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高木委員

勉強会のお知らせ

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日本水産学会勉強会
「水産業のこれからを考えるI,II」

主催:日本水産学会企画広報委員会
(企画担当:山川 卓(東大院農),清野聡子(東大院総合文化),
永田光博(道水孵化場),良永知義(東大院農))
昨年来,日本経済調査協議会の水産業改革高木委員会提言「魚食をまもる水産業の戦略的な抜本改革を急げ」や,内閣府規制改革会議の「規制改革推進のための第2次答申」「中間とりまとめ-年末答申に向けての問題提起-」などの公表が起点となり,水産業改革のための議論が業界関係者を中心に活発化しています。日本水産学会企画広報委員会では,このような動きに関する情報を学会員の間で広く共有して今後の活動の参考にするとともに,そこで展開されている議論の内容や論点を正確に把握することを目的として,以下の勉強会を企画しました。ふるってご参加くださいますよう,お願い申し上げます。

「水産業のこれからを考えるII-水産資源の管理と持続的利用-」
日時:  平成20年12月6日(土) 13:00~ (16:00頃に終了予定)
場所:  東京大学農学部 農2号館(農正門を入って左側の建物)2階,化1講義室
東京都文京区弥生1-1-1(地下鉄南北線 東大前駅 下車 徒歩1分,千代田線 根津駅 下車 徒歩8分)
講演者(敬称略):
・勝川俊雄(三重大学生物資源学部)
・岩崎寿男(漁業経済学会会員)
・牧野光琢((独)水産総合研究センター中央水産研究所)
各講演40分(質疑含む)+全体の討議 1時間程度
*  入場無料です。会場の都合上,参加ご希望の方はe-mailまたはFAXにてお名前,ご所属,参加希望人数を事前にご連絡下さい。日本水産学会会員以外の方にもご参加いただけます。ご希望多数の場合は先着120名までに限らせて頂きますのであらかじめご了承ください。
連絡先:日本水産学会事務局 e-mail:fishsci@d1.dion.ne.jp(@dの後は数字の1です)               FAX:03-3471-2054

http://www.miyagi.kopas.co.jp/JSFS/COM/jsfs6.html
この勉強会については、正直、首をかしげたくなる点が多い。

まず、人選がおかしい。
岩崎さんは、水産庁→漁業情報センター→トロール組合→巻き網組合と
天下りを歴任した80過ぎの老人。
「サバを漁獲枠で管理しているのは日本と韓国だけ」とか発言するレベルの人間で、
海外のまともな資源管理のことを何も知らない。
枝葉末節を取り上げて、「日本漁業にはなんの問題もない!!!!」と吠えるだけだろう。
知識がなく、相手を罵倒するしかできない人間を呼んだところで、まともな議論は不可能だ。

また、時間配分にも、問題がある。
漁業改革の説明には、最低限、次の5点が必要になる。
1)漁業の現状を全体的に把握
2)日本漁業の問題点を特定
3)日本と同じ問題を克服している海外の事例を紹介
4)問題回避のメカニズムの説明
5)日本漁業に新たな制度を導入する道を探る
これだけの内容を、質疑応答込み40分で話せるはずがない。
改革サイドには、極めて不十分な説明時間しか与えずに、
その後で、抵抗勢力の枝葉末節の揚げ足取りが延々と続くわけだ。

全漁連の考察を考察する(その1)

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俺としては、「全漁連は日本漁業を、こうやってプロデュースしていきます!」みたいな全漁連としての将来構想みたいなのを期待しているのだが、「髙木委員提言のここがだめ、そこがダメ」といった揚げ足取りしかしていない。建設的な対案を出せる組織ではないのだろうか。

