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反対派

水産分野の事業仕分けについて、専門家の視点から分析してみる

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事業仕分けが盛り上がっているね。国民の見える場所で議論をするのは大事だと思うよ。水産分野もびしびし削られている。実に、めでたい話でございます 😛

たとえば、漁船構造改革が全額返納になった。俺は全面的に支持する。現在、日本の漁船は明らかに過剰な状態。魚もいないのに漁船ばかりある。結果として漁業が儲からずに、船の固定費すら払えないので、漁船の老朽化が進んでいる。こういう状態で税金で大型船を増やすのは愚の骨頂である。こんな馬鹿な国は日本ぐらいだよ。ノルウェーを筆頭に、まともな漁業国は、適正規模まで漁船を減らすために税金を使っている。

たとえば、波崎地区の取り組みを見てみよう。事業計画はここにある。

http://www.suisankai.or.jp/gyogyou/hasaki-keikaku.pdf

中身を見ていこう。

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巻き網の乱獲によって、日本近海からはイワシもサバも消えてしまったわけだ。100船団あった物が現在27船団まで減ったのだが、まだ船が多すぎる。資源が少し回復するとよってたかって、たたいては回復の芽を摘んできた。すでに経営が成り立っていない漁業に対して、「資源回復計画」と称して、乱獲資金を提供しているのが実情だ。マサバ太平洋系群は資源回復計画の予算の7割だかを入れているんだけどいっこうに回復しない。

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↑これのどこが回復基調なんだよ 👿
水産庁は、マサバ回復計画を成功例として祭り上げているのだが、他の回復計画はもっとひどいのだ。資源回復計画も数えるのも面倒くさいぐらい数を増やしているのに、まともに回復した事例はゼロ。何もしなくても、偶然回復する資源が1個ぐらいありそうなものだが、「下手な鉄砲数打っても当たらない」状態だ。

マサバは、92年、96年と卵の生き残りが良かったけど、乱獲で回復の芽を摘んだ。最近は、04年、07年と、卵の生き残りが良かったが、同じように資源をつぶしつつある。今年度は、毎月前年割れで、前年の6割しか獲れていない。まだまだ、漁獲圧が過剰なのだ。で、業界は二言目には「経営も考慮して、漁獲枠を増やせ」と主張してきた。現状では、船が多すぎるから、乱獲をしないと経営が成り立たない(まあ、どっちみち成り立ってないけど)。船が多すぎるのは自明だろう。で、なんで、税金で船を増やさないといけないの???

まず、この計画は現在4隻で操業している巻き網船団を3隻に減らすということ。ここでのポイントは探索船を減らして、網船を大型化するということだ。一般人のために、巻き網漁業について説明しよう(くわしくはここでもみてください)。日本の巻き網は4~5隻で船団を組む場合が多い。魚群を探す探索船、網で魚を巻く網船、魚を積んで港に水揚げをする運搬船の3種からなる。現在はソナーなどの探魚技術が進歩して、すべての船が探索船の機能を持っているので、純粋な探索船はぶっちゃけ無くても良い。漁獲能力は運搬船の容量に比例するのだが、この計画では運搬船は同じトン数なので、漁獲を減らす気はさらさら無いことがわかる。この企画書に書かれているように、資源は回復基調で、水揚げ量を減らすなら、普通に考えて網船を2.5倍に大型化する必要は無いはずだ。戦闘能力の高い最新の大型網船を税金でゲットして、残り少ないサバとイワシを独り占めする腹づもりなのだろう。

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「儲かる漁業創設支援事業」と言うより、「自分だけ儲かればよいと思っている漁業者支援事業」ではないか。省エネとか、適当に見栄えのするお題目を唱えておけば、何でも通ってきたのである。

収益の見通しもおかしい。

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水揚げ量と水揚げ高から、水揚げの単価が計算できる。現状でKg単価が54.6円だから、養殖のえさにしかならないような小魚ばかりを獲っている船だと言うことがわかる。人間が食べるサイズになる前に乱獲をしているような船は、食料安定供給の面からはマイナスでしかない。計画後の単価は、54.8円。高付加価値とかいいながら、現在の操業を変えるつもりはないのだ。日本人が食べるサイズの魚を捕れば、どうやったって100円にはなるはず。高付加価値とか言うなら、150円ぐらい書けばよいのに。

