ただ、外見は安っぽいですね。2万円・ベトナム製に相応。「リビングにも置けるデザインです」とか、宣伝している店もあるが、俺はそうはおもわない。取っ手は安っぽいビニールだし、VOXのロゴはもろに金メッキ・プラスチックな質感だし。ただ、この値段で、ここまで楽しめるアンプなら、正直見た目はどうでも良いです。というか、音が気に入ると、外観がチープなところも含めて、かわいいやつに思えてくるから不思議なものだ。

クリーンから、クランチまで、真空管で音を出す楽しさを自宅でお手軽に楽しめる。音もさることながら、使い勝手が良い。自宅で気持ちよく音を出すのに適した面白愉快なチューブアンプです。

EUがITQを選んだ理由

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今月から、ペルーのアンチョビーにITQが導入された。ペルーも要チェックですよ。

さて、欧州も共通漁業政策を見直して、ITQの導入を明記。ITQに向けて大きく舵を切った。このことは、業界紙、一般紙で取り上げられたので、目にした読者も多いだろう。

EU内部でどういう議論があったかを紹介しよう。

EUは共通漁業施策の見直しについて、議論を重ねてきた。
An analysis of existing Rights Based Management (RBM) instruments in Member States and on setting up best practices in the EU
http://ec.europa.eu/fisheries/documentation/studies/rbm/index_en.htm

彼らが重視したのはケーススタディーだ。EU圏内ではITQを含む様々な資源管理が行われている。どの管理方法が機能しているかを比較したレポートがつい先日でた。
http://ec.europa.eu/fisheries/publications/studies/rbm_2009_part1.pdf
http://ec.europa.eu/fisheries/publications/studies/rbm_2009_part2.pdf

このレポートで、一番重要なのは、それぞれの権利のQualityの評価だろう。権利の質(Q-Value)は、資源管理が機能する上で必要な、以下の4つの要素で評価される。

• Exclusivity: this requires appropriate monitoring and enforcement systems.
• Security an effective legal system is required to ensure rights and the title to
those rights are secure.
• Validity: This refers to the effective period to which the rights holder can
expect to retain title to the rights. Longer validity helps to bolster the holder’s
trust in the capacity of the system to respond to his/her long-term concerns.
• Transferability: Transfer of rights from one holder to another requires
ownership registries plus the rules and means to make them function.

Q-Valueが高い管理システムほど、漁業者が自らの権利を利用して、資源を合理的に利用できる。ただ、実際にその権利を適切に行使するかどうかは、また別のファクターがからむので、Q-Valueが高ければ必ず資源管理が成功するというものではない。ただ、Q-Valueが低ければ、まず間違いなく管理は失敗するだろう。

管理制度別のQ-Valueを比較したのが、↓の図です。

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CQというのは、Community Catch Quotaで、漁協のようなコミュニティーに漁獲枠を与える方式。これは玉石混淆だ(日本の沿岸と同じ!)。LLというのはライセンス&努力量規制。これが機能しないことは明白。IEとITEは、個別努力量割当で、それぞれの船の努力量に上限を設ける方法。IEは譲渡無しで、ITEは譲渡あり。IQは譲渡がない個別漁獲枠、ITQは譲渡可能な個別漁獲枠。TURFはTerritorial Use Rights in Fisheries。地域が永続的な漁業権を持っているような場合である。EUでは伝統的にTURFを使ってきたが、現在は沿岸の根付き資源(ほとんどの場合、貝)のみに使われている。移動性の生物は多くの地域が共有することになり、TURFでは利害の調整がうまくいかないために、現在は他の管理スキームに移行しているのだ。TURFで移動性資源の管理が難しいことは、日本の漁業管理が破綻している現状をみればわかるだろう。

P4に必要な資源管理に関する考察がある。

  • 漁獲枠を取り切るのに十分な努力量が無い場合は、漁獲枠は共有(オリンピック方式)でも良い
  • 漁獲枠を巡る競争がある場合、漁獲枠を個別配分する必要がある
  • 努力量が過剰な場合、ITQによって漁船規模の適正化を図る必要がある

