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魚種別 Archive

北海道ブロック会議に来たよ

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今、釧路です。
北海道のブロック会議に来ています。
朝、ホテルの部屋を出たら、海洋研の伊藤がいてびっくり。
どうやら、白鳳が来ているらしい。
同じホテルで階まで一緒というのは、世の中狭いものだ。

ブロック会議は公開なので、内容をレポートしてみよう。

今回は東シナ海の航海実習により、事前検討会をスキップした。
ブロック会議までに、だいたいの議論は終わっているから、後の祭りという感じがする。

今日の検討事項は、いきなりスケトウダラ北部日本海系群です。
当初の資源評価では、親魚量が禁漁の閾値Bban3万トンを割っていたらしい。
その後、魚探データでチューニングすることになり、
親魚量の推定値が4.2万トンと上方修正され、禁漁勧告はしないですんだらしい。

ただ、魚群探知機の調査によると、05年・06年生まれの未成魚が、それなりにいるようなので、
今後、2~3年は、資源は一時的に回復の見込み。 というような状況だ。

今までは、ABCTargetとABCLimitの2つを提案していたが、
水産庁の決定で、今年から、ABCを複数提案することになった。
沢山出させて、その中で一番高い数字を選ぼうという作戦だろう。 

シナリオ

ABC

目的

30年後の回復率

1.8千トン

親魚量の増大(10年)

99.9%

3.1千トン

親魚量の増大(制御ルール)

26.9%

5.9千トン

親魚量の増大(20年)

79.8%

7.4千トン

親魚量の増大(30年)

46.8%

9.3千トン

親魚量の増大(微増)

8.4%

10.3千トン

親魚量の現状維持

2.5%

12.7千トン

漁獲圧の半減

0%

24.1千トン

漁獲圧の維持

0%

担当者は次のようなシナリオを準備して、1~5をABCとして選択をした。
この資源は、超低水準で、回復が必要な状態だから、親魚量を増大させないと話にならない。
シナリオ5だと実質的に資源は回復しないので、ABCとして適当だとはおもえない。
つっこみを入れようと思っていたら、先に管理課から意見がでた。
「水産庁が定めた中期的管理方針では、資源回復計画に基づき資源の減少委に歯止めをかけることを
目指して管理を行うこととされている。だから、シナリオ6の現状維持もABCにしよう」 という提案があった。

資源回復計画があるから、管理目的を「資源回復」から「現状維持」に下方修正しようというのだ。
さすがの俺もこれにはびっくり。
「現状維持では資源は回復しないが、それで資源回復計画と言えるのか?」とつっこみを入れた。
それに対しては、要領を得た回答は得られなかった。
結局、シナリオ6はABCとして盛り込まれることになった。
資源回復計画なるものを税金を使ってやる以上、
なんとしても資源を回復させるという姿勢を見せるべきだと思う。

ただ、ABCを千トン水増ししたところで、焼け石に水だ。
去年のABC11.0~8.9千トンに対して、漁獲量は18.0千トン。
ABCを無視した過剰なTACが設定され、ABCの倍も実漁獲がある状態で、
ABCの重箱をつついても時間の無駄だろう。
これだけ大勢の人間が、これだけ時間をかけて、資源評価を出して、それが何にも使われない。
なんか、俺はむなしくなってきたよ。
現在の過剰漁獲をどうやって適正水準に近づけていくかを議論すべきだろう。
そのためには権利ベースの漁獲枠配分と、ちゃんとした取り締まりの2つが必要だ。
ABCの精度を上げるより、規制改革をするほうが、よっぽど漁業の役に立つ。

スケトウダラ日本海北部系群は、05年、06年生まれが多いようなので、
ブロック会議全体として、楽観的な雰囲気があったようにおもう。
しかし、安心するのは、実際に資源が回復してからにすべきだろう。
俺は5年以内にBbanを割る可能性もかなりあると踏んでいる。
今回、05年、06年を成熟まで残せるかどうか、この先1~2年が正念場だ。
98年生まれの卓越級群は、「豊漁だ!!豊漁だ!!」と言って、獲りまくり、
蓋を開けてみたら、資源が回復するどころかむしろ減らしていたわけだ。
「まだ獲れる」という状況で漁業を止めるのは、漁業者的には凄く難しいことだと思うが、
同じ失敗を犯さないように、北海道の漁業関係者の学習能力に期待をしたい。