普通に考えて、あり得ない計画なのですが、運営者は元水産庁次官ですね。

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漁業にとって害のある予算が止まって本当によかった。漁船構造改革も、中にはまともな計画もあった。たとえば、石巻の計画は同じ巻き網ながら、トン数を大幅に減らし、漁獲をへらしながら、収益を確保するようになっている。こっちは残しても良いと思う。玉石混淆で石が多すぎるから、まとめて削った上で、時間をかけて玉の敗者復活をはかってほしい。あと、資源回復計画も、名前だけで、内容は乱獲資金をばらまいているだけだから、早く削ってください。水産庁の予算なんて、省エネや食料安定供給を口実にしたお土産や無駄な土木事業がほとんどだから、まとめて削ったうえで、本当に必要な予算を後からつければ良いと思います。

乱暴でも良い、たくましく削ってほしい

漁業者が減っても、消費者は困らない

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漁業関係者の多くは、「水産物の安定供給のために、赤字の漁業者を救済せよ」と主張している。

科学的にはじき出された許容量を上回る漁獲を、国が認める不可思議。当然、「乱獲を公認している」との批判があるが、水産庁は「TACをABCに沿って激減させると、漁業者は操業できず、倒産する。すると、水産物の安定供給が困難になる」という。
http://www.hokkaido-np.co.jp/cont/suisan-oukoku/14119.html

これ、全くの嘘。むしろ赤字の漁業者を維持することは、水産物の安定供給にとって、マイナスでしかない。

まず、日本の漁業者は余っている。足りないのは魚だ。横浜国立大学の馬奈木准教授の試算によると、現状の漁獲量を維持するのに必要な漁業の規模は今の15%。要するに85%も過剰な漁船を保持しているのである。

漁業者多すぎ、魚がいない。というのは世界的に共通している。1989年にFAOは世界の漁獲能力は、現状の漁獲を維持するために必要な130%の水準であると推定した。また、Garcia and Newton (1997)は、世界の漁船規模を現状の53%に削減すべきであると試算をしている。世界中で、漁船も、漁業者も余りまくりなのだ。不足しているのは、魚や漁獲枠である。「日本近海に魚があふれるほどいるけれど、漁業者がいない」という事態は、まずあり得ない。もし、そのあり得ない事態になれば、暇をもてあましている漁船を海外からチャーターして、水揚げをさせれば良いのである。

たとえば、NZでは、ロシアや韓国漁船をチャーターして、自国で操業・水揚げをさせている。海外のチャーターは、日本漁船よりも圧倒的に安価である。韓国船は非常にマナーが悪いらしい。NZの操業違反の8割は韓国漁船だとか。一方、ロシア船は、操業規則も守り、魚の質も良いとのこと。日本の漁業者が絶滅をしても、ロシア船をチャーターすれば、水産物の安定供給は可能だし、その方が、魚の値段は下がって、質は上がる可能性が高い。

漁業者減ると、全漁連や、水産庁は、とても困る。我々、水産学の研究者も、存亡の危機だ。しかし、漁業者が減っても、消費者への悪影響はほとんど無い。それどころか、メリットが多いだろう。自国の漁船を維持するより、外国漁船を単年契約で利用する方が、資源が減少したときに、禁漁等の思い切った措置がとりやすくなる。結果として、資源の持続性が保たれ、水産物の安定供給に寄与する。繰り返すが、水産物安定供給の生命線は、漁獲努力量ではなく、資源なのだ。
安定供給を口実に、現状の過剰な漁業者による、過剰な漁獲を正当化するロジックがいかにデタラメかは自明である。水産庁だけでなく、組合も、漁業者も、御用学者も、みんな言っている。安定供給を口実に、業並みの手厚い保護を勝ち取ろうとしているが、実に浅はかである。漁業者が多すぎるから魚が減るという当たり前の事実に、納税者は遅かれ早かれ、気づくだろう。補助金依存度を高めたら最後、補助金なしには存続できない産業になってしまう。そして、補助金はいつまでも出せる国家財政ではない。補助金おねだり作戦のもたらす結果は、漁業の延命ではなく、確実な破滅なのだ。

日本漁業の生き残る路は、①生産性を高めて経済的に自立すること、②日本の漁業者に任せた方が、資源の持続的利用に寄与すると示すこと、の2点であろう。実際には、全く逆の方向に進んでいる。自給率ナイナイ詐欺で、非生産的な現状を肯定する。そして、「零細な漁民がいるから、資源管理はできません」などと開き直るのである。今のままでは、消費者から見捨てられるのは時間の問題だろう。俺としても、沿岸漁業が少しでも多く残ればよいと思っているが、このままではどこまでも淘汰が進むだろう。組合も、行政も、研究者も、漁業が自立した持続的な産業として発展していくのを助けるために全力を尽くすべきである。そのことが、長い目で見れば、漁業に寄生する我々が存続する唯一の道なのだ。