ITQに対する警戒感が高いようだが、その心配が妥当かどうかを考察してみよう。

また高木委員会はIQを自由に売買する(典型的には入札方式の)譲渡可能個別割当ITQ制度を推奨しながら、それをほとんどIQ制度と同様のものとして説明しているが、IQ制度とITQ制度の間には非常に大きな距離があるのである。ITQ制度の下では、高値で割当量を買える資金力のある者が割当量を集中して保有し、それを購入できない者は廃業するか小作経営化せざるをえなくなる。IQ制度が資源管理の手法であるのに対して、ITQ制度は「効率的」経営体(実は資金調達力のある経営体)のみを残存させ、それ以外の経営体を排除していく経営体選別の手法にほかならず、両者は社会的経済的次元では全く異なる意味を持っているのである。

ニュージーランド、アイスランド、ノルウェーなど殆どの国で、ITQの漁獲枠は過去の実績に応じて配分されている。既得権を重視する日本でも、当然そうなるだろう。ITQの漁獲枠がオークションで取引されるのは、チリ、エストニアなどで、十分に利用されていない資源がある場合が多い。既得権として漁獲枠を保証することで、投資を促進しようという戦略である。日本では枯渇した資源に対して漁業者が多すぎるので、オークションで新たに配分するような漁獲枠は無い。ITQを導入したところで、漁業者が漁獲枠を手放さない限り、企業は漁獲枠を買うことは出来ないのである。ITQを導入すると漁業者の既得権は全て取り上げられて、資金力がある人間がオークションで漁獲枠を独占するというようなことは非現実的である。

ITQでは、資金調達力のある経営体のみが存続するというのは誤りだが、「IQとITQが社会的経済的次元では全く異なる意味を持っている」という指摘は正しい。日本漁業が抱えている社会経済的な問題を考慮すると、IQでは不十分で、ノルウェー型の漁獲枠の譲渡制度が不可欠である。日本には、借金を背負って、撤退も出来ない漁業者が大勢いる。彼らが借金の利子を減らすために、なりふり構わず資源を傷つけている。現状では漁業から撤退しても借金が残るだけである。もし、ITQが導入されれば、漁獲枠を手放すことで、撤退資金ぐらいにはなるだろう。不良債権化した過剰努力量を解消するために、漁獲枠の譲渡は必要なのである。もし、資源管理がIQ止まりであれば、過剰な努力量がそのまま温存され、みんなで貧乏→みんなで倒産ということになるだろう。現状の生物の生産力で養える規模まで漁業を縮小させなければならない。資金がショートして夜逃げをするより、漁獲枠を譲渡してスムーズに撤退した方が、漁業者にとっても良いと思うのだが、どうだろうか。

全漁連に対する考察

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■2008/ 3/13

《お知らせ》水産業改革高木委員会「提言」に対する考察についてのリンクを追加しました。
http://www.zengyoren.or.jp/oshirase/pdf/kousatsu.pdf

「ついに、全漁連からの反論が出た」と、思いきや、反論になってないです。さすがにこれを反論とは呼べなかったようで、「考察」などと名付けているが、あなた方は当事者なんだから、悠長に考察している場合じゃないでしょう。この文書の日付は2007年7月となっているんだが、PDFの作成は2008年3月12日。全漁連のサイトからリンクが張られたのは3月13日。8ヶ月間、何をやってたんだろうね。

さて、肝心の内容なんだが、髙木委員提言に関する考察というより、「マルクス経済学者による自由経済への怨嗟の声」みたいな感じ。髙木委員提言に対して、「自由競争」、「弱者切り捨て」といったレッテルを貼って批判をしているんだけど、「では、漁業はどうするの?」というビジョンがまるでない。こういう人たちが「困った困った」と口では言いながら、何のアクションも起こさずに漁業を衰退させ続けているのだ。

全漁連という組織の本質がよくわかるのはこの一文だ。

私達は、日本漁業の困難の原因は、漁業経営コストの上昇、輸入水産物の増加、低価格志向を含む消費者の需用の変容といった客観的事情にもとづいていること、したがってそれに対する対処策は、悪化した客観条件に対処しうるだけの明確で強力な漁業政策の確立でなければならないと考えている。