スケソウやサバ、漁獲可能量見直し 「資源守る基準超す」と批判

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 水産庁は、漁獲可能量(TAC)を見直す方針を固めた。TACの大半が、資源枯渇を防ぐ目安となる生物学的許容漁獲量(ABC)を上回り、専門家の批判の対象になっているためだ。ABCを上回るTACを設定する傾向は以前から続いており、サバは漁獲量がTACを超えたこともある。こうしたTAC設定の理由について、水産庁は「漁業者の経営が成り立つかどうかも考慮している」と説明するが、専門家は「資源管理が機能していない」「TAC設定の根拠が不透明」などと問題視していた。
 近く発足するTACのあり方を議論する会合では、ABCを超過するTACをできるだけ解消する方向で、より厳格な資源管理の方策を議論する。また、漁獲総量がTACに達した時点で操業を打ち切る現在の管理方式は、総量に達するまでの間、漁業者間の過剰な漁獲競争を招く恐れも指摘されており個別の漁業者に漁獲枠を割り当てる方式の導入も検討する。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/agriculture/85241.html

北海道新聞の記事です。一般紙でも、資源管理の話題が出るようになりましたね。
誰だか知らないけど、専門家はGJだな。

これは、わかりやすくまとめられている、良い記事だとおもいました。
1)ABCを超過するTACをできるだけ解消する方向で、より厳格な資源管理の方策を議論する
2)オリンピック方式からIQへの移行も検討する
という結論に関しても妥当ですね。実際にABCとTACの乖離を少なくする方向で動いているようです。
(ただし、現在のTACにあわせてABCを上げる圧力が強まっているので注意が必要です)
また、IQの導入も時間の問題でしょう。オリンピック方式を続ける理屈がないですから。

ゆっくりではありますが、資源管理をちゃんとやろうという方向に世の中は動いています。
だから、資源管理反対派は相当に焦っているようですね。
「ABCなんて無視しても良い」と吠えている人もいますが、ごく少数です。
言っていることが支離滅裂だし、世間の支持は得られていないので、放置しておけば良いでしょう。

TAC制度に関しては、導入の経緯からしてグダグダだったので、
最初の数年は資源管理として機能しないのはしょうがない面もある。
ただ、TAC制度が始まって10年が経過しているのだから、
「制度として未完成である」などという言い訳はさすがに通用しない。
「(A)今までは管理できていなかったけど、これからはまじめにやります」ということであれば、
過去についてはとやかく言っても仕方がないでしょう。
しかし、「(B)今までもTAC制度は機能していたし、これからも同じようにやります」と開き直るなら、
過去に遡って、TACの設定根拠の妥当性が徹底的に追求せざるをえない。
俺としても、日本の漁業をどうやって良くしていくかを前向きに議論していきたいので、
(A)のTAC制度をきちんと見直すという方向でお願いしますよ、本当に。

今回の見直しには世間の注目が集まっているので、いい加減なことは出来ない。
逆に、ちゃんとした見直しをすれば、水産庁の株はぐっと上がるはずだ。
特定漁業者の顔色ばかりをうかがわずに、
納税者全体に対して、水産庁の存在意義を示して欲しい。

サバも養殖ですか。餌は小サバ?

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若狭のサバ 養殖で復活…福井・小浜市の県立大水産資源生物学研究室
 かつて若狭湾でとれた魚介類を京都まで運んだ「鯖街道」。だが、材料は実のところ、ノルウェーなど外国産のサバが多いのだ。
 「やっぱり、小浜といえばサバ。おいしい地物の若狭のサバを復活させたい」。県立大生物資源学部海洋生物資源学科の青海(せいかい)忠久教授(58)は1999年の同大学赴任をきっかけに、サバの養殖研究に乗り出した。
 若狭のサバ 福井県内のサバ類の漁獲量は、1970年代、80年代はおおむね2000~4000トンで推移していたが、95年以降は毎年650トンに満たず、2004年はわずか54トンにまで激減している。県は08年度に復活推進事業として、嶺南4か所でマサバの育成を始める
http://osaka.yomiuri.co.jp/edu_news/20080401kk04.htm