政治力によって、漁業が弱体化するプロセス

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政治力によって、日本の漁業が弱体化されていくプロセスをみてみよう。

全漁連は、非生産的な漁業の代弁者である。「漁業が儲からなくても良い理由」だとか、「儲からない漁業を助けなければならない理由」を並べて、補助金を勝ち取ることには熱心だ。その一方で、漁業自体の利益を増やすことには、関心がなさそうだ。うがった見方をすれば、漁師が魚を売った上前をはねても、大した額にはならない。漁業が儲かって自立をするより、儲からない漁業への補助金が増えた方が、組合は潤うのだろう。たとえば、漁業者は組合を通して、重油を買う。漁業者の重油には税金がかからないにもかかわらず、漁業者が組合から買う重油は、税金込みの市価よりも高いようであるhttp://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0805jo3.pdfの4ページを見ても、漁連の重油が割高であることがわかる。資源管理には消極的なの全漁連が、燃油補填にご執心だったのも、納得がいく話である。

ここに、漁協全体の収入の時系列がある。見事なまでに、本業は赤字垂れ流し。しかし、全体は黒字なのだ。
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もう漁業に見切りをつけて、別の金づるで食ってるようにしか見えない。金づるの分類は、「その他収入」の「その他」であり、その内容は、明かされていない。銀行の利子とか言ってる人もいるけど、本当だろうか。最近の利子って、そんなに高いものなのかね。「本当は、砂利採取や、工事の補償金じゃないの?」とか、想像がふくらんでしょうがないです。憶測でいろいろ言われるのが嫌なら、内容を公開してもらいたい。

日本漁業に必要なのは、燃油補填ではなく、休漁補償

現在、日本の漁獲量は激減している主要因は、資源の減少である。魚がいないのだ。特に、高級魚、大型魚が減少し、質的な劣化も激しい。逆に、漁業者は余っている。横浜国立大学の馬奈木さんの試算によれば、現在の15%が適正な水準とのこと。妥当な数字だろう。

過剰漁獲が蔓延している日本の沿岸漁業に必要な政策は、燃油補填ではなく、休漁補償である。公的資金で赤字操業を維持する必要は全くない。赤字操業というのは、使った燃油の方が、捕れた魚よりも価値が高いわけだ。つまり、海に燃油をばらまいて、環境を破壊しているのと同じである。赤字操業を止めて、浮いた燃油の代金で魚を輸入すれば、資源は回復するし、消費者もより良い魚を安価に入手できた。2年ぐらい休漁すれば、平均的な魚体は大幅に増加するし、産卵親魚の底上げも期待できる。この場合のマイナスは、漁業者の収入が短期的に激減するぐらいなので、公的資金による直接補償もアリだろう。長期的に日本の漁業を元気にする方向に、政治力を発揮する組合なら、俺も応援したい。

実際には全く逆のことをやったのだ。全漁連は、漁業者を動員して、公的資金による燃油補填を勝ち取った。これは、税金をつかって、資源の枯渇を進めることに他ならない。たとえば、資源回復計画と称して、多額の公的資金が遣われている。http://www.jfa.maff.go.jp/sigen/kaifukukeikaku.html 資源回復のために休漁補償金が支払われている漁業まで燃油補填をするのはおかしな話である。車で言えば、ブレーキとアクセルを同時に踏んでいる状態だ。せめて、こういう漁業だけでも、燃油補填ではなく、休漁補償を増やすのが、納税者に対する最低限の配慮だと思う。
全漁連が政治力で実現した燃油補填は、公的資金による乱獲維持でしかない。全漁連的には、公的補償によって重油の消費量が維持できれば、ホクホクだろうが、納税者にも、漁業という産業にも、長期的に見て不利益しかない。こういうことを繰り返していれば、どんな産業だって弱体化するだろう。

戦いを振り返る

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TACとABCの乖離を批判し続けて、ずいぶんと経った。漁獲枠(TAC)が持続的な水準(ABC)を超えているというのは、資源管理の原理原則からして、あり得ない。日本では、TACをABCより下げましょうという、当たり前のことを主張するのも大変なのだ。その当たり前なことを公的に主張し続けた研究者は俺ぐらいだろう。結果として、いろんなところで矢面に立つことになった。また、小松さんは、その当たり前のことを主張した唯一の行政官だったのだが、結局は水産庁を出ることになった。