「漁業が衰退した原因は、すべて外部な要因で、俺たちは悪くない!」という、実にわかりやすい主張である。「明確で強力な漁業政策」の具体的な内容は何も書かれていない。全漁連の日頃の行動から察するに、「補助金をもっと増やせ」ということだろう。全漁連という組織の特色は、責任転嫁・他力本願である。

漁業を取り巻く環境が悪いという発想が全漁連の限界を物語っている。漁業を取り巻く情勢はドラスティックに変化をしてきたし、今後も変化をし続けるだろう。日本だけが変わったわけではなく、世界の漁業が刻一刻と変化しているのである。この情勢の変化に対して、漁業の側が対応していく必要がある。

ノルウェーの漁業をみれば、漁業の衰退を外部要因のせいにできないことがわかる。ノルウェーの人件費は日本の比ではなく高いが、ノルウェー漁業は輸出金額を順調に伸ばしている。輸送にコストをかけた上で、全漁連が魚の値段が安いと主張する日本市場にも食い込んでいる。日本の魚が安いのは、「サイズが小さい・大きなサイズが安定供給できない」という生産者側の責任も大きい。そういうことを全部棚に上げて、すべて周りが悪いと決めつけて、自らは何も変わろうとしないから日本の漁業関係者(役人・研究者も含む)はダメなのだ。

衰退する日本漁業と、利益を伸ばし続けるノルウェー漁業の最大の違いは、漁業を取り巻く情勢の変化に対する姿勢の違いである。IBMを再建した辣腕CEOのガートナーの言葉に「もっとも強い種が生き残るのではなく、変化にもっとも対応した種が生き残る」というのがある。”It is not the strongest of the species that survive, but the one most responsive to change. “
変化を新しいビジネスチャンスと捉えて、痛みを伴ったとしても変化をし続けたノルウェー漁業と、変化はすべて忌むべきもので、漁業は変わる必要がないとして、何もしなかった日本漁業。時間の経過とともに、両者の差が広がるのは、自明の理であろう。

漁業に限らず、すべての産業を取り巻く状況は、刻一刻と変化をする。日本の漁業が衰退したのは、漁業を取り巻く状況が変わったからではない。状況の変化を悪と決めつけて、対応する努力を怠ったことが、漁業衰退の原因である。要するに、対応を怠った漁業者自身の責任である。

圧力団体である全漁連はことある毎に補助金を要求して、漁業者を目先の困難から救ってきた。結果として、産業は変わる機会を失い、競争力を失っていった。非効率になった漁業を支えるために、ますます補助金が必要になり、補助金依存体質のためますます漁業が非効率になるという悪循環だ。そのなれの果てが、利益を出せずに、自然を破壊する漁業である。
右肩下がりで生産金額が減少している日本の漁業を維持するためには、右肩上がりの補助金が必要になるが、それは非現実的であろう。仮に右肩上がりの補助金が得られたとしても、漁業は遠からず消滅するだろう。漁業で利益を出せず補助金で生活している人間は、漁業者ではなく、失業者なのだ。

高木委員提言のどこが凄かったのか?

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漁業を取り巻く情勢の変化を肌で感じる今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?

その変化を引き起こしたのは高木委員提言なんだが、その影響はどこまで続くのか計り知れない。
水産関係者のほとんどは、髙木委員のポテンシャルを理解できず、影響力を過小評価していた。
楽にスルーできるはずが、あれよあれよという間に火の手が回り、狐に包まれたような状態だろう。
なぜ高木委員提言がこれほどの影響力を持ち得たのかを、未だに理解できない水産関係者のために、
高木委員提言のどこがどう凄かったのかを分析してみよう。

髙木委員提言の特色
髙木委員提言の意義は、水産系の企業のトップを集めた集団が、現状にNOと言ったことだろう。
名簿をみればわかるように水産関係の大きな企業のトップが集まっている。
組織のトップとしては、組織防衛を一番に考えるので、
こういう委員会として明確な方向性をもった提言を出すのは極めて困難だ。
とりまとめは並々ならぬ苦労があっただろうが、それをやり遂げたのである。