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実際問題として、人間の努力量が足りない有用資源はほとんど無いだろう。日本の場合は、適正な漁業者は今の15%という試算もある。EUも相当な過剰努力量の状態にある。TURFで管理できている沿岸の貝をのぞけば、ほとんどの漁業はITQの導入が望ましいと言うことになるだろう。

また、それぞれの管理システムが機能する条件もまとめられているが、納得いく結論だ。

  • TURFは根付き資源のみ機能する
  • Effort Quotaは、努力量と漁獲量が強い相関を持つ場合のみ機能する
  • ライセンス制は、ほとんど機能しない
  • コミュニティー・ライトは、コミュニティー次第

欧州、北米、南米と、世界の漁業はITQに着実に向かいつつある。世界の漁業国は、どうやってITQを導入するかをテーマに議論を重ねている。彼らがなぜITQを選ぶのかというと、ITQが理論的に優れているだけでなく、実際に機能しているからに他ならない。利用者が顔が見える範囲に限定されているならTURFも良いかもしれないが、そうでない大半の資源に対してはITQしか、まともな選択肢がないのが現実なのだ。

漁船造船の国内事情と海外のトレンド

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日本の漁船を造る造船所で、大手は、三保、カナサシ、新潟の3社。三社とも、更生会社であり、現在も経営は厳しいようだ。特に、カナサシは、先月3/31に新卒19人の内定を取り消して、大々的に報道された。結局、4/10に会社更生法の適用を申請し、受理されたようである。内定者には気の毒だが、3月末の資金繰り失敗による倒産では、他に選択肢は無かったのかもしれない。

みなと新聞では、4/15から、三保造船の会長と社長のインタビュー記事を連載している。本音トークが炸裂していてい、実に読み甲斐がある。ここまで、言うのは、並々ならぬ覚悟が必要だ。座して、死を待つよりはということだろう。特に重要と思われる部分を抜粋してみた。

漁船漁業は、造船業だけでなく、関連産業を扶養できないほど、落ち込んでいる。

日本では特殊な例をのぞいて、外国漁船の建造はできない。法的には規制されていない。しかし、民間からそういう申請が出てくると、経済産業省が農林水産省にお伺いを立てる。水産庁はそれが自国の漁業に何らかの影響を与えると判断すると、許可をしない。そして、通常は許可をしない。だから、現実問題として外国の漁船を造ることは出来ない。

何十年か前までは、日本の漁船は確かに先進的だったかもしれないが、今は、北欧などの漁船が先進的になってしまった。トロールと巻き網を兼業したり、特に船形も自由にできるので技術は発達している。日本はがんじがらめ。どこの造船所が作っても、たとえばマグロ延縄船は同じ格好になってしまう。

韓国の船主さんが日本で海巻船を建造できないかと、見に来てくれたことがある。だけど「国が許可しないよ」ということになってしまった。結局、台湾で建造した。

今のような状態の中では、恐らく10年後に漁船技術を持った造船所があるかと逝ったら、非常に心配だ。

国も国内漁業調整のみに終わらず、大局的な視点に立って国益を守る施策が欲しい。

日本は、規制で、産業をつぶしかけている。では、海外はどうだろう。欧州では、漁船建造ラッシュが続き、欧州の造船拠点のスペインでは、この先、何年分もの注文が埋まっているそうだ。待ちきれない船主は、台湾にも注文をしている。つい先日も、アイスランドの会社が台湾に注文していた最新船が完成したようだ。

http://www.sth.is/frett.asp?Nr=109

写真
http://www.sth.is/Frettamyndir/mynd109s.jpg
http://www.sth.is/Frettamyndir/mynd108s.jpg

アイスランドのSkinney社の漁船なんだけど、実に、モダンではないですか。マグロの巻網船の造船で有名な、台湾のChing Fu造船所が建造した。全長29メートル、幅9.2メートル。メインエンジンは、700馬力の三菱製。トロール(single, twin-rig)、駆け廻し(Danish-type fly-shooting)、刺し網の操業が出来る多目的漁船。最近の船らしく、作業台が一段高いところにある。海が荒れていても、安全に操業できるのだ。また、高性能の製氷機など、魚の質を維持するための設備は充実している。船倉はそれほど大きくないが、断熱処理されて、0度まで冷やすことが出来る。11人乗りらしいが、船の見取り図をみると、ずいぶんと住居スペースがあることがわかる。こういう最新鋭の漁船は日本では造れない。