マサバの未成魚を養殖の餌として乱獲して、資源を枯渇させたのだけど、
サバが獲れなくなったから、今度は養殖ですか。
なんともシュールですなぁ。餌が小サバだったりして。

サバを養殖するより、サバの未成魚をブリ養殖の餌にするのを止めた方が、
環境にも消費者にも幸せな結果をもたらすと思う。
ただ、資源管理がまるでできていない現状では、
生簀に囲い込む以外に大型魚を安定供給する方法が無いから、
こういう方向に行くのはしょうがないのかなぁ。なんか切ないです。


 

サバ産地、ノルウェーを千葉県産に

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表示ミス:サバ産地、ノルウェーを千葉県産に--神奈川・小田原の水産会社
 神奈川県小田原市の水産物加工会社「イチコー」が、製造したサバの干物のパック商品について、「ノルウェー産」を「千葉県産」と表示していたことが分かった。小宮社長は「ノルウェー産のサバは千葉県産に比べ二倍以上も仕入れ値が高い。高いサバを損をしてまで売るわけがない」と産地偽装を否定。千葉県産と思って買った消費者には「本当に申し訳ない」と話している。
http://mainichi.jp/life/food/news/20080311dde041040003000c.html
http://www.kanaloco.jp/localnews/entry/entryxiiimar0803253/

サバに関しては、ノルウェー産を千葉産と偽る理由はどこにもないので、これは本当のうっかりミスと思われます。2枚380円でノルウェーのサバを売ったら、大赤字だろうし。この値段でノルウェー産のサバを買えた消費者はむしろラッキー。この加工は、高価な原料を安い値段で売ってしまった上に、新聞で偽装と叩かれて、踏んだり蹴ったりだな。疲労したアルバイトを深夜まで働かせたツケは高くついたと言うことでしょうか。

北洋シンポ

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北洋シンポの発表をアップしました。
ライブではなく、スタジオライブです。

今回もマサバを例に日本の乱獲をDISしているのですが、
「沿岸は沖合と別物だから、分けて話をしてくれ」というコメントがつきました。
本当に、沿岸漁業はここで指摘しているような過剰競争&乱獲とは無縁なのでしょうか?
俺には、沿岸も沖合も50歩100歩にしか見えないのですが・・・

ヨーロッパのサバ漁業

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ノルウェーのニシンとサバがMSC申請

-Two Norwegian fisheries have applied to be assessed for certification under the Marine Stewardship Council’s (MSC) standard for sustainable and well-managed fisheries. If successful the Norwegian Spring spawning herring fishery and Norwegian North East Atlantic mackerel fishery will be to display the distinctive blue MSC eco-label on their catch.
“Recently an initiative was taken by the Norwegian Fishing Industry to undergo a full assessment of both Atlanto-Scandic fisheries for herring and mackerel to be caught by Norwegian fishermen in the forthcoming season.
The aim of the assessment is to have these fisheries certified under the MSC- standard,” says Knut Torgnes, Sales Director of Norges Sildesalgslag.
http://www.sildelaget.no/ShowArticle.aspx?idx=ENGNyhetsartiklerActive&ArticleId=23334

Knutさんは、Bergenでノルウェーのオークション・システムについて説明してくれた浮魚漁業組合の人だな。ニシンとサバでMSC申請とは、ノルウェーも頑張ってますね。MSC申請をするような漁業がどういう管理をされているか、興味がある人も多いだろうから、ヨーロッパのサバ漁業資源について簡単にまとめてみた。(26分 22MB )

小サバの乱獲で、加工業者が廃業の危機らしい

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2/15日には、「サバ水揚げ減少に悲鳴、静岡加工連など水産庁に陳情」という記事があった。マサバの未成魚を中国に輸出しているために、産卵場である銚子以南のマサバ漁業はほぼ壊滅。静岡の加工業者、産地出荷業者、関連業者は打撃を受け「廃業する業者が増えている」というのだ。サバの未成魚を海外に投げ売りしてきた当然の結果である。