漁業関係者が高木委員提言を軽視した理由
難しい合意形成のプロセスを経てた髙木委員提言にはパッチワーク的な部分がある。
全体の整合性や、細かい部分の配慮などでラフな部分も少なくない。
減点方式でみていくと、提言の評価は低くなるだろう。
漁業関係者は、自分たちに気にくわないものは、すべて減点主義で、あら探しをする習性がある。
あらが見つかれば、それを理由に無視をすれば良いというのが彼らの発想だ。
● ラフな方向性を示しただけで、細かい部分まで詰めていない
● 漁業関係者の合意が得られていない
という2点をもって、漁業関係者は、高木委員提言に全く脅威を感じず、
無視していれば良いと楽観的に考えたようである。

ところが、髙木委員提言は、漁業関係者以外には、全く別の受け入れられ方をした。


漁業関係者以外への高木委員提言の効果
髙木委員提言は、外部の人間に漁業が深刻な問題を抱えていることを示した。
一方、漁業関係者は、提言に文句を言っているだけで、まともな対案ひとつ示せなかった。
これによって、水産庁にも全漁連にも漁業が抱える問題を解決能力が無いことが、
第三者の目にも明らかになり、外部からの改革への流れを決定的にした。
対案も出さずに、無視や反対を決め込んだことで、漁業関係者は墓穴を掘ったのである。 

髙木委員提言の引き起こした連鎖反応
1) 漁業には早急に対応すべき深刻な問題があることを外部に示した
2) 漁業関係者は問題に取り組む意欲も能力も無いことを外部に示した
3) 1)2)によって、外的な圧力によって漁業改革を進める必要性を明らかにした
4) 漁業をどう改革すべきかを議論する段階に突入した ← 今ここ!

髙木委員提言の真の狙いを推理する
俺は部外者なので、憶測でしかないのだが、
今にして思うと、髙木委員提言は漁業者を説得するためのものではなく、
外部から強制的に改革を進めるための仕掛けだったのでは無いだろうか。
そのことを見抜けない漁業関係者は、提言のあら探しをしただけで無視を決め込んだ。
それによって、自らが無為無策であることを示し、外部からの改革の必要性を明示した。
反対意見を出すだけで何もしないという漁業関係者の行動原理を利用して、
改革を軌道に乗せるというのは実に賢いやり方だ。
髙木委員が引き起こした連鎖反応は、偶然にしては上手くできすぎててる。
髙木委員の仕掛け人は、世の中の動かし方を熟知しているキレ者だろう。
世の中、頭のいい人っているもんだ。

高木員提言の価値は、その内容よりもむしろ波及効果にある。
そのことをに気づかない限り、髙木委員の真価は理解できないだろう。
髙木委員が起爆剤となり、すでに連鎖的な爆発が起こっている。
この連鎖がどこまで続くかはわからない。
爆発によって、日本漁業を縛る呪縛が壊れて、新しい漁業が出現するのか?
それとも漁業もまとめて吹っ飛んでしまうのか?
それは今後の漁業関係者の行動にかかっている。
ただ一つ言えることは、爆発前には戻れないと言うことだ。

盛 り 上 が っ て ま い り ま し た !!

AFCフォーラムの10月号は必読!

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農林漁業金融公庫の月報誌にAFCフォーラムというのがある。
PDFで全文を読むことができるのだが、実に、内容が濃厚。
10月号は、こんな感じです。

10月号(特集:守れるか日本の魚食文化)
特集  日本の水産業と魚食文化を守るには  坂井 真樹
負のスパイラルに陥っている水産業を建て直すには  黒倉 寿
日経調、漁業者と意見交換  日本経済調査協議会
活性化に成功したノルウェーの漁業制度と資源管理  丹羽 弘吉
水産業を取り巻く環境は劇的に変わった  垣添 直也
伊勢・三河湾のイカナゴ資源管理(愛知県)  船越 茂雄
いま現場では 宮古漁業協同組合 大井 誠治  調査室
コメント  小松 正之

