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TAC制度の見直し会議1回目の感想

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みなと新聞4月28日 1面より引用

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ついにTAC見直し審議が始まりましたね。
プレスリリースはこちら→http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kanri/080417.html
委員についての詳細はこちら→http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kanri/pdf/080417-01.pdf

まず、須能委員の「水産業管理という視点が必要。漁業者だけでなく、加工・流通を含む国民的視点で議論を」という発言には全面的に賛成。また、川本委員の「金額により漁業が成り立つかが最大の眼目」というのは、資源が無ければ漁業は無くなるので、それだけではだめでしょう。重量ではなく金額(利益)ベースで考えるという視点は、大切なことですね。限られた自然の生産力の範囲で、最大の利益を得られるようなサプライチェーン(漁獲→加工→流通)を構築することが重要です。その上で、漁業者・加工業者・流通業者に利益が平等に配分できるような枠組みを模索すべきでしょう。

馬場座長代理は、いつもの「反対!!反対!!」ですね。

黒倉・大倉委員の「納得できるプロセスを設けるべき」というのは、「誰が」納得するのかが不明です。「国民が」なのか、「特定漁業者が」なのか、「水産庁が」なのかによって、大きく異なるはずです。藤島委員の「漁業者が納得しないと無理」というのは、「漁業者が反対するから資源管理は無理」という意味なのか、「資源管理をするために漁業者を納得させる必要がある」という意味なのか判断がつきません。魚がいなくなれば、漁業がなくなるわけですから、納得しようがしまいが、乱獲はだめでしょう。漁業者だけの問題ではないのですから。ただ、漁業者にも納得できるように説得をすることは重要だと思います。

大倉委員の「(TAC)対象となる要件が曖昧」という批判は当たらないでしょう。重要な広域資源を網羅するという意味では、現在のTAC対象魚種はかなり妥当な判断だと思います。ただ、問題がある資源も無いわけではない。TAC対象でも分布の中心が日本のEEZの外側にあり、資源評価ができないようなものは、国際的な枠組みで管理をすべきでしょう。また、ブリやイトヒキなどはTAC対象とすべきだろう。「いたずらに対象種を増やす」べきでないのはあたりまえだが、この部分はちゃんと議論をする必要がある。6回も会議があるんだから、1回ぐらいはTAC対象の見直しにつかっても良いだろう。

長屋委員の「ITQは構造政策に関係する」というのはまさにその通り。今の構造ではだめだから、ITQを導入して構造を変える必要があるのだ。川本委員の「ITQは寡占化を招く、非常に問題を含んでいる」というのは論外でしょう。「ITQを導入しなければ寡占化を防げると思っているなら、とんだ世間知らずだなぁ」と思ったら、全巻関係者でした。納得。
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日本の漁業者は激減し、20万人を割り込み、さらに減少中だ。60歳以上が約半数を占める一方で、24歳以下は3%にも満たない。つまり、ITQをやらなくても、漁業者は減り、寡占化は進むことは確実なのだ。

日本漁業は、どう転んでも、ある程度の寡占化は不可避なのだ。ただ、今まで通りの早いもの勝ちを続けるか、生物学的な漁獲枠を遵守するITQを導入するかで、その先の漁業の行く末は大きく異なる。

早い者勝ちの無管理状態では、より早く、より根こそぎ獲った漁業者が生き残る。乱獲力の高い漁業者が生き残り、資源の枯渇は加速していく。今のままでは、資源をどこまでも減らし、漁業者もどこまでも減るだろう。行き着く先は漁業という産業の崩壊である。

漁業者の減少を食い止めるには、ABCを遵守して資源の減少を食い止める必要がある。その上で、ITQを導入すれば、漁獲枠あたりの利益が多い漁業者が生き残る。漁獲枠あたりの利益の向上が、漁業者の維持につながる。一定の漁獲枠から得られる利益が倍になれば、倍の数の漁業者が生き残れる。生物学的な漁獲枠を遵守するITQこそ、漁業者の減少を最小限に抑える方策なのだ。

「非常に問題を含んでいる」のはITQではなく、資源管理を放棄してきた日本漁業の方である。ITQは日本漁業の構造的な問題の一部を解消するのに役立つだろう。

長屋委員が指摘するように、ITQの導入は漁業のあり方を大きく変えることになるので、いきなりITQを導入というのは、難しいだろう。まずはIQを導入し、漁獲枠の譲渡に関しては時間をかけて議論をしていくのが良いと思います。