世界の造船は国際的な分業体制が確立されつつある。この漁船にしても、電子機器は、SimradとFuruno。トロールブロックはデンマーク製、刺し網はノルウェー製、エンジンは三菱で、スクリューはノルウェー製。また、欧州では、漁船の設計と、造船は別の会社が行う場合が多い。設計はノルウェーの会社で、造船はスペインというようなことが普通に行われている。おそらく、この船も設計は欧州(ノルウェー)だろう。

水産庁は、自国の造船会社に海外の漁船を造らせないことで、いったい何を守ったのだろうか。ただ単に、日本の造船業を干上がらせて、かつては先進的だった日本の漁船技術をガラパゴス化しただけである。日本の漁船造船技術は、世界から取り残され、どんどん遅れているという事実を認めた上で、門戸を開かなければ、日本の漁船造船の灯が消えるのは時間の問題だろう。

戦いを振り返る

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TACとABCの乖離を批判し続けて、ずいぶんと経った。漁獲枠(TAC)が持続的な水準(ABC)を超えているというのは、資源管理の原理原則からして、あり得ない。日本では、TACをABCより下げましょうという、当たり前のことを主張するのも大変なのだ。その当たり前なことを公的に主張し続けた研究者は俺ぐらいだろう。結果として、いろんなところで矢面に立つことになった。また、小松さんは、その当たり前のことを主張した唯一の行政官だったのだが、結局は水産庁を出ることになった。

ABCを超過するTACを巡る戦いの歴史を少し振り返ってみた。

2004年
北海道ブロック外部委員になる
2005年
11月 シンポジウムで、TACとABCの乖離を非難し、巻き網漁業者から恫喝される
2006年
3月 マイワシの乱獲を停止するように、研究者提言を出そうとするも断念
6月 月刊海洋にマイワシの乱獲に関する批判記事を書く
8月 釧路キャッスルホテルの戦い(怒鳴り合いの末、勝利)
2007年
1月 朝日新聞でマイワシのTACの記事が出る (一般紙初の乱獲批判)
2月 高木委員会の緊急提言が公表される
4月 マサバ太平洋系群の大臣許可の漁獲がTACを6万トン超過
5月 高木委員に呼ばれて話をする
6月 毎日新聞「ノルウェーのニシン」「魚の乱獲防止に税金投入を」
6月 小サバの輸出を批判する
7月 みなと新聞に集中連載し、業界に一石投じる (業界紙初の乱獲批判
7月 クローズアップ現代で、マサバの乱獲を取り上げる (地上波初の乱獲批判
7月 水産学会誌「マイワシ資源の変動と利用」にて、問題提起(学術誌初の乱獲批判)
7月 高木委員の本提言がでる
8月 小サバ輸出を非難する新聞報道(共同通信)
10月 ノルウェーに行き、漁業改革の必要性を確信
12月 小松さんが水産庁を離脱
12月 規制改革会議2次答申
12月 業界紙にて、マサバの乱獲を厳しく非難
2008年
3月 水産庁の見直し検討会に先駆けて、みなと新聞紙上で、TAC制度の問題点を整理してあげる
3月 水産庁→漁業情報センター→トロール→北巻きの岩崎氏(自称 民間の学識経験者)が、かみついてきたので軽くあしらう
4月 TAC見直し検討会が始まる
4月 水産庁きっての資源管理通である佐藤力成氏が、TAC真理教を発表し、一部で話題になる
4月 北海道新聞がABCとTACの乖離を指摘する
6月 フジテレビ とくダネにて、日本の漁業政策の問題点を指摘
7月 三重大に異動
7月 豪州・NZに行く
7月 ABCが複数化される
8月 低水準のスケトウダラの現状維持シナリオをABCに入れるかどうかで揉めるが、回復計画のからみもあり譲歩
9月 偉い先生がABCは無視して良いと勘違いをしていたので、誤りを指摘する
10月 ABCの批判を繰り返す懇談会に業を煮やし、自粛気味だった批判を再開
11月 朝日新聞で個別漁獲枠制度の必要性を訴える
12月 東大にてシンポジウムが開かれる。水産庁OBが動員をかけて、ヤジを飛ばしてきたので、怒鳴り返す(本郷の戦い)
2009年
1月 現地の関係者と連絡をとり、水産庁のNZレポートの誤りを指摘してあげる
3月 マイワシのTACがABCと等しくなる
4月 マサバのTACがABCと等しくなる
20XX年
x月 日本でも個別漁獲枠制度が導入され、漁業が新しい産業に生まれ変わる