髙木総裁が率いる農林漁業金融公庫だけに、高木委員提言に関連するものが多いです。
黒倉先生のところを読むと、高木委員提言が出てきた背景がよくわかります。
丹羽さんのノルウェーの漁業制度と資源管理も必読ですね。
丹羽さんには今回のノルウェー訪問でも大変お世話になりました。

ここで、目次のチェック&ダウンロードが出来ます。
http://www.afc.jfc.go.jp/information/publish/afc-month/2008/0810.html

PDFの存在に気づかずに、本を送付してもらたので、代金を振り込まねば・・・

7/31の提言に関するコメント(その1)

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提言1

科学的根拠の尊重による環境と資源の保護および持続的利用を徹底し、かつ国家戦略の中心に位置づけ、これに基づく水産の内政・外交を展開せよ。

水産資源は世界的な争奪戦の渦中にある。魚食を支えるわが国水産業の利益を国家的レベルで確保するため、中長期的視点をもって、外交を含めた大局的な国家戦略を構築すべきである。わが国の水産業は、日本の200海里水域内外で展開されており、200海里内の水産資源については、国民共有の財産として、科学的根拠を尊重した海洋環境の保護と資源の持続的利用の原則を徹底し、漁業関係者のみでなく、水産資源に関連する全ての産業と国民全体の利益を実現できるようにする。水産資源の保護が持続的な水産業の維持発展に不可欠であることは言を待たない。さらに、近年の世界的な環境保護・生態系保護の意識の高まりは、それらの動きに逆行する形で、漁獲・生産された水産物を、市場から締め出そうとする動きにまで発展している。このような中で、ABC(生物学的許容漁獲量)を超過してTAC(総漁獲可能量)を設定するような、資源破壊的な水産政策を続けていけば、世界の流れからみて、最悪の場合、輸出輸入の両面で大きな打撃を受ける懸念がある。環境・資源の保護と持続的利用を中核的な理念とする水産政策に直ちに転換しなければならない。

 特に、この場合においては、
1.海洋環境の保護と水産資源の有効利用のため、水産資源を無主物(誰のものでもない)としての扱いではなく、日本国民共有の財産と明確に位置づけるべきである。

水産資源は、漁業者も含む全ての国民共有の財産である。日本国民から付託を受けて、日本政府は水産資源の管理責任を負う。政府は、漁業者に漁獲の権利を与える。一方、漁業者は、この権利を行使するに当たり水産資源は国民共有の財産であるとの認識に立ち、自らと加工、流通、販売および消費者のために、国民共有の財産である水産資源を漁獲する権利を適切に行使する。

このブログのコメント欄を読んで、「国有化は違うかな」と考えるようになった。
国連海洋法条約では、水産物は人類全体の財産と位置づけている。
その上で、最適利用のための管理義務と同時に排他的利用権を沿岸国に与えている。
排他的な利用権を行使する以上、日本は国として水産資源を科学的・持続的に管理する義務がある。
無主物的な扱いをしていること自体が、契約不履行であり、
日本国民から付託にかかわらず、管理の責任はあるのだ。
国有財産であれば、国の都合で獲り尽くすという判断も可能であるが、
人類全体の財産であればそうはいかない。では、管理の費用はどうするのという話になる。
本来なら、人類共有財産を排他的に利用させてもらっている漁業者が払うのが筋だろう。
現在は国の税金でまかなっている以上、国益についての義務も負うはずだ。
「国民は漁業をどこまでサポートし、それに対してどのような対価を得るのか」を明確にすべきだろう