ABCを超過するTACを巡る戦いの歴史を少し振り返ってみた。

2004年
北海道ブロック外部委員になる
2005年
11月 シンポジウムで、TACとABCの乖離を非難し、巻き網漁業者から恫喝される
2006年
3月 マイワシの乱獲を停止するように、研究者提言を出そうとするも断念
6月 月刊海洋にマイワシの乱獲に関する批判記事を書く
8月 釧路キャッスルホテルの戦い(怒鳴り合いの末、勝利)
2007年
1月 朝日新聞でマイワシのTACの記事が出る (一般紙初の乱獲批判)
2月 高木委員会の緊急提言が公表される
4月 マサバ太平洋系群の大臣許可の漁獲がTACを6万トン超過
5月 高木委員に呼ばれて話をする
6月 毎日新聞「ノルウェーのニシン」「魚の乱獲防止に税金投入を」
6月 小サバの輸出を批判する
7月 みなと新聞に集中連載し、業界に一石投じる (業界紙初の乱獲批判
7月 クローズアップ現代で、マサバの乱獲を取り上げる (地上波初の乱獲批判
7月 水産学会誌「マイワシ資源の変動と利用」にて、問題提起(学術誌初の乱獲批判)
7月 高木委員の本提言がでる
8月 小サバ輸出を非難する新聞報道(共同通信)
10月 ノルウェーに行き、漁業改革の必要性を確信
12月 小松さんが水産庁を離脱
12月 規制改革会議2次答申
12月 業界紙にて、マサバの乱獲を厳しく非難
2008年
3月 水産庁の見直し検討会に先駆けて、みなと新聞紙上で、TAC制度の問題点を整理してあげる
3月 水産庁→漁業情報センター→トロール→北巻きの岩崎氏(自称 民間の学識経験者)が、かみついてきたので軽くあしらう
4月 TAC見直し検討会が始まる
4月 水産庁きっての資源管理通である佐藤力成氏が、TAC真理教を発表し、一部で話題になる
4月 北海道新聞がABCとTACの乖離を指摘する
6月 フジテレビ とくダネにて、日本の漁業政策の問題点を指摘
7月 三重大に異動
7月 豪州・NZに行く
7月 ABCが複数化される
8月 低水準のスケトウダラの現状維持シナリオをABCに入れるかどうかで揉めるが、回復計画のからみもあり譲歩
9月 偉い先生がABCは無視して良いと勘違いをしていたので、誤りを指摘する
10月 ABCの批判を繰り返す懇談会に業を煮やし、自粛気味だった批判を再開
11月 朝日新聞で個別漁獲枠制度の必要性を訴える
12月 東大にてシンポジウムが開かれる。水産庁OBが動員をかけて、ヤジを飛ばしてきたので、怒鳴り返す(本郷の戦い)
2009年
1月 現地の関係者と連絡をとり、水産庁のNZレポートの誤りを指摘してあげる
3月 マイワシのTACがABCと等しくなる
4月 マサバのTACがABCと等しくなる
20XX年
x月 日本でも個別漁獲枠制度が導入され、漁業が新しい産業に生まれ変わる

それにしても、ずいぶんと、大勢の人間と戦ってきたもんだ。実際は、これだけじゃないんだけどね。歴史を振り返ればわかるように、主戦場は、マイワシとマサバ。この二つの資源のTACがABCまで、下がったというのは誠にめでたいことでございます。ABCは無視して構わないと主張してきた人間は涙目だろう。多勢に無勢ではあったが、結局は、筋が通った方が勝ったわけだ。世の中、まだまだ捨てたもんじゃないね。今日まで、戦ってこれたのも、陰から応援してくれる皆様のおかげであります。いつも、いろいろな情報を提供していただきありがとうございます。あと、流れ弾が当たってしまった人は、ごめん。

ABCを超えるTACが社会問題に発展したことから、水産庁も、がんばってABCまでTACを下げたのだろう。組織防衛の観点から、妥当な判断だと思う。水面下でかなり調整をしたはずだが、その努力は長い目で見て、必ず報われる。

読者の皆さん、ありがとうございました

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多数の情報提供をいただき、ありがとうございました。情報はこちらで分析/整理したうえで、有効活用させていただきます。

「TACがABCを超えているけど、どうなの?」という参加者からの質問に対して、木島室長は以下のように答えたそうです。

現在におきましては、TACはABCのすべて枠の中、一部スケトウダラだけは非常に資源状況が、かなり振れているものですから、ABCを若干超える状況にございますが、他の6つの魚種に関しましてはABCの枠の中に入っている状況にございます。

ICレコーダーの記録もありますので、このような発言があったのは確実でしょう。

(↓については、後日、発表があり、来年度はABCの枠にいれるようです!!)