それにしても、ずいぶんと、大勢の人間と戦ってきたもんだ。実際は、これだけじゃないんだけどね。歴史を振り返ればわかるように、主戦場は、マイワシとマサバ。この二つの資源のTACがABCまで、下がったというのは誠にめでたいことでございます。ABCは無視して構わないと主張してきた人間は涙目だろう。多勢に無勢ではあったが、結局は、筋が通った方が勝ったわけだ。世の中、まだまだ捨てたもんじゃないね。今日まで、戦ってこれたのも、陰から応援してくれる皆様のおかげであります。いつも、いろいろな情報を提供していただきありがとうございます。あと、流れ弾が当たってしまった人は、ごめん。

ABCを超えるTACが社会問題に発展したことから、水産庁も、がんばってABCまでTACを下げたのだろう。組織防衛の観点から、妥当な判断だと思う。水面下でかなり調整をしたはずだが、その努力は長い目で見て、必ず報われる。

水産庁 グッジョブ

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どうやら、来年度のTACは、スケトウダラ以外はABCの範囲に収めたようです。
振り上げた手の落としどころがないです。木島室長、ナイス(笑

2年ぐらい前から、ABCとTACの乖離を無くすという話はあったが、どうせ、ABCをあげるんだろうと思っていた。ABCの複数化の話がでたときも、ABCを骨抜きにする伏線だろうと踏んでいた。今後、ABCが複数化でどう変わったかは、資源評価票の詳細版が出てから、じっくり検証したいのだが、印象としては「全体的に多少甘くなったかな」という程度。これでTAC=ABCに出来れば、上出来だ。まあ、スケトウダラが残っているわけですが、あそこは道漁連も強いし、外部委員も頑固だしで、もうちょっと時間がかかるかもしれない。とにかく、

マイワシとマサバは、初めてABCを守ったわけで、これは大変な進歩です!!

2009年は日本の水産行政の大きな転換点になるかもしれない。俺が三重に籠もっている間にも、地球は回っていたようだ。こういう話題こそ、大々的に発表すべきなので、次のみなと新聞の連載では、大いに褒めることにしよう。

あと、個別漁獲枠の方も、サプライズを待ってるから、よろしくね 😛

読者の皆さん、ありがとうございました

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多数の情報提供をいただき、ありがとうございました。情報はこちらで分析/整理したうえで、有効活用させていただきます。

「TACがABCを超えているけど、どうなの?」という参加者からの質問に対して、木島室長は以下のように答えたそうです。

現在におきましては、TACはABCのすべて枠の中、一部スケトウダラだけは非常に資源状況が、かなり振れているものですから、ABCを若干超える状況にございますが、他の6つの魚種に関しましてはABCの枠の中に入っている状況にございます。

ICレコーダーの記録もありますので、このような発言があったのは確実でしょう。

(↓については、後日、発表があり、来年度はABCの枠にいれるようです!!)

私の理解では、サバ類のTACは、ABCの枠内に入っていません。もともとABCを超えてたTACを設定しておきながら、期中改訂で増枠をして、小さいサバを捕りまくっています。小さいサバを捕ったところで、この円高では、中国に輸出すらできません。今年に入ってから、小さいサバすら捕れなくなったようで、ずいぶんと南の方までいって、状態の悪い小サバを漁獲しているそうです。これでは、いつまでたってもサバは回復ませんね。太平洋マサバ回復計画とかいって、税金を大量に投入しておきながら、実際は乱獲をアシストしているのです。