2.科学的根拠の尊重による資源の持続的利用の原則を徹底し、この原則を、わが国の水産行政の最も重要な柱とせよ。

科学的根拠を軽視して設定された結果、年続いているTAC(総漁獲可能量)とABC(生物学的許容漁獲量)の乖離を直ちになくす。また、個別漁獲割当の設定、取締り・罰則の強化、および不正に漁獲された水産物の保持・販売の禁止などの出口管理の強化を行う。これにより悪化したわが国周辺水域の資源回復を目指す。この科学的根拠を尊重する持続的利用の原則の確立によって、わが国の水産資源の悪化および水産業の衰退に歯止めをかけることが可能になる。

「Tacをabcまで下げる」という方針になれば、現在の体制では不十分だ。
日本の資源研究は実に脆弱であり、資源研究者の質・量ともに不十分である。
資源学の専門家は、水研センターにも殆ど居ない。
生態学など、他分野の専門家が、いろいろ勉強をして、資源評価をしているのが現状なのだ。
また、もともと少ない調査も削られる一方で、データの質・量ともに厳しい。
まずは、資源評価の体制をテコ入れするところかは始めなくてはならない。

科学的なアセスメントが軽視されているのは研究者にも責任はある。
「漁業で利益を出すためには、資源管理が必要である。
資源管理こそ、漁業が生き残れるかどうかの死活問題である。」
というような認識を広めていかないとダメだろう。
研究者がイニシアチブをとって、「資源管理で儲かる漁業」というビジョンを提供する必要がある。
しかし、研究の世界も縦割りで、狭い水産学の世界でも資源と経済で交流がほとんど無い。
われわれ研究者が、まず、縦割りの壁を破らないといけない。

さらに、難しい問題として、日本人のリスク感覚の無さがある。
資源量の推定値には不確実性がある。
不確実性とどうつきあうかが問われているのである。
漁業者は、「科学者の予測はあてにならないから、好きなだけ獲って良い」と主張するが、
これは、霧で前が見えないからといって、車のスピードを上げるようなものだ
不確実であれば、安全のために控えめに獲るべきなのだ。
現在の資源評価の精度の限界を認めた上で、
その精度の情報でリスクを回避するための予防措置について検討すべきだろう。

また、安定的な輸入の確保、日本漁船の外国水域への入域の確保、輸出の振興の全てにおいて、科学的根拠に基づく資源の持続的利用の原則を柱とする水産外交を展開する。
このことにより、科学的根拠に基づく持続的利用の原則を尊重する水産立国としての日本の国際信用が得られる。外交面および水産物の輸出振興にも大いに貢献する基本原則であり、日本および日本製品に対する評価が高まる。
わが国は、捕鯨交渉などでは科学的根拠と持続的利用の原則を主張しているが、国内資源の管理では科学的根拠を軽視している。こうした二重基準(ダブルスタンダード)を排除することが、わが国の資源の回復・復活および水産外交の進展につながる。

この部分は、今後の日本漁業の方向性を決めるかもしれない重要な部分。
世界の漁業は、「責任ある漁業」から、「責任を問われる漁業」へと着実に進んでいる。
この流れに対応していかなければ、ますます世界から取り残される。
日本は、世界第2位の経済国であり、世界一位の水産物輸入国でもある。
日本が世界の漁業に対して負うべき責任は重い。
できるだけ早く方向転換をしないと大変なことになるだろう。

漁業者は「日本の消費者が魚を適正価格で買わない」という。
だったら輸出すれればよいと思うのだが、日本の水産物の評価は低い。
日本の水産物は、先進国からは相手にされず、途上国に買いたたかれているのである。
その理由は、品質管理のまずさ、しっかりとした規格がないこと、等の理由もあるが、
それ以外にも漁業の持続性の問題もある。
例えば、マクドナルドはMSC認証のものしかつかわない。
企業イメージをアップすることで、売り上げに繋がるからである。
なんでも獲り尽くす日本漁業は世界的にイメージが悪い。
透明性の高い管理制度を導入し、環境への配慮を世界にアピールすべきだろう。

高木委員提言

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高木委員提言についての雑感

水産基本計画や水産白書の基本路線
1)成功しているところのみを針小棒大に宣伝し、全体として失敗していることを隠す
2)失敗は環境変動やクジラなど、業界外部の要因のせいにする
3)35年以降機能していないシステムの維持に全力を注ぐ