私の理解では、サバ類のTACは、ABCの枠内に入っていません。もともとABCを超えてたTACを設定しておきながら、期中改訂で増枠をして、小さいサバを捕りまくっています。小さいサバを捕ったところで、この円高では、中国に輸出すらできません。今年に入ってから、小さいサバすら捕れなくなったようで、ずいぶんと南の方までいって、状態の悪い小サバを漁獲しているそうです。これでは、いつまでたってもサバは回復ませんね。太平洋マサバ回復計画とかいって、税金を大量に投入しておきながら、実際は乱獲をアシストしているのです。

あと、スケトウダラ日本海北部系群は、一直線に減少しているので、こういうのを「振れている」とは言わない。一貫して、過剰な漁獲枠を設定し続けて、今に至っている。資源は減っても漁獲割合は、微動だにしないことからも、漁獲圧を抑制していないことは明白でしょう。現在の漁獲枠にしても、ABCが現状維持4000トンに対して、漁獲枠が16000トンなんだから、「ABCを若干超える状況」とは、到底、言えない。TAC制度に対して、責任ある立場の人間が、公的な場所でする発言としては、不適格ではないでしょうか。

水産庁のNZレポートを徹底検証する その10

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NZの資源管理システムとて、完璧ではない。今回はMSY水準を下回った25%の資源の内容をみてみよう。

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水産庁のNZレポートを徹底検証する その9

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NZでは、資源が悪化しているものが多い

水産庁は、NZでは資源が悪化しているものが多いと指摘しているが、これは事実に反している。NZの資源評価の結果は下の表のようになる。NZでは、資源がMSY水準よりも上かどうかで、資源状態を判断している。いくつかのカテゴリーがあるのだが、MSY以上とMSY未満で、ざっくり分けてみよう。

状態 Condition 数(176)
不明 Unknown 98
OK Yes1 21
ほとんど利用されず Yes2 7
たぶんOK Probably 16
OKだとおもう Possibly 14
たぶんNO Probablynot 4
NO No 16

資源評価が行われている資源に関しては、MSY水準以上が58系群に対して、MSY水準未満が20系群という結果であった。資源評価している系群の 75%はMSY水準以上が維持できている。75%という数字は、世界的に見ても立派なものだ。「資源評価が行われている主要魚種についても資源が悪化しているものが多い」という水産庁レポートは事実誤認である。

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水産庁のNZレポートを徹底検証する その8

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レポートの右半分にもツッコミをいれてみよう。

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NZでは、ほとんどの魚種で資源評価が行われていない?

ほとんどの魚種で資源評価が行われていないということだが、資源評価の結果は、ここにある。そのままだと全体像がわかりづらいので表にまとめてみた。94魚種、176系群の記載があるが、そのうち、資源状態が不明な者は98資源。約半数が不明であった。約半数は資源評価をしているのに、「ほとんど資源評価がおこなわれていない」というのは、不適切だろう。

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水産庁のNZレポートを徹底検証する その7

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http://www.jfa.maff.go.jp/suisin/yuusiki/dai5kai/siryo_18.pdfのP8

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なんか、まともに読めないんですけど・・・

○TACの推定値は毎年変わるがTACを変更しようとすると苦情や訴訟が提起されるため、基本的にTACが変更されることは少ない

これはITQ導入当初(86-89年)の話だね。ここにも書いたように、NZは最初は絶対量で漁獲枠を配分していた。TACを減らすときは、漁獲枠を漁業者から買い取るつもりだったんだけど、漁業が儲かることがわかった漁業者は政府に漁獲枠を売らなくなってしまった。困ったNZ政府は強引に漁獲枠を下げようとして訴訟になって負けたのだ。1990年にNZ政府は法改正を行い、漁獲枠をTACCに対する比率で設定することにした。90年以降は、政府の裁量で自由にTACCを変化させるようになった。で、実際に必要な場合には漁獲枠をちゃんと削減している。今年もHOKIやOrange RoughlhyのTACCが削減したが、NZ政府関係者に確認したところ、訴訟は起きていないという話だ。