漁業で生活しているのは魚を捕る人だけではない。加工する人、流通する人、小売り業者、そして、消費者までが漁業というシステムに取り込まれている。漁業システム全体の利益を増やすのが、国の水産政策のあるべき姿だとおもう。しかし、水産庁のやっていることは、全く逆だ。未成魚を乱獲している一部の漁業者が、あぶく銭を手にする一方で、その他の漁業関係者は廃業に追い込まれているのだ。もし、未成魚を中国に投げ売りする代わりに、十分な大きさで漁獲をすれば、加工・流通・小売り業者は皆利益を得ることが出来る。

0歳1歳で獲っているサバを、3歳4歳で待って獲れば、500g-700gの国内で需要が高いサイズになる。3年間に個体数は3割に減少するが、体重が3.3倍になるので、全体の漁獲量としては変わらない。180gのサバと600gのサバでは浜値はまるで違う。加工されてスーパーに並べば、1尾300円、場合によっては500円にもなる。仮に300円としても3尾で900円の経済利益になる。この利益を漁業者と後方(流通・加工)で分けることになる。 ざっくり計算しても、国内の経済効果は10倍になる。さらに、素性のたしかな、国産の美味しいマサバの供給量が増えれば、消費者も大喜びだ。

体重
個体数
重量
漁業売上
後方売上
合計
小サバ
180g
10尾
1800g
90円
0円
90円
中サバ
600g
3尾
1800g
250円
650円
900円

海の生産力は限られている以上、そこからいかに利益を引き出すかが重要になる。獲る技術よりも、経済価値を加える技術が重要なのだ。 高く売れる魚を持続的に漁獲し、価値をつけて売ることが、儲かる漁業の条件だ。世界で有数の利益率の高さを誇るノルウェー漁業は、殆ど付加価値をつけてない。加工技術がないので、丸のまま冷凍で売るしかできないのだ。日本には、魚食の知恵と加工技術がある。、ノルウェーのような魚の獲り方をして、日本独自の加工をして売れば、ノルウェー漁業に必ず勝てる。しかし、一部漁業者の乱獲のせいで、せっかくの加工技術を活かすことが出来ないばかりか、加工技術自体が失われようとしている。 取り返しのつかない事態が進行中だ。

納税者が小サバと中サバのどちらの獲り方を望んでいるかは、議論の余地がないだろう。日本のサバを未成魚で乱獲して、中国に投げ売りして欲しいと思う日本人などいないだろう。素性のたしかな国産魚を日本人向けに安定供給することこそ、国益である。そのために、産業規模に比べて不相応な予算が水産業に割かれているのである。

にもかかわらず、水産庁は小サバの輸出事業を税金で進めているのである。小サバを輸出している漁業者は軒並み赤字で、補助金で支えられている状態だ。「マサバ太平洋系群回復計画」と称して、未成熟なサバを乱獲するための油代を税金から払っているのである。中国で小サバをPRする事業まで国がやっているのだから、至れり尽くせりだ。赤字を垂れ流しながら、資源を徹底的に痛めつける漁業を保護して、金の卵である水産資源と貴重な加工技術を荒廃させている。それを「回復計画」などと呼ぶのは、ブラックジョークだろう。本当にマサバを回復させたいなら、未成魚の漁獲は禁止すべきだし、それが出来ないなら補助金をばらまくのを辞めるべきだ。

水産庁のやっていることは、自分たちと関係の深い一部の漁業者の短期的利益のために、国の食料供給の未来を奪おうとしているようにしか見えない。 水産学の専門家として、自国の漁業がこんな有様であることに対して、恥ずかしい限りである。専門家の一人として、静岡の加工業者さん達には、申し訳ない気持ちで一杯だ。未来の世代が美味しくて安全な日本のサバを食べ続けられるように出来ることをやるしかない。しかし、時間はあまり残されていない。 90年代以降、マサバ太平洋系群の生産力は非常に高かった。92年,96年,04年,07年と15年間で4回も卓越年級群が発生した。乱獲のせいで全く資源回復には結びつかなかった。マサバの高い生産力は餌のカタクチイワシが豊富だったからだと考えられている。そのカタクチイワシが減っているのだから、しゃれにならない。上の記事と同じ2/15のみなと新聞に、「カタクチイワシ、水揚げ、かつて無い少なさ」との記事があった。これは実にやばいサインだ。マサバを0歳から獲りまくっている現状で、加入の失敗が続けば、あっという間に資源崩壊だろう。浮魚は自然変動するから、幾ら獲っても構わないという珍説が日本ではまかり通っているが、そんなことはない。実際に、北海のサバ資源は80年代に乱獲で消滅しているのだし、北海道のニシンだってほぼ壊滅している。このままだと、マサバが沿岸性のローカル資源になってしまうかもしれないということで、俺は焦っておるのです。