資源の枯渇は、環境変動とクジラのせいにする。
未成魚の多獲は無いことにする
市場価値が上がる前に獲り尽くしているけど、魚価の低下は市場のせいにする
すでに効果がないことがわかっている施策を惰性で続ける。

それに対して、高木委員の提言
1)水産業が上手くいっていない現状分析に立ち、
2)水産行政が機能していないという問題点を指摘した
3)その上で、変化の方向性についても提言をした

基本的な方向性として、「このままではマズいから何とかしよう」というのがある。
この姿勢は評価できる。というかこういう姿勢をもった団体は他にない。
委員会は20人程度の業界関係者からなるのだけど、そこには様々な利害の対立がある。
文章を読むと、特定の委員の顔が浮かんでくるような箇所もある。
そういう意味では確かに限界がある。

現状分析や対応策については、今後も検討を続ける余地は大いにある。
賛成できる点、賛成できない点を洗い出して、
賛成できない点に関しては、その理由を明示したい。

大切なことは、高木委員の提言をネタに、みんなで言いたいことを言うことだろう。

高木委員会、本提言がでました

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http://www.nikkeicho.or.jp/Chosa/new_report/takagifish070731_top.html

提言1.科学的根拠の尊重による環境と資源の保護および持続的利用を徹底し、かつ、国家戦略の中心に位置づけ、これに基づく水産の内政・外交を展開せよ。
提言2.水産業の再生・自立のための構造改革をスピード感をもって直ちに実行せよ。
提言3.水産業の構造改革のため、水産予算の大胆かつ弾力的な組替えを断行せよ。
提言4.生産から最終消費までの一貫した協働的・相互補完的な流通構造(トータルサプライチェーン)を構築せよ。

わが国水産業は生産、加工、消費などあらゆる面の指標からみて悪循環(負のスパイラル)に陥っており、その背景には、水産資源が枯渇状態にあること、そしてこのことが漁業の衰退と過剰漁獲を招き、さらには漁業の衰退に拍車をかけている実態があるとの認識に至った。

かかる認識を踏まえわが国の国益・国民の利益を守るため、
       (1)水産資源の枯渇を防ぎ、資源を復活させること
       (2)漁業者、地域社会を豊かにすること
       (3)安全・安心な水産物を日本国民に持続的に提供すること
を最大の眼目として以下を提言している。

この前文は、良くまとまっていると思います。
中身については、しっかり読んだ上で、コメントをしたいです。

高木委員 お持ち帰りセット

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高木委員で話した内容を、ほぼそのまま公開しました。
お楽しみいただけましたか?
水産資源学や漁業学の知識が無くても、
日本の資源管理の現状が理解できるように工夫をしたつもりです。

高木委員の次回の提言は、夏頃に出てくるはずですが、
そこでこの意見がどの程度反映されているか楽しみです。

編集の都合で細切れなアップでしたが、
めでたく最後まで編集できたので、完全版をおいておきます。
内容は今まで公開したものと全く同じです。
お持ち帰りセット (32分22秒 35.4MB)

ダウンロードして、じっくりとご覧ください。
ブログには補足的な文章もありますので、
そちらにも目を通していただけると幸いです。

高木委員 その6

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戦後の食糧難の時代に作られた漁業の枠組みでは、
EEZ時代には対応できない。
そのことは、日本漁業の歴史がはっきりと示している。
今のままでは、未来はないということは示せたと思う。
では、どうするのか?
そのことを、真剣に議論をしていく必要があるだろう。

俺の考えは、このブログを読んでもらえればわかると思う。
現在の漁業の行き詰まりの根本原因である資源の枯渇という問題を、
根本的に解消すべきなのだ。
すぐにでも行動を開始しなくてはならない。
早ければ早いほど、多くの資源・漁業を生き残らせることが出来るのだから。

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