2026年7月31日、水産研究・教育機構は、日本海と太平洋のスルメイカ長期漁況予報を公表した。
日本海は過去最低
日本海では、2026年8~12月の来遊量が、沿岸のすべての海域で前年を下回ると予測された。道北・道央、道南・津軽、本州北部、西部日本海のいずれも前年割れである。沖合域は「前年並」とされたが、これは資源状態が良いという意味ではない。
5月下旬から7月中旬に実施された漁場一斉調査では、調査海域全体のCPUEが、いか釣り機1台・1時間当たり0.20尾だった。前年の0.30尾を下回り、調査開始以来の最低値である。沖合域のCPUEも過去2番目に低い。日本海全体の分布密度は、極めて低い状態にある。
下の図が、調査結果の概要である。海域別に見ると、道北・道央では調査による漁獲がゼロ、道南・津軽ではCPUEが0.002尾にすぎなかった。日本海沿岸の4~6月の漁獲量は前年の81%、西部日本海では5~6月が前年の45%だった。韓国の日本海側でも、5~6月の漁獲量は前年の23%に落ち込んでいる。

日本海におけるいか釣り調査による海域別CPUEの年推移
太平洋も低水準
一方、太平洋では地域によって予測が分かれた。8~9月の来遊量は、常磐~三陸で前年を上回り、津軽海峡~道南太平洋で前年並み、道東太平洋で前年を下回るとされた。

太平洋におけるいか釣り調査による海域別CPUEの年推移
ここで注意すべきなのは、「前年を上回る」という表現である。常磐~三陸を含め、太平洋側の各海域は、いずれも1980年以降では低水準と評価されている。常磐~三陸で前年を上回る可能性があっても、それは資源全体が回復局面に入ったことを意味しない。太平洋の一部で局地的な来遊が増える一方、日本海では調査開始以来最低というのが、今回示された全体像である。
科学を無視して、漁獲枠を水増しする必要があったのか?
この結果は、2026年のTAC設定と深刻な矛盾を生む。水産庁は2026年の当初TACを6万8,400トンとし、前年当初の1万9,200トンから3倍以上に引き上げた。科学機関が通常の資源評価から示したABC5万2,000トンを採用せず、漁業者が受け入れられる漁獲枠を確保するために、別の計算方法で大きなABCを作った結果である。
しかし、その後に実施された日本海調査では、CPUEが過去最低となり、太平洋も低水準だ。スルメイカの資源減少が顕在化した2016年以降、漁獲量が現在のTACに達した年は皆無である。現在の資源量に比べて、過大な漁獲枠設定であることは明白だ。
簡単に増えるが、減らない漁獲枠
漁業者が「枠が少なすぎる」と訴えると、水産庁は漁期中でも柔軟に漁獲枠を増やす。実際、2025年のスルメイカTACは、当初の1万9,200トンから2万5,800トン、さらに2万7,600トンへと二度にわたって増枠された。
ところが、資源調査によって回復していないことが判明しても、漁獲枠は減らされない。今回、日本海の調査CPUEが過去最低となり、当初の想定より状況が悪いことが示された。それでも、水産庁は6万8,400トンという漁獲枠を維持している。
漁期中に漁獲枠を変更することを期中改定と呼ぶ。期中改定は頻繁に行われてきたが、すべて増枠する方向である。漁獲枠が足りないという業界の声には素早く対応する一方、資源が想定より悪いという科学的情報には対応しないのである。
この非対称性こそ、日本の水産政策が何を優先しているかを示している。判断基準になっているのは、資源の持続可能性ではなく、漁業者が納得できるかどうかである。科学的資源管理を掲げるのであれば、資源悪化の情報にも増枠要求と同じ速さで反応し、必要なら期中でもTACを削減すべきである。
【資料】
水産研究・教育機構「2026年度日本海スルメイカ長期漁況予報」「2026年度第1回太平洋スルメイカ長期漁況予報」(2026年7月31日)

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