中国で加工の冷凍サバから「ジクロルボス」だってさ

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餃子ネタはすでにおなかいっぱいなのだが、今度はサバだそうだ。食品衛生法の基準はかなりマージンがあるので、食べたら病院送りとかそういう話ではない。ただ、薬品のリスク管理ができていないのは明らかだろう。

中国で加工の冷凍サバから「ジクロルボス」…52品目を回収

 香川県さぬき市の水産物製造販売会社「香西物産」は18日、中国の工場で加工された業務用の冷凍サバ「炙(あぶり)トロ〆鯖(しめさば)スライス」(200グラム)の切り身から、有機リン系殺虫剤「ジクロルボス」が、食品衛生法の基準の14倍にあたる0・14ppm検出され、同工場が加工した冷凍サバ商品52品目の自主回収を始めたと発表した。
香西物産は昨年3月から中国・山東省の加工工場2か所に、デンマーク産サバの加工を委託していた。
(2008年2月18日20時42分  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080218-OYT1T00505.htm?from=main2

中国を経由して、日本に入ってくる水産物は多い。なんと言っても人件費が安いからね。ノルウェーから中国に行くサバのほとんどは、中国で加工されて最終的には日本に出荷される。日本の加工の空洞化は深刻な問題だ。漁業者はなんだかんだで保護されているが、加工業者に対する支援は何もない。魚は全般的に捕りすぎなんだから、漁業者ばかりを保護しても漁獲量が減るのが早くなるだけだ。ヨーロッパのサバは、品質も良いし安定供給できるだろうけど、彼らは日本向けの加工はできない。国内の加工が衰退すれば、ここでも中国に依存することになる。食の安全を守るためには、小型魚の乱獲をする一部漁業者への補助金を打ち切って、代わりに加工業者を保護するべきだろう。

日本のサバが安いのは低品質&補助金によるダンピング

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日本のサバは、市場価値が出る前に取り尽くされ、世界一安い値段で途上国にたたき売られている。まさに不合理漁獲の極みである。このことを指して、「日本の漁業の価格競争力は世界一」という意見も一般論としてあるようだが、これは全くの誤りである。そのことを少し整理してみよう。

製造コストが低く、品物をより安価に供給できことを価格競争力と言う。例えば、人件費が高くて製造コストが高くなるJ国と、人件費がただ同然で製造コストが安いC国があったとする。同じクオリティーの製品を製造した場合、1個当たりの利益が大きくなるのはC国になる。 C国がシェア拡大のために価格をAからBへと下げたとする。この場合、J国は赤字になるのでBまで価格で追従できない。C国はシェアを拡大し、薄利多売で利益を増やすことができる。値下げ競争をした場合に、製造コストが安い(=価格競争力がある)方が勝つのである。

Image200802101.png

1)ノルウェーのサバと日本の小サバは競争関係にはない
もし、日本がノルウェーが輸出しているような500gの脂ののったサバを、今の単価で製造できるなら、価格競争量が高いと言えるだろう。しかし、日本が輸出しているのは200gの小サバである。ノルウェーが輸出しているサバと日本が輸出しているサバは別物であり、サイズ・価格・用途など、全く重なっていないのだ。ノルウェー漁業は日本で高級鮮魚として消費できるようなサバのみを漁獲・輸出している。一方、日本漁業は日本市場で価値が出る前のサイズで獲り尽くし、中国・アフリカに輸出している。日本が小サバを幾らたたき売ろうと、ノルウェーのサバの値段には影響を与えない。そもそも、市場も用途も違うのだから、当たり前だ。サバを輸出している国で、日本のように未成魚を輸出している国は他に無い。日本の小サバ輸出にはライバルは存在しないのである。価格競争で安くなっているのではなく、その値段でしか買い手がいないから安いのである。