訴訟によって、漁獲枠が変えられなかったのは過去の話であり、この問題はすでに解決済みなのだ。

○ITQは、経済政策としては成功したが、資源管理としては機能していない。

NZは混獲種も含めてITQを導入しているので、資源評価ができていない(していない)種も多い。情報が少ない非漁業対象種にも予防原則から、漁獲枠を設定しているのである。漁業対象種以外に漁獲枠がないほとんどの国に比べれば、非常に進歩的だ。資源評価ができている種については、85%がMSY水準以上という評価が得られている。ほとんどの資源は持続的に有効利用できる水準に維持されているのである。NZは、もっとも厳格な資源管理としている国の一つです。一方、日本は何もしていないに等しいレベル。NZの資源管理も100%ではないが、少なくとも日本とは比較にならないぐらいちゃんとしている。

NZは環境保護団体が強いから、世界最高水準の保護をしていても、国内では漁業省は厳しい非難にさらされている。こういう外圧があるから、高いスタンダードを維持できるという側面もあるだろう。日本のNGOも頑張ってほしいものだ。

○漁獲量が割当量を超過した場合に賦課される罰金は、浜値等よりも低くなることがあり、結果として過剰漁獲を誘発。

これも解決済みの問題。漁獲量が割当量を超過した場合にはDeemed Valueという罰金を払うことになる。いくつかの魚種でDeemed Valueが浜値よりも安く設定されており、モラルの低い漁業者が漁獲枠を無視して水揚げをして利益を上げた。ただ、これはDeemde Valueが導入された初年度のみであり、翌年にはこの穴はふさがれた。NZ政府は、Deemed Valueの設定には細心の注意を払っており、現在もDeemed Valueが乱獲を誘発するようなレベルに設定されている魚種はない。

解決済みの問題をあたかも現在進行中のように見せかけている。情報が古いのか、故意の印象操作なのかは不明だが、もうちょっとまともな資料を使ってほしいと思う。また、このレベルの資料にはツッコミを入れられるような有識者でなければ、集めて議論をさせる意味がないだろう。

我々、日本人は、NZの漁業関係者が、これらの問題を解決していったプロセスに着目し、そこから自己改革の重要性を学ぶべきだろう。

水産庁のNZレポートを徹底検証する その5

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漁船の減少

ITQの導入以降、NZの漁船数は4割減少した。
減少の大半は10m未満の小型船である。
一方、40m以上の中型船・大型船の数は倍増していいるので、漁業者の減少は1割であった。
漁船の総トン数は、むしろ増えているかもしれない。

日本の漁船数は3割減少である。
特に大型の漁船ほど、減少率が大きいことがわかる。

NZ
 

<10m
10~40m
40-70m
70m>
total
1988 2137 1060 123 88 3408
2001 940 880 190 166 2176
日本
 

<5t
5-200t
200-500t
500t>
total
1988 131948 28822 1378 57 162205
2001 94976 25037 807 12 120832

NZの漁船数の減少は、漁業の衰退ではなく、大型化・効率化という産業構造の変化である。
ITQ導入当時は、沿岸資源が乱獲により疲弊していたので、
小型漁船の減少はITQが理由とはいえないだろう。
何もしなければ小型船はもっと減っていたはずだ。

一方、日本の漁船は全てのサイズクラスで減少しているが、
特に、大型船ほど減少率が激しい。
日本の漁船の減少は、産業の衰退、弱体化の表れである。
また、日本の小型漁船の減少率が低いのは、
年金生活の60歳以上の人間が漁業にとどまっているからである。
企業だったらとっくに倒産しているような状態である。

漁民であるか否かにかかわらず、経済活動の一環として割当てに対する投資が行われており、割当ての集中が継続

割り当ての集中があるのは事実。また、外部からの投資もある。

トップ10企業による漁獲枠の保持率
 1987:   67%
 1999:   82%

そもそも、ニュージーランドは、政策的にこの方向を目指していたのだ。
ニュージーランドをはじめとする多くの漁業国は、大企業かを国策として進めている。
世界の水産市場で勝負するためには、効率的な経営戦略が要求されるからだ。
大企業化のスケールメリットと、漁獲枠取引の自由化による外部資金調達によって、
国際競争力を高めようという戦略なのだ。

NZの割り当ての集中や、外部からの投資は、制度設計によるものである。
日本はこれらを望まないのであれば、そうならないITQの制度設計をすればよい。
漁獲枠保有の上限を下げるだとか、地域(漁協)に譲渡不可能な枠を一定量を配分しするとか、
いくらでもやり方はあるはずだ。

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