あと、スケトウダラ日本海北部系群は、一直線に減少しているので、こういうのを「振れている」とは言わない。一貫して、過剰な漁獲枠を設定し続けて、今に至っている。資源は減っても漁獲割合は、微動だにしないことからも、漁獲圧を抑制していないことは明白でしょう。現在の漁獲枠にしても、ABCが現状維持4000トンに対して、漁獲枠が16000トンなんだから、「ABCを若干超える状況」とは、到底、言えない。TAC制度に対して、責任ある立場の人間が、公的な場所でする発言としては、不適格ではないでしょうか。

「食料危機」をあおってはいけない、のここがおかしい

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「食糧危機」をあおってはいけない (Bunshun Paperbacks)

いろいろとアラはありますが、こういう本が出たこと自体は、実に喜ばしい。農政トライアングルの「自給率ないない詐欺」にたいして、「なんか変じゃない?」という視点を、消費者が持てるのは良いことだ。食糧危機については、生産者が都合良く危機感をあおりすぎだと思う。ただ、水産分野の内容は、ちょっと、あんまりなので、専門家として、ツッコミは入れておこう。

買い負けの相手は中国ではない

そもそも、買い負けについて、中国を軸にして話をしている時点でわかってない。中国は世界最大の水産物輸出国である。日本のライバルは、水産物の輸入超過な米国と欧州だ。ノルウェーのサバも一部は中国に流れているけど、中国で加工されて、最終的には日本に来る。もちろん、中国への買い負けが全くないわけではないけれど、日本で養殖の餌にしていたサバが、中国に流れてるとか、そのレベル。

養殖では水産物の増産は無理

「水産物の増産は、養殖以外では困難です」と書いているのも、おかしい。養殖1kgをつくるのに、天然魚が5~10kg必要になるので、養殖を増やせば、それだけトータルで利用可能な水産物は減るんですけど・・・

世界の水産物消費は先進国を中心に増えている

世界の水産物消費は、途上国で一時的に増えるだけで、経済発展するとむしろ減る傾向にある、というのが筆者の基本的な主張。FAOStatを見ればそうではないことは明白だ。一人当たり消費量も先進国を中心にふえている。むしろ、低水準にとどまっているのは途上国である。

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筆者は先進国での水産物消費が増えてないと主張する根拠は、いったい何かというと、「個人的な伝聞」と「個人的な印象」だ。

現場の人に聞きますと「・・・」と言います。
・・・というのが私の印象です。
どこのレストランに行ってもそういう印象をうけます。
現地の研究者に話をきいても「・・・」だそうです。

こんな表現ばっかりです。客観性の皆無な、印象と伝聞を重ねて、欧米人は魚を食べていないと結論づけている。唯一数字が出てくるのは、英国の水産物の低下を述べた部分である。「イギリスでも1960年代以降、水産物消費は減ってゆく傾向にあって、1961年の一人当たりの水産物消費量が年間20.1キロあったのに対し、2001年には15.6キロまで落ちています」と書いているが、この数値はデタラメだ。1961年がスタートということはFAOの統計だろう。1961年の値は、FAOの統計とあっているが、その後が違う。

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確かに英国の水産物消費量は1961年から下り坂であった。しかし、その後、上昇に転じるのである。英国の水産物消費は、肩下がりとはいわない。どう見てもV字である。で、V字の底が、15.6キロなんだよね。最初の値や、底の値などが、中途半端に正しいのが、不思議な感じだ。

1960年代から1980年代までの下降は、魚から肉へのシフトであった。その当時の魚のイメージは悪かったのだろう。しかし、80年代以降、健康志向を背景に、魚のイメージは、肉よりも良くなった。サブプライム直前まで欧州の景気は良かったので、肉がないから、仕方が無く魚を食べるような状況ではなかった。筆者は「欧米ではもとも魚は肉の代用品で、ハイクラスの人が食べる食材ではないのです。」というが、おそらく、現在の欧州では、所得が高い層ほど、魚を食べているだろう。

英国内のデータを集めてみたら、予想以上に家庭に入り込んでいることがわかった。
http://www.seafish.org/upload/file/market_insight/Seafood_consumption.pdf
2007年のドキュメントみたいだけど、家庭での魚の消費は、2000年から2007年に16%増えたようだ。