2)日本のサバの安い値段は補助金によるダンピング
 世界一安い値段で小サバを輸出している大中巻き漁業は、軒並み赤字。太平洋系群を獲っている北部巻き網組合は、10年以上赤字続きで、補助金で支えられている状態だ。自国よりも購買力が格段に落ちる国に雑魚を輸出しても、船の維持費にもならない。それでも収入が全く無いよりはマシと言うことで、まとめて獲って捨て値で売る。こうして、サバ資源の回復の芽を摘み続けているのだ。

日本の小サバの安い値段は、企業の価格競争力ではなく、税金によって支えられているのである。小サバを中国に売り込むためのプロモーションまで、税金でやっているんだから、至れり尽くせりだ。政府の補助金によって不当に安い価格で輸出をすることを「ダンピング」と言う。ダンピングは、市場の健全な競争を妨害し、最終的には消費者の利益を害するので、独占禁止法などで禁止されている。WTOでも「ダンピングを相殺し又は防止するため、ダンピングされた産品に対し、その産品に関するダンピングの限度をこえない金額のダンピング防止税を課することができる」となっている。 ただ、日本の小サバ輸出をダンピングとして提訴する国はいないだろう。なぜなら、貴重な水産資源であるサバを、日本みたいに価値が上がる前にたたき売る国など他にないからだ。ノルウェーなどのサバ輸出国だって、日本の小サバ輸出に反対をするはずがない。日本の漁業者が未成魚を乱獲するおかげで、世界一美味しい日本のサバ市場が手にはいるのだから、棚からぼた餅だ。

Image200802103.png

日本のサバが世界一安いのは、日本の漁業者に知恵が無く、日本の水産行政に何のビジョンもないからである。日本から輸出されるサバの安い価格は、企業努力ではなく補助金によるものである。日本の漁業者はダンピングをしても誰からも苦情が出ないぐらい酷い獲り方をして、サバ資源の回復の芽を摘み続けている。こういった不合理漁獲を税金で支えているのが日本のお役所なのだ。このデタラメな水産政策によって、損をするのは日本の納税者・消費者である。

平成19年度のマイワシのTAC超過について

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こんどは、マイワシがTACを超過しましたね。こんどは、知事許可(沿岸)が枠をオーバーということです。では、どの県がどうやってオーバーしたかを見ていきましょう。TAC魚種の漁獲実績はここにあります。
http://www.jafic.or.jp/tac/index.html

まず、去年の4月にTACと漁獲量の推移を見ていこう。6月に期中改定で、TACが35千トンから、60千トンに増枠された。最終的な配分は、大臣許可43千トン、 知事許可17千トンである。大臣許可は、最後までTACに達しなかった。一方、知事許可は8月の段階で、配分枠を使い切っていたのである。その後も順調に漁獲を続けて、10月に7千トン獲ったのが大きかった。12月の値は暫定値であり、ここから2~3千トンは増えるだろう。 最終的には、200%近くなるだろう。

TACと漁獲量

TAC
7月
8月
9月
10月
11月
12月
合計 60000 45172 51308 53568 61914 65710 66361
大臣 43000 30747 33662 34227 35801 36005 36658
知事 17000 14425 17646 19341 26113 29705 29703

TACの消化率

7月
8月
9月
10月
11月
12月
大臣
72%
78%
80%
83%
84%
85%
知事
85%
104%
114%
154%
175%
175%

 

では、県ごとに見ていこう。県別漁獲量の上位は西の県が占めている。これは例年通りである。

19年度漁獲量
1 高知県 5414
2 宮崎県 5135
3 長崎県 5042
4 島根県 3446
5 三重県 2327
6 鹿児島県 1984
7 和歌山県 935
8 神奈川県 776
9 石川県 690
10 愛知県 660

 

知事許可としてはTAC枠に達した9月以降の漁獲量をみると、こんな感じ。高知、島根は殆どが9月以降ということになる。

TAC超過後の漁獲量(t)
1 高知県 4485.1
2 島根県 2122.9
3 長崎県 1713.5
4 鹿児島県 1011
5 三重県 968

 

平成19年12月と平成18年12月の報告漁獲量を比較してみよう。漁獲量の差が大きいのは九州・四国であった。長崎、鹿児島が突出していることがわかる。去年は殆ど獲れていなかった長崎での高い漁獲量は、対馬暖流系群の卓越年級群の発生を示唆する。漁獲量としては上位の三重県は、前年比でみると減少している。