Comments:4

業界紙速報 08-05-01 (木) 16:35

TAC有識者懇談会について、業界紙速報としては冴えない記事しかなくて報告する気も起きんかったんですが、生の声はとても参考になります。傍聴に行ければいいんですけどねえ。ところで、本日、さきほど貴重なものが目に留まりました。水産庁HP左柱にある「資源管理の部屋」を開けていただくと、『7.TAC制度等の検討に係る有識者懇談会』という項目がNewでアップされております。
第一回資料の(資料3)我が国における漁業管理・資源管理の概要、32頁は結構な資料です。
P.4に「資源評価(ABCの算定等)の考え方」というペーパーがあり、非常にわかりやすいです。(個人的には物足りない気がしますが。)
P.27「TACによる資源管理の現状(1)」にはTAC数量の設定方法が解説してあって、H9は資源状況に応じ漁獲実績ベースでTAC設定、H10~14前年のTAC数量をベースに資源動向や漁業経営の事情を勘案して設定、H15(から?)ABCベースに設定、となっています。経時的な推移がわかって、とてもタメになります。
続いて、表があって、TACのABCに対する比率がH14は0.8~12.2であったが、1.5以上の魚種はまいわし、さば類、まあじ、すけとうだら、ずわいがにとなっており、H20は比率0.4~1.2で1.5以上の魚種はすけとうだらとさば類となっています。(こういうのの経年推移の表が欲しいと言っているんですけどね、北まきにいた人が減ってる資源なんかない、と業界紙で公言しているもんだから。)

まだ、全部の頁を見たわけではありませんが、公開情報としてはりっぱなものです。

ユウラ 08-05-01 (木) 22:49

ついに国が見直しを検討しましたか~~。
長いTACの「お試し期間」でしたが、今回の見直しで「本格的実践期間」になるかは・・これからの動きに注目ですね。

僕が注目したのは「TACを決定するのには多大なエネルギーを費やす」という点と「漁業者の合意形成がなければなりたたない」という点でしょうか。
漁業者の漁獲量を基本として算定されているTAC割り当てなのですから、改定後はABCを基本に、減少傾向の魚種はTACを厳格にすれば、漁業者も納得するでしょう(笑)

過去の国際情勢の動きのなか、漁業者に迷惑をかけないように作られたTAC制度、をどのように納得させるのか。
その手段の一つとしてわかりやすいIQの説明で段階的に漁業者の理解を得ていくのが理想の形だと考えます。

そうなれば国に残されている問題は、漁業者の退職金をどうするか、でしょうか。
退職金が借金となる現在の状況を補助金で埋めるのかなぁ・・・。

本当に今後に注目したいです。

さて、ゼミ資料の合間の息抜きに長文失礼しました。

beachmollusc 08-05-05 (月) 18:36

漁業(従事)者の減少について、マクロ統計だけでは見えない部分が隠されているような気がします。

外国人の漁船乗組員、そして「研修制度」による外国人の漁業労働者として占める割合の増大はどこまで進んでいるのか不透明です。漁船乗り組み員不足に対する穴埋めは外国人で、というのが水産庁の政策?となっていますか。

勝川 08-05-12 (月) 16:41

業界紙速報さん
(資料3)我が国における漁業管理・資源管理の概要は、
よくまとまっていますね。
http://www.jfa.maff.go.jp/suisin/yuusiki/dai1kai/siryo_03.pdf
これを読むと、ちゃんと見直してもらえるような気がしてきます。
そういう流れだから、資源管理反対派は必死なのかもしれませんね。

この前、有識者の一人の東大の山川さんから話を聞きましたが、
この会議はなかなかおもしろそうですよ。
有識者懇談会は議事録が公開されるそうなので、
議事録がでたら、あれこれ、書いてみるつもりです。

ユウラさん
>ついに国が見直しを検討しましたか~~。
>長いTACの「お試し期間」でしたが、
>今回の見直しで「本格的実践期間」になるかは・・
>これからの動きに注目ですね。

資源管理の見直しは常に行うべきなんだけど、
こういう形でしっかりとやるのは良いことです。

>僕が注目したのは「TACを決定するのには多大なエネルギーを費やす」という点と
>「漁業者の合意形成がなければなりたたない」という点でしょうか。
>漁業者の漁獲量を基本として算定されているTAC割り当てなのですから、
>改定後はABCを基本に、減少傾向の魚種はTACを厳格にすれば、
>漁業者も納得するでしょう(笑)

多くの漁業者は、TACが減ることには、納得しないと思います。
それでも、生物の生産力に見合った水準までTACを減らすべきです。
私としては、たった20万人の漁業者だけではなく、
それ以外の国民にも納得できるような資源管理制度であることが
大切だと思うのであります。
漁業者の自主管理だったらまだしも、
国が税金を使ってやる以上、その他国民の合意も重要です。

beachmolluscさん
>外国人の漁船乗組員、そして「研修制度」による外国人の
>漁業労働者として占める割合の増大はどこまで進んでいるのか不透明です。
マグロ漁船などはかなり進んでいるはずですが、沿岸はどうなんでしょうね。
確かに情報が少ないですね。

>漁船乗り組み員不足に対する穴埋めは外国人で、
>というのが水産庁の政策?となっていますか。
それはないと思います。
日本人の漁業者の数を維持するというのが、
族議員&水産庁の至上命題です。
だからこそ、ITQに対して強い拒否反応を示すのでしょう。

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