英国人が水産物を食べる頻度
食べない      10%
週に1回より少ない 13%
魚を週に1回食べる 36%
週に2回食べる   26%
2回より多く食べる 13%

結論

筆者は次のように結論づけるが、同意できない。

しかし世界の水産物消費の傾向をデータとしてみていると、「世界人口の増加と発展途上国の経済成長によって、世界の魚は争奪戦になり、日本人の口に入らなくなる」ということはないのです。

まず、「データを本当に見たのか?」とツッコミをいれたい。また、最近の一連の記事で示したように、途上国の魚を、先進国間が争奪戦をしているというのが基本的な構図であり、筆者は、根っこの部分で勘違いしているようである。「知らないなら、書かなければよいのに」、というのが、俺の率直な感想でした。

これから魚の輸入量は減るという俺の主張と、魚は余っているというこの筆者の主張のどちらが正しいかは、FAOStatでもつかって、読者の皆さんで検証してみてください。

世界の水産物消費の動向 その3

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世界の水産物の個人消費のトレンド

世界の水産物消費量(年間、一人当たり、Kg)は次のようになる。南米と、アフリカが横ばい、それ以外が増加傾向を示している。最近は、欧州が伸びていることがわかる。

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で、この図に日本をいれてみると、こうなるわけだ。実に非常識な水準ではないだろうか。

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1960年以前の日本の統計は、純食料(可食部のみ)のデータしか手元にない。FAOの統計は供給量ベース(可食部+非食部)なので、そのままでは比較できない。仕方がないので、1961年の純食料:供給量の比である1.61をつかって、1961年以前を引き延ばした。

2005年の世界の水産物消費

最新の統計をつかって、主要な地域の水産物消費量を比較してみよう。日本(2005)は食料需給表から、日本の昔の値は食料需要に関する基礎統計から、それ以外はSOFIA2008より引用。

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経済力と消費量が高い相関関係にあることがわかる。先進工業国が29.3kgの消費に対して、LIFDCs(低所得食料不足国, Low-Income Food-Deficit Countries)は、8.3kgとなっている。LIFDCsのリストはここを参照。先進国の中でも、日本の消費量が群を抜いているのだが、このような大量消費は、高度経済成長期以降である。明治時代の日本の消費量は、今日のLIFDCsよりも少ない6.0kgであった。その前は、もっと低いだろう。日本人はそれほど魚を食べていなかったのである。日本人に魚食文化が存在したのは事実だが、一般的庶民は毎日魚を食べていたわけではなかったのだ。

読者のみなさん、教えてください

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先週、ノルウェーの漁業大臣が来日したので、記念セミナー&パーティーがありました。俺も招待されていたんだけど、授業でいけなかったでごわす 😥 。でもって、そのセミナーで、水産庁の資源管理推進室長が、「スケトウダラ以外は、TACはABCの枠内に入っている」と発言したそうです。メディア関係者から、私のところに事実確認がきました。まだ施行されていない、来年度のTACの話なのかな。セミナー出席者で、この発言を聞いた人がいらっしゃいましたら、メールでも、コメント欄でもよいので、情報提供をお願いします。

あと、「5年を超えた回復計画は基本的に目標は達成されている」とか、「資源状況は30年程度でそれほど悪くなっていないものが多数で、多くの資源は安定的に推移している」とか、盛りだくさんだったみたいですね。5年を超えた回復計画というと、サワラ瀬戸内海とか、マサバ太平洋が該当するのだが、回復しているとは、とても思えない。今度、一度じっくり、見てみますか。

ちなみに、現在のTACはこんな感じです。

マイワシ

TAC 52千トン
ABC 32ー38千トン

合計 太平洋 対馬
ABCLimit 38 38
ABCTaret 32 32

対馬暖流は、資源が低すぎて、計算不能

サバ類

TAC 765千トン(当初616千トンで、1ヶ月後に増枠)
ABC 352-416千トン

マサバ ゴマサバ
合計 太平洋 対馬 太平洋 対馬
ABCLimit 416 123 89 112 92
ABCTaret 352 105 74 97 76

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