前年の漁獲量と比較(12月報告)
差(t)
1 長崎県 4855 27.0
2 鹿児島県 1914 28.4
3 島根県 1907 2.2
4 宮崎県 1860 1.6
5 高知県 1373 1.3
34 三重県 -248 0.9

TAC魚種のうちマイワシとスルメイカ以外は、大臣許可と知事許可に配分された後、知事許可分はさらに県に配分される。マイワシは、漁場形成が偏るので漁獲枠をそれぞれの県には配分していない。沿岸漁業全体の枠しかないのである。各都道府県が、前年度実績を目安に漁獲をするという通達しかない。9月以降の漁獲が多かった高知は、前年度実績をそれほど超えていない。三重に至っては、前年度実績を下回っている。目安は守っているのである。前年と比べて漁獲量が急増した長崎・鹿児島は漁獲の中心が8月以前であった。この2県と島根は9月以降の漁獲をもう少し抑えるべきだった。この前年度実績というのはあくまで目安であって、実行力は何もない。これでは、漁獲枠など無いも同然である。マイワシは資源が減少中なので、前年度実績通り獲ってたら、どんどん減る。また、今年のように少しでも資源が増えれば、枠など守られるはずがない。現在のTAC制度は、管理をしていますというポーズだけで、過剰漁獲を取り締まる気など無いのである。今回の知事許可分の超過に関しては、管理としての枠組み作りを放棄している水産庁の責任が重いだろう。

水産庁は「ウルメやカタクチを獲る中で、(マイワシが)混じる量が多かったようだ。混獲と専獲を分けるのは難しい」といつものように開き直っている。混獲だろうと専獲だろうと、資源に与える影響に代わりはないのだから、全体の漁獲量を抑えるのは当然のことである。混獲だから良いという問題ではないだろうに。こんな理屈をこねるのは、世界広しといえども、日本の水産庁と日本の漁業経済学者ぐらいだ。南アフリカは、カタクチ漁業が混獲するマイワシに対して、混獲漁獲枠を設けて資源の保全に努めている。まじめに資源管理をしている国を少しは見習って欲しいものである。混獲・専獲が問題であるならば、なおのこと地域に漁獲枠を配分しておく必要がある。予め枠が決まっていれば、混獲を含めて漁獲枠に収まるように工夫して操業をできる。混獲でどうしても獲れてしまう分を引いた残りを専獲すればよいのである。それでも混獲で獲りすぎてしまったなら、超過分は翌年のその地域の漁獲枠を減らすことで対応できる。TACを超過したマイワシの混獲をゼロには出来ないが、減らす方法は幾らでもある。日本はそういった努力をなにもしていない。管理をする側の人間が、資源管理ができない理由を並べれば、それで良いと思っているかぎり、今後も乱獲に歯止めはかからないだろう。

 漁獲量の県ごとの内訳を見ると、去年とは資源の構造が変わっていることが示唆される。去年と比較して漁獲量が増えた県を黄色、減った県を青で示すと下のようになる。

 image08020505.png

今年の10月以降の漁獲増は、産卵場の周辺で0歳魚の漁獲が増えたためだ。太平洋系群、対馬暖流系群ともに卓越が発生したようである。ただ、卓越といっても現在の低水準では簡単に獲り切れてしまう水準である。この年級群を確実に産卵につなげていくことが、マイワシ資源にとって死活問題だ。07年級群は、この後、東に摂餌回遊を行い、来年、産卵場に戻ってくる。どうせ、北巻は獲って、獲って、獲りまくるだろう。水産庁は北巻の乱獲を抑制するどころか、少しでも多く獲れるように最大限の援護射撃をするだろう。この年級群が再生産に結びつくかどうかは、東への回遊しだいということになる。07年級群は今のところ、西に止まっている。このまま西に止まってくれれば、資源回復の芽はあるのだが、東に行けばそれで終わりだ。

05年、07年と親が少ないながらも、順調な加入が観察されている。これらに確実に産卵をさせれば、資源を緩やかに回復させながら、漁獲を安定させることもできるだろう。獲るなとは言わないから、せめて1年だけでも我慢して欲しい。

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